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岐阜県郡上市 石徹白のスギ(石徹白の大杉)


SONY α7II / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

どんな趣味にでも好むと好まざるとにかかわらず、あれだけは一度所有しておいた方がいい、あそこは絶対に行っておくべきだといった、その趣味の指針となるシンボルのようなものが存在すると思うのです。ここ「石徹白(いとしろ)のスギ」はかの屋久島の縄文杉等と並んで、巨樹を愛する者にとってまさにその数少ないシンボルの一つであり、一度は足を運んでおかなければならないだろう。かねてからそんな風に考えていた巨樹です。今回の旅のスタート地点にしてゴールと言っても差し支えない、実際のところこれを一発目に見てしまったらその後の行程に支障が出るのではないだろうか?という懸念すらありました。だってショックを受けるに決まってる。記事にするにしたっていきなりコレを書くのか…という気がしなくもないのですが、順序的にも当然この巨樹から入るのが正しいでしょう。


さてその石徹白のスギ。当然ですが、そう簡単には姿を拝ませてもらえません。
白山中居神社から駐車場までの約7kmに渡るスリリングなノーガードレール・離合困難な山道を抜け、420段の石段を踏破したした者だけが相対する権利を得ます。僕が訪問したのは早朝5時だったため、いざ登り始めるまでは気持ちのいい朝の散歩だなんて考えていたわけですが、これがまた結構厳しい。現地は20℃を切っているような少し肌寒いくらいの気候でしたが、容赦なく汗が流れてくる。ひぃ、ひぃ。これはあれだ、まだ社会人なりたてかそこらの頃に一人旅で登った、香川のこんぴらさん並みだ。見下ろせば絶景!というわけでもなく、ただただ鬱蒼とした森が続いているのも実につらい。クモの巣に引っかかったりしながら、あーもうクソー!とか一人でブツブツ言いながら登っていきます。


ようやくゴールが見えてきました。まだ石徹白のスギを見たわけでもないのに、既にちょっとした達成感があります。もし見知らぬ同好の徒がいたらハイタッチでもかましていたかもしれませんが、流石にこんな時間から訪れる奴は自分くらいしかいないようです。


そしてその先で静かに佇むのは、石徹白のスギ。
天然記念物の最上位、国の特別天然記念物に指定されています。
対面した瞬間にこれまでの高揚感、疲労で昂ぶっていた心がみるみる静まりかえっていくのが分かりました。ああ、なんて暖かい巨樹なんだろう。ふふふ、ここでそんなに騒がしくするものじゃないよ…と、まるでゆっくりゆっくり諭されているかのような。こちらとしてもまずは興奮を抑え、静かに深呼吸してから臨みたくなるのです。


周辺のスギの木と比べればその異形さがお分かり頂けるかと思います。前情報としてスギだと知っているためスギの巨樹として見ることが出来ますが、果たして前情報無しにやってきて案内板もなかったら初見でスギの巨樹だと分かるかどうか。推定樹齢1,800年。1,800年前というと日本は弥生時代ですよ。日本史の授業でも序盤中の序盤、もはや想像の域を超えています。

白山開山の祖、泰澄さんが突き刺したスギの杖が成長したものだとされる説もあるそうですが、この説に沿って考えてみると杖を突き刺したのが西暦700年頃、樹齢1,300年といったところでしょうか。巨樹巡りを始めて多くの樹齢1,000年選手を見てきましたが1,300年ほどでこのようなスギを超越した姿になるとはにわかに考えられず、個人的には1,800年説の方が近いんじゃないかなという気が致します。しかしながら全国各地に伝わるお箸や杖のぶっ刺し伝説ですが、この石徹白のスギに関しては立ち姿を見てしまうとまんざらとも思えない、妙なリアリティすら感じました。


表面は白く、これがまたスギらしからぬ風格の一因と言えるでしょう。
経年によって表皮が枯れ、白骨化が進んでいるため表面が白っぽくなっています。


当然のことながら樹勢は旺盛とは言えず、その姿から強い生命観を感じられることはありません。
スギを飾り付けるように見える薄い緑もスギの枝葉ではなく、着生した他種の植物によるものです。


通常巨樹が着生植物に乗っ取られる様を見ると痛々しい印象を受けるのですが、実のところ今回あまりそのような印象を受けません。まるでこの大地の母であるかのように、新しい生命たちを寛容に受け入れているように見受けられました。人間でいうところの即身仏。とうの昔にスギであることを超越し、この白山の神様としてただ静かに世界を見守っている。そんな風格を感じます。


ただし一個の生命としては終わってしまった巨樹なのかというとそんなこともなく、ところどころ覗くスギの新芽から確かな生命が感じられます。わずかな緑から取り入れた栄養を少しずつ、少しずつ咀嚼する。とにかく静謐という言葉の似合う、物事を雄弁には語らない巨樹の神様。


裏側から眺めてみました。うん。やっぱり着生植物から悲痛さが感じられない。


本当にたくさんの写真を撮りました。何枚載せても紹介し足りないんですよ。
でも、この辺で止めておきます。ぜひ実物を見て、そこから何かを感じ取って頂きたいですね。


このすぐ隣りにベンチがありまして、本当はそこで朝食を食べようとパンとコーヒーを持って来たんですよ。しかしですね…最後の最後にこんな事を書くのは気が引けますが、ゆっくり休憩したいなら真夏は外した方がいいでしょう。アブがね、とんでもないんですよ。こんな数見たことないってくらい群がってくる。これでも一応、全身に大量の虫除けスプレーを噴射してきたんですけどね。奴らそんなことお構いなしに襲撃してくるので、もったいないけれど朝食は車に戻って摂ることにしました。

幹は折れ欠損し、更には白骨化している。
それに樹高や幹周の数値だって、決して特筆するほど目立つわけじゃありません。
しかしこの巨樹は凄い。まさに会っておくべき巨樹の筆頭だと思います。僕だって既に再訪したくなっているもの。また行きたいなあ。

石徹白(いとしろ)のスギ
国指定特別天然記念物・新日本名木100選
樹齢 約1,800年
樹高 約25m
幹周り 約13m

コメント:4

18-08-10 (Fri) 22:24

この、行った者ならわかる感。嬉しいです。笑
苦行のような石段の終わりが見えてダッシュするも、いざ大杉が見えると、立ち止まってしまう。
とうとう辿り着いたぜええ! すげええ! とか興奮するはずが、静かに、自分の佇まいを整えようとしてしまうような。
物事を雄弁には語らない巨樹の神様……ほんと、そういう存在に今自分は相対しているんだなあという感慨が湧いたのを覚えています。
こんな大杉が、白山の神にまみえるための参拝登山の入り口だという、一体白山信仰とはどれほどすごいのか……と、それはやはり神界に踏み入ることなのだなと畏れ多く思いました。
まあ、今となっては、登山としてもいけるようですが……ここから25キロ……まさに、人間界の出口に立つ境界樹ですね。

夏の姿は、裏側の杉の葉が濃い緑色で目立ち、この大杉の生命感を表してくれてホッとしますね。
などと言うけど、人間尺度では大昔と言っていい時代からずっと白い杉と呼ばれていたと言うし……神秘を感じますね。
アブの襲撃だけは残念でした。to-fuさんのこと、可能だったならきっとじっくり時間をかけてこの姿を記憶に焼き付けたと思います。
すぐになるのか、はたまたずっと先なのかわかりませんが、もう一度必ず訪ねてこようと決めています。
時が空いても、きっとこの姿と同じ静かな感じで、大杉が迎えてくれると思っています。

to-fu 18-08-12 (Sun) 15:55

> 狛さん
そうそう。登り切っていよいよか!と興奮しているところにスッと現れるんですよね。
ああ、こういうテンションで会うべき相手じゃないなと、自然と呼吸を整えていました。
僕なんか石徹白の駐車場に着いた時点ですげえところに来ちゃったなあと思ったんですけど、登山の人からするとあの杉ですらスタート地点に過ぎないんですよね。軟弱な自分には信じられませんが、そこに計り知れない魅力があるのだろうということだけは分かります。

あの白さ、正直1,800年というのはどうなんだろう。実のところもっと行ってるんじゃないかな、なんて思ったりするんですが、細かい樹齢なんてどうでもいいのかもしれませんね。本当にあの神秘さを見て体感出来るだけで十分だと思いますし、たかだか100年程度しか生きられない人間という矮小な生物には神秘さを体感する以上のことは出来ないのかもしれません。

昔の写真を見ていると15年ほど前までは全体を支柱で支えていたそうです。姿勢が安定してきたので支柱を外したのだとか。もしかすると樹勢も安定してきているのかもしれませんね。石徹白には絶対再訪することになると思いますが、あのままの姿で迎えてもらえることを願っています。

RYO-JI 18-08-13 (Mon) 21:07

to-fuさん『巨樹界のシンボル、巨樹の神様』
狛さん『行った者ならわかる感』

ムムム・・・焦るじゃないですか!
なんだろう、この置いて行かれた感は(汗)。
私もすぐにでも見ておかないと・・・と居ても立っても居られないじゃないですか!!

いや、でもね、自分は美味しいものは最後まで取っておくタイプなんですよ。
だからいつか訪れるその時までの楽しみとしておきます(←負け惜しみ)。

to-fu 18-08-15 (Wed) 21:38

> RYO-JIさん
すぐに行っちゃいましょう 笑
いえ…本当にアブがヒッチコックの鳥の如くたかってくるので、涼しくなってからがいいです絶対。
冗談は抜きにして、RYO-JIさんならきっと気に入ってもらえる巨樹だと思いますよ。奈良の「高井の千本杉」も凄くて度肝を抜かれましたが、その対極のタイプのように感じます。

あの時の会談で出てきた「杉の大杉」なんかも間違いなくそのシンボルの一つですよね。
次回の集合場所は四国、もちろんRYO-JIさんも強制参加な方向で話が進んでいますので、その際はまたよろしくお願い致します。

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