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茨城県かすみがうら市 出島のシイ


SONY α7II / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

茨城県かすみがうら市の「出島のシイ」。その存在自体は以前から知っていて、今年の年始頃にはここを目指して車を走らせたこともありました。(残念ながら時間が全く足りず、この手前にあった「空禅寺のイタジイ」を見てトンボ返りしたわけですが。)どうも関西圏はシイの巨樹の影が薄いと言いますか、心底これは見て良かった!と思える巨樹がなかなか見当たらないような気がします。普段スギやカツラばかり見ているので、他所の地に来たときくらい非日常的な巨樹に会ってみたくなるではありませんか。


「出島のシイ」は長福寺の境内、山門の脇に静かに立っていました。度重なる火災により現在は無人のお寺となっているようなので、車を境内に停めさせていただきます。


山門の側には案内板が設置されています。シイの巨樹の説明よりも長福寺の歴史が目を引きました。かつては十万石を誇る荘厳な寺院だったそうですが、今では寡黙な老人のようなシイがぽつんと佇むのみ。この細やかな造りの山門を見るだけでも当時の勢力が目に浮かぶようです。


かつて江戸時代に四国八十八箇所巡りや坂東三十三箇所巡りのような、数多く巡るほどにご利益があるとする所謂「多数作善」が流行した際に、当時の長福寺住職である正応上人が四国から持ち帰った砂や土、御札をシイの根元に埋め、弘法大師さんを模した88体の石像を周囲に並べて「このシイの木の周りを一周するだけで四国でお遍路さんするのと同じだけご利益があるぞ。」と伝えたとされています。

これと似たようなものは恐らく全国的に伝えられているのではないでしょうか。京都でも仁和寺裏手のエリアに「成就山八十八ヵ所霊場巡り」なるものが存在します。自然を満喫しながら山道をゆっくり歩いて88箇所の小さなお堂を回ると2~3時間でお遍路さんと同じご利益が得られるという、飽き性な僕みたいな人間には有難い代物なんですが、この出島のシイはそれより凄い。なんたって巨樹のまわりを一周するだけで済んでしまうんですから。

いえ、冗談は抜きにして、体の不自由な方やお年寄りにお遍路さんは実行困難ですからね。今でも大層重宝されているのだと思います。


88体の石像全てがシイの巨樹を見つめています。この光景が神秘的でとても暖かく、どちらかというと外観がちょっとグロいシイの木なのに神聖なもののように見えてきます。いやホントこの光景はぜひ見てみたかったんですよ。感無量です。


根回りはなかなかの迫力。触手を伸ばす巨大生物のようです。


幹周7m。それだけでも充分立派な巨樹ですが、測定ポイントの1.3mより上の辺りで一気に幹が膨れ上がっているため、数値以上の迫力を感じます。


樹勢は旺盛。先程のお寺の山門の写真の左側に写っているのがこの巨樹ですが、枝葉の量は申し分無し。木陰に入るとそよ風がひんやり感じるくらい濃密に葉が茂っており、写真撮影のためには大幅にISOを上げざるを得ませんでした。ちなみに薄暗いので蚊の量も尋常ではなく、撮影中は常に周囲に数えきれない(数えたくもない)くらいの蚊がお供に付いてきたくらいです。

葉が覆い茂りこれだけ健康そうに見えるスダジイですが、市のサイトによると実は平成10年頃にはスダジイバチやカミキリムシの食害で瀕死の状態だったそうです。延命対策事業を講じてここまで回復することが出来たのだとか。


欠損部分はウレタンでコーティングされていました。
無人のお寺とはいえ、巨樹はしっかり保護されているように見受けられます。


そう。本当に手入れが行き届いてるんですよね。この光景だけ見るとずっと無人の状態だとはとても思えません。しかし本当に静かなんです。聞こえてくるのはセミの合唱のみ。かつては栄華を誇った寺院も虚しいものです。この光景を眺めていると、かの有名な「夏草や 兵どもが 夢の跡」の句が思い浮かびました。人生って儚いよなあ…なんて、何だか何かを悟ったような気分になってくるから不思議です。まあ実際には悟るどころか暑いなあ、早く蚊がいなくならねえかな、くらいしか考えてなかったと思いますが。真夏も良いですがO型の人間としては蚊的な問題もあって、今くらいの涼しい時期に訪れるのが一番のおすすめかもしれません。哀愁もより強まる。


巨樹そのものも良い木でしたが、何よりお寺を含めた全体の雰囲気が良いんですよね。本当に気に入りました。


もっと早い段階でこれくらい素晴らしいシイに出会えていたら、自分の巨樹巡りの基準も大きく変わっていたような気がします。というか実際にこの夏数本のシイと出会ったことで自分の中でシイの地位が大きく向上しました。今までは大きさもそこまでじゃないし後回しだな…くらいに考えていたものですが。なんて勿体ないことをしてたんだろう。

2018/8/10訪問
「出島のシイ」
茨城県指定天然記念物
樹齢 推定700年
樹高 15m
幹周り 7m

コメント:4

18-11-03 (Sat) 11:06

地元も捨てたもんじゃないと見直させてくれた巨樹です。笑
波崎の大タブの次に見に行った、2本目だったんじゃなかったかなと。
自分の記事も見直してみましたが、もうあれから3年半も経ったようです……。
カメラも新しくなったし、そろそろ再訪し、茨城を代表する椎巨樹のひとつとしていい形で残しておきたいです。
お寺の環境、やはり夏場は生を感じるところがあって良いですね。
ここの風景は暮れかけの夕日の中で見るもんじゃない……「夢の跡」を超えて、僕の頭には平家物語の冒頭が琵琶の音とともに響いて来ました。

椎の巨樹の魅力に気づくのは、どうしても杉など他樹種に遅れてという感じがしますね。
大きさ自体では敵わないというところもあり、奇怪で影を作りやすい性質もあり、俗っぽく「パワーもらえる!」とかいう代物でもないですしね。
しかし、そういう存在であるがゆえに、途方もない年月を生きるということがどういうことなのかを見せつけてくれると思っています。

RYO-JI 18-11-03 (Sat) 22:22

存在感充分のシイですね。
森の中、単体でいたならばコワイと感じるレベルの姿形でしょう。
でも88体の石像に囲まれている、そして保護されているだなんて幸せなシイだと思います。
長い間、石像とともに人々の願いを聞いてくれているんだと思うと、有難味がより増しますね。
無人のお寺とはいえ、そこまでキレイに掃除されているのは珍しいですね。
たくさんのお札が貼ってあって今も訪れる人が多いんでしょうね、きっと。

to-fu 18-11-04 (Sun) 20:28

> 狛さん
本当にこれは素晴らしい巨樹でしたよ。
波崎の大タブにこの出島のシイ、県北まで足を伸ばせばその他にも名だたる巨樹が待ち受ける。
茨城はなかなかの巨樹大国だと思います。京都はごく少数のスギが目立つくらいで本当にイマイチなんですよねえ…
平家物語、分かりますとも。栄枯盛衰、盛者必衰。そよ風が世の無情さを囁きかけてくるような、そんな空気でした。

シイはそうですね。巨樹に興味がない人に一体この木の何が凄いんだ?と問われたら説明しにくい巨樹だと思いますし。
その点巨大なスギやケヤキ、クスノキなんかは写真を見せてどうよ!ってだけでも凄さが伝わってしまいますからね。
この陰の気みたいなものがシイを地味にする要因でもあり、惹きつけられる魅力でもあるんでしょうねえ。

to-fu 18-11-04 (Sun) 20:33

> RYO-JIさん
これなんか突然山の中で現れたら一人ではちょっと近寄りたくないですよね。
幸せなシイ。全く以て同感です。石像や地蔵で囲むというのは関東特有の信仰の形なんでしょうかね。狛さんご近所の「波崎の大タブ」なんかも石像に見守られる巨樹なんですが、こちらではそういう類のものはあまり見かけませんよね。こういうのを見ると巨樹が大事にされているのが伝わってきて、我々のような人間からすると嬉しくなってしまいますね。境内には僕が付けた以外にもつい最近来た車のタイヤと思われる跡がいくつも残っていて、参拝目当てなのか巨樹目当てなのかは分かりませんがそれなりの来訪者はあるように見えました。

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