- 2019-08-26 (Mon) 13:35
- TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD | クスノキ | 埼玉県 | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別)
SONY α7III / TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD
先日の巨樹巡りでは最終日、ほぼ終盤に訪れた巨樹。本来であれば順を追ってその時の感情など思い起こしながら書き進めていきたいのですが、訳あってこの巨樹だけは先に記事にしてしまおうと思います。このクスへ至るまでには当日早朝に群馬県高崎市のホテルを出発し、埼玉県ときがわ町の「萩日吉神社の児持杉」と「西平の大カヤ」を経て…という大冒険があったわけですが、それについてはまたの機会に致しましょう。それにしても…これだけ離れていても一発で分かりますね。あれが「上谷(かみやつ)の大クス」に違いない。とてつもなく巨大なクスであることは明らかで、否応なしに鼓動が高鳴ります。
前日まで長野県にいた上に群馬県入りしてからは冷房をガンガンかけたホテルに引き篭もっていた軟弱なワタクシは、関東地方の容赦ない暑さと「西平の大カヤ」の地獄のようなトレッキングで既にノックアウト直前でしたが、ここは駐車スペース目の前に巨樹が待つという軟弱者に優しい立地。Google Mapで下調べしたかぎりでは何やら人を寄せ付けまいとする林道の先にポツンとクスノキが立っており、はてさてここまで辿り着けるのだろうか…なんて不安しかありませんでしたが、到達難易度は全く高くありません。途中の林道にしても車がすれ違えないほど狭いところは無かったように思います。
余談ですが車の交通量がほぼゼロなこともあって、どうやらこの辺りの自転車乗りにとって絶好のサイクリング・スポットであるようです。この日も平日朝早くにもかかわらず多くの集団を見かけました。命知らずなロード乗りがどうせ対向車なんて来ないだろうと車道のど真ん中を駆け下りてくる可能性がありますので、その点だけはご注意を。(自転車乗りだからこそ分かりますが、残念ながら自転車乗りの多くが交通弱者ぶったマナー最悪の交通加害者です。)
興奮を抑えてクスの麓までやってきました。観賞用の通路が設置されていて、コストをかけた観光スポットとして守られている様子が窺えます。それにしても、これは凄い!関東地方というとクスの巨樹不毛地帯の印象が強かったので、まさかここまでのものが見られるとは思いもしませんでした。関東でクスの巨樹なんて珍しいなとチェックだけはしていたものの、これは最早関東にしては大きいなんていうレベルではなく、全国のランカーたちと並べても遜色ない立派で健康的な立ち姿です。しかし何やら様子がおかしい。あれ?左端の大枝、折れちゃってない?
おおう…大枝が根本から折れてしまっているではありませんか。いやこれ大枝というより支幹クラスですよ?余裕でそこらのクスノキくらいの太さがあります。傷痕も生々しく、ここ最近倒壊してしまったことは明らかです。
こちらに簡単に原因が書かれていました。枯損により一部倒壊。それもなんと8月5日…私が訪問したのが8月9日なので、本当につい数日前に倒壊してしまった模様。
それにしても枯損だなんて…現地で見る限り、どこからどう見ても若々しく健康そうなクスノキでしたが。葉の付きもよく青々とした樹冠を誇るこのクスが弱っているだなんて到底信じられません。人間にも言えることですが、本当に健康かどうかなんて見た目では分からないものです。巨樹も生き物である、とは私もよく書いている言い回しですが、こういう事象を目の当たりにすると全くもって痛感させられます。植物だって生きている。今そこに在るというのは決して当たり前のことでは無いんだなと。いつか会いに行こう…では手遅れになるかもしれない。本当に会いたいのなら、無理してでも会えるうちに会っておくことが大事ですね。この巨樹に関しても、本当にあと数日早く来ていたら!と悔やんでも悔やみきれません。まあ京都に住む私にとっては途方もないくらいの遠方なので、このタイミングで出会えたこと自体が奇跡だとも言えますが。
下がれるだけ下がって撮影してみるも、全然入り切らない。本当に素晴らしいクスの巨樹です。まだ倒壊から間もないこともあって欠損してしまった大枝の傷痕がやけに目立ちます。治療準備中ということでしたが今では既に治療が始まっているのでしょうか。これ以上の被害が出ないことを願っています。
しかし、傷痕から目を逸らしてしまえば本当に健康的なクスノキなんですよねえ。
それぞれの大枝が太く、実に逞しい。山奥で着生植物をものともせずに佇むその力強い立ち姿は1,000年以上と伝えられる樹齢よりも遥かに若々しく見えます。根本を見ても株立ちの合体樹ではなさそうだし、15mという幹周からしても樹齢にそう違和感を感じない。しかしこの健康的な樹皮を見ているとまだ樹齢600~700年くらいなのでは?とも感じさせられます。
昭和63年に当時の環境庁が実施した「みどりの国勢調査」によると全国巨木ランキング堂々の第16位、埼玉県ではナンバーワンの巨樹に認定されました。全国のランカークラスに引けを取らないと感じましたが、実際に全国クラスだったとは。案内板にも書かれているとおりクスの巨樹というと温暖な西日本に集中しているイメージですが、まさか関東の山奥にこんなクスが存在していたなんて!
大きな体をしていますが繊細な植物…まさにそのとおり欠損してしまったわけですが、樹木医による治療の過程で見た目からは信じられないくらいに樹勢が悪い、などということになると今後この鑑賞スペースが立入禁止になる可能性だってゼロではありません。大枝が欠損して魅力が損なわれたとも考えられますが、むしろこの空間に立ち入れなくなることを想像すると、今行っておきべき巨樹!なのかもしれません。辺りが一望できて実に気持ちのいい空間なんですよ、ここ。是非ともこの場所だけは閉鎖せずに治療をする方向で進めていただきたいものです。
接近して細部を観察するのも良いですが、これだけスケールの大きな巨樹ともなるとやはり少し離れて全景をドカーンと眺める方がその圧倒的サイズ感を把握しやすいというもの。ええ、もちろん管理者の方は分かっていますとも。腰を下ろしてじっくり眺められるように、クスの下も開けた鑑賞スペースとして整備されています。木製の自転車スタンドまで設置してくれているのは嬉しい限り。
おおお…これは凄い迫力!
どれくらい大きいかというと根本にいるワタクシ、分かりますかね?ナントカのような…だの、まるでナニナニ…だのといった無粋な形容なんて要らないでしょう。この1枚で上谷の大クスの立派さは伝わるはず。青空に巨大なクスの樹冠が映えますね。もし時間が許すなら、何時間だって眺めていたいくらい。
実際ここに腰掛けて、もう一度上の鑑賞スペースに行ってみて…をエンドレスで繰り返し、2時間近くも滞在してしまいました。この周辺には「西平の大カヤ」などなど見応えある巨樹が目白押しですが、このクスノキには是非ともその行程の最後に訪れて下さい。ここに腰を落ち着けてハードな道中を思い返す。きっと至福の時間であろうと思います。
関東を代表する巨樹のうちの一つ。といっても過言ではないでしょう。わざわざ遠方からこのクスを見るために埼玉県を訪問したとしてもきっと後悔しないはず。樹勢がうまく回復すればいいですが、それでも実際どうなるか分からないのが生き物ですからね。会いに行くなら今、です。私だってもう一度会いに行きたい。
2019/8/9訪問
「上谷(かみやつ)の大クス」
埼玉県指定天然記念物
樹齢 1,000年以上
樹高 30m
幹周り 15m
埼玉県入間郡越生町大字上谷634 付近
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コメント:4
- 狛 19-08-26 (Mon) 20:13
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そう……ときがわ町あたり、自転車乗りが我が物顔ですよね。
「児持ち杉」の脇の急坂をノーブレーキで直滑降してきて、ただ路肩に停車しただけの車に罵声を浴びせているくそ野郎がいましたが……気を付けないと轢かれますよね。
で、なるほど~、話に聞く「上谷の大クス」、こういう感じなんですね。
関東のこんな山奥にありながら、九州西国勢が占めるランキングに割り込んでいくとは、すごい猛者です。
僕はときがわ町の巨樹たちを追って山に迷い込んで日が暮れてしまったのですが、次、あっちの方面に行くことがあれば、ぜひ本命にしたい樹です。
周囲も、to-fuさんが長居したのもわかるような、いい雰囲気ですね。
これだけの樹になると、この距離感でゆっくり眺められることがうれしくなります。
しかしほんと、いつまでも健在な巨樹など存在しないのですね。
人間でいえば腕が一本落ちたくらいの大怪我。
それでも生きて行けそうなのは凄いと思いつつも、何か大きな災害に遭ったわけでもないのにこうして大枝がもげるというのは、内部ではやはり相応の理由があったのでしょうね。
我々と形が違うかもしれないけど、やはり巨樹にも寿命というものがある。
九州の千年クラスの大クスの大半がそうでしたが、こうした傷跡を見せながらもまだまだ豪快に生きて行く……そういう「これから」がこのクスにあることを切に願います。
関東でこの規模のクスなんて、本当に貴重です。 - RYO-JI 19-08-26 (Mon) 22:57
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一部のマナーの悪いローディには辟易しますね。
自分の命はもちろん、他人をも危険にさらしているということを理解できていないんでしょう。
私もそうならないよう気を付けて乗っています。
そして出ましたね、この大クス!
関西でもここまでのはなかなかないですが、そうですか、全国16位ですか!!
そりゃあもう貴重な存在。
ツイッターでこの枯損を知ったくらいですから、いかに有名であるかがよくわかります。
普通なら巨樹の枝が折れたとかいう情報なんて地元の人くらいしか知らないでしょうし。
写真を拝見するにとても健康そうなクスに見えますが、それでもこんなことになるんですねぇ。
内部が侵されていたのかなぁと心配になります、他の枝や幹が同じようなことにならないかと。
ぜひ手厚い保護を期待したいですね!
周囲の環境もとても良さそうなので、長く人目を楽しませてくれる偉大な存在であって欲しいものです。 - to-fu 19-08-27 (Tue) 13:21
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> 狛さん
自転車はとにかく現行法が追い付いてないんですよ。道交法上は一般道を普通車と同じ制限速度で走行できるんです。馬鹿げてるでしょう?
罵声、怒声、信号無視に無理なすり抜け…いやホント、体感で自転車乗りの8割くらいはくそ野郎ですよ。
どうせ轢かれても相手の過失だ、くらいに考えてるんでしょうねえ。罪の過失がどうであろうと高確率で死ぬのは自分なのに。本当に馬鹿だ。
上谷の大クスは行く価値ありますよ!
もっと薄暗い山奥にポツンと立っているイメージだったので良い意味で裏切られました。
あの「壇の大クス」なんかも10年ほど前に何の前触れもなく突然葉が全て落ちてしまったと言いますし、
我々が受ける印象がそのまま巨樹の健康状態を現わしているとは限らないんでしょうね。
本当に内部がどうなっているかだけが心配なので、この立派な姿を誇っているうちに是非とも狛さんにも
見ていただきたい巨樹です。それこそ壇の大クスみたいに樹勢を取り戻してくれるといいのですが。 - to-fu 19-08-27 (Tue) 13:35
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> RYO-JIさん
何なんでしょうねえ。経験上、いわゆる機材スポーツにはモラルの低い人間が集まりやすい傾向があるように感じます。
自転車に釣り、あとはバイクなんかも。内側から見ていると本当にろくでもない奴ばかりで悲しくなりますよね。
きっとくそ野郎は死ぬまでくそ野郎なので他人には期待せず、せめて自分だけは…と心掛けて楽しみたいものです。
それにしてもまさかRYO-JIさんがこのクスをご存じだとは…さらに枯損についても既にご存知と知って本当に驚きました。
いやー、本当に傷跡さえ見ないようにしたら健康優良児そのものなんですよね。え?まさかあの人が?みたいな。
RYO-JIさんもなかなか行く機会のない地域(普通に生きてたらきっと死ぬまで行きませんよね 笑)だと思いますが、
もし…もし万が一近くを通られることがあれば、是非ともこのクスに立ち寄っていただきたいです。
絶対にRYO-JIさんにも気に入ってもらえるだろうと思うんですよねえ…
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