- 2019-11-30 (Sat) 20:08
- TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD | シイ | 兵庫県 | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別)
SONY α7III / TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD
岡山県で法然サンにまつわるイチョウ2本を堪能し、兵庫県が誇るイチョウの名木へと向かうことに。そこへ至るまでのルートは2つ。さて困りました。一方には兵庫県ナンバー2のカヤの巨樹が控えており、もう一方には近畿圏では比較的珍しいスダジイの巨樹が待ち構えているという…まあ無理すれば2本とも回りきれなくもない位置関係にはあたるのですが、この日はイチョウに集中したいと考えていたので今回このスダジイルートを選択したのでした。カヤはつい最近素晴らしいものを見たばかりだったこともあって、しばらく見ていないスダジイを見たかったんです。たぶんスダジイはお正月に狛さんに案内していただいて以来になるのではないかと。
この右側の山道を抜けると岡山県。かの宮本武蔵生誕の地、美作市へと抜ける道が続いています。今回私はそちらからやって来たわけですがスダジイの目の前には駐車スペースが無かったので少し兵庫県側まで下り、この道路左側の路肩スペースに駐車させてもらうことにしました。
まだスダジイの姿こそ見えませんがそれらしい案内板があることは確認済み。
早く巨樹の元へ…逸る気持ちを抑え、まずは解説に目を通します。どこそこの高僧が植えたであるとか伝承の類は存在しない木ですが、スダジイの巨樹自体この辺りでは珍しいためか県の天然記念物に指定されています。
正直に申し上げると…そこまで期待していなかったのです。数値上はそこまで目立った巨樹ではない。そして失礼ながら先人方のサイトで写真を見てもそこまで強く惹かれるものは感じられなかった。ところが実物が放つオーラは数値以上。これはスダジイという樹種に少なからず見られる傾向のような気もしますが、数値では計り知れない「これは想像より遥かに雰囲気あるなあ…」という感嘆をもって相対することになるのでした。
先の解説にあったとおり樹高は16m。ええ、巨樹として見る以前に樹木の高さとしてもそこまで目立った大きさではありません。が、横に大きく枝を伸ばしているため、まるで森のヌシの巨大生物がぐわっと腕を伸ばしてこちらを捕縛しようとしているかのような迫力があります。暖かい巨樹、朗らかな巨樹…そういった類のものでは決してない。背筋がゾクゾク来るかのような如何にもスダジイらしい「陰」のオーラに当てられ、そうだこれが見たかったのだ、感じたかったのだと嬉しくなってしまうのでした。
解説板にあったように背後は集落を見下ろすような形で墓地になっていました。何らかの記念樹であったのか、はたまた当時の有力者の墓標として植えられたものなのか。漠然と植えられたものではなく何らかの意図があってこの地に植えられたことは間違い無さそうです。
大きく二股に分かれ、触手が絡み合うようにウネウネと成長する幹。こちらも如何にもスダジイらしいもの。クスやスギのような圧倒的サイズ感で度肝を抜く巨樹の素晴らしさは語るまでもありませんが、だからといってそればかりでは感性が胃もたれしてしまうわけです。別にこのシイがスケールの小さな巨樹だと言いたいわけではありませんけれど、地域の代表格を張るような巨樹を回る中でプランの中にこういった渋みのある巨樹を組み入れていくと、結果的に一日がグッと引き締まるように思います。
この幹のうねりとか背筋がゾゾゾッと来ましたね。このシイの名称にもなっていますが、まさに古木!といった重みが感じられます。
根本にも小さな解説板が。こちらの記載はまだ佐用町指定天然記念物となっています。記載されている内容は入口の新しいものとほぼ同じですが、このスダジイが皆木さんという方の個人所有物だという情報はこちらにしか書かれていないものです。
中心の大枝(主幹?)こそ欠損しているものの見ていて不安になるような痛々しさは感じられませんでした。
多くの着生植物が見られますが、自らのドングリもそれらと同様に自身の枝を苗床にして成長している模様。芽を出して小さなスダジイの苗木へと成長しているものがいくつも確認できます。(ズドンと空高く伸びているのはブナでしょうか。これは切除してしまった方が良さそうな気がします…。)
数百年という人間には決して過ごすことのできない年月が刻んだ風格。その「顔つき」にしたって巨樹一本一本で異なるわけで。彼らの素晴らしさ、偉大さを写真に収めてやろうなんて考え自体がおこがましいということは理解しつつ、それでも何とかやってやろうと試行錯誤するのはやはり楽しいものです。
近畿圏では比較的希少なスダジイの巨樹。全国区で見ると目立った巨樹ではないかもしれませんが、それでもスダジイ本来の魅力が充分に詰まった良木だったというのが私の感想。ええ、そりゃもう一方のカヤだって気になりますけど見に行って良かったですよ。佐用町といったら夏のヒマワリ、そして秋の大イチョウですが、ちょっと時間が余ったならぜひともこちらのスダジイにも寄ってみてもらいたいものです。まあスダジイという樹種自体玄人好みというか多少木に興味のある方でないと楽しめないかもしれませんが 笑
2019/11/14訪問
「作用中山のスダジイの古木」
兵庫県指定天然記念物
樹齢 約400年
樹高 16m
幹周り 6.3m
兵庫県佐用郡佐用町中山537-1
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コメント:4
- RYO-JI 19-12-01 (Sun) 21:43
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スダジイらしい「陰」のオーラが見たかった・・・あぁ、もうその道のプロですね(笑)。
いやいや、冗談ではなく本当にこういうのに魅力を感じるようになるともう一般人ではありませんよ。
スタジイは完全に陰で見ていて清々しいとか気持ちが温かくなるのとは対極の存在ですが、
あの怖さ、湿度を感じてしまうと忘れられないくらい深い印象を与えてくれますよね。
何度も見たい樹ではないんですが、こういうのを巨樹巡りの中にいれると確かに引き締まりそうです。
しかしなんとも墓地が似合う樹ですね。
時間帯によっては近付くのを躊躇ってしまいそうですが、広がった枝振りが見事で相当見応えありそうです。
関西圏には珍しいですし、渋くていい巨樹ですよね。
私のリストからは完全に漏れていました、いや、ありがとうございます。 - 狛 19-12-02 (Mon) 9:31
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玄人好みには違いない……と思いつつ、クスやスギを連続で見続けると、確かに胃もたれ感があるんですよね。
正しい感性で対峙してないなと思ってしまうし、今一度スダジイやカシで長く生きることのすさまじさを思い出しておきたい……なんて考えもやっぱり玄人ですね。笑
幹の朽ち具合などを見たら、樹勢がいいとかどうして言える? とツッコミたくなりますが、全体像を見ると、あ、結構しっかりしてる……となる。
自分の種子が自分の体を苗床にして成長してしまうのも、もう当然のことなのでしょう。いつか大破して崩れ落ちたら、それらが何事もなかったのように生きて行く。
この、死の反対側がすぐ生になってる感じがたまりません。
お墓など、周囲の雰囲気も含めて、この樹なら、関東勢ともいい勝負をするんじゃないでしょうか。迫力ありますね。 - to-fu 19-12-02 (Mon) 11:48
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> RYO-JIさん
初期の頃はとにかくとんでもない大物を見てみたい、撮ってみたいでしたがそれだけでもなくなってきましたね。
目が肥えるというのとはちょっと違うような気もしますが、それなりに巨樹との向き合い方も変わってきたような気がします。
やっぱり木が人工物ではなくイキモノだというのが良いのだと思います。一期一会の精神があります。
スダジイは本当に少ないですよね。かつての戦乱で焼け落ちてしまったんでしょうか。
個人的なネガティブ度数(謎指数)で言うとカシほどハードルが高くないのでたまに会いに行きたくなるんですが、
身近なところに全く生えていないのが残念です。もっと写真も撮ってみたいんですけどね。 - to-fu 19-12-02 (Mon) 11:54
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> 狛さん
大きすぎる巨樹も見続けているとそれが基準になってしまうので、あまり続けて見すぎるとわけが分からなくなってきますよね。
そう、正しい感性で対峙していない。まさにそんな感じで、意識がふわふわしてきちゃいます。
このスダジイは幹だけ見ると全然樹勢がよくありませんよね 笑
でも遠目に見るとたしかにわっさわっさと葉も茂っていて、ああそれなりに元気なんだなと。
自分の中の期待値がそれほど高くなかったこともあって良い意味で興奮できた巨樹でしたが、やっぱりそれでもシイに関しては
関東が羨ましいですよ。超常的にデカくはならないけど独特のオーラがある樹種の筆頭だと思います。
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