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石川県白山市 瀬戸の夜泣きイチョウ


SONY α7RIII / SONY FE 24mm F1.4 GM SEL24F14GM

石川県の中でも最も山深い地域ではないでしょうか。国道157号線を逸れて国道360号線、岐阜県白川村方面へ。白山白川郷ホワイトロードへと至る道沿いに、非常に目を引くイチョウの巨樹が佇んでいます。流石は霊峰白山のお膝元。訪問したのはもう6月も後半だというのに、ようやく春が訪れたかというようなキリッとした冷気が漂っていました。


県指定天然記念物「瀬戸の夜泣きイチョウ」。その昔、このイチョウに棲み着いた天狗が夜になると大きな声で泣いたという逸話から夜泣きイチョウなどと呼ばれています。何ともまあ傍迷惑な天狗さんですが、天狗といえば堂々としている、山の神…のような威厳あるイメージで語られることが多いので、ちょっと親近感が湧いたりもしますね。そんな天狗がいたなら、酒でも片手にちょっと悩みを聞いてみたいものです。


天狗伝説抜きにしても堂々とした、実に立派なイチョウです。樹高35m、幹周9.8mは県内最大級のもの。県内最大は恐らく七尾市の「伊影山神社のイチョウ」で、私はまだ未訪問ながらもそちらには少し見劣りするのではないか…などと想像していたりもするのですが、それにしても立派な巨樹であることは間違いない。いやいや、これは遠くからでも目立ちますよ。テンション上がります。


標高の高い豪雪地帯でここまで巨大に成長した事例というのは学術的にも貴重であるそうで、それが天然記念物指定の一因になっています。別に因縁を付ける気は毛頭ないんですけど、どうなんでしょうね。標高が高いところでもイチョウの巨樹はそれなりに見るし、豪雪地帯の青森県には日本一巨大なイチョウの巨樹がある…まあ標高と豪雪の合わせ技となると、確かにちょっと思い浮かびませんけれども。

これは何の根拠もない私の想像ですが、元々日本に自生していたわけではなく大陸から連れて来られたとされるイチョウですから、結局のところこれ以上過酷な地域でイチョウが育てられる事例がなかった、というだけなんじゃないですかねえ。何となく、イチョウはもっと標高が高くて雪が降るところでも平気で育ってしまいそうな気がします。とんでもなくタフですから。


根本で二股に分かれていますが合体樹の類ではないと思われます。本来であれば根本を埋め尽くすであろうひこばえもとても丁寧に刈り込まれていました。ひょろ長く伸びた数本のひこばえはもしものときの二世樹なのか、敢えて残されているようにも見えます。


反対側から。これです、これ。ひょろっと伸びたひこばえ。


イチョウらしい、とでも言いますか非常に健康的な巨樹ではありますが、別の角度から見ると過去の落雷か何かの影響で樹形が大きく変わってしまったようにも見えます。中央部が少し寂しいですよね。大昔落雷で二股に裂けたのかもしれません。


生命力溢れる、まさにイチョウらしい堂々たる立ち姿。イチョウは新芽の時期から梅雨前くらいまでの姿が一番バランスが取れていて美しいかもしれません。夏から紅葉の時期も綺麗ですが、巨樹として楽しむにはあまりにも葉が茂りすぎて樹形が曖昧になりすぎてしまいます。


別アングルから。ほんの少しだけ気根が生じているのが確認できます。うーん…それにしても気持ち良い。早朝の朝露を蓄えたイチョウの巨樹は湿度を帯びた色気もあって堪りませんな。いえ、別に性的に興奮しているわけではありませんよ?


早朝のマイナスイオンたっぷりな静かな山村の空気。これが気持ち良くないわけがないではありませんか。空気がどこか岐阜的とでも言いますか、石徹白を抜けて高山市に入ったところにある「治郎兵衛のイチイ」辺りの雰囲気と良く似ています。下草は景観に影響のない程度にほどよく刈られていて、巨樹を眺めるためのベンチまで置かれている。地域の方に愛されているのが伝わってきて嬉しくなりますね。


私の住む京都からは当然ながらアクセスの悪い地域で、何かのついでに寄れるかというと確実に一生来ることはないだろうと言い切れる立地にあります。しかしこの辺りは本当に気持ちいいんですよねえ。巨樹的に見ても周辺には国天の「御仏供杉」や「太田の大トチ」をはじめとした猛者たちがひしめいてますし。何だかんだと文句を言いながら、年に一度は通ってしまいそうな気がしますね。前回訪問したのは紅葉の時期(11月後半)でしたが、その時期はトチの葉が完全に落ちてしまっていたので、巨樹巡りならそれ以前の時期がおすすめです。(本当は6月を勧めたい…最高でした。)

2019/6/23訪問
「瀬戸の夜泣きイチョウ」
石川県指定天然記念物
樹齢 500年以上
樹高 35m
幹周り 9.8m

コメント:4

RYO-JI 19-07-08 (Mon) 21:10

出ましたね、天狗伝説!
我々現代人にはいまいちパッとイメージできないように思うんですよね、天狗の存在って。
子供の頃に見ていた日本昔ばなしくらいしか想像がつかないんです(笑)。

新緑の時期ということを差し引いても生命力溢れるイチョウですね。
周囲の集落にも自然と溶け込んでいるように見えますし、とても身近な存在として大切にされていそう。
私がもしそこに行ったのなら、ここのベンチ座って、『あぁ、いいイチョウだなぁ』とボーっと過ごしてしまうのが容易に想像できます(笑)。

to-fu 19-07-09 (Tue) 18:36

> RYO-JIさん
天狗伝説というとスギのイメージですが、こちらは珍しくイチョウでした。
そうなんですよね…天狗って妖怪の類とも鬼とも違う。もっと仙人的なイメージ?あまり身近ではありませんよね。
パッと思い浮かんだのは鞍馬山の天狗と、あとはRYO-JIさんが撮影されていた大阪のクスの天狗の面です 笑

いかにも山間の集落の守り神といった感じで、とても雰囲気の良いイチョウでした。
今はまだ未訪問の巨樹が多いのでついつい次へ次へと勇み足になってしまいがちですが、
また再訪することがあれば今度は1本1本時間を気にせずじっくり味わってみたいものです。
ここなんかもぽけーっとしてたら2時間くらいは軽く滞在できそうです。

19-07-11 (Thu) 9:24

夜泣きイチョウ……と聞くと、アイヌの悲しい物語のような、ああいうのを思い出しますが、こちらはなんだかちょっとコミカル味も感じますね。
霊能者?の方によると、天狗伝説のある山などで実際天狗みたいなのが出てくることはあるらしく、形や大きさ格好も多種多様らしいので、そういう人間味があるものもいるのかもしれません。
それとも、烏天狗のような、鳥に近いものなのか。その場合、「鳴」「哭」が転じて「夜泣き」となったのかも。

江戸時代からある民謡にきちんと登場する点、樹齢の信憑性が取れて気分がいいですね。
イチョウはジュラ紀から生き延びている古代植物……ということは、恐竜大絶滅期の氷期も生き延びているわけで、相当なしぶとさですよね。
生育地域が限られるのは、どちらかというと生殖方法と種子が運搬される可能性が問題になっているように個人的には思います。
あのギンナンを好き好んで食べる鳥や獣ってどれだけいるのか……タネも大きめですしね。

信仰対象になっていないイチョウの巨樹という方が珍しいようにも思いますが、この周囲の環境からしても、目印としてとてもいい存在感。
行ってみたいですねえ。

to-fu 19-07-11 (Thu) 16:44

> 狛さん
ああ、烏天狗!このイチョウの場合だとそちらの方がしっくり来ますね。
天狗伝説に関しては似たような話が全国各地に残っていることからも、それに近いものが実在していたのかもしれませんねえ。
隠者になった超ストイックな修験者の爺さんとか、そんな超越者のようなおっさんが神格化されたのかもしれませんが。

イチョウの外観はまさに古代植物ですね。例えが悪いですが、ゴキブリなんかと通じるタフさを感じます。
探せばもっと過酷な環境のイチョウがまだまだ見つかりそうな気もしますが、やはり巨樹クラスまで成長した個体を
見つけようと思うとなかなか希少なのかもしれませんね。それこそ四国の山中にはゴロゴロしてそうですが 笑

そういえばこの辺りの特徴として、神社の御神木としてのイチョウが比較的目立つんですよ。
石川県最大のイチョウ然り、勝山の神社にもイチョウの御神木がありました。
何となく白山信仰絡みであることは想像できますが、他の地域でイチョウというとやはりお寺のイメージが強いので、原因を探ってみても面白そうです。

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