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石川県白山市 猫ヶ島の弥四郎の大栗


SONY α7RIII / SONY FE 24mm F1.4 GM SEL24F14GM

「瀬戸の夜泣きイチョウ」を離れ、さらなる奥地へ。そこには個人的にまだ出会ったことのないクリの巨樹が待っているという…ええ、今回の旅路では最も楽しみにしていた巨樹かもしれません。拠点をこの近くの道の駅 瀬女に決めたのも実はこのクリの巨樹へのアクセスを重視してのことだったのです。


白山一里野温泉。ここまで来るともう白山白川郷ホワイトロードは本当に目と鼻の先。この先の峠道を抜けたらそこはもう世界遺産 白川郷です。(世界遺産認定されてから随分と評判が悪くなりましたね…大昔行ったきりですが当時はただの寂れた観光地という印象で、むしろそこにこそ魅力があったように感じます。私の住む京都にも言えることですが、観光客が押し寄せるとそこにはもう風情もへったくれもありません。焦土といっていい。地域の経済が潤うのと反比例して観光地としての魅力が無くなる。皮肉なものです。)

さて、GoogleMapには白山一里野温泉と登録されている「天領」さんに駐車させていただき、まずは観光案内板を眺めます。周辺は完全にスキー場とペンションしか存在しないようなところで、季節外れの6月ということもあり酷く閑散としていました。ああ、たった一晩で物凄いところまで来てしまったものだ。恐らくこの巨樹巡りなんて趣味と出会わなかったら私には一生縁のない土地だっただろうな…なんて物思いに耽っていると、霊峰白山を眺めるだけでも何やら感動すら覚えます。目的地は現在地すぐ真横の10番、「ねっかしまの大栗」。猫ヶ島と書いて「ねっかしま」と読むようです。え?勿論私は「ねこがしま」だと思っていましたが?

※後々になって改めて見返してみると9番に「よへいのかえでの木」というものがありますね。興奮のあまり完全に見逃してました。
先人方のログ含めWeb上にはほぼ情報が皆無ですが、唯一詳細を掲載している白山市のサイトを見る限りこれも相当なものです…次回こそは。


右下に見えるのが先程の案内板。クリの巨樹へは「天領」の看板右手の遊歩道から向かいます。シーズンオフということで遊歩道と言えども完全に藪と化しており、気軽な気持ちで散策でもと考えていた方はここで既に心が折れるかと思われます。さらに当然クマ出没エリアなのでクマ除け鈴必須。無駄に大声で咳払いしながら突入します。

ちなみにワタクシ、あわよくば早朝からひとっ風呂…なんて考えていたわけですが、天領さんは休業中。張り紙によるとシーズン以外は連休のみの営業なのだそうです。残念。(天領の看板下、排水パイプから天然温泉が垂れ流しになっていました。なんてもったいない 笑)


ほんの少し藪を掻き分けると冒頭の写真の場所へ到着するわけですが…いや、これはもう独り言が止まりませんよ。おおお、これは凄い…とか、何だよこれ…とか。数ヶ月ぶりにやって来たカモから血を吸ってやろうと大挙してくるアブや足元の毒毛虫なんか最早どうでもいい。当然無心で駆け寄ります。


この野性味…写真では伝わりませんよねえ。上手く伝えられなくて本当に悔しい。でも写真なんかで満足するなよ?絶対に自分の目で見てくれよ?という想いも半分あったり。第一印象は単純に、え?これがクリの木なの?という一言に尽きます。これがあのクリなのか。とんでもねえな、と。


山奥の豪雪地帯、あまつさえ管理する人間は一年の大半を他所で過ごしている。半ば忘れ去られたような環境がこのような迫力を生むのでしょうか。これよりも大きな巨樹なら何十本、何百本も知っている。もっと年老いた、その存在が樹木から昇華して神様の領域に踏み込んでいるような巨樹にだって出会ってきた。このクリの木はそういうのとはまた違う。子供の頃に図鑑や絵本で見た太古の生物が現存するのを目の当たりにしたかのような…そんな感動。これなんかも毛虫だの巨大アリだの全く気にしないで撮った写真ですからね。虫に刺されようが蛇に噛まれようが、今この巨樹に触れておかないと絶対に後悔する!実際この場ではそれしか考えられませんでした。今改めて思い返したら蛇になんか絶対噛まれたくありません…


微妙に掠れて読めなくなっていますが、この大栗の木は宝暦年間(1751~1764年)に蜜谷弥四郎が植樹したものだと言われている・県内では類を見ない巨樹である、ということが書かれています。巨樹データベースによると幹周5.1m。この数値はクリの巨樹としては立派なもので、クリの巨樹ランキングを見ても5メートル台というのが一つの天井になっているのか、上位数本の天井を突き抜けたものを除けばほぼ横並びの幹周の巨樹が何本も並んでいます。私感ですがクリの巨樹は巨大さを楽しむ類の巨樹ではなく、例えばビャクシンのようにその独特の造形を楽しむべきタイプのように思えるため、ランキング自体にはあまり意味が無いような気がします。逆に言えば幹周5m前後のランカークラスのものであればそのどれもが個性的で、一見の価値有り!と考えてもいいのではないでしょうか。私はクリの巨樹に俄然興味が湧いてしまいましたね。


うねるような樹皮はまるで人里の寺社に立つビャクシンのようであり、今にも動き出しそうな古代生物的迫力は山奥にそびえるトチノキのようでもある。神秘的かつ野性的。ちょっとこれは他の樹種ではなかなか味わえないんじゃないでしょうか。


樹勢は旺盛。健康という言葉よりは、逞しいという言葉の方がしっくり来ます。何があろうと自分のテリトリーだけは断固として守り抜く、そんな力強さ。


こうして写真を見返しているだけでも背筋がゾクゾクっとしてくるんですよ。強烈に印象に残ってるなあ。


裏側から。造形がもうアートですよね。


本当に何枚撮っても飽きない。いえ、何枚撮っても何処から撮っても納得できない、が正解かもしれません。もっと凄い巨樹なんだ、こんなもんじゃないんだ、という感が拭えない。もっと腕を磨いて、いつかまたリベンジしたいものです。


さらに少し奥にも目測で幹周3~4mクラスのクリの木が。しかしこちらは一層藪が濃く、途中まで近付いて断念しました。だってこれ腰くらいまで雑草で埋め尽くされてるんですよ?ナタでも持って来ないと無理ですって。冷静になるとマダニとか怖いですしね。


造形が美しいとモノクロも映える…こうして現地で感じたことを思い起こしながら記事を書いていると無性に再訪したくなるではありませんか。ああ、福井県の山奥(石徹白の大杉から直線で5kmくらいのところ)にもクリの巨樹があるんですよねえ…行ってみたい。

2019/6/23訪問
「猫ヶ島の弥四郎の大栗」
白山市指定天然記念物
樹齢 約250年
樹高 17m
幹周り 5.1m

コメント:4

19-07-15 (Mon) 9:26

栗の巨樹は僕も気になっているのがいくつかあるんですよね。
材木としての需要が古くからあり、そう、建築をやっていると材としての栗はすごく高級ですし……果ては炭焼きなんかにも使われていたと思います。
こういう捨てるところがないような樹種は永く生きて巨樹になること自体珍しいですよね。
しかも、成長が遅く、あまり大きくならないと来てる。
栗の巨樹といって、この樹のビジュアルが飛び込んでくるとなると、それはもうエキサイティングですね!

この見慣れない感じ。
渦を巻くように成長している樹皮はカシみたいなグロテスクさはあまり感じないながらも、なんというか、すごく魔的なものを感じます。
永く生きているうちに、そういうパワーを手に入れてるような……いや、明らかにそうなってる外観ですね、これは。
to-fuさんは各種ヴァンパイアからの人気があるし、防御予防にも余念がないという印象ですが、そのto-fuさんをこの深い藪に引きずり込むんですから、実物はすごいオーラだったのだろうと察します。
栗は四季によっていろんな姿を見せてくれるはずですし、魔的な印象とは裏腹の、生命の営みというものも観察してみたいですね。
もちろん、そう簡単に訪ねられない場所にあるからこそ、ここまで大きくなれたのだとは思いますが。笑
スギやクスもいいですが、こうした樹種の巨樹もしっかり記憶に焼き付けていきたいものですね。

to-fu 19-07-15 (Mon) 21:33

> 狛さん
クリというと、いわゆるチェスナット材ですよね。
トチと同じで山奥過ぎて伐採を免れたものしか残っていないので、必然的に後回しになります 笑
そういえば狛さんと行った京北の山奥の案内板にもクリの巨樹が書かれていましたねえ…
遊歩道のどん詰まりのようなところにあるようですし、熊リスクを考えても単独では行きにくいな。

オーラ。そう、まさにそのオーラが物凄かったです。
これが雨の中の訪問だったりするとカシやシイ的な恐ろしさを感じて、今回とは逆に近付けなかったようにも思いますね。
初回訪問時はどうしてもリスギやクスなどに目が行きがちですが、その土地を再訪するなら、こういった巨樹界では
ややマイナーにあたるような樹種を積極的に回ってみるのも悪くないですね。まあ、初回スルーしている
ということはそれだけ険しい立地にあることが多いわけで、怪我や事故だけには注意しなければいけませんが 笑

RYO-JI 19-07-15 (Mon) 22:13

クリの巨樹はノーマークでした、
それゆえにより驚きました、これ。
クリのイメージとは全然違う迫力を感じますね。
もっと親近感のある樹種だと思っていたんですが、これはちょっと近寄り難いオーラを感じます。
猫ヶ島(ねこがしまとしか読めない)というカワイイ名前とは裏腹に、禍々しいとさえ思ってしまうキョーレツな姿です。
奥の少し小さい方のクリだって充分見応えありそうで、うん、でも確かに分け入っていくのは冬場しかムリかもしれません。
しかし見るならやはり葉っぱが生い茂っている時期がいいですし、悩ましいです。

to-fu 19-07-15 (Mon) 22:57

> RYO-JIさん
身近なところにはなかなかありませんよね。
いえ、距離は身近でも到達しようと思うと困難なところばかりなので困ります 笑

クリの巨樹はシイやカシともまた違った「陰」の感じで、実に見応えがありましたよ。
本当は奥のものにも触れてみたくて突撃したんですが、途中でふと我に返ったら毒虫どもが怖くなっちゃいました…
私も今までほぼノーマークだったんですけど、長野県の「小野のシダレグリ」とか是非検索してみて下さい。
ちょっとランカーを調べただけでも個性的なヤツが凄く多くてワクワクしてしまいますよ。

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