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富山県砺波市 厳照寺の門杉


SONY α7III / TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD

早朝から「洞杉群」を散策してその後も埋没林博物館、2本の大ケヤキと回っているうちに充足感に包まれてしまい、もう早々にホテルを目指して進んでしまってもいいのではないかという気になって来ました。とはいえまだまだお昼を回ったところ。最後にもう一箇所だけ寄ってみることに致しましょう。今度は少し趣向を変えて山方面へと向かい厳照寺を目指しました。本願寺五世宗主、綽如(しゃくにょ)上人によって開基された厳照時。もちろん浄土真宗本願寺派のお寺さんです。こちらに推定樹齢450年の大杉が…と、既に否応なしに視界に飛び込んできました。おお…これは。


まず正直に申し上げると、畏れ多くも巨樹単体としてはそこまで期待していなかったのです。この右側のスギが幹周6.8m、写真で私が眺めている左側のものが6.5mということで数値だけ見るとそこまで大きなスギではない。しかしこの本堂正面にズシンとそびえ立つ姿がWebで見ただけでも壮観で、この景色は是非ともこの目で見ておきたいと思った次第です。それにしてもこれは事前のイメージよりもずっと立派なスギですよ。もう初見の時点で「日本海側のウラスギは資料上の数値だけ見て知った気になってはいけない。必ず実物を見るべし。」という今まで何度も痛感させられた教訓を忘れていたなと改めて反省しました。


そう。ウラスギ全般に言えることですが、幹周測定値は決して最大値ではありません。このスギもやはり地上10m弱の辺りからグワッと大きく広がるような成長を見せていて、真価は根元ではなくむしろ頭上に広がる光景にあるということになります。


枝ぶりも良し。素晴らしい二本杉です。まさに壮観と言うより他ない。良い意味で期待を裏切ってくれた巨樹ということで考えたら間違いなくこの日のナンバーワンでしょう。いやあ来て良かった。こういう出会いがあるから堪らないんだ。


地球の引力に引き寄せられるように地上を目指す枝葉。この手の大スギは根元近くの枝が日照不足に寄り枯れて鳥のホネのような状態になっていることが多いのですが、こちらは根元までしっかりと若々しい葉を付けていました。樹勢は旺盛。お寺の方の管理が行き届いているのでしょう。


本当に凄い。シャッターを押す手が止まりません。撮影対象として見るとウラスギは本当に面白い。見る角度によって表情を変え、さらにどの角度から撮っても様になってしまうというチートのような樹種。ああ、写真が上手くなったと勘違いしてしまうではありませんか 笑


まるで山門のようにそびえている姿が一番の魅力ではあるのですが、左右それぞれを単体で見てもなかなかのもの。地元京都ではまずお目にかかることの出来ないタフな姿に息を呑みます。


二本の真下に立って空を仰ぐとあまりの迫力に頭がクラクラするほど…


一番気に入ったのがこの本堂からの眺め。そびえ立つ巨杉とスコーンと抜ける参道。これはダイナミックかつ美しい。しばしうっとりしてしまいました。(地元の方の自動車、どいてくれないかなあ…としばらく待ってみたのですが、残念ながら近くには運転手の方がおられないようでした 笑)

なお、こちらの「厳照寺の門杉」は日本海型のアシウスギの一種であるタテヤマスギ系の地方種、マスヤマスギという品種。日本一美しいスギとも言われているそうなのですが、たしかに実際美しいスギだと感じました。力強さと繊細さ、どちらも兼ね揃えています。(この手のアレは「いやいやウチが日本一!」という意見が絶えないはずなので、あまり細かくは突っ込みません。)余談ですがタテヤマスギの巨樹巨木群と言えばやはり美女平の「立山杉巨木林」。これも是非行ってみたいんですよねえ…


こちらの厳照寺、天正13年(1585年)の大地震による地形の変化で近くの庄川が流れを変えたため、正保3年(1646年)この地へと移転してきました。1646年…そうこの「門杉」。厳照寺が建立された後に門とするべく植えられたわけではなく、元々この地にそびえていたということなんですね。(この伝承について、個人的には「うーん、建てた記念に植えたんじゃない?」と思わなくもない。マスヤマスギは成長が早いそうなので、樹齢350年強はまあ有り得なくもないと思います。あまり詮索するのもいかがなものか、ですけれども。)それにしても当時の方々にこの立派な姿を見せてあげたいものです。間違いなく大歓声が上がりますよ、これは。


雪の重みに耐えるべくガッシリと肥大化させた根回り。ちょっとやそっとの強風ではびくともしないでしょう。


裏手はちょっとした児童公園になっています。(ここに腰かけてしばらく眺めていましたが、めちゃくちゃ蚊が多い 笑 あまりゆっくり出来ませんでした。)


左手の「厳照寺の梵鐘」も砺波市の有形文化財にしていされる立派なもの。この梵鐘は移転以前に製作されたそうです。蚊の猛攻を受けてあまりのんびりと過ごすことは出来ませんでしたが素晴らしい空間でした。おすすめ度高いです。やっぱり北陸のスギは良い。

2020/6/22訪問
「厳照寺の門杉」
富山県指定天然記念物
樹齢 共に約450年
樹高 共に約40m
幹周り 冒頭の写真右6.8m、左6.5m

富山県砺波市福岡172

コメント:4

RYO-JI 20-07-27 (Mon) 21:47

対となって門番のように仁王立ちしている姿に見入ってしまいますね。
樹高も枝葉の繁り具合も文句なく素晴らしいです。
幹周を聞いて『えっ?それっぽっち?』と疑ってしまうくらいに迫力を感じましたよ。
やけに根回りがしっかりしているのは、雪国で生き抜くためにDNAに組み込まれた本能のようなものでしょうね。
それでも雪深い地域においてここまで損傷が少なく高く育っているのは、綽如上人あるいは浄土真宗本願寺の見えない力が働いているとさえ思ってしまいます。
いや、書いていて何をバカなことをと自分でも呆れていますが、それほどまでにこの門杉が見事だと感じるからです。
洞杉群はきっと超ド級に楽しませてくれますが、こんなスギにも大いに心惹かれますよ。

20-07-28 (Tue) 7:40

偶然にもウチでもツインタワー大杉を掲載してしまいましたが笑、このカテゴリーも根強いですよね。
RYO-JIさんも書かれていますが、これは! と気持ちが上がってからのこの幹周囲の数値で、過少ではないかと訝しみます。今はもっと大きいか、計測地点が変だったのではないかと。
でも、ヒューマンスケールで考えるとこれくらいで正しいのか……うーん、測ってみたいですね。

直幹形態でありながらはっきりと裏杉の血統を感じさせてくれる、この造形の取り合わせもとても面白いですね。
魚を突くモリのようにはるか頭上で多頭に分岐するこの姿。
我々としてもカメラを向けずにいられないわけですし、こういうものを昔から目にしてきたとしたら、その結果育まれる文化・風土にもにも色濃く影響が出るだろうなと思います。
マスヤマスギというのは初めて聞きました。うん、確かに別のところで「日本一美しい」を読んだ記憶がありますね。笑

伝承について、この2本がこうして先に立っているところに参道やお寺を作ったというのは、さすがにちょっと無理がありそう。
巨樹の来歴について、これほど筆まめな日本人が意外なほど記録を残していないことに残念でもあり、不思議でもあり。もっと言及してくれてたらなあ……といつも思います。
その辺からも、巨樹の樹齢は伝承よりもだいぶ若いのが常なんだろうなと推測します。

to-fu 20-07-28 (Tue) 15:25

> RYO-JIさん
この門番のような立ち姿は「おおっ!」と思ってしまいますよね。
このスギよりも大きそうな巨樹はまだまだあったのですが、どうしてもこの景色が見てみたくなりました。
幹周…やっぱり狛さんのようにメジャーを持ち歩いた方が一層楽しめるのかもしれませんね。
考えてみたら別に常に携帯しなくてもここぞというときのために車の中に放り込んでおけばいいわけで。

洞杉群はあの四国旅でいうところの特天クラス、この方は桑平のトチノキとか桃原の牡丹杉のようなダークホースでした。
(まあ、あの2本から比べたら感動レベルはちょっと落ちるかもしれませんけど 笑)
少なくとも洞杉を訪問される際はコースに含めても絶対に後悔しない巨樹だと思います。

to-fu 20-07-28 (Tue) 15:49

> 狛さん
狛さんのサイトを見て吹き出しましたよ 笑
いやー、本当にこのカテゴリーは避けて通れませんよね。
測定されたのはどれだけ最近に見積もっても解説版が設置された平成14年ですから、少なくとも現在は左6.8m、右7mくらいには
なっていると思いますね。というか、お二方の仰るとおりあまりに過少申告すぎないかと…目測ですがどちらも7m以上はありそうに見えました。

これらウラスギの造形、あまり雪の降らない地方で生まれ育った我々からするとどれもが物珍しいし、非日常的な巨樹は
やっぱり撮っていて面白いですね。文化や風土の違いを肌で感じることにこそ、遠征の醍醐味があります。
「日本一美しい」はあまり触れると事故になりそうなので…ともかくそれだけ地元の方が誇りに思っていることは明確ですから、
日本一云々は別にしてもそういうのを見聞きすると嬉しくなりますね。

本堂を臨むベストな配置…どうみても手植えのスギがもっともらしくこの地に生えていた?…考えれば考えるほど
この伝承、流石にムリがないか?と思ってしまいます。大体どんなしょうもない「おらが村の自慢話」ですら記録が
残っているものですが、本当に巨樹に関してはそれらが皆無に近いのは不思議です。消失してしまったのか、あるいは
神仏分離の流れで多くの巨樹が伐採される以前の時代は、今ほど巨樹が珍しくないものだったのか。何にしても勿体ないですね。

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