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石川県加賀市 十村屋敷跡のスダジイ巨木群


SONY α7III / TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD

前日に富山県の洞杉群をはじめ県内トップクラスのケヤキなど大型の巨樹を堪能したため、充足感に満たされながら目覚めたワタクシ。気分的にはもう高速に飛び乗って直帰しても構わないくらいでしたが、石川県南部からならいくつかの巨樹をめぐりつつ下道でダラダラ帰っても半日もあれば京都の自宅へと辿り着けます。うん、次はいつ来られるか分からないのだから近場の巨樹だけでも見て帰ろう。そう思ってやって来たのがこの「十村屋敷跡のスダジイ巨木群」でした。

記事とは全く関係のない話題で恐縮ですが現在新型コロナウイルスの感染がさらに拡大しており、以前のように巨樹探訪のために遠方まで…と動くことが非常に困難な状況が続いています。正直なところ巨樹の写真を見返すだけでも今すぐ出かけたい!また早く巨樹に出会って撮影したい!という気持ちが膨らんでしまうものですから、ここ最近は過去撮影した巨樹写真を見返すことすら避ける日々が続いていました。気持ちが膨らんだところで結局行けるわけでもなし。行きたいけど行けない、それがただただ辛かったんですね。それなら端から考えないようにすればいい、と思考を停止する毎日。

しかしそろそろこの状態を非常事態ではなく今後も続く日常として受け入れ、この状況下でも出来る範囲で楽しむところから再開しようと気持ちの整理が付いてきました。考える時間だけは腐るほどありましたからね。いつまでもウジウジと生きたところで何の得にもなりゃしません。イヤだイヤだと言っても人生は続くのです。前向きな奴だなと呆れたそこのアナタ。前向きじゃないってことは今アナタは足元や真横を向きながら歩み続けてるってことですか?それってかなりヤバいので前向いて行きましょう。ということで前置きが長くなってしまいましたが、スダジイの紹介を進めたいと思います。


大聖寺藩十村役(他藩でいうところの大庄屋)鹿野家のお屋敷が建っていたとされる十村屋敷跡。現在はスダジイの巨木群だけがそびえ立ち、屋敷は見る影もありません。


樹齢300年以上のスダジイ巨樹群。最大のものは推定樹齢700年以上という記載がありますが、鹿野家が当地に移ってきた1691年頃に植えられたものではないか?というのが私の率直な感想。そう推察するなら樹齢は400年強?当時は飢饉対策として多くの人々を救ってきたのではないでしょうか。


素晴らしい。巨樹巨木クラスのスダジイが何本も立ち並ぶ様は見事なもの。以前友人の狛さんに案内していただいた千葉県匝瑳市の「天神の森のスダジイ」を思い出します。トラロープが張ってあって根本まで近付くことはできませんが、この左手のもの(冒頭の写真の一番手前にあるシイ)も幹周7mくらいはあるように見えます。


こちらが恐らく最大のスダジイ。解説板に寄ると幹周8.73m。スダジイの巨樹としては全国的に見ても相当なものです。樹形が美しく、樹勢も良い。スダジイ空白地帯の近畿圏から来ていることもあり、このクラスの巨樹が見られると流石にテンションが上がります。ウネウネとうごめくような様はシイならではですよね。他の樹種ではこの背筋がゾゾゾッとする感覚はなかなか味わえません。


樹高21.5m。そこまで多くのスダジイを見てきたわけではありませんが、樹種を考えるとかなりスラッと背の高い方なのではないでしょうか。


見る角度によって表情が全く違う。これぞスダジイの醍醐味。


ちょうど通勤通学の時間に訪問したこともあって強烈な朝日が射していましたが、樹冠の傘に入ってしまうとすっかり薄暗い。ああ、そよ風が気持ちいい。(ただしもちろんメチャクチャ蚊が多い。)

さて。「良い報せと悪い報せがある。どちらから話そうか?」
ということで、ここまで良い報せだけを紹介してきたつもりです。巨樹群そのものは本当に素晴らしい。


しかしその実態は街のごみステーションですよ…ええ…これには私もドン引きです。ゴミ収集車が入るためでしょうか。ご丁寧に砂利道まで敷いてあります。この右手が先ほどの最大のスダジイ。もうちょっと何とかならんかったのだろうか。


確かに目の前の道路はそれなりに通行量がありそうです。道幅だって広くはない。この道沿いをゴミ捨て場にするのは難しいのかもしれません。でもこれはいくらなんでもちょっと。天然記念物ですよ?


確かにここに人が訪れたところで地域にお金が落ちるわけでもないだろうし、お金と労力をかけて維持するメリットは少ないのかもしれません。しかしこの巨木群は歴史的にも非常に価値あるものだと思うんです。加賀市も天然記念物に指定しているのですから雑然と指定して終わりではなく、責任を持って景観維持に務めるべきだと思うんですけどねえ。「あいつら看板(解説板)送ってきて終わりなんだよ。」とは、この趣味を始めてから何度耳にしたか分からない言葉です。


過去訪問された方のログを読んでいると地元の方の無料駐車場的に扱われ、そこら中車だらけだったこともあるみたいです。(私が訪問した際は全く停まっていませんでした。通勤で出払っていたのではなく改善されたのだと信じたい。)このゴミ収集所は最近設置されたもののようですが、何とか移動出来ないものですかね…天然記念物の目の前にゴミを捨てる。その行為に対して何も感じないのですか?と、こう言っては失礼ですが私の感覚からすると理解に苦しみます。地元の方からしたら余所者が何言ってやがるんだバカヤロウ、と思われるだろうことは重々承知の上。

巨樹に限らずあまりにも雑な扱いを受けていて「もういっそ天然記念物の指定を解除してしまえよ。」と思うことはままありますが、この光景は私の記憶するワースト10に確実に入ってくるものでした。私だって本当はこんなことを書きたくないのです。巨樹の素晴らしさだけを紹介して、「ふーん、巨樹めぐりって面白そうだな!俺も、私も行ってみたい!」そう思っていただくことが何よりの喜びなのですから。しかしお金をもらって提灯記事を書いているわけではありませんので、ウソを書くわけにはいかないのです。ええ。巨樹が立派なだけに残念でなりません。

2020/6/23訪問
加賀市指定天然記念物
「十村屋敷跡のスダジイ巨木群」 ※代表で最大のものの数値を抜粋
樹齢 推定700年以上
樹高 21.5m
幹周り 8.73m

石川県加賀市小塩辻町69

コメント:4

20-08-21 (Fri) 13:45

コメント機能、直していただいてありがとうございます。笑

そうですね、そろそろ動きますか。よっこいしょ。……と、そんな感じですかね。
政府の揚げ足を取るつもりはありませんが、ゴートゥーとか言ってるし、そそろそろ動かないと娯楽はもとより従来の日常に戻れなくなりそうです。
僕の消費ごときで経済を回してるだなんてのは寒いギャグでしかないですが、社会規範がダウンサイジングするまでには大きな犠牲が生じるはず。今のところそれでいいとは言えないわけで。


僕も能登でスダジイを見ましたが、やはりここも沿岸地域と呼んでいいのでしょう、ウチの方と同じような風が吹いていそうです。スダジイが繁茂するとなかなか他の樹種に明け渡さないかもしれませんね。
巨木群ということで個々は大した事ないのかと思いきや、解説に偽りなく迫力がありますね。最大のものは株立ちっぽい感じもありつつ、単木の個体もかなり大きい。造形のものものしさもあって、圧迫感を覚えそうです。

名実ともに雑木の王様。どこまで行ってもスダジイは雑木扱いなのでしょうかね。これがクスだとまた違う扱いになるのか……。
しかし一方で、シイはお墓や遺跡や墳墓に植えられている印象もあって、広義ではこれも葬るところ・捨てるところだよな……と。
人里に古代からしぶとくあって、その陰の部分を固めている樹。そうも言えるかもしれないと、ちょっと変な納得もしてしまいました。

to-fu 20-08-21 (Fri) 16:31

狛さんにもご迷惑をおかけしていたのでしょうか…
ああ、あの長々と打ち込んだ末にエラーで全て無かったことにされたときのストレスといったら。本当に申し訳ありません。

そうなんですよね。RYO-JIさんも仰っていたように自分も経済を回すなんてのは「ただてめーがじっとしていられないことの方便」だと思うんですが、それでも人間一度歩みを止めてしまうと再始動にはその何倍ものエネルギーが必要になるイキモノなので、ローギアを維持したままじりじり動き続けることが大事なのではないかと最近は思うようになりました。

何となくですがあの海っぺりに平野が貼り付いたような地形は、まさに狛さんに案内していただいた千葉茨城県境辺りの空気に
近いものを感じました。照りつける日差しに鬱蒼とした森…もう一瞬であの「天神の森」を思い出しましたよ。あちらの方が
鬱蒼度(なんだそれ)も蚊の猛攻も比べ物にならないほど上でしたが 笑

そう言われてみるとお寺に植えられていることが多いからか、スダジイというと確かに墓地のイメージがあります。
たぶんこの巨樹がシイではなくスギやクスだったなら、こうしてゴミ捨て場にされることもないのでしょうね。
ジメジメしたイメージのあるシイだからまあいいか的な…止めていただきたいですが、うん。心情的には納得できてしまいます。
本当に立派なシイですが、巨樹巨木に興味のない地元の方からするとただの変質者が出そうな暗い森にしか見えないでしょうからねえ。
この手の観光資源としての価値が低い(と言わざるを得ない)雑木の扱いは想像以上に難しいものなのかもしれませんね…

RYO-JI 20-08-21 (Fri) 21:35

スタジイの巨木群という魅惑ワードに違わぬ群れですね!
ただでさえゾゾっとするスタジイが群れでいるのを想像するだけでもうサブイボですよ(笑)。
鹿野家のことはよく知りませんが、当時の興隆を物語る生きた証でしょう。
特に最大サイズのものは、その姿、重量感ともパーフェクトで存在感も素晴らしい。
興奮しながら読み進めましたが、あぁ、なんてこった。
とても残念すぎる環境です。
いや、残念というだけでは表現できない程のガッカリ感。
加賀市という他にも見所の多い行政区だけに、あまり重要視されていないのでしょうか。
スタジイの巨木群が素晴らしだけに、余計に大きな喪失感を抱いてしまいます。

to-fu 20-08-22 (Sat) 9:54

> RYO-JIさん
巨木群…いい響きですよね。この標識が見えたらノーマークの地であってもとりあえず寄ってしまうと思います。
近畿圏はどうもスダジイの大物が少ない、いえ、恐らく皆無ではないかというくらいなので遠征の際はどうしても
優先的に回ることが多いです。地味な樹種ですが個性的な形をしているものが多いので、撮影対象としては面白いですね。

この環境は本当に残念としか言いようがありません。確かに地味ですが、それでも天然記念物なんですけどね…
富士山でのゴミのポイ捨て問題然り、もう少し自然や歴史的遺物に対して敬意を払えないものかなと悲しい気持ちになります。
最寄り駅から車で何時間もかかる山奥の古寺にすら、ナントカ参上!みたいな落書きがあったりしますからね。本当に悲しいことです。
天然記念物や重要文化財など、指定後の行政のアフターフォローに関してはもっと議論されても良いのではないかと思います。
指定したから絶対切るなよ?絶対壊すなよ?でも維持するためのお金はアナタが出してね、では余りにも無責任です。

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