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京都府京都市左京区 満足稲荷神社のクロガネモチ


Nikon Z f / Nikon NIKKOR Z 24-70mm F4 S

人混みが嫌いなため京都市民のくせにろくに市内を散策しない私ですが、この日は珍しく市内を自転車で駆け回っておりました。
その日の目的地がこちらの「満足稲荷神社のクロガネモチ」。奇怪な樹形が印象的なモチノキで、ずっと気になっていたのです。


(夕暮れ前の撮影ということで撮影条件はわりと最悪に近く、明暗差がきついですがご了承ください。)

東大路通と三条通の交差点をやや北に。
岡崎公園や八坂神社から近く、バスや地下鉄など公共交通機関でのアクセスも容易です。
が、逆に自家用車でのアクセスには難のある立地。岡崎公園周辺のコインパーキングに駐車して徒歩が無難かもしれません。

満足稲荷神社は豊臣秀吉に伏見桃山城の守護神として勧請されました。
祭神は倉稲魂大神(ウカノミタマノオオカミ)さん。その名のとおり五穀豊穣の神様ですね。
秀吉公が神社のご加護に大層満足されたそうで、そこから「満足稲荷」と呼ばれるようになったと伝えられています。
元々は別の場所に創建されたものを徳川綱吉が現在の位置に遷祀したのだとか。


「小さな神社で、大きな満足」というのが満足稲荷神社のキャッチコピーのようです。
大通りに面するこじんまりとした神社ですが、境内はとても静かで雰囲気がいい。

目的のクロガネモチは拝殿手前にひっそりと佇んでいました。


天然記念物無指定ながら京都市の保存樹に指定された、樹齢400年のクロガネモチの木。幹周は約2.4mです。
日頃紹介している巨樹は幹周10m超なんてものも少なくないわけで、どこが巨樹なんだ?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
実際巨樹、巨木のレギュレーションに沿って見るとたしかに「未満」ですが、あまり大きく育たないクロガネモチとしてはなかなかの巨木なのです。


徳川綱吉が神社を移設した際(1700年頃?)に植えられたものだと考えると実際の樹齢は300~350年くらいか。
クロガネモチが既にこの地に植えられていた可能性とか…細かいことを言っても仕方ないので素直に400年説を受け入れましょう。えー…樹齢400年です 笑
まあ、数字云々よりもやはりこの特徴的な樹形が一番の魅力なのではないかと。手のひらをガバッと広げたような姿が面白い。
末広がりな姿で縁起がいい、ということなのか目の前の岩神さん(いわゆる磐座か)と併せて拝まれていく方が多く見られました。


もちろん「デカい!」と叫んで呆然と立ち尽くしてしまうタイプの巨樹ではありません。
しかしこの漆喰の壁のような樹皮を間近で眺め、触れてみると、これはたしかに数百年生きる樹木だわ…と実感できるだけの重みが感じられます。


根元には小さな洞が。こんなところにも小さな稲荷神社が祀られていました。
遠目に見ると樹勢旺盛な大きな木という印象しか持たれないかもしれませんが、実際は内部の空洞化が随分進んでしまっているのかもしれません。
人間がまだ生類憐みの令なんて騒いでた頃から生きているのだから身体がボロボロになっていてもおかしくないよな…


そうは言ってもこの活力。
幹に触れてみると如何にもぎっちり詰まった頑丈な木材といった質感で、倒壊の不安など微塵も感じられません。


クスノキやケヤキのように超巨大に育つことがなく、鮮やかな緑と赤い実のコントラストの美しさも楽しめる。
クロガネモチが庭木や街路樹として重宝される理由がよく分かります。


徳島県で「尾開のクロガネモチ」を見て以降ずっと気になっていたこちらの巨樹。
どうせ見るなら今回こそ、樹冠いっぱいに赤い実を付けた姿はまことに見事!の時期に眺めようと我慢していたのです。
たしかに見事。実に美しい立ち姿でした。


少し離れて全景を。
巨大クスノキや巨大スギと対峙したときのような圧倒的感動はありませんが、じわじわ伝わって来る良さがある。
結構好きな樹種かもしれません。クロガネモチ。


巨樹リストの数字とにらめっこしていると巨樹めぐりルートの選考から漏れてしまいがちな小型樹木。
いやいや、こういう樹種を楽しめるようになってこそ玄人…というのとはちょっと違いますが、巨樹巨木の世界をより深く味わうためにも、実物を見てもいないのに選択肢から除外してしまうのは勿体ないのではないかと思いますね。スシやヤキニクのような派手さはない。とても滋味深い味わいの筑前煮、みたいなイメージ。巨樹めぐりの行程の中にこんな一本を挟むと総合的な満足度もグッと高まる!ような気がします。

2023/11/21訪問
「満足稲荷神社のクロガネモチ」
京都市指定保存樹
樹齢 約400年
樹高 11m
幹回り 2.4m

京都市左京区東大路仁王門下ル東門前町527-1

コメント:6

RYO-JI 24-01-15 (Mon) 22:02

いいですね、筑前煮(違)。
巨樹巨木を名乗る最低ラインに達していないとはいえ、樹齢400年というだけでもう尊敬の対象ですよ。
写真からも明らかに伝わるみっちり感。
太くなりにくい樹種だとしても、重厚感溢れる幹のその密度は相当なモノじゃないでしょうか。
樹形も個性的で面白く、末広がりな姿は縁起が良さそうで神社にピッタリ。
そして気になって調べてみましたよ、満足稲荷神社。
HPを見ると色々と興味深い神社ですね。
ネーミングも秀逸ですが、クロガネモチ同様にみっちり詰まっている感じがして是非参拝してみたいと思いました。

to-fu 24-01-16 (Tue) 1:16

> RYO-JIさん
筑前煮とかひじき煮とか…歳を重ねて初めて良さが分かってくるのは巨樹も同じなのかもしれません。(無理やりすぎる)
徳島の県天「尾開のクロガネモチ」も幹周は3mほどなので、実際大したものだと思うんですよね。
白っぽい硬質な幹に緑と赤のコントラスト。改めて写真を見返すと、なかなか優雅な立ち姿ですよねえ。
この枝の広がりは唯一無二の姿だと思われるので、ぜひともRYO-JIさんにも眺めていただきたいです。

満足稲荷さん…公式サイトは宮司さんのお手製でしょうか?
ま、まさかのWebストアまで 笑 
満足狐面( https://manzokuinari.stores.jp/items/5ecba4f6bd21787c74f74653 )が欲しくてたまらないので、在庫が復活したら私も再訪しようと思います。

24-01-17 (Wed) 8:42

自分もそうですが、まず「尾開のクロガネモチ」との出会いが想像以上に視野を広げてくれる出来事だったなと。
幹周囲数値は大きくないし、巨樹本の一枚だけの写真では「ただの木」に見えるし……けれど、現地での触感的な印象や、続く別の探訪との比較からも、そのユニークさがジワジワ実感されていきました。
確かに地味なんですが、そこになぜだか足を運んだ自分、冴えてる! みたいな。笑
こちらのクロガネモチも、まさにクロガネという感じの締った質感、まるで野球場のフェンスの鉄ポールですね。
それでも、なんだろう、あがりこ状というのか、この異様な樹形には苦労が見えますね。幹周もそうですが、この樹種がこのような状況になるにはやはり数百年必要だろう、と。
常緑だから葉が寂しくならない。むしろ時期には赤い実を足してくれる。冬の探訪にもってこい、やる気を喚起させてくれる貴重な戦力?ですね。

「満足稲荷」も、こりゃまたいいとこ見つけた感がありますねえ。
「小さな神社で大きな満足」なんて、なんかニ〇リみたいだなあと笑みつつ、伺ったこともないのにまるで近所みたいに親しみが湧きました。
このコンセプトならクス/スギよりもクロガネモチがぴったり。稲荷神社ゆえの金運成就の縁起物として植えられたものだろうと推察しました。

to-fu 24-01-17 (Wed) 14:57

> 狛さん
自分冴えてる!の感じ、分かります。ああ、ここを選んだ自分センス良すぎだろ、みたいな 笑
仰るとおりで、この手のマイナー巨樹って巨樹本や巨樹サイトで写真を見るだけだと本当にただの木なんですよね。
控えめに言ってもちょっと大きな木、くらいで。でも実際足を運んでみると大迫力とは違った方向で見どころがあるし、
何よりその場の空気とマッチした心地よさとか、ああいうのはやっぱり現地に行って初めて分かる良さだと思います。

クロガネモチは小型樹種の中だと(これでも)まだ写真映えする方だと思われるので、もし写真を見て「ほう…」と
感じられた方がいたら、ぜひとも京都の満足稲荷のモチノキという存在だけでも覚えておいてもらいたいですね。

満足稲荷はサイトや授与品を見ても宮司さんが手を加えた感に溢れていて、飾りっ気のなさがとても好印象です。
金運成就か…お金に縁が無い私としては、もっと真剣にお願いしておけばよかったなと 笑

12 24-01-20 (Sat) 20:08

同じラインで一斉に枝を伸ばすなかなか個性的な造形をしていますね
クロガネモチは確かにそこまで大きくなる事は稀ですけど
独特の白くキメ細かい幹をしてるので結構好きなんですよねえ
見た目美味しそうで美味しくない実も見る分には良い物ですしね

木の立地条件は決して良くなさそうですけど大事にしてもらいたいです

to-fu 24-01-20 (Sat) 21:15

> 123さん
クロガネモチの美しさに関して完全に同感です。
こちらの満足稲荷で眺めてみて、改めてあの尾開のクロガネモチが実を付けた冬の姿を見てみたくなりました。
(昨年末、立ち寄っておかなかったことを後悔しています…)

クロガネモチは都市型の環境にも比較的耐性が高いそうですね。
ちょっと窮屈な環境で大変かと思いますが、末永く元気でいてほしいものです。

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