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徳島県阿波市 尾開のクロガネモチ


FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 32-64mm F4 R LM WR

存在こそ随分前から知っていたものの、その小ぶりなサイズがネックで訪問を後回しにしていた「尾開(おばり)のクロガネモチ」。
遠方からやって来る愛好家が初回からこの巨樹を優先的に目的地へ加えることはほとんどないのではないか。
いやいや初回からクロガネモチ、珍しい!と、この巨樹を目指したぜ?と仰るなら、貴方は相当な玄人に違いないでしょう。


これは…素晴らしい。
山間部へと続く斜面の中ほどにそびえるこのクロガネモチ。まずもってロケーションがいい。
周囲は静かな農耕地帯。聞こえるのは小鳥のさえずりと枝葉の擦れるさらさらという音、そして遠くから微かに聞こえるトラクターの駆動音のみ。

遠目に眺めるかぎりでは肝心のクロガネモチも想像よりずっと立派に見えます。


「尾開(おばり)のクロガネモチ」。
こちらも先日紹介した「案内神社の大クス」同様県指定の天然記念物です。

幹周2.95mと、環境省の定義に沿うなら巨樹未満の巨木カテゴリーに属することになるこのクロガネモチ。
(正確には幹周300cm以上が巨木ということなので、巨木ですらないとも言える。しかし現在はギリギリ幹周3mを超えているのではないか。)
個人的には細かいことはどうでもよろしい、と思う。実際に来て、見て、感じる。それだけが全て。

5~6月には一面に淡紫色の小花を付け、10月から冬にかけては樹冠いっぱいに赤い実を付ける。その姿はまことに見事!とのこと。
…これほど頻繁に徳島県を訪れていながら、何故私はよりによって3月にここへ来てしまったのか 笑


偉大なる先人「巨樹と花のページ」の管理人さんが2008年に訪問された時点では根元がフェンスで囲まれていた模様。
根回りの肥大化もあって撤去したのでしょうか。幸いなことに直接幹に触れられる状態になっていました。

当時は立地が定かではなく到着までに随分迷われたとのこと。
現在はGoogleMapにも登録があるためアクセスは容易ですが、地図と人づての情報だけで日本中の巨樹を回った先人たちには頭が上がりません。
「巨木の世界」の小山さんとも、あの人たちは(良い意味で)まともじゃない!と盛り上がりました。現在とはアクセス難度が違いすぎますから…
これも小山さんと話したことですが、恩返しのためにも私たちの世代で少しでも情報をアップデートしていきたいものです。

一言で感想を述べるなら「思っていたよりも、ずっとデカい!」
正直言って巨樹的な迫力にはほとんど…いえ、全く期待していませんでしたが、その心配は完全に杞憂に終わりました。立派な巨樹です。


白っぽい樹皮に緑が映える。
実に美しい姿です。


手入れのため枝を落とされた形跡こそ見られますが、目立った欠損もなく健康そうに見えます。
出来ることなら晴れの日に訪れていただきたい。もちろんお気に入りの小説とパン、コーヒーは必須。


冬は樹冠いっぱいに赤い実を付けるそうですが、僅かにその赤い実が残っていました。
南天の実くらいの大きさでしょうか。この実が樹冠を埋め尽くす様は壮観であろうと容易に想像ができます。

ちなみにモチノキとの違いは葉柄にあり、クロガネモチの葉は紫黒色になると書かれていましたが…私にはどこが紫黒柄なのか理解できませんでした 笑
庭木図鑑 植木ペディア(酷いネーミングだ)によるとクロガネモチの実の方が色味が鮮やかであり、モチノキの実はくすんだ朱色で実の数も少ないそう。


撮影中ずっとヤマガラが私のすぐ傍で「お前は一体何をやってるんだ?」とばかりにカメラを覗き込んでいました。
これ以上近付くと逃げてしまうのだけど、すぐにまた目の前へとやって来る。
果物でも持っていたら一欠片分けてあげたくなる可愛らしさ。


目の前には小さな地蔵堂が。
私の立っている左側が整地されていたので、こちらを駐車スペースにさせていただきました。
巨樹を撮影するときは極力現地の環境と無関係な人工物を写したくないため、このような配慮は非常に助かる。


時間の流れを忘れてしまうくらい気持ちのいい空間。
案内神社がまさかの清掃中でじっくり巨樹と向き合えず自分のペースを掴めていなかったのですが、ここで一気に感覚を取り戻せた気がします。
クスノキのように巨大に育つわけではないのでツウ好みの巨樹ではある。しかし個人的にはおすすめ度がとても高いです。
ただし晴れの日に限る、かもしれない。巨樹を楽しむ。もちろんそうなんですけど、是非ともこの素晴らしい空間を全身で堪能して下さい。

2023/3/19訪問
「尾開のクロガネモチ」
徳島県指定天然記念物
樹齢 約600年
樹高 21m
幹回り 2.95m

徳島県阿波市市場町尾開字日吉576

コメント:4

匿名 23-03-24 (Fri) 23:48

おお、まさかこのクロガネモチの元に行かれるとは・・・
一応私が前に測った時は3.25mになっていたのでギリギリ巨木の仲間入りを果たし近年巨木ベイビー?となった訳なのですが
幹回り自体はそこまでですのでなかなかにマニアックな代物ですよね
樹勢や樹高はクロガネモチとしては良いのですけど

前に行かれた速雨神社の近くにも単幹で約5mのクロガネモチがあるのですけど
現在こちらはサルノコシカケに結構やられて割と危険な状態なんですよね・・・樹勢自体はまだいいのですが
いつ明確に目に見えて弱り始めるのか怖いです 人も少ない田舎は特に木のケアはなかなか難しいのでしょうね
こちらは順調に育って欲しい所です

to-fu 23-03-25 (Sat) 15:32

> 123さん
実はそこまで期待していなかったのですが、実際目の前に立つと全然印象が違いました。
改めて全景を見ると立体的でとても美しい樹形だと思います。
立地環境も良さそうなので、ひょっとすると数百年後には日本を代表するクロガネモチになっているかもしれませんね。

このクロガネモチを訪問してすぐに、そちらの「若宮神社のクロガネモチ」もチェックリストに加えました。
次にその辺りを通る際は是非とも立ち寄りたいと考えています。
樹木医を呼んで保護してもらうにも費用がかかるわけで、対象が観光資源になりにくい巨木ではなかなか事が進みませんよね。
せめて天然記念物指定したものくらいは自治体が最低限のケアをしてくれてもいいのでは…と、個人的には思います。

23-03-25 (Sat) 21:54

おお、クロガネモチ。2018年の自分の探訪時にもフェンスがありましたが、フェンスが増設されるのは多くても、その逆は珍しいケースですね。リニューアル工事中とか?
もっと近寄って撮りたかった記憶があるので、このチャンス、羨ましいです。

広々とした田園風景の中、農家の方々がせっせと働いておられ、お散歩の方がお堂をお参りしていたり。
カレンダーの一頁にしたいような「美しき日本」的風景の中、この巨樹の立ち姿もよく似合っていましたっけ。
いかにも水分が多そうで固そうな幹に比重計算をしてしまうのか、単純な見た目よりも大きさ(重さ?)を感じました。
車くらい衝突してもビクともしなさそうですよね。笑

モチノキの仲間って、おそらく多くの人が見てるはずなんですが、誰もが興味を示さない樹種でもありますね。
「ああ、あの樹か」というのと、「こんなデカいのは見たことない!」が同時に押し寄せてくる独特の衝撃があって、想像よりもだいぶ楽しめました。
知っておきたいのと同時、見られてよかった巨樹です。

to-fu 23-03-26 (Sun) 16:19

> 狛さん
狛さんは初回に訪問されてましたよね。(ほら、こういう玄人が行くんだ 笑)
あの「野神の大センダン」のすぐ近くなわけですが、私はちょうどお昼時だったため国道方面へと戻ってしまったのです。

柵はひょっとすると台風か何かで崩れてしまったのかも…と後になって少し考えました。関西圏は2019年に物凄いのが来たので。
そうだとすると触れてしまうのは良くなかったかもしれませんが、それなら代わりにパイロン置くなり何か対策するよなと
都合のいい方に考えて納得することにしよう。

まさにカレンダーに載せるにふさわしいクロガネモチですね。田園風景の中にぽつんと一本立つこの木が本当に映える。
仰るように見るからに比重の高そうな質感で、それこそミズナラみたいなコルク質の幹とは対極にあるような頑丈さを感じました。
モチノキの仲間だとイヌツゲなんかよく見ているはずですが、小さな苗木を生垣にするイメージが強いので、
もしいきなりここに連れて来られて「あれの仲間だぞ」と言われても、きっと理解が追い付かないと思います 笑

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