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徳島県板野郡板野町 岡の宮の大クス


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

さて。「矢上の大クス」を離れて次なる目的地、岡上(おかのうえ)神社の「岡の宮の大クス」へと向かうことに。岡上ということなので当然丘の上に神社があるのだろうな…と、よくある新興住宅街として整備された丘の上を散策してみたものの一向にそれらしい建造物が見当たりません。目的のクスも数値を見る限り巨大なクスノキであろうことは確実で、近くに生えているなら見えないなんておかしいぞ。と、ちょうど歩いていた地元の方に聞いてみると、確かに神社は丘の上にあるが境内に入るには丘の下からでないとダメだよ。ほれ、あっちの方だ。ですと。なるほど。丘の下とは完全に盲点でした。お礼を言って早速来た道を戻ります。


うーん…こっちでいいのだろうか。なんて後続車両に道を譲りつつ車を徐行させながら向かった先に見えるのが…これですよ!うわあ、すっげえ!一人で車の中で叫んでしまいましたね。この写真も興奮抑えきれず、車を一瞬停めてフロントガラス越しに撮った1枚。いや、駐車してからゆっくり撮れよって話なんですが、もう冷静ではいられません。

本当に何でわざわざ勿体ぶってトップ画像を丘の上の景色なんかにしたんだって話ですが、やはりこの登場シーンあっての「岡の宮の大クス」だと私は思うのです。徳島県の平野部はあまり大きい建物がないので遠くからでも巨樹が目立つ…というのは先日書いたとおりなのですが、やはりどこだ?どこだ?と探し回った先に、パッと唐突に巨樹が現れる瞬間のあの感動は、遠くから視認できない巨樹ならではのものなんですよね。そう、ここも背後が社叢の広がる小高い丘になっているので遠くからは全く目立たなかったわけです。私なんか完全に”遠くからでも目立つ巨樹”をイメージしてやってきただけに意表をつかれました。良い意味で、これはやられた!


今回の巨樹巡りで見た巨樹たちの中でも、相当な上位に食い込んでくるくらい好きな巨樹かもしれません。居心地の良さ、対峙した瞬間のインパクト…今回のto-fu的ナンバーワンはあの巨樹かあの巨樹、もしくはこの「岡の宮の大クス」かなあ、というところです。少なくともベスト3には入るなと。巨樹そのものの良さもさることながら、この周辺環境との調和が素晴らしい。こんなの一目見ただけで分かりますもん。大切にされている巨樹だということが。


根回り25mの一つの幹から三つに分かれ~と記載されていますが、実際に見た限りでは3本の株立ちのクスノキが癒着したものである可能性が非常に高いと思います。しかしそれが何だというのか。似たタイプの巨樹としては、まだ記事に書き上げることが出来ていないのですが和歌山県の「十五社(じごせ)の楠」と非常に近しいものを感じました。いやあ…あれも良いクスノキなんですよ。私なんか既に2回も訪問していますからね。そう、話が脱線しましたが巨樹ランキング上どうなっているのか知りませんが、見る者が感動することと株立ちだ合体樹だなんてことは全く関係の無いことだし、本当にどうでもいいことです。大道芸人も真っ青なスタイルで楽器を吹きまくったジャズミュージシャンのローランド・カークさん然り、素晴らしいものは理屈抜きに素晴らしいということですね。


巨樹の背後には拝殿へと続く階段が。早朝にもかかわらず近所のお年寄りが何人も参拝にいらしていました。結構しんどそうな階段ですがこの辺りでは定番の散歩コースなのでしょう。気持ち良いもんな、ここは。


境内全体を包み込むかのような巨大な樹冠。枝は道路まで突き出していましたが、伸びるがままに放置されています。危ないし切ってしまおう、とならないのは地域の方に愛されている証拠です。


本当にこれは大したクスノキですよ。クスの巨樹は森に形容されることが多いですが、これもまさに森!としか言いようがありません。雨がぱらついていましたがクスの麓に立っていると全く濡れません。ああ、この温かい包容力はクスノキ特有のものですよねえ。スギ、ケヤキ、イチョウ。他にも巨大に成長する樹種ならたくさんありますが、包容力でクスに並ぶものはいないでしょう。


株立ちとはいえ幹周17.66mは流石の迫力。見る角度によっては4本の株立ちにも見えますが、3本のうち1本が途中から二股に分かれています。


日当たりも良く、土壌の質も良いのでしょう。樹勢は上々。本当に文句無しの健康状態で、今後も一層楽しみな巨樹です。


もちろん参拝もしましたよ。見下ろすクスノキに、天気が良ければ鳴門海峡まで見渡せてしまいそうな大パノラマ…丘の上からの景色はさぞ素晴らしいのだろうとワクワクしながら登ったのですが、社叢が深すぎて遠くの街並みはおろかクスノキさえよく見えないような有様でした 笑


拝殿裏手には丘の上の新興住宅街からの抜け道があるようです。神社の境内は小学生の通学路になっているようでした。おはようございます!と元気のいい子供たち。なんとなくですが、クスノキも行ってらっしゃい!なんて挨拶してるようにも見えてきませんか?人間と巨樹の間に親密な空気が流れている(ような気がする)。ああ、本当に良い巨樹だなあ。このクスノキの下を毎日通うというのは一体どんなものなんだろう。まあきっと何も感じてませんよね 笑 でもきっと、いつの日かしみじみと思い出すときが来るのだと思います。何だか羨ましいな。


クスノキが溶けて支柱と一体化しているかのような。
100年後には飲み込まれていそうです。


素晴らしい雰囲気ではありませんか?一部分を切り抜くような撮影をするよりも、ただ全体の空気を感じるために引きで、引きで…とじりじり引き下がりながら撮影したくなる巨樹でした。そんな細かいところ見なくていいじゃない。どうでもよろしい。ほら、もっとおおらかにね。全体をズドーンと撮って。そうそう。うん、あとはまあのんびりしていきなさいよ。みたいな。ゆるーい空気がいいですね。なんかもう今日はここで終わりにしちゃってもいいかな…なんて考えちゃうくらい居心地のいい空間でした。まだ朝の7時半とか8時とかそれくらいなんですけど。本当に好きですね、この巨樹は。また会いに行きたいです。

2019/5/20訪問
「岡の宮の大クス」
徳島県指定天然記念物
樹齢 650年以上
樹高 25m
幹周り 17.66m

徳島県板野郡板野町大寺字岡山路七

コメント:4

RYO-JI 19-05-30 (Thu) 23:53

トップ画像を見て『ん?』と思いましたが、なるほどそういうことでしたか。
訪問前は色々と想像して行くことも多いわけですが、その勝手なイメージを覆す出現パターンと
想定以上のサイズや姿に完全にやられてしまったというヤツですね。
『やられた~』と思いつつ、顔がニヤけちゃう感じの(笑)。
そういう出会いを聞くとソワソワしてしまいます。

ここが通学路になっているっていいですね。
子供達はきっと守られているんだろうなぁと思ってしまったり。

そして今回の巨樹遠征でベスト3に入るとなると、相当凄かったんだろうと容易に想像できます。
写真を拝見していてもそう思えますし、あの十五社の楠と近しいということならば私も絶対に好きな巨樹だと確信しました。
う~ん、やっぱりこれはまた徳島に行かなくてはいけませんね!

to-fu 19-05-31 (Fri) 21:16

> RYO-JIさん
本来であれば3枚目の画像あたりをトップに持ってくるべきなのでしょうが、この方の場合は
登場シーン含めて魅力だと思ったので、やはり丘の上からだろうということになりました。

通学路にこんな巨樹がある暮らしって羨ましいですよね。
徒歩圏内にこういった落ち着く場所が無いもので、毎朝こんな場所を散歩できるような暮らしに憧れます。
(ある意味では、つるぎ町みたいなところでの暮らしにも憧れますが…でもきっと大変ですよね。)

このクスノキはきっとRYO-JIさんも狛さんも気に入って下さるんじゃないかと勝手に思ってます。
帰ってきて改めて徳島の巨樹データを見返してるんですが、まだまだ行っておくべき巨樹が目白押しですよね。
巨樹リストなんか眺めてしまうとこのまま四国エリアにハマってしまいそうで怖いです…

19-06-02 (Sun) 19:56

こちらさん、徳島港に近づいていった最終日の最終に寄らせてもらいましたが、僕も何の疑いもせずに坂の上から行ってしまいました。
あれれ……と、あの急な石段を下っていってクスの樹影が見え、駐車スペースを探して……この石段また戻るのか笑、と。

単幹のものとは違った立ち姿のクスですが、青々しい茂りの健やかさでは、確かにこの旅でも上位に印象できるいい樹でした。
僕が行った日は暑いくらいの日差しだったので、この木陰がたいへんに気持ちよかったです。
何しろ、石段下の広場ほとんど全てを屋根のように覆っていて、とても落ち着く空気感にしてくれているんですよね。
近所の人も、きっとそういう居心地の良い空気を作ってくれる樹を大切に思っているに違いありません。
夏の盛りには神社のお祭りがあったりするんですかね。ちょっとした縁日や盆踊りがあったりするのかな。
この樹のもとに人が集まるシーンをぜひ見たい、そこに加わりたいなあと想像しました。

to-fu 19-06-03 (Mon) 16:17

> 狛さん
最終日も素晴らしい天候だったでしょうね。
いやあ、僕も晴天時に徳島平野部を回ってみたかったです。
5月前半は時期としても最高すぎたので、再訪するならやはり来年の5月前後になるのかなあ…

徳島県の単幹最高峰はもう間違いなくあのクスですが、こちらもまた別部門では負けていない印象でした。
そうそう、岡上神社とかいうミスリードを誘う名称も含めて本当に印象に残るんですよ。
上からアクセスされると確かに登るときゲンナリするでしょうね。結構ハードな階段でした 笑

加茂の大クスといいこのクスノキといい、ぜひとも地元のお祭りに参加したいですよね。
りんご飴やイカ焼きなんかを片手に、チョウチンに照らされた巨樹を眺めてみたいものです。

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