- 2019-09-08 (Sun) 9:48
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | モミ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 徳島県
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
日本一の大エノキを見た後は当然こちらにも立ち寄らねばなりません。流石に日本一と並べられると全国第6位という称号はどうしても見劣りしますが、ここは敢えて断言しましょう。見ておいて損の無い巨樹です。駐車スペースも無いし面倒だと思われるかもしれませんが、こちらのモミもお忘れなく。今回恐縮ながら赤羽根大師に駐車させていただいたまま徒歩でこちらまで向かいました。わずか数百メートルですが、道中のダイナミックな風景も必見。ただ車窓から景色を眺めるのとその場の空気を吸いながら地に足つけて歩くのでは、感動の質が全く違いますね。
先程の階段を登った先には白山神社が。日頃白山のお膝元で巨樹巡りをすることが多いワタクシですが、こんな四国の山奥にまで白山神社が祀られていることに軽い感動を覚えました。遠く白山からやってきた修験者が開山したのでしょうか。こちとら偉大なる剣山のお膝元ですから、白山神社と名付けられながらもその実、信仰対象は剣山であったに違いありません。境内を見渡すもそれらしい巨樹は見当たらず。モミの巨樹は鳥居をくぐった先ではなく、境内の外側を左側に迂回した先にそびえ立っていました。
遠目に見ても一瞬で分かります。ああ、これは良い巨樹だ。心底来て良かったと思えるタイプの奴だと。モミの巨樹は今まで何本か見てきましたが、最初に見た日本一のモミ「追手神社の千年モミ」こそ現実味の無い圧倒的なスケール、存在感に感動したものの、その他の数本はいまいち印象に残らなかったんですよね。うーん、ただ大きい木だなあ…という。しかしこのモミは何だ?今まで見たモミはどれもが清潔で背筋がシュッと伸びたそれこそ優等生のような巨樹だったので、この半分野生化したような荒々しい立ち姿の巨樹が同じ樹種だとは信じられません。
言い訳のようですが…いえ、ホントごめんなさい。自分の技術の無さを棚に上げた言い訳でしかないんですが、モミの巨樹の魅力を写真や文章で伝えるのってほぼ不可能に近いんですよ。この写真を見ても確かに周りの木より圧倒的に太く、そして高さも図抜けたものであることがお分かりいただけるかと思います。でも違うんです!実際目にするとそんなもんじゃないんです!(だってこの写真見て行くか?って言われたら、自分だって優先度高の「絶対行く」ではなくて優先度中の「近くを通ったら寄る」に分類すると思います 笑)他の巨樹だってもちろんそうなんですが、特にモミの巨樹は現地に行ってその凄さを体感していただきたいですね。はい。
着生植物に覆われた箇所を見ているとお前は本当にモミなのか?と問いたくなりますが、その樹皮を見ると明らかにモミ。立ち姿こそスギの親戚のようですがモミはマツ科です。どちらかといえばマツに近い質感。表面が白っぽくなっていた追手神社の千年モミと比べると随分と若々しい気がします。推定樹齢約600年ということですが、個人的には400年程度では?という印象を受けました。(千年モミですら推定500年。)
県内最大のモミの木。幹周6.3mというとスギ基準では「まずまず」に分類されますが、あまり幹周が変わらないまま天まで突き抜けるモミの場合は6mクラスになるとそれだけでも相当な迫力。よくぞこの日当たりが良いとも思えない山奥でここまでの大きさに育ったものです。
ちょうど日当たりの良い側…仮にこちらを正面としておきますが、正面は健康そのものな「陽」のモミの樹皮、反対の背面側は「陰」のイメージで苔生した真緑の樹皮と、対極的な二つの表情を持っています。
こちらのモミらしからぬ野趣溢れた表情が好きですね。写真では分かりにくいかもしれませんが、真っすぐに伸びているわけではなく、日の光を目指してぐにゃっとやや湾曲するように伸びています。その姿はまるで太古から生き続ける巨大な首長流のよう。決して頼りなくヒョロッと伸びているわけではなく、しなやかな筋肉のような逞しさが感じられます。
これがモミですから…まあ樹皮が見えないのに分かるわけないだろ、ということもありますが、神社のモミといえば御神木として非常に丁重に扱われているものが多いのでこの姿には驚かされます。恐らく数十年後にはこの辺りから人の気配が無くなってしまうことでしょう。そうなってくるとあの「赤羽根大師のエノキ」なんかは生命を維持することが難しくなりそうですが、このモミに関しては今までと何も変わることなく生き続けるのだろうと思います。ただ在るがままに生き、自然の摂理のままに朽ちていく。日本一のエノキと全国6位のモミ、樹木の人生としてどちらが幸せなのかは知る限りではありませんが。
弧を描くようにやや湾曲しているのがお分かりいただけますかね。周辺の樹々から頭一個飛び出しているので、日の光を受けるということに関しては問題無さそうです。樹勢は上々のように見えましたが周辺から頭一個抜けている分、落雷だけが心配。落雷で倒壊したとしてもそれもまた自然の摂理…と黙って死を受け入れそうな巨樹ではありますが。
白山神社の境内には倒壊したイチイガシの巨樹も。まだ傷跡が生々しかったので、へし折れたのは最近のことなのかもしれません。近付くことが出来ませんでしたが、目測では幹周5mクラスでしょうか。カシとしては立派な巨樹だったと思われるので残念です。
さて最後に総評を。全国6位とはいえ数値だけで見るとあまりパッとしない(実のところ幹周6m前後のモミの巨樹は全国的に見るとそこまで珍しいものでもない)というのが正直なところだと思いますが、このモミらしからぬ立ち姿は必見です。ランキングを眺めているだけでは魅力に気付けない隠れた名樹。個人的には見応え、撮影の興奮度でいえば先のエノキよりもこちらのモミが上回っていました。面倒臭がらずにぜひ。
2019/5/21訪問
「白山神社のモミ」
徳島県指定天然記念物
樹齢 推定約600年
樹高 38m
幹周り 6.31m
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コメント:4
- RYO-JI 19-09-08 (Sun) 20:57
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今回の巨樹旅では事前の期待度で言えば割と低めだったこのモミですが、
『ごめんなさい』と謝らなくちゃいけないくらいの名樹でした。
あの鬱蒼とした山の中にひっそり、しかしながら力強いその存在感に完全に心打たれましたね。
日本一のモミにも近々会いに行こうと思っています。
そして毎回思いますが、この凄さスケール感をうまく表現する手立てはないですかねぇ。
肝心の写真だけでなく、言葉でもちゃんと伝えられないもどかしさがあります。
それでも諦めずに続けてしまう魅力が巨樹にはありますね! - 狛 19-09-10 (Tue) 8:50
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こういうこともありますよね……メインよりも優れたサブに感動させてもらえるような。
僕としても大エノキについては「ほほう、こういうものなのだな」という範疇でした。
樹種の性質もあれば、接近できなかった状況のせいもあり、はたまた、あの場所のものすごい秘境感に目を奪われてしまったこともありで、ちょっと正当な評価ではなかったかもしれませんが。
その点行くとこのモミは逆の評価ができ、素直にその迫力に驚くこともできて、個性的な良い巨樹だったなと覚えています。
モミの巨樹を見るたび、あの太さ・長さ・バランスで立っていられるということ、樹木というものの凄さにシンプルに驚くことができます。
人工物であれだけの質量をああいう風に、しかも何百年も支えることって、おそらくできないんじゃないかと思うんですよね。
この樹の場合、そこに野生が加わって、よくある御神木連中とは一線を引いた存在感になっているところが良かった。
まさにつるぎ町の大樅というイメージにぴったりでした。
ともあれ、このモミにたどり着くことができたのも、日本一の誉れ高い大エノキのおかげだったよね、とも思います。
行けて良かったです。笑 - to-fu 19-09-11 (Wed) 11:05
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> RYO-JIさん
本当にゴメンナサイですね。
もしあの日本一のエノキの前情報がなければ、このモミのためだけに立ち寄っていなかったように思います。
モミは本当に撮影が難いので、他人様のサイトなんか見ててもあまりグッと来ないんですよね…
そう、言葉にしても語彙の幅が中学生から一切広がってないので、すげえ!とかでかっ!しか出てこないので困ります。
日本一のモミも相当なものですよ。
近くの「木の根橋」なんかも一緒に散策されるなら、この地獄の残暑が落ち着いてからの方が良いかもしれませんね。
出来ればご一緒させてもらいたいですが最初は一人でゆっくり眺めるほうが良いのでは?という気持ちもあり…複雑です 笑 - to-fu 19-09-11 (Wed) 11:14
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> 狛さん
大エノキはいくら大エノキと言えどやはりエノキなので(なんだこの言い回し)、想像の範疇ではありましたね。
仰るようにやはりあのデッキを歩いて正面からの構図で堪能できなかったのが残念です。
裏側から見ても充分凄いですが、裏側から見ちゃうとホントあのエノキよりも景色に目が行っちゃいますから 笑
このときのルート上には他に凄すぎるヤツラが多すぎたので、このモミは事前情報もほぼ皆無の状態で臨みました。
それがまた功を奏したのもあるんでしょうけど、ここまで個性的な一本だと思わなかったので感動しちゃいましたよ。
本当にこれ、「つるぎ町の大モミ」とかそんな名前の方がしっくり来ますよね。
この環境でしかこの育ち方は出来なかったんじゃないかと思います。ぜひともつるぎ町の名前を冠してほしいなあ。
気軽に行ける場所ではありませんが、いつかまたこのモミにも再会したいですねー。
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