- 2019-09-17 (Tue) 17:53
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | スギ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 福井県
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
石川県白山市でトチノキ界の大物に会った後、やって来たのがこの福井県池田町。池田町と言われてもいまいちピンと来ないという方がほとんどなのではないかと思います。福井県越前市から東へ20~30km程度でしょうか。最寄りの武生ICからアクセスしようにも絶対に山道を抜ける必要があり、なにがしかの目的でもない限り何かのついでに立ち寄るような立地でもない…ぶっちゃけ私だってこの「稲荷の大スギ」がなければ一生訪れることはなかった土地かもしれません。
実は過去に一度だけ訪問を試みたことがありまして、直前まで来てまさかの山道崩落につき全面通行止めということで到達できなかったんですねえ。そんなわけでちょっと苦い思い出になっていた巨樹なのでした。とはいえ県指定天然記念物、幹周10mオーバーという巨杉は流石にリスト上で目を引きますからね。いつかは来なければと思っていました。
大スギは須波阿湏疑神社(すわあづきじんじゃ)の御神木。本殿の裏山に立っているといいます。須波阿湏疑神社とはまた初めて聞いた名前ですが、「すわ」の神「建御名方命」と「あづき」の神「大野手比貢命」を祀る神社だということです。ちなみに稲荷の大スギと呼ばれているくらいだし稲荷神社ではないの?と思われるかもしれませんが、この稲荷はお稲荷さんの稲荷ではなく、ここの地名が池田町稲荷だというだけなんですね。ええ、池田町稲荷に生えている大スギだから稲荷の大スギ、です。
この須波阿湏疑神社。これがまた以外にも(失礼)立派な神社で、恐らくこの地域のランドマーク的な神社なのではないかと思われます。巨樹探訪の前に参拝させていただきましたが、身がピリッとするような緊張感があって早速気に入ってしまいました。唯一残念だったのは先日某巨樹仲間の方も書かれていたことですが、境内で犬の散歩をするアホを見かけたことですねえ…いや、そのウ○コさあ、持ち帰ればいいってものではないでしょう。それならワタクシ、お宅の庭にウ○コしても良いですかね?ちゃんと持ち帰りますから。犬は昔飼ってたしペットは家族だという感覚も理解できますが、最低限のマナーは守っていただきたいものです。他人様の土地で…というのもアレですが、そもそも鳥居から先は御神域ですからね…地元京都では多くの神社がペット立入禁止の看板を掲げていますが、あれっていちいち書かれないと分からないレベルの話なんですかねえ。
冒頭の写真に「稲荷の大杉←徒歩5~6分」なんて書かれたアバウトな案内板がありました。実際登ってみた感覚では大体10分くらいの印象です。メチャクチャしんどいわけではないけれど、巨樹に興味が無い人だったら途中で引き返したくなるだろうなってくらいの道のり。(実際帰りに学生くらいのカップルとすれ違ったんですが、彼女の方が疲れた!もう降りよう?ってぼやいてました。まあそこ、まだ半分も登ってないくらいの場所だったんですけど。)
まだ続くのか?もういいだろ…なんて思い始めた頃に木陰から覗くあの姿。まだかまだかと歩き続けてふと視線を横に逸らすと、明らかに周辺の樹木とは違う規格外のシルエットが!この道のマニアの方にしか分からない感覚かと思いますが、この瞬間こそが山中の巨樹訪問の醍醐味なんですよねえ。圧倒的サイズ感で魅せることの多いスギの巨樹はまさにその傾向が顕著に見られます。ここで疲れも全て吹き飛ぶし、暑いとか寒いとかそんなこともどうでもよくなってしまうわけです。
うん、これは立派なスギだ。
根本にまで近付けないのが残念ですが、流石は県天クラス!と唸るだけの迫力は感じます。
ただ、実のところ…ですよ?
個人的な感想を述べさせていただくなら、感動のピークは先程の対面の瞬間だったと言わざるを得ません。うーん…何しろ周囲が完全に鬱蒼と覆い茂っているので全景がイマイチ掴めないし、撮影できる立ち位置が限られすぎているので写真を撮ろうにもいちいちフラストレーションが溜まるという。
言い出すと止まらなくなるのが私の悪いところ。大体この解説板にしても盛り過ぎじゃないですかねえ。伝承によると西暦700年代には既にそれなりの大杉だったそうですが、とてもそうは見えない。また、この目通り(幹周)10mにしてもそこまであるかなあ。私の目測ではせいぜい8mそこらではないかな、と。「県内はもとより北陸一の大杉」というのも引っかかります。県内だけでも岩屋の大杉…は卑怯かもしれませんが、少なくとも西光寺の大杉の方がずっと立派な立ち姿だったように思いますけどね。いやはや性格悪いですねえ、私。
でも、ちょっと見上げたらこれですよ。一番下の枝の位置をヒューマンスケール写真と比較してくださいね?これで樹高40mって…甘めに見積もっても20~25mくらいではないでしょうか。ひょっとすると天然記念物指定以後、台風や落雷で主幹が折れてしまったのかもしれませんが。でも幹周や樹齢の盛り方を考えると…。
決して見応えがないと言っているわけではないのです。
雪深い福井県山間部に立つウラスギ特有の力強さはしっかり見られます。この積雪の重みに耐え忍びながらうねるように生長する様からは地域特有のドラマが感じられるし、その歴史の重みの集大成ともいえるスギの樹皮からは長く険しい北陸の冬の厳しさが伝わってくる。
素晴らしい巨樹なだけに、人間が下手な小細工で飾り付けるような真似をしてほしくなかった。ただただそれだけなんですよ。巨樹本来の魅力だけで充分人を惹きつけられますよ。下手に数値を盛ったりされるとむしろガッカリ感の方が強く印象に残ってしまうではありませんか…
注連縄を巻き直す作業中なのか、枝を剪定している最中なのか。いずれにせよ御神木として丁重に扱われている様子は窺えました。ここまで作業に来るだけでも大変だろうなあ。
洞穴こそ見られるものの樹勢はそれなりに良好な様子。正直今現在このスギが北陸一と言われると首をかしげたく…いえ、馬鹿言ってんじゃないよ!とどつきたくなりますが、いずれは北陸一の称号も目指せるくらいのポテンシャルを秘めた巨樹だと思います。今後に期待したいですね。もっともその頃にはとっくに私は死んでいるでしょうけど。
背後から。この写真のちょっと上が葉の茂る頭頂部なわけですから、流石に40mは大袈裟ですよね。今記事を編纂しながら思い返しても「あれはホントに出オチだった!」としか思い出せない巨樹ではあるのですが、巨樹そのものはスギの巨樹としても相当なものなのです。決して行く価値が無いだなんて思わない。でも、形式的なスペックだけを見て期待して行ってしまうと落胆が勝るのは間違いないでしょう。まああまり期待しないで、何だか大きなスギがあるらしいぞ?くらいの軽い気持ちで臨んであげて下さい。その方が満足度も高いような気がします。
2019/6/23訪問
「稲荷の大スギ」
福井県指定天然記念物
樹齢 千数百年(推定)
樹高 40m
幹周り 10m
※一応現地案内板より抜粋しますが、私感では数値よりずっと小さいです。
コメント:4
- 狛 19-09-17 (Tue) 20:06
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どこかで見たことがあったような……と記憶をたどれば、あの福井合宿で最初に行った杉でした!
「出オチ」とto-fuさんが書かれていますが、何をシツレイな、と思ったかどうかわかりませんが、自分がどう記録したのかが無性に読みたくなり、読んでみたところ……さっぱりしていました。苦笑
うーん、そうですね、測りやすそうな形状をしているし、今となってみればぜひ実測検証してみたい幹周です。
7、8メートルもあればご神木としては立派なものですが、他の福井勢がまたスゴすぎるので……いや、あの時は初めて会って初めて巨樹を一緒に撮りに行くというRYO-JIさん、坊さんに割られたバンパーの方に意識が向きまくっていて、いや、その。
だめだ、それにしても、岩屋で見た飯森杉の方が完全に上回ってしまっていますね。笑
三丈三尺、って語呂がいいんですよね。
威厳ある神社だからこそ、そのまま口伝が生きてしまっているのかもしれません。
巨樹は何も悪くない。
それを繰り返しつつ、あのツアーの最初にこの杉を見させてもらって、我々のプランニングはまあまあ冴えてた! と言っておきたいです。笑
なんて、そう考えると、それなりにいい旅の思い出として残っていてくれています。RYO-JIさんとto-fuさんのおかげです。 - to-fu 19-09-17 (Tue) 20:51
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> 狛さん
僕も階段を登りながらの構図を撮りながら、あれ?ここ狛さんとRYO-JIさんが記事にしてなかったか?と思ったんですが、
やはりこのスギでしたか。改めて狛さんの記事を読ませていただきましたが、なるほど、地名の稲荷は稲荷神社にあやかった
もので、お稲荷さんと全くの無関係というわけではなかったんですね!
実のところ僕の場合は単に色々なサイトで福井県の巨樹を下調べしすぎてしまって、この巨樹に対する期待値が
上がりすぎていたことが不満の原因なのだと思います。そう、本当にこの巨樹は何も悪くない。
狛さんやRYO-JIさんのように「お、ここの杉は凄そうですね。」くらいの気持ちで臨んでいたら印象も変わった気がします。
ただやはり数値はかなり眉にツバなものだったと思います。ぜひとも我々で実測してみたいものですね。
先日奈良県の「婆羅門杉」を見てきたのですが、こちらは逆にいやいやもっと大きいでしょ!と思わされる巨樹で
これも自分で実測できなかったことが悔しかったです。20m巻尺とソロ測定用のパーマセルも携行しないとダメですかね… - RYO-JI 19-09-18 (Wed) 22:20
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おおー、このスギにも行かれたんですねぇ。
あの緑の隙間からチラッと見えた瞬間の興奮が鮮烈で、とても印象に残っているスギです。
狛さんとの福井巨樹行の一発目に相応しい良き巨樹でした。
私の場合はあまり調べずに行ったこともあって、そこまでは期待値が高くなかったような・・・。
何せあの岩屋の大杉を見たいがために福井に行ったので、それに比べるとどうしても他は期待値が低くなってしまいますが(汗)。
数値に関してですが、自分はまだまだ感覚が鈍いのかなぁと思うことが多々ありまして。
現代の技術があれば、実測しなくともアプリか何かで簡易計測できそうですよねぇ。
ただ需要が無さそうなので誰も開発しないでしょうが(笑)。 - to-fu 19-09-19 (Thu) 10:16
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> RYO-JIさん
あのチラッと見えた瞬間はまさに鮮烈ですよね。一人でおおっ!!って叫んでしまいました。
岩屋の大杉や飯盛杉と比べられちゃうとちょっと気の毒ではありますね。
あのエリアには他にも白山神社のカツラがあったりと大物揃いなので、どうしても格落ちする感は否めません。
もちろんこの方だって十分に凄いスギなんですけどね。京都にあったらそれこそ一躍トップクラスですよ。
数値は私もまあ何となくでテキトーなので、やはり機会があれば実測するようにして感覚を養いたいところです。
レーザー距離計の要領で幹周も測れそうなものですけど…やはり我々以外には需要が無さそうですからね 笑
↑と思ってちょっと調べてみたらライカ様がそんな機械を作ってました!
https://www.youtube.com/watch?v=WwgBkZbprNw
お値段14万円だそうです 笑
が、頑張れパクリ中華メーカー…
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