- 2019-11-04 (Mon) 21:05
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | スギ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 徳島県
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
さて徳島巨樹界のダークホース、「桑平のトチノキ」から目と鼻の先。
桑平堂の大スギにやってまいりました。
これは徒歩170mで大スギ、車1.2kmで大トチというわけではありません。徒歩なら山道を突っ切って170m、車で1.2kmほどぐるっと上り坂を進んだ先でも2本の巨樹にアクセスできますよ、という意味合いです。我々は今回手前に車を停めて徒歩で向かいましたが、どうなんでしょうね。後々になって思えば先にまずスギを見て、後からじっくりとトチノキへ…でも良かったような気もします。だからといって後悔が残るほどのことでもありませんが。まあその場の気分でどうぞ。どちらでも大差ないと思います。
こちら先日紹介した「桑平のトチノキ」ですが、実はこの私が立っているすぐ後ろには大スギがそびえ立っています。この写真を撮影しているときその存在に気付いてしまいまして。正直言うと「あ、これはそこまで見応えのある巨樹ではなさそうだな。」なんて思ってしまったわけです。でもトチノキがあまりにも素晴らしすぎたので仕方ありませんよ。あのトチは本当に凄かったんですから。
しかしこうして目の前に立ってみると随分印象が違います。思ったよりもずっと立派なスギだ。そう、ここからトチノキまで少し坂道になっていてトチ側からだとその逞しい幹が見えなかったもので、これは大したことないスギかもしれないなんて失礼極まりない誤解をしてしまったのです。
ちなみに麓に建つ桑平堂ですが地元では「一夜建立の堂」と呼ばれており、別の場所から一夜にして運ばれてきたという伝承が残っているそうです。四方を四尺ほどの腰板で囲った建築様式は他では見られない独特なもの、なのだとか。
そして我々の幹周初実測のターゲットとして思い出深い巨樹なのです。実測値約7.8m。公称値約8mということなので、まずまず正確な数値が測れたのではないでしょうか。いえ、伝承などを元に公称値が随分と盛られていることが多いこの業界?なので、まず公称値が正確であることに対して驚くべきかもしれません。
7.8mといったらスギの巨樹として全国的に見てしまうと目立った数値ではないかもしれませんが、実際目の前に立つと充分な凄みを感じさせてくれる数値です。私が麓から眺めた印象では6m級か?くらいの印象でしたから、本当に良い意味で期待を裏切ってくれました。
それなりに積雪のある山奥に育った巨樹だからなのか、どことなく日本海側に多く見られるウラスギ的な風情のある枝振りをしていました。雪の重みに耐えたことが原因なのか大枝もグニャッと湾曲しています。
幹は樹高5m強辺りから分かれて成長しています。
素晴らしい枝振り。ご覧のとおり樹勢は良好で、健康そのものといった若々しい樹冠が青空に映えるのが非常に印象的な巨樹でした。
そう、この姿。少し離れたところから眺めるこの姿こそが「桑平堂の大スギ」の真骨頂ではないでしょうか。先述のとおり全国的に見ると目立った数値の巨樹ではありませんが、これだけ周囲が開けた状態で天まで突き上げる状態を眺められる巨樹というとそうそう思い浮かびません。
これだけ周囲が開けた山奥で強風や台風、落雷による目立った被害を受けること無く生き続けているわけですから奇跡といっていいかもしれません。周辺のスギも大きいのでそこまで樹高があるように感じられませんが、実際は50mクラスですので背の高いスギの巨樹としても相当なものです。この周辺を通られることがあったら桑平のトチとスギには是非ともセットで立ち寄っていただきたいですね。決して後悔しませんから。
2019/5/21訪問
「桑平堂の大スギ」
つるぎ町指定天然記念物
樹齢 約500年
樹高 48m
幹周り 8m(実測7.8m)
コメント:4
- 狛 19-11-05 (Tue) 22:12
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この樹が凡庸に思えるという、凄すぎるつるぎ町、四国ですね……。今考えれば。汗
いやいや、あの素晴らしいトチノキのすぐそばにあるのも悪くて。この杉の立地にあったとしたら、相当のものがなければ霞んでしまいます。
しかし、こうして改めて見ると、実に理想的な育ち方をした良い杉ですね。
この遠景のすっくと立った姿がなんとも綺麗。確かにここまで絵に描いたような杉はいくつも思い浮かぶものじゃないな……と。周囲の風景がまたいいなあ。
この素直でちゃんと大きい樹を実測体験に使えたのは幸いでした。
心の基準木として、案外ずっと記憶していくかもしれないなと思っています。 - to-fu 19-11-06 (Wed) 17:04
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> 狛さん
そうなんですよね…この杉だって本来であれば相当なものなんです。
ただ相手があのトチノキとなるとどうしても分が悪いと言わざるを得ません。
先にトチを見てしまったが故の不幸だったかも、とも思うわけで、そうすると車でアクセスして先に杉から拝見した方が
いいのか?などと考えたんですが、そうすると車を降りて一発目からあの杉の醍醐味である全景が見えてしまうわけで
それはそれで勿体ないかもしれないなと。そんなことを考えてたらどちらが先でも一長一短か、という結論に至りました。
杉の良さはもちろんですが、なによりあのつるぎ町最奥部の風景が格別でしたね。
次回はあの先、439から鉾杉に立ち寄って杉の大杉へ。その辺りに1泊して翌日は加茂の大クスを目指すルートかな…なんて密かに妄想しています。 - RYO-JI 19-11-08 (Fri) 22:49
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徳島巨樹界のダークホース・・・ピッタリ、いいネーミングです(笑)。
あのトチの後では影も薄れがちですが、このスギも只者では無かったですよね。
あの遠景からの見事な全形姿はいまなお脳裏に焼き付いています。
サイズ等の記録上では巨樹界においては埋もれてしまう存在かもしれませんが、
我々にとっては記念すべき初実測の巨樹ですから記憶に残る存在です(狛さん、ありがとうございます)。 - to-fu 19-11-09 (Sat) 15:56
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> RYO-JIさん
あのトチは加茂の大クスはじめ平地のクス勢さえいなければ、もっとメジャーに成り得る存在だと思うんです。
なんとなく、あの場所はあまり人目につかない一部マニアだけが知る隠れ里的なものであってほしいような気もしますが…
大スギさんは数値だけで見ると我々から見てもそこまで目立った巨樹ではありませんけど、あの秘境的立地に
立っていることに充分な意味があると思いますね。恐らく大昔に剣山を目指した修験者たちも、あのスギの麓まで
たどり着いたら「やっとここまで来たか…」なんて、ほっとしていたのではないでしょうか。
そしてあの地の景色はその時代からほとんど変わってないんだろうな…なんて思うとロマンを感じます。
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