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京都府京都市 遊龍の松


SONY α7III / TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD

「日本一の松 天然記念物 遊龍」。ええ、松界のレジェンドとも言える「遊龍の松」を見てきました。今回ばかりは流石に超広角ズーム以外の選択肢は有り得ません。超広角一本勝負。普段横着して標準ズームに頼りっぱなしなだけに、なかなかテンションが上がる言葉ではありませんか。やはりレンズ交換機たるもの多様なレンズを使い分けてこそ初めて価値が生きるというもの。普段と違う画角というだけでファインダーを覗くと楽しくて仕方ありません。


京都西山 西国第二十番札所、善峯寺(よしみねでら)。知る人ぞ知る京都の紅葉の名所で、私が毎年紅葉を楽しんでいる北区の吟松寺なんかと並んで自称・京都の紅葉の穴場に詳しいんだぜ的な、ちょっとツウな人々には有名なお寺です。ちなみに善峯寺近くの光明寺も紅葉の隠れ家的スポット。紅葉のおすすめスポットを聞かれてこの辺のお寺を答えてあげると何となく出来るヤツ感が出せると思います。いわゆる観光名所的な賑わいを求めての旅行だとちょっとイメージとは違うかもしれませんが。


まずは本堂を参拝、そして御朱印をいただきました。逸る気持ちを抑えて「日本一の松」への順路に従います。


どうだ、日本一の松!
………。え?一体何が凄いのか、ですと?


これ全て一本の松なんですね。写真中央やや左側のちょこんと伸びたキノコみたいなのが幹、そこからL字型に枝がぐわーーーーーっと伸び続けているわけです。


とんでもないなこれ。
予想はしていましたが、どう撮影してよいか全く分かりません。


ようやくゴール。こちら側の枝は約25mもの長さを誇るそうです。


「遊龍」は安政4年(1857年)に花山院右大臣家厚公によって名付けられましたが、まさに龍が地を這い遊ぶような様をしています。巨樹とは少し違うジャンルになるけれど、これはこれで凄い。いやはや眼福です。


巨樹のほとんどは人の力無くして生きられないなどと言われます。遊龍の松はまさにその典型でしょう。推定樹齢600年以上の五葉松。これはもう600年がかりで代々の職人の手によって作られた一つの芸術作品と言ってしまって差し支えありません。圧倒的な迫力!というのとはまた違うものの、これが人の手によって作られたのだと思うと感慨深いものがあります。


龍?大蛇?真下から見上げる姿もまた良い。


L時の逆側。こちらは以前27mもの長さを誇ったものの、平成6年にマツクイムシの被害を受けて一部が枯損。結局15mを伐採することで何とか被害を食い止め、現在は12mの長さに留まっています。12mだって相当なものに間違いないのですが、やはり25mを見てからだとどうしても見劣りします。25mと27m、幹の部分を加えると最盛期は54mもの全長を誇ったのだとか。つい25年ほど前まではその姿が確認できたのだと思うと残念でなりません。(25年前なんて巨樹巨木どころか、ろくに勉強すらせずに鼻水垂らして遊び回ってましたが 笑)


マツクイムシの被害を受けていた箇所、その切断部だと思われます。少し覗いてみたら幹は完全に空洞化していました。私が巨樹巡りを始めてからでも既に何本もの松の巨樹(それもランカークラスの名木)がマツクイムシの被害で伐採されてるんですよね。被害は本当に深刻で、この「遊龍の松」もいつまで見られるか分かったものじゃないぞ、ということで出来るだけ早く訪問したかったんです。


そんな人間の心中知ってか知らずか…いえ、知らんがなと言わんばかりにぽけーっと立ち尽くす主幹さん(樹高2.3m、幹周1.6m)。ちなみにこれでもこのお方、国の天然記念物に指定され、かつ新日本名木100選にも選定される立派な松の木の本体です。


歳をとってこういうものの良さが分かるようになってきたんだなあ。


下側から。ちなみにこちら、紅葉や桜の時期以外なら一脚・三脚共に使用可能となっていますが、三脚使ったところで…と個人的には思います。ええ、私が持って行って結局使わなかったというだけの話なんですけど。遊龍の松を抜きにしてもとても見応え、歩き甲斐のあるお寺なので、ちょっとしたハイキングくらいの格好で参拝するのがベターかと。

2020/1/22訪問
「遊龍の松」
国指定天然記念物・新日本名木100選
樹齢 推定600年以上
樹高 2.3m
幹周 1.6m
全長 現在37m(平成6年までは54m)

コメント:4

20-01-23 (Thu) 22:27

歳をとってこういうものの良さが分かるようになってきたんだなあ……という、この一言にいくつもの共感があります。
巨樹を撮り始めた数年前ですら、こういった「作られた巨樹」に対しては「天然ものじゃない」とかうなぎの文句を言うエセ食通みたいなことを口走った記憶がある僕ですが、今の心境はただただ「自分も見に行きたい……」です。笑
世の中にはいろいろなものに夢中になってる人がいるけど、それにはそれなりの理由と価値があるという、それをようやくフラットに理解できるようになってきたのかもしれません。面白い。

とはいえ、いやほんと、こと松とあっては早く見ておかないと、という焦りがあります。
山形の「東法田の大アカマツ」も、ついに間に合わず枯死宣言が出てしまいましたし……。
この松さんも短くなってしまったようですが……しかしながらこの眺め! なんてモノを作り出してしまったのであろうか……と呆然となりそうです。
果たして先端まで栄養や水分が送れるものなんだろうか……松としては途中で着地して根を出せないもんかと思っているでしょうが、これを空中にしてしまうんだものなあ。
何世代にもわたって、この松の世話をしてきた人たちの記憶と念がなせる技というしかありません。
いや面白い。天然(じゃないけど)記念物にまさしくふさわしい珍重されるべき存在です。

to-fu 20-01-24 (Fri) 15:59

> 狛さん
自分もこの松を見ながら、ああ今来て本当に良かった。これが巨樹巡りを始めてすぐの頃だったらきっとよく分からずに
スルーしていただろうな、と思いました。支柱ありきとはいえこれが600年間倒れずに生き続けているわけですから、
もう脅威としか言いようがありません。そして600年前の植木職人サンは恐らくこの形状をイメージして松を育て始めたのだろうと
思うと、本当にとんでもないことです。その意志を受け継いできた歴代の職人たちも凄い。

昨年夏の長野県巨樹めぐりの下調べした時点でも天然記念物クラスの松が数本、ここ10年くらいの間に枯死していました。
幹周9mを誇り日本一の松として名高かった香川県の「岡野マツ」とランカークラス「円通寺のマツ」も枯死。
存じ上げなかったのですが、本当ですね…今月4日に「東法田の大アカマツ」まで枯死しているではありませんか。
せめて現存する貴重なマツくらいは今のうちにこの目に焼き付け、ログとしての写真も撮影しておきたいですね…

RYO-JI 20-01-24 (Fri) 21:32

「東法田の大アカマツ」枯死のニュースを新年早々に知って残念な思いを抱きましたが、
松は本当に待ったなしで見ておかないといけないと改めて思いました。
この「遊龍の松」がある善峯寺、数年前に行ってるんですよ。
しかしその時は今ほど巨樹に対する熱意もなく、しかも作り物?であることに違和感を持ってましたね、私も。
今は巨樹マニアの端くれとして、狛さんと同じくただただ純粋に見たいです(笑)。
数百年もの間、人の手によって大切にされているだなんてロマンを感じます。
いや、スゴイことですよ、名木ですね。

一方、写真を撮る側からすればこれほど苦労する巨樹も少ないんじゃないですか(笑)。
ドローンが一番最適でしょうね!

to-fu 20-01-25 (Sat) 22:24

> RYO-JIさん
数年前ですか!ええ、私もきっとスルーしていたと思います。ふーん、マツか…くらいのもので。
対象がどんなものであれ「興味が無い」よりも「興味を持てる」方が人生何倍も面白いですね。
巨樹巡りを始めてからというもの、事あるごとにそのように痛感します。
巨樹を探せば必然的に寺社仏閣に行く機会も増えるし、地域の美味しいものとの出会いも増える。良いことばかりですよ。

このマツは俯瞰で撮影するのが一番分かりやすい写真になりそうですよね。
高台から見下ろせそうなポイントも探してみたんですが、どこから見下ろしても全然見えずで…
RYO-JIさんも是非また再訪してみて下さい!

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