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静岡県浜松市 雲立の楠(雲立楠)


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

さて「北浜の大カヤノキ」を堪能した後、一度荷物を下ろすために宿泊予定のホテルへと向かうことにします。が、そこはもちろん抜かりありません。繁華街である浜松駅近くの立派な巨樹を既に調査済み。さもたまたま通りかかったかのように振る舞いつつ、お?ここに立派な神社があるな。ちょっとだけ寄ってみていい?なんて提案します。流石は京都の孔明と呼ばれるワタクシ(誰も呼んでない)。これで浜松2本目の巨樹を訪問することが叶いました。


さりとて、まずは参拝を。駐車場に車を停めて一度鳥居まで戻り、鳥居をくぐりなおしてから参拝します。うん、我がムスメたちも参拝の手順が様になってきました。大人でも結構適当な人がいますからね。まあ私は感謝の気持ちさえあれば細かい所作の違いなど大した問題ではないと考えている人間ですが。神様ってそんなセコい方ではないでしょう、きっと。でもそうは見てくれず、単純にうわあって感じる方もいるでしょうからね。どんな作法も知っておいて損はありません。


実は社殿の目の前に既にそれを発見していたのです。これはなかなか壮絶な姿。中心部がゴッソリ欠損していました。どことなく徳島県で見た「矢上の大クス」を思い出しますが、根本のボロボロさで言えばこちらの方が上回っているように見えます。


周囲はかなりのスペースが柵で囲まれており柵の外には綺麗に砂利が敷かれていることから、三脚を立ててのヒューマンスケール撮影が困難な上、何よりもまず止めておくべきでしょう。子供連れでの巨樹めぐりはめったに無い機会なので、せっかくだから記念写真だけでも撮っておくことにしました。


お、解説板がありますね。思いっきり影がかかってしまい読みづらくて申し訳ありません。永承6年(1051年)に源義家公(八幡太郎)が浜松八幡宮に参籠の折り、クスの麓に旗を立てて八幡二柱の神を勧請したという伝承から、かつては『御旗楠(みはたくす)』と呼ばれていました。そして元亀3年(1572年)三方原の合戦で武田信玄に敗れた徳川家康がこの浜松八幡宮まで逃げ延びてこのクスの洞穴に潜んだ際、一心に八幡様に祈りを捧げたところなんと楠より瑞雲が立ち昇り、神霊が白馬にまたがった老翁の姿となって家康を浜松城へと導いたと伝えられています。この言い伝えより「雲立(くもだち)の楠」と呼ばれることになったそうな。

家康サンがこのクスの洞に潜んだ云々のくだりは実際にあってもおかしくないような気がしますね。いえ、もちろん白馬の辺りからSFじみてきますけども。その時代には既に大きく空洞化するくらいに成長していたと考えると、1,000年超といわれる推定樹齢もそう遠く離れたものではないのかもしれません。


見る角度によってはそこまで痛ましさを感じることもない。もちろん単幹でズドンと突き抜けて、そこからこんもり所謂トトロの木のように成長したクスノキと比べてしまうと痛々しいクスの巨樹ではありますが。


縦位置で。枝ぶりはなかなかのもの。ウネウネと立ち上がる枝たちはそれこそ「雲が立ち昇る」様にも見えなくはない。本当のところ、そのあたりに名の由来があるのかも…などと妄想してしまいます。


裏側から見ると本当に辛うじて一部が繋がっているだけの状態なのが分かります。今にも裂けて分裂してしまいそう。いや、ひょっとすると接触しているだけで既に別れてしまっているのかもしれません。うーむ…なんて眺めていたら、なんと神社の宮司さんが声をかけて下さいました。

宮司さん「気付かれましたか?」

豆腐「?????」


宮司さん「ほら、そこに龍がいるでしょう。縁起が良いということで皆さん拝んでいかれるんですよ。」

豆腐「!? 龍、ですか?失礼ですがどの辺りでしょう?」

宮司さん「ん?あそこですよ。ほら。(わざわざ指を指して)」

豆腐「………。 すみません、もう一度教えていただけますか?(まずいぞ、全然分かんねえ…)」

宮司さん「分かりにくいですかね 笑 ほら、あそこです、あれ。ね?龍みたいでしょう?」

豆腐「………。 (やばっ、ほんっとに分からん。)ああ、あれでしたか!なるほど龍ですね。本当にご丁寧にありがとうございました。」

さあ、宮司さんに指し示されたあたりをこうして撮影してきたのですが、皆様には分かりますか?私はこの後ホテルでも何度も見返したのですが本当にどうやっても分かりませんでした 笑


よく見ると幹がこれ以上裂けて離れてしまわないように、それぞれの大枝がワイヤーで繋がれています。私はこれを見て家庭内別居状態の夫婦をなんとか子供が繋ぎ止めている様を想像しt…いえ、止めておきましょう。


樹冠を眺めているとまだまだ生命の強い躍動を感じます。ちょうど新芽が芽吹く時期でしたから、常緑樹のクスにも色の淡い新芽が生じているのが確認できます。根本部分だけは心配ですが、それこそ根本に関しては数百年前から既に空洞化が進行していたはずです。先日ありがたいことに地元愛好家の方から「矢上の大クス」にコメントいただいたのですが、その方が仰るようにこのクスも「衰弱期を超えまた新たな成長段階に入ったのではないか」という状態なのかもしれません。


クスとして理想的な形で成長できてきたか、理想的な樹生を送れているのかと考えると決してそうではなく、むしろ壮絶な生き方であったのだろうと察します。しかし、それでもまだまだこれだけ美しい立ち姿を見せてくれるのですから、今後も頑張って生きてもらいたいですね。眺めていて元気をもらえるタイプのクスではないかもしれませんが、これはこれで充分に一見の価値がありました。皆さんもぜひ参拝して実際に龍を探してみて下さい 笑

2019/3/31訪問
「雲立の楠」
静岡県指定天然記念物
樹齢 推定1,000年以上
樹高 約15m
幹周り 約13m

静岡県浜松市中区八幡町2番地 浜松八幡宮内

コメント:8

yuriy 20-02-08 (Sat) 20:36

こんばんは(^-^)
素敵な巨樹ですね!個人的にこれ系の姿が一番好きなので堪りません。
浜松に行ったら絶対会いに行きます!

ところで龍ですが、もしかしたら中央あたり、顔のどアップじゃないでしょうか。。。
正面見ている、馬面のような顔。
ウネウネを龍の全身と見る場合、それこそ全部龍になってしまいそうなので。

どんなもんでしょう?

to-fu 20-02-08 (Sat) 22:19

> yuriyさん
こんばんは!
あまりにクドいので省略しましたけど私、実は宮司さんに4~5回は聞き返してるんですよ 笑
むむ?あそこですか?え?あれですか?とかしつこく言いながら。途中からもう聞くのも申し訳なくて、早く当てろ自分!って本当に焦りました。
たしかにそう言われてみると中央のものは龍の顔のようにも見えますね。顔の先端から垂れ下がっているものはヒゲのようにも見えます。
ああ、私にyuriyさんくらいイマジネーションがあれば宮司さんにあそこまでご迷惑をおかけすることもなかったのに…

このクスは観光資源として脚光を浴びるタイプの巨樹ではありませんが、この地で長い間生き続けている歴史を感じられる良いクスでした。樹齢を聞いても眉唾だなと思うことが多いこの世界ですが、このクスの姿からは本当に1,000年生きていても納得できるだけの重みが感じられましたね。浜松八幡宮自体きっと気に入られると思いますよ。機会があればぜひ立ち寄ってみてください。

RYO-JI 20-02-09 (Sun) 22:43

私くらいになりますと、一目で龍を見つけられる・・・ええっ、どこ????
龍が気になってクスのことが目に入ってきませんよ(笑)。

家康が隠れたクス伝説・・・面白いですねぇ。
昔の人は難を逃れるために巨樹に登ってやり過ごした・・・なんて話をよく目にするので、
この家康の話も案外あり得る事実かもしれませんよ。
空洞化というか、ここまで根元がボロボロなクスは珍しいですね。
幹周13mと言われてもさすがにこの姿ですからそこまでの重量感は感じません。
しかし根元以外の部分を見ている限りは、存在感のある枝振りが見事なクスじゃないですか。
樹齢1000年も伊達じゃないですね!

yuriy 20-02-10 (Mon) 9:20

境内に長くいると、宮司さんや氏子さん等に話しかけられる事がよくありますが、
『ここが観音様のお顔で』とか『龍の後ろ姿で』と言われて、わからないまま話を合わせてしまう事は多々あります(笑)
寺社あるあるですね。

どうしてもこの巨樹に会いたくなってしまったので、
春になったら浜松行ってきます(°▽°)

to-fu 20-02-10 (Mon) 20:06

> RYO-JIさん
いやー、これは分かりませんよね 笑
どこを見ても龍のように見えなくもないし、全然見えないような気もする。
明確にそこです、そこ。とおっしゃるものだから分かったふりして適当に流すことも難しく、冷や汗ダラダラでしたよ…

家康さんの伝承については何となく信憑性を感じますよね。このクスノキの姿を見ると相応の説得力があります。
幹周13mというとあの「加茂の大クス」にも迫るサイズですが、実際見たイメージでいうとあのレベルには全く及びませんね。
ただ大きくないからイマイチなのかと言えばそんなこともなく、ああ同じ1,000年生きたといっても多種多様な表情があるんだよなと、
巨樹がイキモノであるという当たり前のことを強く実感させてくれる良いクスでした。人間だって同じ年齢でも全然違ったりしますもんねえ。

to-fu 20-02-10 (Mon) 20:31

> yuriyさん
それはまさに寺社あるあるです 笑
その地方の名所や名物の話なんかも下手に乗ってしまうと、とてつもないマニアックなネタに飛躍したりして付いていけないことがあります。

名古屋からだと浜松へのアクセスが良くていいですねー。というか名古屋エリアにも良さそうなポイントが色々ありますよね。
熱田神宮なんかは大昔行ったきりで、巨樹に興味を持ってから調べたら実は立派な巨樹があったりして…当時は全く見向きもしてませんでした。
あ、ぜひとも龍を!実物のクスからも探し出してみて下さい! 笑

20-02-10 (Mon) 23:23

楽しい旅だったようで、紀行文もおもしろい……笑
まあ僕なんかは人一倍で、みんながUFO見ちゃってるのに僕だけ見えず、確かに見えた、白かったし早かった! とか話を合わせてるうちに、「一番見た人」になったことが何回かありますから。ええ。
(つまり、こういうのすげえ苦手です……)

欠けた部分をモンタージュして見ると確かにかなり大きいようにも思えてきますが、このクスの場合、欠けた部分の方が多いかもしれず、自分が何を見てるのか? という不思議な気分になりますね。
ここまで来ると、確かにもう折り返し地点は過ぎたように感じます。痛々しい部分はとっくにもう消え失せていて、ひこばえのような、次の世代が始まっているというような。
クスのあふれるような生命力が、これはこれで清々しいようにも思えます。葉の茂りも、そう見ると若くすら感じて良いですね。

ついこの間行った登米市の巨樹が、八幡太郎義家お手植えという杉でした。
各地で伝承がつながり、その生き証人のような存在として巨樹が点在しているという、日本特有の厚みと面白味があるなあと、今回も思いました。
東照宮という言葉も出てますが、浜松の東照宮には巨樹級の蘇鉄があるんですよ。
ヨッパライ旅行で満足に見させてもらえませんでしたが、ロープウェイにも乗れて楽しいし、次回機会があればおすすめです。

to-fu 20-02-11 (Tue) 10:04

> 狛さん
浜松はなかなか良いところですね。仕事さえ無ければ文句なしの旅でした。(交通費を出してもらって何言ってんだ)
この手のは…本当に独創性というか発想の柔軟性というか、簡単に言うと私も特に苦手とするジャンルです 笑

そうなんですよね。この巨樹の場合、欠けた部分を想像すると今自分が見ているものは一体何なのか?と唸らされてしまいます。
それこそ家康サンの時代は「加茂の大クス」や「別所の大クス」のようなランドマーク的な超巨大クスだったのかもしれない。
雲が立ち昇るように巨大で美しい樹冠を誇る大クス?なるほどそれで雲立の楠か。など、自然と想像も膨らみます。
現在の姿まで来てしまうとむしろ安定しているようにも見えますよね。既に裂けているので裂けて倒壊する恐れも無さそうだし。

各地で伝承、由来の類を読むのは本当にこの趣味の楽しみの一つですね。
中には荒唐無稽な日本昔話的なものやあの「浄安杉」の浄安サンのように、だから何なんだ?みたいなしょうもないものも
あったりして。近畿圏でよく見る名前が四国や北陸でも見られたりして、仰るように点と点だった当時の文化や風俗、信仰の
繋がりに気付くという面白さもあります。この趣味を始めてから、ああもっと真面目に歴史の授業を聞いておくべきだった!と後悔してますよ 笑

東照宮、地図にチェックを入れて驚いたのが、なんと私が泊まったホテルから余裕の徒歩圏内でした!
仕事からホテルに戻って即夕飯のお店探しに駆り出されたので全く気づきませんでしたよ。
また呼んでくれないかなあ…でも報酬が雀の涙なんだよなあ 笑

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