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PENTAX K-1という選択


PENTAX K-1 / PENTAX smc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limited

本命の31リミテッドが届いたので、試し撮りがてら近場で読書&散歩をしてきました。暖かいを通り越して暑いですね。2月中旬にして19℃だそうです。季節感も情緒もあったものではありません。さて。今さらPENTAX K-1のレビューも何もありませんが、一眼レフからミラーレス一眼に完全移行して久しい私が久しぶりに一眼レフを使ってみて感じた雑感などを綴ってみます。あ、あの機能はこうだ!この機能はダメだ!など具体的な話ではありません。まだそこまで使い込んでませんので。


まずハッキリ言ってしまうと、既に一眼レフの優位性なんてものはほぼ完全に無くなってしまったのだなと改めて感じます。初めてソニーがフルサイズミラーレス機α7を発売したとき、ヨドバシカメラでそれを触って「何だこのオモチャは…」と思ったことも今や昔。わずか10年に満たない年月にして隔世の感を覚えます。

断言できますが、今後カメラ界のメインストリームが再びレフ機に戻るなんてことは100%有り得ないでしょう。ファインダーで見たままの写真が撮れる、それも現時点でもそれなりに美しいレベルまで来ているのに、現在進行系でなお進化を続けるEVFが当たり前に存在する時代、これから写真を始めようという若い世代がOVFの一眼レフ機を手に取るなんてことはまずもって想像できません。また最近フィルムカメラがブームになってるって?いやいやいや。あんなのはガワにお金をかけた当時の高級コンパクトカメラが何となくおしゃれに見えるから持ち歩いてるだけですよ。だって誰もコニカヘキサーみたいな見た目がダサいけど良く写るコンパクトカメラなんか持ち歩いてないでしょう 笑


ではレフ機は市場から完全に消えてしまうのかというと、私個人的にはそうは思いません。特に趣味の世界では。だって未だにレンジファインダーみたいな古代文明の遺物を好んで使う偏屈がゴロゴロいるような世界ですよ?実際にレフ機を手に取り、ファインダーを覗きながらシャッターを切る。ああ、やっぱりこれが写真だよなあ。なんていう実感があるわけです。もちろんこれはノスタルジーの話です。ノスタル爺と読み替えていただいても結構ですが、やはり一眼レフと共に長年生きてきた我々からすると、これはもう理屈抜きに収まりがいいんですよねえ。こういう気持ちよさって決して言葉には出来ないし、言葉に変える意味も無いんじゃないでしょうか。


一眼レフへの未練を断ち切ったつもりになっていた私ですら、箱から開封する瞬間はクリスマスプレゼントを開ける子供のようにワクワクしてしまいました。シャッターを押す瞬間なんてもう興奮しすぎて倒れそうなくらいでしたね。理屈抜きに撮ることが楽しい。今一眼レフを買うのにこれ以上の理由が必要ですか?乱暴に言ってしまいますが、考えるな感じろ!の精神でしか使う意味は見出せません。しかしそれで良いではありませんか。誰のためでもない己のための写真。自分が楽しまないで一体どうしようというのか。


久しぶりにノスタルジーにどっぷり浸かりたい。だからこそ私にはもう不要だろうと思っていた一眼レフ機を買い戻したわけですが、ではなぜPENTAXを選んだのか。個人の感想ですが今現在一番確固たる信念、フィロソフィーを持って一眼レフを作っているのはPENTAXではないかと思うのです。どうも他のメーカーはヌルいんですよ。最新のパーツを詰め込んでスペック上げとけば売れるだろ、みたいな。中には異様に気合の入ったモデルもあったりするんですけどね。たぶんあれは他社と競うというよりも社内の別チームに対しての意地とか怒りとか、飲み屋でしか聞けないような理由があるのだろうと推察します 笑

造り手が(たぶん)楽しく、そして真摯に向き合って作ったモノは使っていてとても気持ちが良い。ええ、たとえ他所の同等品と比べたら細かいところで色々劣っていたとしても、です。ボタンがたくさんあるのに異常なほど拡張性が低い(頑にボタンをカスタマイズさせてくれない、割り振りたいのはその機能じゃないんだよ!というのも)、売りのスマートファンクションダイアルだけどそもそもこれ露出補正とISOくらいしか使わなくね?とか、モードダイアルもユーザー登録5個使いこなす猛者なんて実在するのかよ…など実際色々言いたいこともあるのですが、K-1にはそれらを許容できるだけの心地よさがあります。


褒めてるのか貶してるのか分からない文章になってしまいましたが、今のところ非常に気に入ってます。もしK-1 markIIIが出ることがあれば是非ともお布施したい、本気でそう思います。各メーカー、何とか一眼レフ機の開発も続けていただきたいですね。選択肢は多い方が楽しいに決まってますから。


PENTAX Q7 / PENTAX “01 STANDARD PRIME” SMC 8.5mm F1.9 AL [IF]

簡単に31リミテッドについても。まず思ったよりずっと造りが良いです。凄くコストがかかってる。約20年前に開発されたレンズですが、現在ならまずこのクオリティのものは商品化出来ないでしょう。ここまで外装にコストをかけられません。

しかし欠点もあります。思ったよりずっと重い。鈍器ですよこれ。あとはレンズフード。これがレンズ本体と一体化していて外すことすら出来ないものだから、とにかく取り回しが悪い。かぶせ式のレンズキャップも微妙ですよね。面倒くさい。でもこれ、だからといってレンズに直で普通のレンズキャップを取り付けちゃうと、今度はレンズフードの先端部が傷だらけになりそうだ。常用レンズにするつもりでしたが、正直付けっぱなしにするには微妙な感じですね…

ちなみにブラックボディのK-1に敢えてシルバーを選んだのは素材がアルミだからです。モース硬度が低いアルミはキズが入りやすい。それはまあ構わないんですけど、塗装が剥げてブラックペイントの下からアルミの地金が顕になった姿を想像したら、これはちょっとナシだなーと。もちろん個人の感想ですよ?もしこのレンズが真鍮製だったら迷わずブラックを買っていたと思います。(それ以前に真鍮製だったら重すぎてこのレンズ自体買ってないかもしれない 笑)


で、撮影してみて、ですけど。カメラやPhotoshopのレンズ補正はオフにした方がいいですね。実はこのエントリー最後のツバキの花だけレンズ補正オフ、その他はオンなんですが、レンズ補正を入れると明らかにレンズが持つ湿度みたいなもの、しっとり感が完全に吹っ飛んでいるのが分かります。

「設計段階のすべてをコンピューターによるのではなく、敢えて設計者の官能評価で作りこんでいこう」というテーゼの元で作られたのがこれらリミテッドレンズなわけですから、そこに補正を入れて開発陣が表現したかった「レンズの味」を消し飛ばすのはナンセンス。というのが試し撮りしてみての感想です。ハイ。

コメント:4

20-02-14 (Fri) 0:26

まず素晴らしいコラムで、感動してしまいました。K-1のことももちろんありますが、写真、写真機に対するto-fuさんの経験と情熱が表現されていて、本当にそれらに愛情がある人にしか書けない名文だなあと感心しました。
そうなんですよね、一眼レフって、永遠のザ・カメラみたいな存在なんですよ。カメラやってるぜ! って充実感を味わわせてくれるんですよね。

その上で、ニコン・キヤノンが馬鹿馬鹿しいと思ってやらないようなことや捨ててしまったことを、なんか大真面目でやろうとしている弱小PENTAX、やっぱり嫌いになれないんですよね。笑
こんなにシェアが小さいのに、なんでこのメーカーはここまで一生懸命でいられるんだろう? とも思います。
いや、本当にえらいのはリコー様かもしれません。あの海産物みたいな名前の大企業に医療部門を剥ぎ取られて捨てられたPENTAXを拾って、なんとかここまで展開させるわけですから。GRも頑張ってるし、仏ですよ。?

K-1、開発者の思い入れが強すぎるあまり、あんたら何も参考にしないで開発しただろ笑、みたいなところがありますね。
他と優劣をつけて価値を感じるタイプの人(それが悪いということではない)には、きっと受け入れられないところが山ほどあるはず。むかつくと思いますよ。連写遅い代わりにSDスロットに電気点きますし。
でも、なんか使うのが楽しいし、独特な機能を活かせるのが妙に嬉しい。俺がこれを使わなきゃ! なんて切羽詰まってるわけじゃないんですけど……うまく言えないので、それを実際to-fuさんが使ってみてくれたのは、とても嬉しいことでした。


そう、スマートファンクションはですね……ISO、Wi-Fi、クロップ、時々露出は使いますが、あとは合わせたことすら無いですね。笑
ユーザー登録は、リアルレゾリューション用の設定と、手持ちのソレを登録してあって、2つか。
カスタムイメージを詳細設定で改造して自分だけの色を作ってしまう人がいるし、あとはほら、天体用の、なんかそういうやつを登録するために 汗
ああっ、僕もただ撮ってただけかも!? もっとカメラに冒険させないとダメですね!笑

リミテッド31mmの写真も増えていくのが楽しみです。どんなレンズなんだろう。

to-fu 20-02-14 (Fri) 20:14

> 狛さん
嬉しいお言葉ありがとうございます。
軽く書いてみるかと始めたものの、いざ書き始めると熱が入ってしまってばかみたいに長くなってしまいました。
というか、ええ、海産物みたいな名前の大企業で笑ってしまいましたよ 笑
ホントよく拾ってくれましたよねえ。リコーは。当時のペンタ使いたちはリコーに決まって歓喜したでしょうねえ。

K-1は色々惜しいところもあるんですが、決して致命的なところでは外さないバランス感覚の良さがありますね。
意味不明なSDカード周りの仕様とか、どの機能も割り当てたくならない呪いのファンクションボタンとか、そんなのは些細な問題です。
実際撮影するにあたってこれが不便なんだよなあ、もう我慢ならねえ!みたいなネガは今のところ見当たりません。
件の電球はあれだけK-1の特徴としてアピールしてるくせにデフォルトがOFFになっていて、それだけで充分笑わせてもらいました 笑

そうか!ダイヤルでクロップするのは便利かもしれませんね。
(というかまさにこれをファンクションボタンに割り振らせろよ、という。Fx1を押す度に変更できたら凄く楽なのに。)
アストロトレーサー的な設定は僕もユーザー登録に割り振ろうと思ってます。早く使ってみたいんですよねえ。でもレンズが無いんだなこれが。

とにかく本当に、触って、そして撮影するのが楽しいカメラです。
撮れ高がダメダメでもまあいいや楽しかったしって納得できるのは実に素晴らしい 笑
リミテッドレンズ、ぜひ今度会うときに使ってみて下さい。一緒に銚子でも撮り歩きましょう!

RYO-JI 20-02-15 (Sat) 22:26

いやぁ、これは読みごたえありました。
期待を大きく超える雑感で、何度も読み返しました。
ミラーレス、レフ機、様々なメーカー品を自分のお金で買って使ってきたto-fuさんの忌憚のない意見であり、
だからこそもの凄く説得力があります。
どこにでも溢れているステマ的な文面じゃなくて(笑)。
理屈抜きに撮ることが楽しい・・・そう思えるカメラがその人に撮って最高のカメラなんですよねぇ。
人の意見やカメラのスペック・値段じゃない部分で感じるものだと。

PENTAXの魅力にはまだ気付いていない私ですが、色々と闇・・・じゃなくて奥が深そうですねぇ。
一気に沼にハマりそうな怪しい魔力があるようで、気付くべきか知らないでおくべきか・・・悩ましいメーカーです(笑)。

to-fu 20-02-15 (Sat) 23:21

> RYO-JIさん
こんな長文を書くつもりはなかったんですけどねえ 笑
でも読んでくださってありがとうございます!

よく写ってくれるカメラ、レンズは多々ありますが、必ずしもそれらが手元に残るとは限りませんよね。
安定感だけで語るなら私も未だにキヤノンを使い続けていたはずです。
初代5Dを出した頃なんかは攻めてたんですけどねえ。
今では完全に社内功労者のお年寄りを養うだけの企業に成り下がってしまいました。
(まあいわゆる大企業病で、若い人は若い人で安定を求める人しか入って来ないから挑戦とかそういうのと無縁になるのかもしれません。)

PENTAXは面白いですよ。売れそうだ!ではなく、俺が使ってみたい!から開発がスタートしている印象です。
シグマもそうですが、こういったトップランナーではないからこそ作れる製品をどんどん作っていってもらいたいですね。
何が悩ましいかって他社フルサイズと比べるとレンズも随分安いんです 笑 
油断すると(酔って気持ちよくなると)ついつい色々ポチってしまう。
私、本当はしばらくレンズ1本で戦う予定だったのに既に3本ありますからね…本当に恐ろしい世界です。

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