Home > PENTAX HD PENTAX-D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR | スギ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 福井県 > 福井県越前市 杉尾の大スギ

福井県越前市 杉尾の大スギ


PENTAX K-1 / PENTAX HD PENTAX-D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR

福井県越前市杉尾町。旧今立町杉尾の集落に鎮座する杉杜神社の御神木がこの「杉尾の大スギ」。御神木といっても目的の大スギは神社の境内ではなく裏手の山中にそびえている、ということだけは前情報として知っていました。まずは神社を参拝して御神木への案内板の類を探しますが全く見当たらず。経験則だとこの手の御神木は大抵境内のどこかから登山道が伸びているものですが、それも見当たりません。仕方なく手当たり次第に近隣を探してみることにしました。


結論から申し上げましょう。メチャクチャ分かりにくいです。越前市社会福祉センターから国道417号線を東へ。Google Mapにも登録があるので杉杜神社までは容易にアクセスできるはずです。神社から国道をほんの少しだけ東へ。今立酒販という酒屋さんがあるのですが、酒屋を過ぎて最初の角を右折、です。酒屋の手前の極細道ではありませんぞ?(私は間違えて突入し、行き止まりだったのでバックで戻りました。)

で、この薄暗い林道の途中に大スギが存在するわけです。先人のサイトでは駐車スペース無しということでしたが、一応あるにはあるのでご安心を。少し登っていくと右手にこれかな?というレベルの、まあ車を停められるし転回できないこともないスペースが見つかるはずです。ここを逃すと少なくとも大スギまでには車を転回させるスペースが一切無いのでご注意ください。さて目的の大スギまで徒歩で2~3分です。


左手の階段…土砂に埋もれて坂と化していますが…を登ればようやく巨樹とご対面。林道のこの先がどうなっているのかは私にも分かりません。まあ林業従事者の方のための転回スペースくらいはあると思いますが。基本この手の林道は軽トラ基準で整備されているので、ひょっとするとこの先は大きな車だと転回が困難かもしれません。なので必ず先ほどのスペースに駐車を。


おおお。このいかにも北陸の険しい気候に耐える巨樹然とした荒々しい姿、流石にテンションが上がります。この巨樹の場合は出会うまでのアクセスも親切とは言い難かったため、その興奮は一層高まるわけで。これは遠路はるばる見に来た甲斐があったなと初見の興奮だけで十分元を取った気分になります。


福井県指定天然記念物「杉尾の大スギ」。幹周が6.1mとリスト上では完全に埋もれてしまう巨樹でありながら相当なものではありませんか。測定位置の上部から大きく枝分かれして広がっているため、この巨樹においては幹周の数値はあまり参考になりません。この鬼気迫る表情には僅か6.1m(スギの巨樹の幹周としては僅か、と言ってしまっても問題ないかと)というサイズでありながら県天に指定されるというのも納得です。


初回訪問2019年2月27日。ええ。実はちょうど1年前にも訪れておりまして。発見できずに辺りを彷徨ったのは前回のこと。他の巨樹を回って脳が疲れきった状態での訪問になってしまったので、記事にするならベストコンディションで再訪してからにしようと決めていたんですね。一年越しでようやく念願叶いました。


盆地の平野部に生きる民としては、この弾けるように支幹に枝分かれする部分を見つめているだけでも惚れ惚れしてしまいます。うーん。惚れ惚れというよりは自然への畏怖に近い感情かもしれません。元は平野部のスギと同じ小枝のような苗木だったはずなのに、一体どれほどの苦難に耐えればこのような造形が生まれるのか。人間が造った如何なる造形物よりも遥かに私の心を打ちます。


見上げた姿はどこか岐阜県の「浄安杉」を思わせる。まるで魚の骨のように尖った枝は、この巨樹が生き抜いてきた歴史を象徴しているかのような迫力を放っています。


この枝の折れ方とか堪らないですね。雪の重みに耐えて耐えて、限界まで堪えた末にへし折れる。この破断面を見ているとスギの悔しさ、腹立たしさのような感情が伝わってきます。


大スギを囲む杭を支えにしないと登れないくらいの急斜面に立ちながら非常に姿勢の良い立ち姿。葉も青々と茂っていて樹勢は良好です。


近くには二世樹の苗木。元は2本あったようですが、右の苗木は枯れてしまったのか残るは左の1本だけになっていました。


斜面の上には大スギを眺めるためのベンチが設置されています。果たして神社の境内に案内板すら無い御神木を、あまつさえあの離合不可能な林道を抜けてまでどれだけの人間がこの場所を訪れるのか謎です。せっかく県の天然記念物にまで指定されているのに。

もちろん周辺を整備するのは大変だと思うんですよ。それでも興味のある人が訪れやすいように、神社の境内にも「→杉尾の大スギ」であるとか「↑杉尾の大スギ 徒歩10分」のような目立つ看板くらい設置してもいいんじゃないの?という気がしてなりません。せっかくベンチを置いて雑草まで払ってくれているのに、余程のマニアくらいしか辿り着けないのでは本末転倒です。


個人的には福井県内でも比較的上位に来るくらい見応えのあるスギだと思います。この荒々しい姿には例え巨樹に興味のない方であっても印象に残ってしまうくらいのパワーがあると思うんですけどねえ。立地ばかりはどうしようもないにしても、もう少し積極的に推してあげてもいいんじゃないでしょうか。充分余所に誇れるスギですよ。このお方は。

2020/3/17訪問
「杉尾の大スギ」
福井県指定天然記念物
樹齢 300年以上
樹高 25m
幹周り 6.1m

福井県越前市杉尾町12-31 杉杜神社 (巨樹は神社裏手の山中)

コメント:8

yuriy 20-03-20 (Fri) 9:10

見惚れる御姿ですねー!
手を広げて仁王立ちしているような、
神々しさが堪りません。
福井も余裕さえあれば方々巡ってみたい所が幾つもあります。
おっしゃる通り、不案内からなかなか辿り着けない場所は多いですよね。。。
これ、このまま山中素泊まり?と思った事が何度かあります。(笑)

何故こうも巨樹に惹かれるのか、未だに分かりませんが、
巨樹といい磐座といい、スケールの大きいものに気持ちを持っていかれる事だけは確実です。
木と自分の間には、畏怖と暖かさと、色んなものが存在しています。

RYO-JI 20-03-20 (Fri) 22:04

幹周リストだけでは完全に漏れる杉ですね、これは。
杉で6m?わざわざ・・・と間違いなく思ってしまいます。
しかし何ですかこの途中から爆発したかのように四方へと伸びる枝の様は。
個人的な尺度ですが、6mの杉に出せる迫力じゃないですよ。
人里離れた山の中に静かに佇んでいるのがとても似合っていますね。
決して寺社の境内にあるタイプであってはならないように思えます。
より野性的で暴力的な怖さを感じてしまいましたもの。
そうですね、県天ですから案内板くらいはあって欲しいなぁと思います。

to-fu 20-03-21 (Sat) 20:58

> yuriyさん
手を広げて仁王立ち、ですか!私もヒューマンスケール撮影のために斜面の上から眺めていたとき、
木彫りの仁王像を連想しました。正面からグッと睨みつけてくるかのような力強さがありますよね。

そちらから電車だと岐阜県の山を迂回する形になるので、福井県は近いようで結構遠いかもしれませんね。
比較的アクセスの容易な敦賀市にも越前国一之宮の「気比神宮」や「金崎宮」といった見どころもありますので、
ぜひぜひ遠征してみてください。ソースカツ丼も美味しいです 笑

スケールの大きさに惹かれるというのは全く同感です。
自分の場合は元々写真趣味があって一度巨樹と向き合ってみたらまんまとハマってしまったクチですが、巨樹と対峙してみて
如何にカメラを持った自分がちっぽけな存在か思い知らされたと言いますか、どうやっても写しきれない偉大さのようなものに
どう立ち向かうか…みたいなところに醍醐味を感じています。

to-fu 20-03-21 (Sat) 21:44

> RYO-JIさん
漏れますよねえ。恥ずかしながら私自身結構な後回しにしてましたから。
福井県のスギだと岩屋の大杉と西光寺の大杉は別格ですが、その下の横並び第三位の中にはこのスギが食い込んできそうです。
この手の境内の裏山に放置されているタイプの御神木は、樹齢以上の風格を備えていることが多い気がしますね。
このスギもまず樹齢500年未満だろうと思いますが樹皮のアップだけ見ると800年クラスくらい堂々として見えます。

せめて神社の境内くらいには何らかの案内板を作ってあげてもいいんじゃ…と思ってしまいますね。
興味はあるけど面倒くさそうだなと思われるなら仕方ありませんが、現状ではまず参拝者にその存在すら知られることなく
帰られてしまってますからね。道のりがハードな上に現地も野生動物の楽園かつ急斜面なので、本音を言うと事故を避けるためにもあまり人に来てほしくないのかもしれませんが。本当に立派な巨樹なので、愛好家としては勿体ないなあと残念に思います。

20-03-22 (Sun) 19:44

これですよね、巨樹を「探訪」と書きたくなるこの感じですよ。
このインターネット時代に、自分で考え、判断し、苦労しなければ出会えない存在に会いに行く喜び。そのネット時代であるがために、本当の魅力がリストの中で埋もれてしまう……それを自分で拾いあげた喜びもまたひとしおです。
たしかに、そういう決まりだから「6.1m」でしょうけど、この筋骨隆々しとした姿は素晴らしいですね。
荒々しくも均整が取れていて、ある種の美しさすら感じます。非常にかっこいい造形。
周囲を草刈りしたり、二世樹を育てようとしているあたり、この樹に愛着を寄せる方も多いのでしょうね。

こういう魅力的な巨樹が人知れずある場合、明らかにすべきかどうか、もしかすると意見が分かれるのかもしれません。
しかし、確かにそうですよね、明らかにしたところで来ない人は来ないですよね。笑
僕も、いずれぜひ追ってみたい杉です。その時はこの記事を足がかりにさせていただこうと思います。

to-fu 20-03-23 (Mon) 1:06

> 狛さん
自分で記事を書く場合でも、未だに悩み続けているのがそこなんですよね。
色々な構図でキレイな写真を撮って、感じたことだって余すとこなく書き残したい。場所の説明もあった方が親切だよな…
とまあ、どこまでの情報を掲載するのがベストなんだろうというのは常に葛藤があります。

この巨樹にしたって感動の何割かは立地が分からなくて迷ったことだったり、他人様の写真を見てそこまでの巨樹では
ないだろうと感じていた(なんて失礼な)ものが想像以上だったりと、そういう未知数だったからこその興奮も
絶対に加味されていると思うんですよね。あまり詳細に紹介すると、後人の感動を奪っているのかもしれないなあ、と。
この葛藤に関してはすぐに答えが出そうもないので、今はこの形で書くことしかできませんが。

このスギはこんな山奥なのに丁寧に手入れされている辺り、決してただの物質として放置されているわけではないんですよね。
しっかりイキモノとして敬われている様子が伝わってくる。それだけに愛好家からするとどうしても勿体なく感じてしまいます。
きっと狛さんにも気に入っていただけると思うんですよ。来られる際は是非また合流してソースカツ丼を食べましょう。
え?お前ソースカツ丼を食べたいだけだろう、ですって?何をおっしゃいますか。夜のラーメンまでご一緒しますよ 笑

yuriy 20-03-23 (Mon) 9:13

写しきれない偉大さ。
本当にその通りだと思います。
巨樹、古木は、切花のように持ち帰って部屋に飾れたとしても、
現地で感じたあの姿にはならないんでしょうね。
木が生きてきたその空間に、人がお邪魔させていただく。
木は、カメラを構える自分に「撮りたければどうぞ」とも、
「撮れるものなら撮ってみろ」とも言っている気がしますが、
所詮、撮りきれるものではないと常々思っています。(笑)

ソースカツ丼、激しく気になります(≧∇≦)

to-fu 20-03-23 (Mon) 21:07

> yuriy
寺社に惹かれる気持ちも同様に、現代の技術をもっても復元できない、もし出来たとしてもそこに刻み込まれた
年月の重みまで再現できないということで、人智の及ばぬスケールを感じるところにあるのかもしれませんね。
神や仏という存在について語るのも無粋ですが、やはり当時の人間が魂を込めて造った建造物や彫刻等が
何百年もの間、人間の想いを一身に受けながら存在し続けているわけですから、そこに神や仏のようなものが
宿っていたとしても何ら不思議ではない…と私は思っています。

とてつもなく壮大な相手から、少しでも多くのものを受け取って帰ろうと努力する。
自転車で宇宙を目指すくらい途方も無い行為ですが、だからこそやり甲斐もありますよね。

コメントフォーム
Remember personal info

トラックバック:0

このエントリーのトラックバックURL
https://withphotograph.com/wp-trackback.php?p=13446
Listed below are links to weblogs that reference
福井県越前市 杉尾の大スギ from with photograph

Home > PENTAX HD PENTAX-D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR | スギ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 福井県 > 福井県越前市 杉尾の大スギ

CATEGORIES

Return to page top