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富山県中新川郡上市町 宮川の大ケヤキ


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

「洞杉群」の興奮を一旦クールダウンするため魚津市の埋没林博物館を経由し、この日宿泊予定の石川県小松市を目指して出発。本当ならお土産を探したりカメラ片手に街を散策してみたいところですが、この状況下で他県の人間が大手を振ってふらふら歩き回るのもいかがなものか。ということで今回は寄り道なし、巨樹と巨樹を結ぶような形でピンポイントに目的地を設定しつつホテルへと向かうことにしました。まずは埋没林博物館から車で30分ほど、富山地方鉄道本線 上市(かみいち)駅近くの日吉神社を目指します。ここにケヤキの大物が立っているというのですが…って、これはもう見間違うはずもありません。あれか。境内に車を停めさせていただき、早速バタバタと撮影の準備を進めます。


参拝を済ませて拝殿裏手へ。これは…デカい!とにかく樹高が尋常ではありません。これはスギか?というくらいの高さ。背が高いためひょろ長いケヤキに見えてしまうかもしれませんが、このシルエットでも幹周9.5mですからね。実際目の前に立つと巨大な柱がズドンと立っているかのような迫力があります。


上市町にある日吉神社の御神木。なのに「宮川の大ケヤキ」?訪問するまでは宮川さんという方が管理でもされているのかと思いこんでいたのですが、合併して上市町になる以前この辺りは宮川村だったそうで、名の由来は単純に地域名にあるということが分かりました。それにしても樹高41mですよ。40mオーバーと言ったら本当にスギの巨樹並み。ケヤキの樹高としては全国的に見ても相当なモノだろうと思われます。


特に大きな空洞が出来るでもなく、がっしりとした健康な幹。伝承によると樹齢は1,000年とのこと。確かに大きさを見ると納得してしまうくらいの説得力を感じるのですが、この活力溢れる姿を見るともっと若い巨樹なのでは?という気が致します。私見では500年前後…くらいではないでしょうか。


訪問前に先人のログを見るとケヤキと並んで撮影されていたので、この樹皮に触れることを楽しみにしていたのですが…大枝落下の危険があるということで、これ以上巨樹に近付くことはできませんでした。(後日よくよく見てみると先人の撮影時点でも既に柵が設置されていました。入るなよ。そしてWebに上げるなよ。)


そういえば年中巨樹を回っていますが、ケヤキの巨樹を訪れるのは去年の夏以来かもしれません。(夏の長野で大量のケヤキを見てしまい、やや食傷気味だったので意図的に避けていたような気もする。)それにしてもこの弾けるような緑!やはりケヤキの巨樹を訪問するなら春から夏にかけてがベストシーズンなのではないかと。生憎の曇り空でしたが、これがまたスカッと晴れた青空と見事にマッチするんですよねえ。落葉した冬の時期に訪れていたら随分と印象が違ったような気がします。


裏側に回ってみました。うん、この青々と茂った樹冠。実に素晴らしい。このクラスのケヤキになると巨大な空洞が出来ているものが多く、期待してやって来たはいいけどここまで弱っているとは…と、もの悲しい気持ちで帰路につかざるを得ないものも少なくありません。しかし見てのとおりこのケヤキに関しては全く問題なし。心から「いやー、いいもの見たなあ!」とほっこりした気持ちになれること請け合いです。


健康そうな根本。これだけの高さの幹を支えているにしては随分スマートな印象。ケヤキの周辺だけほんの少しこんもりと膨らんだ丘のようになっているので、ひょっとするとここ数十年内の間に盛り土されたのかもしれません。ちょうど根回りを覆い尽くすような丘なので、そう考えると納得できるのですが。もし盛り土されているのだとしたら、実際の幹周は10mオーバーになりそうですね。


解説板に3mの辺りで二股に分かれ…と書かれていましたが、拝殿の真裏から眺めるとその様子がよく分かります。この上部でそれぞれの幹がさらに二股に分かれていて、4本の大枝がそれぞれ枝葉をまとうような形になっています(ただし4本のうち1本は既に折損)。ワイヤーのようなものが巻き付けられていますが、これは二股の幹が裂けてしまわないようにという処置でしょう。


ただこのワイヤー…ケヤキの成長速度が早すぎるのか幹を傷つけないようにするための添え木が真っ二つに割れて、さらには幹にまで食い込み始めています。そろそろ新しいワイヤーを巻き直さないと裂けるどころか、根本から倒壊してしまいそうな気もしますが大丈夫なのでしょうか。ちょっと心配です。


まるで仏像とその光背のようで、この正面からの姿が素晴らしいと思うのです。(神社に対して仏像という例えは不適切かもしれませんが。)仕方のないことですが拝殿右側にあるブルーシートの存在が惜しい。集落の守り神のように静かに佇む「宮川の大ケヤキ」。北陸というと失礼ながら年がら年中カミナリがどっかんどっかん落ちている印象なので、このような開けた場所にここまで立派なケヤキの巨樹が立っているのはちょっと意外でした。それこそ神様の御加護なのかもしれません。

2020/6/22訪問
「宮川の大ケヤキ」
富山県指定天然記念物
樹齢 伝承1,000年
樹高 41m
幹周り 9.5m

富山県中新川郡上市町若杉36

コメント:4

RYO-JI 20-07-11 (Sat) 10:35

デカイですねぇ。
そしてケヤキとは信じがたい樹高!
ケヤキの巨樹といえば、幹周は太くともそれなりに欠損が大きくて壮絶な姿をしているものをイメージしがちで、
その異様な姿がまた魅力となっているものですが、これはその正反対にあるケヤキですね。
遠方からその見事な樹冠を見て癒しや元気をもらえるようなクスノキ的な印象を持ちました。

一方で幹が裂けそうになっている部分は心配ですね。
あまりに大きく高く成長してしまった自重に耐え切れなくなりつつあるのでしょうか。
おっしゃるように盛り土されているように思えますし、地域住民に大切されたからこそ元気に成長してしまった・・・。
そう思うと皮肉に思えなくもないですが、いずれにせよ倒壊や落雷の被害は巨樹の宿命でもあるので今後の無事を祈るばかりです。
信心深い自分としては、神様のご加護説は充分説得力のある話だと思います。
ほんと最後の一枚なんかそれを表しているようで見事な光景だと感じました(ブルーシートは脳内で消去)。

to-fu 20-07-11 (Sat) 15:51

> RYO-JIさん
近くから広角で撮るとギュッと潰したみたいに写ってしまうので上手く伝えられず残念ですが、本当にデカかったです。
ケヤキやムクの上位ランカーはとにかく悲しい状態になっていることが多いので、前知識無しで訪問して満足度のアベレージが高いのは
むしろこれくらいの中堅サイズの巨樹たちなのかのしれません。9m台のケヤキといったらサイズ感にも文句無しで満足できますからね。

意思を持って成長しているはずなのに結局大きくなりすぎた己の体を支えきれず倒壊している巨樹を見る度に思いますが、樹木というものは
なかなか不器用なイキモノですよね。魚なんかは水槽に入れても身動きとれなくなる大きさになる前に成長をストップさせるみたいですが。
この平地に立って、それこそランドマークタワー的なシンボルとなっているこのケヤキが長年落雷を受けていないように見えるのは
まさに奇跡だと思いましたよ。(落雷の傷痕らしいものは皆無でした。)目に見えない不思議な力が存在するとしか思えません。
あ、ブルーシートはphotoshopのスタンプツールで除去してしまおうか本気で悩みました 笑

20-07-12 (Sun) 12:58

何となくですが、新潟や北陸のケヤキの個性として背が高いものがあるように思います。
もしかするとケヤキの折れやすさと積雪の重さに関係あるのかもしれませんね。もっと言うと、日本海側の雪の質、水分が多くてジャリジャリした重い雪にも。会津などのケヤキともやっぱりタイプが違うように思います。
横へ出すタイプの大枝は早いうちに折られてしまうのかもしれず、消去法的に上に伸びるのかもしれません。
この樹も、大枝ではなく、細かい枝をいっぱい出して稼いでいる感じ。

もっとも、横に大枝を出すタイプの大ケヤキはやがて自重崩壊して真っ二つになったりしますし……そこがやはりスギとの性質の違い、辿る一生の違いを見るような気がして、大変興味深いです。
スギの方が明らかに生存戦略としぶとさにかけて優れているように見えるんですが、ケヤキの不器用で力押しな感じの生き様にもすごく惹かれます。
この立ち姿もディテールも、すごくかっこいい。
落雷、豪雪、自重、キノコにも気をつけて、僕が見にいくまで立っててくださいよ! 笑

to-fu 20-07-12 (Sun) 20:14

> 狛さん
なるほど、新潟のケヤキにもこのような傾向がありますか。
積雪の重さというのは自分も考えました。ずんぐりむっくり育つと重みをモロに受けることになるのかもしれないと。
逆に温暖な地方のケヤキというと、やはりデブっとしたふくよかな巨樹が目立つような気がしますね。
うーん、スギなんか特に顕著ですが、同じ樹種でも地方ごとでそれぞれ風情が違うというのは人間みたいで面白いです。
地方ごとの傾向に注目してまとめてみても結構面白い資料が出来上がりそうなですねえ。

ケヤキの老木はスギやクスのように圧倒的パワーでゴリ押ししてくるのではなく、どこか退廃的な雰囲気をまとっているのが
素敵ですね。ああ、今会えてよかったなあ。次来るまでまだまだ元気でいてくれよ、なんてしみじみ感じます。
なんとなく我々が東京時代に惹かれていた、消えゆく下町の風景のような趣があると思うんですよね。
もし自分が富山で見ておくべき巨樹リストを作るなら、このケヤキも確実にチョイスするであろう一本でした。

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