- 2020-09-09 (Wed) 15:45
- SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art | クスノキ | 大阪府 | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別)
SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
久々の巨樹探訪、ということで恒例の早起き出発で大阪府柏原市までやって来ました。柏原市(かしわらし)…近畿近郊の方以外には全く馴染みのない地名かもしれません。大阪市の南東にある八尾市からさらに少し南東へ。奈良県との県境に位置するベッドタウンです。ぶどうが名産で、なんとこの近くにはワイナリーまであるんですよ。まあ今回も朝早すぎてワイナリーは開いてなかったんですけど。
到着は朝7時ジャストくらいでしたか。到着して早々に目的の巨樹を発見。事前の情報によると幹周6.4mということで、大物揃いのクスの巨樹の中ではサイズだけ見ると好意的に表現しても中の下といったところでしょうか。初見のインパクトにはそこまで期待していなかったのが正直な気持ちなのですが、ちょっと待て。これ結構大きいんじゃないの?ソワソワしながらまずは駐車スペースを探します。
うん、やっぱりデカい。大阪府の天然記念物に指定されたのが昭和53年ということなので、6.4mというのはその昭和53年時点の数字なのではないでしょうか。私の感覚だと7.5mくらいはありそうですけど。樹形も健康状態も良く、美しいクスです。今さらですが石神社はイシジンジャではなくイワジンジャと読みます。
私の立ち位置から後ろに更に石段が続いており、その先に拝殿があります。もちろん真っ先に参拝しましたが深い社叢に囲まれてクスが全く見えなかったので割愛。そして実のところ写真なんて撮ってる場合じゃないぞというくらいのヤブ蚊地獄でした…虫除けスプレーしていたにもかかわらず何箇所も刺されましたからね。
ここからしばらくクスを眺めていましたが地元のお年寄りが数名、通りかかる際にクスをポンポン叩いたり抱きついたり「おお、今日も元気で何より!」と言わんばかりに挨拶している様子が見られました。こういう光景を目にするとああ、大事にされているクスなんだなあと嬉しくなってしまいます。門真の「薫蓋樟」を訪問した際も若い方からお年寄りまで、平日早朝からひっきりなしにたくさんの方がクスを拝みに来てましたっけ。大阪は大切に扱われているクスが多くていいですね。地元京都ではまず見られない光景です。
改めて近くで眺めると株立ちではなさそうですが、根本近くから二股に分かれているのが分かります。右側の部分だけで6.4mくらいはありそう。左側のものをそのまま加えるとたぶん7.5mくらいではなかろうかと。真ん中の空間まで加えると更にプラス1mほどでしょうかね。(各所で解説板を見るに、そうやって測定していそうなところも多い…)ああ、メジャーで測ってみたい。10mメジャーなら車に積んでいるので悩んだんですが、場所的にもあまりに人目につきすぎるので止めておきました。流石に不審者丸出しですからねえ 笑
悠久とも言える時を生き、河内の人々を眺め続けてきたクス。相応の威厳こそ感じられますが、その森のような姿は生命感に満ちていてフレッシュな若者のようにも見えなくもない。この神々しくもどこか親しみやすい感じこそがクスの巨樹の魅力であるような気がします。常緑樹ということで年中この生き生きとした姿を見せてくれるところも良い。
幹に軽くもたれかかって空を眺めてみる。さわさわさわ…と葉っぱが風に揺られる音が心地良い。うーん、クスって本当にザ・人里の巨樹という感じですね。クマが出るような山中で藪こぎした先に待つクスノキってちょっとイメージできない。
推定樹齢700~800年。大阪府内に多く残る他のクスノキの巨樹と比較しても、実年齢にそれなりに近いのではないかと想像します。
かつてこの辺り一帯は知識寺という古代寺院でした。知識寺が所有する巨大な毘盧遮那仏を見た聖武天皇が、あの東大寺の大仏を造ろうと思い立ったのだとか。知識寺は室町時代に廃れたとされているので、恐らくはこのクスが植えられたのはその頃なのでしょう。年代的にもなんとなく辻褄が合います。ところで巨樹愛好家としてはせっかくこれだけの巨樹なのにクスに関する解説板の類が全く存在しないのが残念です。(でもそういえば大阪の巨樹も結構な数を見てきたけれど、解説板の類はほとんど見てないような気もする。)
神社の脇には展望台公園が。どうも最近造成されたばかりのようです。もちろん登るしかありませんね?
樹冠を真正面から臨む。本当に美しい樹冠です。ケチのつけようがない。フクロウや小鳥が営巣していそうな雰囲気ですね。
左端が大阪市方面、右手の山を超えると奈良県という立地。これは予想どおり気持ちいい。朝っぱらからカメラ片手に動き回って随分汗をかいたので、丘を吹き抜ける風がたまりません。巨樹めぐり再開の狼煙を上げるには最高のポイントだったなと大満足です。数キロ圏内には他にも天然記念物クラスのクスの巨樹が数本あるので次回は車に自転車を積んできて、車はコインパーキングに放り込んで自転車で回ってみようと思っています。道が入り組んでいて車移動は不便なんですよねえ。その際は絶対にワイナリーにも…
2020/9/2訪問
「石神社のくす」
大阪府指定天然記念物
樹齢 推定700~800年
樹高 26.4m
幹周り 6.41m
大阪府柏原市太平寺2-19-13
コメント:4
- RYO-JI 20-09-09 (Wed) 21:03
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これはまさに、ザ・大阪のクスノキですよね。
to-fuさんが受けた印象に全くの同意、人と巨樹とが理想の関係を築けているなぁと思います。
私が行ったのはまだ巨樹マニアと自称する前だったのですが、それでも見ていて気持ちいいクスでした。
その時は電車で行って、周囲を撮り歩きしたのでした。
もちろんワイナリーの販売所に寄ってワインを購入しましたよ(笑)。
あとワイナリーのブドウ畑の間も歩けるようになっていて、ブドウをつまんで食べてもいいよ的な案内があったように思います。
写真を拝見し、私も再訪して写真を改めて撮り直したい気になりましたよ。 - 狛 20-09-10 (Thu) 17:11
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これはまた立ち姿が美しい……。
美馬の「別所のクス」とか、尾道のロープウェイのとこの「艮神社の大クス」とかを思い出す、爽やかな巨樹だなあと思いました。
夏の空が本当によく似合う。汗を拭き拭き撮るのも絶対気持ちいい。
樹齢は相当あるでしょうが、むしろ若々しく、巨樹としての青春を生きている姿のような感じすら受けます。
……と書いてみて、樹木と我々の過ごしている時間は全く違うのだろうなあと。
もしかしたら、季節ごと、一年のうちに青春と老い、我々で言ったら生と死に近い事象を繰り返しているのかもしれないなあと思いました。
それくらい、同じ樹種でも、それぞれ受ける感じが違いますね。
このタイプは神々しさより、おじさんがポンと触れたくなるような若々しさ、親しさが先に立つのがよく伝わってきます。
大阪の人がここまで多くクスを植えて巨樹にしたかも、説明不要でわかるというもの。
そしてまさに、巨樹巡りの再開にはそういう巨樹が必要! 僕もこういう樹に当たりたいです。
こういう時、エナジードレインタイプの巨樹はキツいですよね。笑 - to-fu 20-09-10 (Thu) 17:13
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> RYO-JIさん
大阪のクスはいいですねえ。巨樹そのものが立派かどうかを抜きにしても、巨樹と人間の共存が本当に上手く行っている理想形だと思います。
あれだけの街中や住宅街のド真ん中でも地域の方に煙たがられることなく巨樹が愛されている地域は大阪以外にはちょっと思い浮かびません。
撮影から帰ってきてすぐにRYO-JIさんの過去ログを拝見しましたが、ローライでめっちゃオシャレに撮影されてるではありませんか。
どうしてもまずはフルサイズのデジタル…となってしまいますが、それこそ近隣の巨樹なんか一巡した後はのんびりフィルムで撮ってみたら
面白いだろうなと新たな楽しみを発見しましたよ。1本の巨樹を1本のフィルム縛りで撮ってみたり、などなど考えるだけで面白そうです。
ワイナリーは自転車でも寄られてませんでしたか?というかあの山、ブロンプトンで超えるにはかなり険しそうに思えますが 笑
今回RYO-JIさんにお声がけしてどこかオープンなところでコーヒーでも…と結構悩んだんですが、やはりもう少しの辛抱ですかね。
私もまた駅前の巨樹などを攻めてみたいと思っているので、コーヒーくらいご一緒できるような状況になっていることを願います。 - to-fu 20-09-10 (Thu) 17:36
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> 狛さん
とにかく樹形が美しいクスですよね。それにしても流石狛さん、わざわざポジティブ系巨樹をセレクトしたのをお見通しでしたか 笑
今の気分でドロドロした陰鬱系巨樹とかゾンビ、モンスター的なヤツと対峙しても上手く消化できる気がしませんからね。
仰るように樹木と我々では時間という概念が全く異なるのかもしれませんね。
それこそ四季なんて彼らからするとほんの一週間程度、冬が来るとああようやく週末休みだ!葉っぱ落とすぜ!みたいな感覚なのかも。
大阪のクスはこのようなタイプがとても多いんですよ。邪魔だな、鬱陶しいなという扱われ方をしているものはあまり見られません。
この訪問した日も向かいのオクサマが落ち葉をせっせと掃き掃除していましたが、面倒くさそうとかそういうことは全く無くて
朝起きたらハミガキする、トイレに行く…そんな日常の一連の流れとして自然に掃除しているように見えました。
全ての巨樹がそのようにというのは難しいと思いますが、できることなら人間と巨樹の関係はそうあってほしいと願わずにいられません。
狛さんが次回こちらに来られることがあったら、是非とも薫蓋樟をはじめとしたクス群を案内したいと思っています。
他所ではなかなか見られない光景だと思うんですよね。
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