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大阪府八尾市 玉祖神社のクス


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

柏原市の「石神社のくす」を離れて向かった先がこの八尾市にある「玉祖神社のクス」。こちらは以前にも訪れたことがありまして実に居心地が良かったものですから、機会があれば絶対に再訪しなければと思っていたのです。相変わらずの立派な姿に安堵しつつ、まずは鳥居右手の駐車場に車を停めて一旦気持ちを落ち着けます。


鳥居をくぐってすぐの石段脇にズドンと構える巨大なクスが否が応でも視界に飛び込んできます。さすがこれだけの大きさ、そしてこの配置なので巨樹に興味のなさそうな参拝者の方も「おおー!」なんて言いながらスマホで写真をパシャパシャやって拝殿へと向かわれていました。

こちらの玉祖(たまのおや)神社は山口県防府市にある周防国一宮、玉祖神社本社から710年に勧請された数少ない分社の一つです。千三百年祭と刻まれた石碑が建てられていますが、きっとこれは勧請から1,300年の2010年に設置されたものでしょう。祭神は櫛明玉命(くしあかるたまのかみ)。またの名を玉祖命(たまのおやのみこと)とも言い、あのヤサカニノマガタマを作ったのが櫛明玉命サンだと云われています。


前回来たのはいつ頃だったんだろう…と写真を見返してみたら2019年2月、もう1年半も前のことでした。実は訪問したきり記事にまとめられていない巨樹が山のようにあるんですよねえ。クスは地上だいたい2mくらいのところから大きく三股に分岐しています。幹周は8.5m。数百年生きているであろう年季が感じられるため合体樹の類ではないと思いますが、形状を見る限りでは絶対に違うとも言い切れないのかなと。単幹でズドンと立ち上がるタイプのクスと比べるとややまとまりに欠ける感もありますが、クスの巨樹特有の岩石のようなカタマリ感は充分に感じられます。


こちらも昨年2月の写真。今回はクスの右手前あたりに車が停まっていたので邪魔くさくて…いえ失礼、他人様の車をガッツリ写さないように前回撮影したカットをチョイスしました。こうして引いて見ても樹形のきれいな美しいクスだと思います。撮影機材の違いもありますが、常緑樹のクスといえど夏と冬で見比べてみると随分見た目のイメージが違うのだなと気付かされます。やはり冬の時期のクスの葉はややくすんだような色合いをしていますね。


裏側(拝殿側)へと回ってみると山の斜面ということであまり日当たりがよろしくないのか、随分と苔生した姿をしています。それにしてもとにかく目を引くのが根本からぴょこんと飛び出た石柱。


元々ここに立っていた?石柱をクスが飲み込んでしまったのでしょうか。それにしてもこの形状…石柱に注連縄が巻かれて賽銭入れが置かれていることからも、男根崇拝的なものとして祀られているように見えます。(特に神社の解説板などにはそのような記載が見当たりませんでした。)

大阪の巨樹や寺社を回っていて常々不思議に感じているのですが、大まかな寺社の歴史や由来が書かれた以上の情報を記載した案内板の類があまりにも少ないんですよね。他の地域ならよくあるではありませんか。「このクスはどこそこの高層がぶっ刺したお箸が成長したものである。」とか「この石柱は男根の象徴とされ、さすると勃起不全が…(以下自粛)」であるとか、その手の伝承が書かれたやつが。そういうのがほとんど見られない。あの手の伝承を読んでいると巨樹だけでなく地域の文化や風俗にも興味が湧くので好きなんですけどねえ。ちょっと残念です。


そこまで日当たりが悪いようにも見えないし、年中雨が降っている地域のようにも思えない。しかしその姿はまるで薄暗い山奥に生えているトチノキを思わせる。樹皮が全体的にしっとりと湿度を帯びていたんですが何だったんでしょう。実に不思議です。


目立った欠損や枯れは見られません。夏の緑が青空に映えて本当に心地良い。


今更ではありますがクスそのものも実に素晴らしい。しかし何が最高かって、大阪市内を一望できるこのロケーションですよ。背後から吹き下ろす風を受けながらぽけーっと巨大なクスの脇を流れ行く雲を眺める。お世辞抜きにどれだけ長い時間でもここで過ごせてしまいそう。いや本当に心が病んでいるときほどオススメです 笑


前回も今回もこの景色を眺めながら軽く1時間以上過ごしてしまいました。ジュースの自動販売機は置かれていますが、できることならパンなどの軽食も持参したいところ。


境内には巨大なニワトリさんがコケコッコ言いながら何匹も徘徊しています。


山口県の玉祖神社本社から連れてきた?国指定天然記念物の「長鳴鶏(ながなきどり)」。車で轢かないように気をつけて下さい。なんと言っても国天のニワトリさん、恐ろしいことに府天のクスノキよりも格上ですからね…ちなみに天岩戸の中に引きこもってしまったアマテラスさんを外に引きずり出すため、オモイカネさんが岩戸の外で鳴かせたのがこの長鳴鶏だと伝えられています。

実際に鳴き声を聞いてみようと「おら、鳴けよ。ケン○ッキーに連れてくぞ、この。」と追い回してみましたが(ウソですよ?黙ってしばらく側でカメラを構えてただけです。心の中で思ってましたけど。)、確かにコケコッコォォォォォォォォーーーーーー………という感じに長鳴きします。私が聞いたのは10秒くらいでしたかね。中には頑なにコケコッコー!としか鳴かない奴もいましたので、根気強く待ってあげて下さい。


そよ風を浴び、コケコッコォォォォォォォォーーー………を聞きながらクスと大阪の街並みを一望する。何とも素敵な時間の過ごし方ではありませんか。いつ行っても満足度は高いと思いますが、できることなら真夏以外(ぽけーっとするには暑すぎる)、そしてニワトリがよく鳴く午前中の早めの時間帯の訪問をオススメします。

2019/2/8・2020/9/2訪問
「玉祖神社のクス」
大阪府指定天然記念物
樹齢 不明
樹高 20.6m
幹周り 8.5m

大阪府八尾市神立5丁目5-93

コメント:4

20-09-14 (Mon) 11:25

前回ダイジェストで出た時にどこにある神社かマップで検索したら山口の方に行ってしまったのは、そういう事情なんですね。
防府へは以前の九州からの旅程で立ち寄りましたが、歴史ある居心地よさそうな街でした。山口県と九州も、その境目と風土変化を味わうのは興味深い。また行きたいです。

この大クスの柔らかそうなフォルム、だんだんこれが大阪のクスの特徴のように思えてきました。
いや、実際には違うのかもしれませんが、なんとなく九州や四国とも若干違う質感があるように思います。
大昔から人口が多く、一部の信奉者というよりは多くの庶民の目に触れてきたであろう点がやっぱり違うのかなと。
神社合祀令を抜けて今もあるのも、結局は支持する数の勝利ってことがあったでしょうし。
この男根的な石も、いかにも庶民と土の匂いがする信仰のあらわれですよね。そして、それにはやっぱりクスの大らかさがぴったりです。

しかし、クスの層の厚さよ……。幹周8メートルでは数値的インデックスにおいて全然普通に思えてきてしまうのは、ホントどうにかしたい。
この玉祖神社は立地が素晴らしいので、巨樹のみ見るのではなく、ぜひ周囲環境とセットで楽しみたいものです。
うん、だからこそ巨樹に対する解説……欲しくなりますねえ。笑

RYO-JI 20-09-14 (Mon) 22:16

あれあれ、自分がイメージしていたクスノキと全然違いました。
web上にある写真からもっと小ぶりで大人しい姿と思いこんでいたんですが、これは堂々たる体躯で力強い。
自宅から自転車で回れる手頃な巨樹として、まぁそのうち・・・なんて悠長に構えていた自分を叱ってやりたいです(笑)。
そしてクスも楽しみですが、この景色も爽快でしょうねぇ。
折角行くからには天候も気にしないとこの景色を堪能できそうもありませんね。
しかし一方で、ブロンプトンで行くにはちょっとヤバそうだということもわかりました(笑)。
ニワトリもいて楽しそう・・・しっかり時間を確保して行くべきですね!

to-fu 20-09-15 (Tue) 11:47

> 狛さん
玉祖神社、聞かない名前ですよね。私も総本社が山口県にあること自体知りませんでした。
山陽山陰エリアは独特な風土ですよね。どうしても便のいい海沿いを突き進んでしまいますが、静岡よろしく内陸部の奥地まで攻めてみたら
かなり面白い土地なのではないかと。いつか長期休みを取って山陽→九州一周→山陰と回ってみたいという野望がありますが、うーん…
仕事を引退するまで流石に現実的ではないかもしれません。

大阪のクスに関しては全く同感で、どれだけ立派なものでも土着的、庶民的な印象が強い気がしますね。
このクスや薫蓋樟のような大物であっても柵すら設置せず、気軽に触れられるよう身近なものとして共存している。
解説板の類が乏しいのは、そんな理屈じみたことはどうでもよろしい!来て見て触って対話する、以上!みたいな大阪人の
きっぷの良さの現れなのかもしれません。でもまあ我々としては…アレがないとちょっと寂しい気がしてしまいますよね。

to-fu 20-09-15 (Tue) 12:03

> RYO-JIさん
近くの巨樹はどうしても後回しにしてしまいがちですよね。
本当に欲求不満でウズウズしたときのために、身近な巨樹を少し残しておきたいという気持ちもあったり。
奈良方面からの山越えだとそこまで交通量がなさそうなので、自転車での目的地にするにはちょうどよさそうですねえ。
ええ、ブロンプトンではかなり厳しいことになると思います。私だったらきっと登り始めて10秒で諦めますよ 笑

実は私も先輩方のログを拝見した限りではあまりピンと来ないクスだったんですけど、良い意味で裏切ってくれました。
寄って良し、引いて良し、景色を絡めても良しで結構撮りごたえのある巨樹だと思います。
冬でも落葉しないクスはこれからの時期に重宝しますので、機会があれば是非立ち寄ってみて下さい!

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