京都府京都市中京区 京都御苑・枇杷殿跡のエノキ

LEICA Q

近場の巨樹シリーズ。先日仕事ついでに京都御苑を散歩した際、せっかくなのでと撮影してきました。個人的には好きなエノキで京都御苑を散歩する際は必ず眺めるのですが、不思議と巨樹サイトにはほとんど取り上げられていません。京都御苑の西側、出水口から入ってすぐ左手の梅園が広がっている辺りが「枇杷殿跡」。そこに巨樹に興味のない方でも思わず足を止めてしまうような立派なエノキがそびえているのです。うーん、結構目立つと思うんですけど。

ちなみに枇杷殿(びわどの)は平成時代中期の公卿、藤原仲平の屋敷跡で邸内に枇杷が植えられていたことが名前の由来とされています。現在は一帯に梅園が広がり、かつての枇杷は跡も形も見られません。

幹周5.23m。スギやクス基準で見ると物足りませんがエノキとしては充分立派な数値です。たしか以前見たどこかのサイトの情報では京都御苑内の巨樹ランキング6位につけていたような気が…改めてソースを探してみたのですが見つけることが出来ませんでした。以前紹介した「京都御苑・凝華洞跡のイチョウ」がほぼ同等の幹周5.28mで第4位だそうなので、まあ上位であることは間違いないかと。とにかく御苑内でも相当に目立つ巨樹であると言い切って差し支えはないでしょう。

樹形が美しいんですよ。単幹ですらっと伸びて全方位に枝葉を拡散させる理想的なスタイル。遠目に見てもこれは「おおっ…」と目を引くと思うんですが、何故か検索してもあまり表示されない不遇のエノキ。本当に不思議で仕方ありません。

大きく茂った樹冠は健康そのもの。以前アオバズクが営巣していたということなので、ひょっとすると幹のどこかに洞があるのかもしれません。現在は御苑内にある宗像神社境内のクスノキの巨樹にアオバズクが毎年営巣しています。同じ個体がそちらに引っ越ししたのでしょうか。

反対側から。秋の日差しを受ける立ち姿も暖かくて気持ちいいですが、雨が降って樹皮がしっとりした姿も美しい。ところで遊歩道の先に私の自転車が停まっています。自転車の停車位置から手前側の枇杷殿跡は自転車乗り入れ禁止区域なのでご注意を。まあ京都市在住者でもない限り自転車で来られることはまず無いかもしれませんけど。京都御苑は駐車場も完備しているので、車での来訪も安心です。(ただし有料)

板根のように発達した根回りもなかなか見応えがあります。

隆々とした幹はかなりの迫力。エノキはこの幹が良い。シュッとした立ち姿はシンプルに美しく、それでいて幹にはどこかシイ的な見応えもあるというなかなか贅沢な樹種だと思うのです。

このうねりが何とも写真映えするではありませんか。ほんのり黄色く染まりつつある葉がアンニュイな空気を漂わせていて、自分は今まさに日本の四季を味わってるんだという得も言われぬ満足感があります。それにしても何だろう、枝の付け根に細かいピーナッツのようなツブツブが見えませんか?ちょっと寄ってみましょう。え?寄らなくていいって?遠慮しないで下さいよ。※以下やや閲覧注意。

うおお、こいつは気持ち悪い。セミの抜け殻がびっしり。この隆々とした抑揚ある幹はセミの幼虫さんからしても登りやすいのか。それにしても皆さん揃ってそんな高いところまで登る必要があったのだろうか。まあ何年も土の中で過ごして初めて見る朝日を少しでも他の奴らより高いところから眺めてやろうとか、セミにはセミのプライドや見栄みたいなものがあるのかもしれません。お前あんなところで羽化したのかよ、だっせえな。みたいな。

近場で見ても画になりますが、やはり真骨頂はこの全景なのではないかと。ほら、充分目立ちませんか?すごく好きなエノキなんですけどね。御苑内には単体でランキング上位に来るような物凄い巨樹があるわけではないのですが、ぶらぶら散策していると巨樹巨木クラスの樹木が結構たくさん目につくのです。巨樹と巨樹を点と点で結んでピンポイントに回っていくのも勿論面白い。しかしたまには敢えて事前に詳細を調べず、ただただ敷地内にいくつか巨樹があるらしいという情報だけを引っさげてのんびり散策されてみてはいかがでしょう。ここはそんな巨樹探訪に最適だと思います。

2020/10/28訪問
「京都御苑・枇杷殿跡のエノキ」
樹齢 不明
樹高 目測25m前後
幹周り 5.23m

京都府京都市上京区京都御苑3

4件のコメント

  1. 新宿御苑もそうですが、歴史ある公園は見る目が備わるとずいぶん楽しいものに変わりますね。
    このエノキ、樹冠がかなり雄大で、遠景の写真はちょっとクスのような貫禄さえ感じました。
    シルエットが絵になる樹。写真撮りとしても、こうした奇を衒うことのない樹形は一枚撮っておきたくなりますね。

    幹周囲5メートルは巨樹の中では程々かもしれませんが……いやいや、でかいですよね! ただのおっきい木の範疇を超えていることは間違いない。
    セミがこれだけラッシュしているのでもわかりますが、おいしい木であるところのエノキがこれほど欠損なく大きくなっているところは、由緒ある公園ならではの手入れの良さであるのだろうと思います。
    良い場所で思うように育つことができた樹は見ていて気分がよくなりますね。

  2. > 狛さん
    昔はただ静かでのんびりできる広大な公園としか見てませんでしたけど、見る目が変わるとなかなか面白いものだなと。
    狛さんのログを見て久しぶりに新宿御苑にも行きたくなりましたよ。しかし生きているうちにまた新宿に行くことがあるかどうか…
    もう東京には近寄りたくねえなあという抵抗もあり、ある意味ホッカイドーやオキナワよりも遠くに感じます。

    他の樹種なら何だよ5mかよとスルーしてしまいそうですが、エノキとかヒノキとかその辺の5mはつい立ち寄りたくなります。
    自転車を停めて芝生に座り込んで眺める全景がなかなか壮観で、巨樹に目覚める前からこれはいい木だと感じていました。
    仰るように奇をてらわない巨樹。ただ眺めて、いいなあとその場を後にする。身近なところにこういうのがある暮らしって実は
    結構豊かなのかもしれないと最近思います。いやホント、ただ街歩きして写真を撮っていた頃と比べると随分暮らしに彩りができました。
    まあ単純に歳をとって世界の見方が変わっただけかもしれませんね 笑

  3. 京都御苑には一度も足を踏み入れたことがありませんが、ふらりと散策するのがとても楽しそうです。
    特に今頃の季節が最高じゃないですか!
    若い頃にはまったく興味がありませんでしたが、目が肥えてくると(歳を重ねると:笑)楽しみも増大しますね。

    このエノキは本当にキレイな立ち姿をしていますねぇ。
    惚れ惚れしますよ。
    周囲がもっとひらけた環境だったら、〝ナントカの樹〟とかいう名称で有名になっていそうです。
    しかし京都御苑内にひっそりと佇んでいる方がエノキにとっては良いのかもしれませんね。
    遠景は言うもまでもなく、近景も板根や幹、そしてセミの抜け殻と楽しみ方も様々で贅沢な存在だと思います。

  4. > RYO-JIさん
    学生時代を京都で過ごされたRYO-JIさんですら未訪問でしたか!
    かくいう私も若い頃は素通りでしたけど 笑

    本当にきれいなエノキですよね。
    エノキの巨樹は腐朽しているものが多いので、ここまで健康で樹勢の良いものはわりと珍しいかもしれません。
    また京都に来られることがありましたら、ぜひとも散策してみてください。今の目線で歩くと結構楽しめると思います。

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