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香川県善通寺市 善通寺境内の楠


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

昨年夏に訪問済みではあるのですが家族と一緒だったためあまり撮影に集中できず、近いうちに再訪して再撮影しようと心に決めていた巨樹です。善通寺。ここはかの弘法大師 空海生誕の地。巨樹を巡っていると何かと話題の尽きない空海さんですからスルーするわけにはまいりません。そこに偉大なクスの巨樹が待っているというのだから尚の事です。


とはいえまずは参拝を。日頃とんでもない山道を運転したりクマの生息地を闊歩しているにもかかわらず無事過ごしていられるのも、きっと空海さんのご加護に違いありません。774年に生まれた空海さん、幼少期は真魚(まお)と呼ばれて育ちましたが、幼少期からなかなか奇想天外かつダイハードなエピソードをお持ちです。主題からどんどん離れてしまうので省略しますが興味のある方はぜひとも調べてみて下さい。


五重塔すぐ右手が南大門。つまり南大門をくぐるとすぐ左手に巨大なクスが佇んでいるのが目に入ります。五重塔に負けない存在感があるため巨樹に興味のない方であってもまず足を止めてしまうのではないでしょうか。


寺社の境内にあっても何かとスルーされがちな巨樹ですが、流石にこれほどの規模ともなると参拝客の皆さんも「おお、これはデカいな!」なんて言いながら解説板に目を通されていました。以前はお遍路さん顔出しパネルが2体並んでいたような気がしますが撤去されてしまったのでしょうか。クスも当然目立ちますが、この顔出しパネルもいやに存在感があるんですよね…


香川県指定天然記念物「善通寺境内の楠」。樹齢千数百年といわれる老木です。推定樹齢千年を超えるとグッと信憑性が疑わしくなるのがこの業界(?)ですが、こちらのクスノキは善通寺創建(813年)の時代の書物には既にクスの巨木という記述が残っているため、その少なくとも樹齢1,200年を超えていることは間違いないと思われます。

ご存じの方も多いかもしれませんが善通寺は幾度もの荒廃と再建を繰り返し、さらに戦国時代の戦火によって一度は焼失しています。幾度も焼失の危機に遭いながらもギリギリのところで免れてきたクスノキ。ほぼ全ての建造物が失われるほどの災いを乗り越え、空海伝説の生き字引として今なおこの地に生き続けているだなんて、何とも浪漫を感じるではありませんか。


弘法大師像を祀った小さな祠。


その背後には樹齢相応に傷み、空洞化した幹が確認できます。空洞に石が詰められている。(これよく見かけますが、実際のところ樹木保護に効果はあるのでしょうか。)


どっしりと構えた幹。解説板には幹周11mとの記載がありましたが環境省、市サイトなどが採用している12.6mが現在の正しい数値だと思われます。これは巨大なものが多いクスノキの巨樹としても相当な大きさ。まるで岩石の塊のような迫力が感じられました。ちなみに解説板によると樹高30mということですが、これは私の感覚ではいささかオーバー気味。実際は20mほどではないかと。


ボロボロに傷んだ幹。これが見ていられないくらいに痛々しいかと言われるとそんなこともなく。この幹には朽ちゆくものの美しさがあると思う。個人的にはこの角度からの姿が気に入り、しばらく見入ってしまいました。


かつての大枝の欠損跡なのか大きく空洞化した箇所も。伝説の人物、空海よりもさらに前の時代からこの地を見守ってきた大楠。既に衰退期に入っていることは明らかで、ピーク時の巨大さたるや先日紹介した「志々島の大楠」と双璧をなすほど…だったのかもしれません。


それでもまだまだ強い生命力をみなぎらせているあたりは流石クスノキ。手厚く保護されていることもあって、今後も長生きしてくれるのではないでしょうか。


着生植物の茂り方からもどことなく温暖な瀬戸内の風土が感じられる。少なくとも近畿圏のクスノキとは似ているようでどこかが違うような気がしました。


巨大なクスノキだけど「加茂の大クス」や「志々島の大楠」のような、見た瞬間に駆け寄りたくなるほど規格外の大きさを誇るわけではない。しかしこの地に在ることも関係するのかもしれませんが、その姿からは歴史の重み、数値では測ることのできない存在感がじわじわと伝わってくるのです。


本当に存在感では隣の五重塔にだって負けてないと思う。


巨樹抜きに考えてもこの善通寺自体が金刀比羅宮と並んで香川県を訪れるなら外せない場所の一つではありますが、逆にこの一本のために善通寺を訪れたとしても決して後悔しないのではないか。善通寺の歴史を知れば知るほどこの大楠の壮大さがよく理解できると思うので、広い境内をじっくり参拝してから対峙していただきたいものです。


さて。五重塔にも負けない存在感。ええ、私ウソはついておりません。しかしその右手にはさらに強烈なプレッシャーを放つ大楠が…長くなりすぎてしまうのでまた次回ということで。

2020/11/16訪問
「善通寺境内の楠」
香川県指定天然記念物
樹齢 千数百年
樹高 約30m(目測では約20m)
幹周り 約11m(恐らく環境省の12.6mという数値の方が正しい)

香川県善通寺市善通寺町 3-3-1

コメント:4

RYO-JI 20-12-07 (Mon) 21:09

四国のクスと言えば、加茂の大クスや志々島の大楠が目立ってしまって陰に隠れがちですが、
こちらのクスも充分訪問の主目的地になる存在だと思います。
幹周はもちろん素晴らしいですが、それに加えて古い樹齢の巨樹にしか醸し出せない重みがあるように見受けます。
樹勢のピークは過ぎてしまっているようですけど、それでもまだまだ生き続けるでしょう。
しっかり保護もされているようですし・・・。
空洞に石を詰め込んでいるのは『はぁ?』と思ってしまいますが(笑)。
我々にとってのヒーロー?である空海サンの生誕の地にあるべき貫禄です(もう一本も含め)。
香川に行くならば外せない一本ですね!

to-fu 20-12-08 (Tue) 10:56

> RYO-JIさん
空海サンにまつわる書物を読みながら善通寺周辺の街並みを撮り歩きつつ、最後は善通寺境内を巡ってクスノキで締め。
本当にこれだけで満足度の高い一日になってしまいそうです。
近くに「居酒屋 空海」があったので、コロナ終息後であればそこで夜の部まで開催できてしまうという圧倒的満足感 笑

単純に巨樹としても立派ですが、よく火を放たれなかったものだな…なんて歴史に思いを馳せていると妄想が止まらなくなる一本でした。
歴史的背景ありきといえばそうなのかもしれませんが、それも含めて巨樹の魅力ですよね。
それにしても石で空洞を埋めるのは本当に謎です。根本なら動物が入り込まないように、とかまだ分かるんですが。

20-12-11 (Fri) 21:24

すごいなあ、西国のクスは。このクラスのものがどんどん出てきますね。
確かに志々島の大楠を見てしまっては「普通の大楠」みたいに見えますが……いやいや、すごい巨樹です。

激動の歴史を生きながら見てきた巨樹たちが、その瞬間どんな風に立っていたのか、考えてみるとものすごいことです。
あんたはそれを全て飲み込んで今も生きてるのか……と。そんなお寺とともに千年以上を経てきたせいもあるのか、
太いながらも、奔放というより抑制が利いているかのような厳かな佇まいに見えます。確かに生ける仏塔のようでもある。
そういう歴史を供養するように立っているように感じました。
もう一本のクスは樹冠がとても強そう。いいですね!

巨樹を追っていると、実に自然な動機で空海サンの足跡も辿ってみたくなるんですよね……。
ちっとも知らない自分にすらそれが冒険になることがすぐに想像でき、たまらないものがあります。何てったって弘法大師。ああコロナがなければ。

to-fu 20-12-12 (Sat) 11:51

> 狛さん
四国九州は下手するとクスばかり見すぎて食傷気味になるくらい巨樹が豊富ですよね 笑
実際私も昨年徳島上陸→美馬までのルートではクスの巨樹を見すぎて脳がパンクしかけました。

この巨樹に限らず数百年、千年以上の時を生きる巨樹って冷静に考えるとものすごいことですよね。
数々の戦乱があって空襲も受け、この数十年の間には都市開発との戦いが続いている。
それらを生き抜いているなんて歴戦の勇者ですよ。
日本最古の木造建築と言われる法隆寺でも1,300年。この巨樹にしても恐らく法隆寺創建以前より生きているわけで、
これら巨樹たちをまとめて世界遺産認定してしまってもいいんじゃないの?なんて考えてしまいます。

空海サンにはどうしても興味が湧きますよね。たしか今なお高野山で生きているとかいないとか…うん。
足跡を辿るのはホント面白そうですねえ。想像するだけでもワクワクしてきます。早く存分に遠出してやりたいですね…

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