- 2018-08-26 (Sun) 21:27
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | スギ | 岐阜県 | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別)
SONY α7II / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
さて「治郎兵衛のイチイ」を離れて高山の市街地へ向かいます。to-fuさんがシミュレーションした超適当なスケジュールではこの時点で既にホテルのチェックイン可能な時間であり、とりあえずチェックインを済ませてシャワーでも浴びて、高山駅近辺の巨樹と街並みを徒歩でぷらぷら回ってみようというものでした。
しかしですね、市街地に着いたもののチェックインどころかランチタイムにも早い午前中なわけです。これは完全に誤算でした。原因としては序盤の石徹白がアブ地獄(これはもう地獄としか表現しようがなかった)と化していたためにゆっくりと時間を使えなかったこと、そして夏休み中の国道一本道ということである程度の渋滞を想定していたのが、まさかの終始ガラガラで目的地まで何の障害も無く進めてしまったというダブルパンチにあります。前日というか当日早朝に1時間仮眠しただけのto-fuさんはさながら漕ぎ続けないと転倒してしまうチャリンコのような状態でして、仕方なく翌日向かう予定だった「千光寺の五本杉」に向かってみることにしました。ここは「治郎兵衛のイチイ」とはまた違った意味で、今回の旅で絶対に自分の目で見ておきたい!と思っていた巨樹なのです。
駐車場に車を停め、案内板に従って遊歩道を数分歩きます。
ああ。あれに間違いない。
国指定天然記念物、千光寺五本杉。その樹齢は1,200年から1,500年と記載されています。恐らくそうなるだろうということは事前に覚悟していたのですが、実物を見てもやはりそのイメージを払拭することができませんでした。一体何を言ってるんだこいつはという感じですね。嘘をついてもどうしようもないので率直に申し上げますが、悪い意味で「ああ。やっぱりこれなんだよな。」という感情です。
決して見応えが無いわけではないんです。雪深いであろう高山の山中で、宿命のように襲い来る積雪の重みに負けることなく5本のスギが揃って真っすぐに天を目指して屹立している。見応えが無いどころか威風堂々とした素晴らしい立ち姿。立派な五本杉であることは間違いありません。
しかしですね、やはりこれらのスギたちが樹齢1,000年以上というのはどう考えても無理があります。自分のような経験の浅い若輩者が見ても一目瞭然。環境が険しいからだとか5本のスギが栄養を奪い合っているからだとかそんな次元の話ではありません。どう贔屓目に見ても樹齢は500年に満たないでしょう。明らかに若いスギたちです。
飛騨千光寺。約1,600年前に飛騨の豪族によって開山され、約1,200年前かの弘法大師空海の十大弟子が一人、真如親王によって建立されたとされる古刹にして名刹です。国指定の天然記念物、樹齢1,200~1,500年というストーリー…生来のひねくれ者だからなのかどうも穿った見方をしてしまいます。いやいや、何を考えてるんだ。そんなことはないよな。あるわけがない。
7年毎の本尊御開帳の際、地上10mに巨大な注連縄がかけられるそうです。前回の交換から随分経っているのでしょう。積雪でずり落ちた縄が朽ち、ずたずたになっていました。そのような決まりである故、仕方ないことではあるのでしょうが、巨樹を愛する者としてはどうも物悲しく見えてしまいます。
あまりこんな事ばかり書きたくはないんですけど…大枝が遊歩道の頭上にまで達しています。天然記念物ですから簡単に剪定することが出来ないのかもしれませんが、きちんと整備された遊歩道で今までこのような巨樹の姿を見た記憶がありません。剪定できないのであれば柵を広げて迂回路を作るであるとか、何らかの対策を取った方が良さそうに思えます。
色々と書きましたが、結局のところ理屈じゃないんです。先の「治郎兵衛のイチイ」然り、人々に愛される巨樹というのは理屈抜きにそう感じるものだし、その周辺の環境含めて何となく居心地が良いんですね。そして、ここは自分にとってそう感じられる場所ではなかった。
そもそも僕はこの巨樹について、訪れる前からあまり良い印象を持っていませんでした。その感情が影響しているに決まってると言われれば、その点においてはそうなのかもしれません。でも、きっとそれだけではないと思うんです。たくさんの巨樹を見てきたので、何となく分かります。
しつこいようですが、決して見応えの無い巨樹ではありません。むしろ健康状態も良好そうな素晴らしいスギです。ただその巨樹としての見応えのピークはまだまだ何百年も先なのではないか、そんな気がするのです。あまり大きな声では言えませんが、もし…もしもの話ですよ?この巨樹が樹齢350年、高山市指定天然記念物と聞いて訪問していたとしたら、きっと手放しに立派な杉だと感じて帰路についていたんじゃないかなーと思うんです。何にしても自分の目で見ておきたいと思っていた巨樹なので、対峙することが出来て良かったと満足しています。
千光寺の五本杉
国指定天然記念物
樹齢 1,200~1,500年
樹高 約50m
幹回り 約12m
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コメント:4
- 狛 18-08-27 (Mon) 21:30
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ああそうか……石徹白以外にも、次郎兵衛のイチイを先に見たことも、この場合とてもまずかったですね。
人気投票ではなく同情票でならかなりの票を集めそうな可哀想な五本杉……。
いや、でも、この場合これが現地で見た本当の感想だと、今でも思いますね。
立派な寺なのに、国指定にしておきながら(この際もうそう言ってしまう)、それにしては後のお手入れが行き届いていないのは指摘されるべきだと思います。
朽ちたしめ縄にしても、寺周辺の見所にしたいならどうしたって撤去すべきなのに、されていない。
我々で切り落としていいならやるけど、天然記念物指定で触れないから無理、だったら管理者がちゃんとやりなさいよ。
これを1200年と強引に推すにしても、ウチの寺にはこういう根拠があるのじゃ! という立派な解説文があるかと思えば、そういうのも全然ないし。しょぼい。
これが1200年だったらよ、隣に生えてる無名杉も1200年だよな? と詰め寄りたくなってしまうではないか。
要するに、もっと大事にしろよ! ってことですよね。
デカかろうが小さかろうが、大事にされているものを見るのは気分がいいし、そうでないものを見るのは心が痛む。
単純にそういうことです。
なぜか書籍などでは良い評価が目立つんですが……書籍の写真ではしめ縄もちゃんとしてるし、その頃と比べてお寺が飽きてしまったとか、そういうことじゃないことを祈ります。
さあ、次ですね次! そういう気分。笑 - to-fu 18-08-28 (Tue) 16:47
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> 狛さん
必死にオブラートに包んだつもり(全然包んでない)でしたが、言ってしまいましたね!
そうなんです。周囲のスギもほぼ同じサイズじゃねえかと突っ込まずにいられないんですよ。この五本杉が1200年なら近くのそれらも1000年くらい生きてるのか?と。失礼な言い方かもしれませんが適当な装飾ででっち上げられたこのスギが気の毒でねえ…天然記念物がどのような審査で認定されるものなのか存じ上げませんが、このスギを見ているとどうしても背後にある寺の影響力を感じずにいられなかったのが残念でなりません。
株式の上場ゴールじゃあるまいし天然記念物指定されたから終わり、では悲しすぎますよね。
次の世代へ、そのまた次の世代へと遺していけるよう、愛情と責任を持ってしっかり管理していただきたいと思います。
(どのサイトや書籍を見てもこの木が比較的高評価なのは僕も不思議で仕方ありません。) - RYO-JI 18-08-28 (Tue) 22:12
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正直な感想でいいと思います。
文面じゃなく、言葉にしたらもっとアレかもしれませんが(笑)。
そうですよね、この五本杉には何も罪はありませんよねぇ。
むしろ被害者なのかもしれません。
どこのだれか知りませんが、何かの意図があって国指定だけやってあとは放置・・・。
残念でなりませんが、そういう状況の巨樹もあるのも事実なんで見ておくことは無意味ではないと思います。
せめてこの五本杉が、数百年後に国を代表するような見事な存在になっていて欲しいです。 - to-fu 18-08-29 (Wed) 21:08
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> RYO-JIさん
行き過ぎて単なる中傷になるとどうかと思いますが、別にお金をもらって書いているわけではないので感じるままに、好きに書いて構いませんよね。(狛さんと茨城県のブタ屋さんで話していた時は、二人とももっとアレだったと思います 笑)
扱いが何だかなあ…という巨樹はここに限った話でもありませんが、国天クラスでここまで残念な感じがしたのは僕としては初めてのことでしたね。そうやって疑念が芽生えると、だったら国天指定もやっぱり大きなお寺の力が…なんて考え始めてしまうのが心の穢れたto-fuさんでして、何ともスッキリしない巨樹でした。だってこれで1,200年って…ねえ。
本当にスギは何も悪くないんですよね。彼らは人間と会話できませんし。それに付け込んで過剰なストーリー(お箸ぶっ刺し伝説なんかはユーモアと愛情を感じるので大好きです)を飾り付けられている姿を見るのは悲しいものです。
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