- 2020-03-16 (Mon) 13:08
- SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art | クスノキ | 三重県 | 巨木たち（地域別） | 巨木たち（樹種別）
SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
目の前が海水浴場という抜群のロケーションを誇る「徳司神社の大クス」を離れ、熊野市山間部へ。道すがら山道から覗く新鹿湾を眺めては海沿いから離れるのが名残惜しくなりますが、また近々来ればいいと覚悟を決めて（実際わずか一週間後には再訪しているわけですが）目的地へと進むことにします。
熊野市五郷町。大又川を支流に逸れてほぼ最奥まで突き進んだ先に「石神神社のクスノキ」が佇んでいます。こう言っては失礼ですが、もし巨樹めぐりなんて趣味を持っていなかったら死ぬまで立ち寄る機会はなかっただろう。そんな立地です。鳥居をくぐると早速視界に飛び込んでくるのは頭上を跨ぐように大枝を伸ばす巨大クスノキ。今朝方見てきた大物「引作の大クス」とは全くタイプの違うクスの姿に否応なしにテンションが上ってしまうのでした。
とはいえ、逸る気持ちを一旦落ち着けるためにもまずは解説板に目を通しましょうか。熊野市の天然記念物に指定されています。巨樹にまつわる逸話の類は特に無いようですね。樹齢も不明です。
大きく立派なクスではありますが、やはり一番の特徴はこの頭上をまたいで側の渓流にまで達するこの大枝でしょう。もちろん私もこの姿に惹かれてやって来ました。頑丈な鉄柱で支えられており、真下をくぐる際には冷や汗モノの緊張感があります。
解説板に御神木として古くから保護されてきたという記載がありましたが、周辺はとても綺麗に手入れされている印象。祠は最近になって造られたもののように見えます。非常に湿度の高い空間なので、木造の祠が傷んでしまうのも早そうです。
先ほどの写真では伝わらなかったと思いますが、この祠がやたらデカいんですよ。この手の祠はせいぜい1mくらいのサイズで造られていることが多いので、写真だと私が小人のように見えます 笑 いえ、私の身長が50cmしかないわけではなく祠も巨樹もデカいんですよ。とても。
ちょうど幹周測定位置の辺りにかけてキュッとくびれるような形状。環境省の巨樹DBによると幹周10mということですが、正確な位置で測定したら7mかそこらではないかと思われます。流石に10mは盛り過ぎな印象を受けました。
その立ち姿から見ても比較的若くて健康そうなクスですが、根本から内部が大きく空洞化しているのが確認できます。樹齢は不明と書かれていましたけど大体300～400年くらいではないでしょうか。
空洞を覗き込むとなんと空洞内にクスが根を張っていました。湿気で空洞から朽ちてしまわないか心配ではありますが、ひょっとすると将来的にはこの根が肥大化して空洞を埋めてしまうくらいに成長するかもしれません。いえ、そう期待したいものです。
全身が苔や着生植物に覆われて野性味溢れる姿にはクスらしからぬ攻撃的なオーラが漂っていて、今にでも枝を伸ばしてきて捕縛されるんじゃないかというくらいの迫力があります。
枝の途中からは着生植物が立派な幹を伸ばして天を目指していました。これだけワイルドなクスは見た記憶がない。巨樹としての見応えももちろんのこと、写真趣味も兼ねている私にとっては撮り応えも充分。なかなか他所では見られない姿、唯一無二の姿をした巨樹相手の撮影というのは一層熱が入るものです。
狭い境内のためなかなか全体像を写すことが出来ませんでしたが、こちらから見ると分かりやすい。ほぼ真横に伸びる大枝は境内どころか渓流まで跨いで隣の竹林に達していました。
幹は真上にも成長を続けており、樹高もそれなりにあります。湿気を帯びで黒くずっしりした質感の幹は遠目にはとてもクスには見えない。巨大なカシでも見ているかのような気分です。
祠の前、大枝の真下に立ってみる。簡単に折れるものではないと頭では理解していながら、それでも真上を見上げるとゾゾゾっと背筋に寒気を感じます。この長大な枝こそがこのクスの魅力だと思うので先端部分が折損してしまわないよう、そろそろもう一つ支柱が必要なのではないかな、などと余所者は生意気なことを考えてしまいます。
私が訪問した前夜は大雨だったんです。それこそ山道が通行止めにならないか心配になるくらいの。この日は渓流も増水していて非常に迫力があり、境内全域が水しぶきに包まれてそれが陽光でキラキラ輝く様は実に神秘的でした。何とかその光景を撮影できないかと試みたんですが…難しいですね。
私が訪問したシチュエーションが良かったというのもありますが、率直に申し上げると元々この日のメインディッシュであった「引作の大クス」よりもこちらのクスの方がずっと印象に残っています。もう一度どちらか一方にだけ再訪できるとしたら私はこちらを選んでしまいそう。このルートを抜けて熊野を目指す機会があれば今後も必ず立ち寄るだろうと思います。周辺の環境含めて実に素晴らしい巨樹でした。
2020/1/29訪問
「石神神社のクスノキ」
熊野市指定天然記念物
樹齢 不明
樹高 20m
幹周り 10.0m
三重県熊野市五郷町
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コメント:4
- 狛 20-03-18 (Wed) 19:04
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なんだこれ、ジャングル！？ というのがファースト・インプレッション。
この湿度、木々草々の勢いがもはや日本ではないような感じです。これで１月だというのだから……。
クスもさすがにすごい迫力ですが、ワサワサしたノキシノブやら、土を必要としない別種着生植物が驚異的。
全ての植生が攻めまた攻めで、観察する目があると、行き詰まるような緊張感を見そうです。
こういう風景を見ると、僕はどうしても文明崩壊後の世界を想像してしまうんですよね。文明と言わずとも過疎でもいいんですけど、ここはもういっそ文明にも滅んでほしいというか。笑
全てがゆっくりと自然に飲み込まれていく……このクスはそういう時代になってもここに記憶をとどめながら立っていて、いつかは自らも自然の中に同化して神木というかつての肩書を消していくのでしょうね。
四国の山の中で見たあのモミやカゴノキの巨樹にも似た、野生に傾いていく強さと寂しさのようなものを感じるように思います。 - to-fu 20-03-18 (Wed) 21:37
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> 狛さん
以前RYO-JIさんがこの巨樹を紹介された際、まさにそのジャングルという表現を使われていた記憶があります。
本当にここ、夏場なんかに訪れたら完全に熱帯雨林だと思いますよ。
このクスも凄い生命力なんですけど、それ以上に寄生する植物たちの遠慮の無さに言葉を失いますよね。
お前らやりすぎると大事な宿主様がぶっ倒れちゃうぜ？少しは加減ってものを知らないのかい？と説いてやりたいです。
私もこの神社の風景を見てどこかの古代遺跡にでも来てしまったかのような気分になりました。
巨樹めぐりをしていると廃村間近の集落を訪れる機会が多々ありますが、あれらの巨樹は近い将来こうやって自然に
埋もれていくんだろうな…なんて想像してしまいますよね。RYO-JIさんの受け売りになってしまいますが、果たして
自分たちマニアのような物好き以外の人間がどれだけこの神社、巨樹を訪れているのか…色々と考えさせられます。
我々が老人になる頃には日本の人口も随分減って、このクスのように野性的な巨樹が増えているんでしょうねえ。 - RYO-JI 20-03-18 (Wed) 21:57
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to-fuさんの感想を読んでいて思わずニヤリとしてしまいました。
たまたま先に見ていただけなのに先輩風を吹かせて、『そうでしょ、そうでしょ！』とさも自分の手柄のように（笑）。
本当にこのクスノキは迫力ありますよね。
引作の大クスよりもずっと印象に残るっていうのも頷ける話です。
私の場合は全然別の日程でしたが、同日ならそう感じてもまったくおかしくありません。
それくらいにインパクトありますもの。
私が行った時は横の川は緩やかな流れでしたが、増水していて飛沫がキラキラ光っていただなんて・・・いいなぁ。
ただでさえ雰囲気ある場所なのに、そんな神秘的な光景もプラスされていたとは。
いやー、また行きたくなってきました（笑）。 - to-fu 20-03-19 (Thu) 9:13
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> RYO-JIさん
実はこの巨樹に興味を持てたきっかけは完全にRYO-JIさんの訪問ログのおかげなんです。
海沿いに大物がゴロゴロしてる三重県なので、アクセスにも難のある山間部は後回しにするつもりでしたから。
このクスは本当にインパクトありましたね。
今にも押し潰されて死ぬんじゃないかという緊張感でドキドキしました。
私も暖かくなって緑が一層濃くなった時期に、例の巨大カツラと併せて再訪してみようと思っています。
問題は…あのエリアってきっとヤマビルさんが出ますよねえ…いやホントそれだけがネックで。
夏場なんてとても綺麗だと思うんですけど。巨樹を見たい気持ちよりもヤマビル怖い！の方が若干勝るかもしれません 笑
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