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兵庫県美方郡香美町 小長辿の大トチノキ(こながたわの大トチノキ)


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
PENTAX K-1 / PENTAX HD PENTAX-D FA★50mm F1.4 SDM AW

久しぶりの巨樹遠征ということでややギクシャクしながら兵庫県奥地までやってまいりましたが、今回は小ぶりないわゆる渋い名木系ではなく出来るだけ健康でダイナミックな巨樹を回ろうというテーマがありました。暗い話題の続く世の中ですから、せっかく出かけるのなら巨樹の放つパワーにただただ圧倒されてスッキリ帰りたいもの。多くの大物が山奥に存在し、これからの季節は落葉してしまうトチノキ…今行くならここしかない!ということでこの「小長辿の大トチノキ」を目指したのでした。

余談ですがここへ至るまでの但馬アルペンルート、決して悪い道ではないんです。しっかりとアスファルトが敷かれているし道中の大部分が離合困難なほど狭路ではない。見通しだって最悪というほど悪くはない。しかしこれがまた非常に疲れる道のりでした。全く手入れされていないと言いますか、そこら中に丸太のような枝や落石…いや、岩石?が転がってましてね。何度も何度も車を停め、えいやっ!と枝や岩石をぶん投げながらようやく到着。駐車スペースというほどのスペースはありませんが幸いにも交通量はゼロに等しいため、近くのやや広めの路肩スペースに駐車させていただきました。前情報によるとここからそう遠くないようなので徒歩で向かうことにします。


距離にして2、300mでしょうか。緩やかな登道をざっくざっくと登るとルートが途切れてしまいました。おや?と辺りを見渡してみると右前方の斜面上にただものではなさそうなシルエットが。おおおお!このテンションの上がり方は間違いありません。これは確実に凄いやつだと期待が高まります。


小さな社を守るかのようにどっしり構える巨大なトチノキ。普段なら駆け寄ってパシャパシャと無我夢中で撮影に入るところですが、今回はコロナ禍の状況において世間の様子を見ながら少しずつ自分なりの新しい生活様式を構築してきた私にとって念願の巨樹遠征…ということで感極まってしまいましてね。しばらく撮影することが出来ず、呼吸を落ち着けてぽけーっとトチノキを眺めていました。ようやくここまで戻って来ることが出来たんだなあ。


「小長辿(こながたわ)の大トチノキ」。こながたわ、という読み方は現地について初めて知りました。この辺りはスキー場の多い標高700mの高原地帯ということで、数百年前に雪崩対策で植えられたトチノキ林のうちの一本だと考えられています。大トチノキの前には鳥居や社が設置されて周辺には巨木未満クラスのトチノキが多数散見することから、恐らく当初植えられたもののうち生き残った唯一の大トチノキが神格化され、後年になって当時を模す形で周辺にトチノキ林を植えたのではないかと思われます。


筋骨隆々とした巨大な幹。解説板に国天のトチノキに匹敵するとの記載がありましたが確かに私が今までに見た国天のトチノキと比べても全く遜色ありません。幹周はなんと10mの大台に迫る9.62mということですが、これは恐らく昭和46年時点の数値。現在は10mを軽く超えているのではないでしょうか。


地上2、3mの辺りで4本の支幹に分かれて大きく広がる形状をしていますが、そのどれもがとにかくデカい。ああ、さっきの自分は久しぶりの巨樹遠征に感極まっていたのではなく、単にこの巨樹のスケールにあてられて硬直していただけなのかもしれない。これが巨樹だ!と言わんばかりの圧倒的パワー。そうだよ、これが見たかったんだ。


苔生したまるで古代生物の生き残りのようなこの姿。素晴らしい。実はここに文章を長々と書いたのですが、全て消してしまいました。百聞は一見に如かず、もし写真を見て感じるものがあったらぜひ足を運んで下さいよ、と。


国天クラスの大物は軒並み朽ちて自然に還りつつあるトチノキですが、こちら樹勢は上々です。栃の実が関係するのか分かりませんが、辺り一帯にふわーっと甘い香りが漂っていてとても心地よかったです。カツラの紅葉のような香り。(もしかしたら近くのカツラとか何かの花の香りなのかもしれません 笑)そこら中に栃の実が落ちていましたが、勝手に持って帰るのもどうかと思い我慢しました。美味いですよねえ、栃もち。毎年必ず買いに行ってます。


緑の天蓋。隙間から差し込む日差しが本当に心地良い。トチノキは絶対に葉を付けている時期に訪問すべきだと思います。


カヤでしょうか。ところどころ着生植物が見られましたがトチノキが気にする様子もなく。個人的な考えですが山奥の巨樹に関しては特に手入れする必要も無いように感じます。朽ちるなら朽ちさせえてあげればいい。希少な巨樹と言えど自然界の一つのピースに過ぎませんから歪める必要はないでしょう。


神々しさのような存在の重みで語るなら国天クラスまであと一歩及ばないかもしれません。しかしこのトチノキには国天トチノキたちが損なってしまった溢れんばかりの生命感がある。気持ちよく後を去ることができる、という視点では勝るとも劣らない印象です。このトチノキ以上に今回の遠征一発目に相応しい巨樹があっただろうかと考えると、私にはちょっと思い浮かばないんですよねえ。このまま順当に成長を続ければ間違いなく国天トチノキの一角を占めることになるでしょう。


とてつもなく大きな巨樹にして適度な冒険心まで満たしてくれるということで非常にオススメ度の高いトチノキですが、もちろん周辺一帯がツキノワグマ生息地帯なのでくれぐれもご注意下さい。ここまで来るだけの価値は充分あると思います。

2020/9/10訪問
「小長辿の大トチノキ」
兵庫県指定天然記念物
樹齢 300年以上(自治体のサイトによると推定1,000年とも)
樹高 27m
幹周り 9.62m

兵庫県美方郡香美町小代区大谷

コメント:4

20-09-25 (Fri) 20:12

ちょろちょろと、中規模な活動ができるようにもなってきて、僕も東北の大物に会うことができましたが、同感です。
やはりこういう時求めたいのは巨樹としての圧倒的存在感。ぞわぞわっとするような、巨大な生命の気配。
今回見た中にトチは残念ながらなかったのですが、いいですねえ、トチの巨樹……。
おっ、トチを見てきたんだ! と、この時点で、いいなあ……となってしまいます。笑

この巨大で重そうな幹、いかにも強そうだけど、精一杯この季節を喜んでいるかのような葉の表情。
スギにはない良さがあります。いや、もちろんスギもいいけど……だめだ、無性にトチの巨樹に会いたくなってきました。笑
この巨樹は空洞もなさそうだし、書いておられる通り、すごく安心感がありますね。もっと大きくなりそうだ。
アクセスが良いというのも、トチの巨樹にしては珍しい。未訪問ですが、長野のど真ん中の「贄川の大トチ」を思い出しました。道に近いらしく。
いや、この際、ある程度悪路を進む「太田のトチ」にも行きたいし……トチの巨樹は依然ロマンの塊です。

to-fu 20-09-26 (Sat) 8:32

> 狛さん
全く終息の兆しは見られませんが、それでもようやく個々人でこれはダメこれは大丈夫だろうというノウハウが蓄積されてきたように思います。
その基準に個人差がありすぎて恐ろしいですが他人に期待しても仕方ありませんので、それ込みで自己防衛するしかありませんね。

トチの巨樹は身近なところで見られないのが難点ですが、それがむしろ特別な非日常感を演出してここぞ!というときに有り難い存在です。
いくら巨大でも空洞化して衰えている巨樹はこのタイミングで訪問すると気分が落ちそうですからね…今はそういうのはキツイなと。
このトチは全国的に見てもトップ10くらいの巨樹だった記憶がありますが、樹勢や見応えまで加味するとトップ5に食い込むかもしれません。
「贄川の大トチ」は私もチェック済みで直前まで立ち寄るつもりだったんですが、一本東の国道ルートを通るとケヤキの大物が
点在していたので結局そちらを選択してしまいました。あのトチは良さそうですよね。駅に駐車してあとは歩いて行けそうですし。
長野のケヤキ勢はそこそこにして、レア度の高いトチを先に回っておくべきだったと少し後悔しています。

RYO-JI 20-09-26 (Sat) 22:50

近隣の並みの巨樹を回るのも悪くないですが、やっぱりこういう大物、そして冒険心を味わえる巨樹は格別ですね!
巨樹の生命力を分けてもらって元気になるのか、こういった自然に踏み入れ趣味を満喫するから元気になるのか・・・。
その両方ですかね、生きている実感が湧いてくる体験は定期的に味わわないとダメですね。
先日の石徹白行きもそうですが、私までやる気が起こってきます(笑)。
このトチノキはもちろんチェック済みですが、いかんせん遠いです。
しかし距離は時間をかければ解決できますからね(笑)。

国天に匹敵する・・・というくだりに兵庫県の熱い想いを感じます。
実際これが国天であっても何の疑いも文句もないでしょう。
重量感のある幹に圧倒され、苔生した樹皮にわびさびを感じ、そして見上げた葉と光の美しさに見惚れてしまう。
うまく説明できませんが、トチだけにしか味わえない感動がありますよね。
こういうのを見ると本当に居ても立っても居られない気分になりますよ(笑)。

to-fu 20-09-27 (Sun) 15:50

> RYO-JIさん
全くもって同感です。近隣を回るだけでも充分楽しい、でも日々の活力を養うという意味ではやはり遠征に勝るものはないのだなと。
現実から離れて非日常にどっぷり浸かれるあの感覚は格別でした。近所も悪くないと思ってましたが、行ってしまうとダメですねえ 笑

兵庫県の山間部は結構粒ぞろいなんですよね。
それもトチとかカツラとか我々にとって身近でない樹種が多いので、わざわざ行くだけの見返りも大きいと言いますか。
このトチは太田の大トチやあのつるぎ町の桑平のトチノキなど、今まで見てきたトップクラスの巨樹と比べても引けを取らない迫力でした。
あの巨大な葉っぱと、ふわっと香る汗のようなにおい 笑 クスともケヤキとも違う。仰るようにトチには独特の魅力があります。
人里から離れて野性味あふれる巨樹が多いので、冒険心を満たしたいときには同じく山奥の沢沿いに多いカツラと双璧をなす樹種だと思っています。

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