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京都府京都市中京区 武信稲荷神社のエノキ


LEICA Q

JR二条駅から徒歩圏内。三条会商店街を東に進み、西友の手前でやや南に逸れると武信(たけのぶ)稲荷神社が見えてきます。以前近くに住んでいたことがあって、その頃は毎日のようにベビーカーを押しながらこのアーケード街の周辺を散歩していたことを思い出します。随分と様変わりしましたねえ。ちょうど今朝方近くに所用があったものですから、そういえば武信稲荷にエノキの巨樹が生えていたなということで訪問してみたのでした。


鳥居をくぐると早速それらしきエノキが見えてきました。本日も快晴。どうしてもコントラストが付きすぎてしまって巨樹撮影には不向きなシチュエーションですが、それでも青空に美しい樹冠が映えます。


左手の物体が気になって仕方ありませんが、まずは何より参拝です。余談ですが最近どこで買い物するにもキャッシュレスが基本になってしまったものですから、財布の中にお賽銭用の小銭がなくて困ることがとても多いです。釣り銭欲しさにわざわざ近くの自販機でペットボトル水を買ってお札を小銭化することもしばしば。全く便利なのか不便なのか分かりませんねえ。


エノキはそもそもスギやクスノキのように巨大に成長するものではありませんから、パッと見て誰もが足を止めるほどのインパクトがあるわけではありません。幹周4mということでサイズ的に見ても巨樹ではなく巨木のカテゴリーに入るサイズです。


しかしこれは…見れば見るほどただものではない。当然ながらサイズこそ人目を引くほどではないにせよ数百年にわたってこの地で生き続けているわけで、麓に立って見上げたときのオーラはそこらの樹木の比ではありません。


グッと引き締まった筋肉を思わせる細マッチョな体型。その肉体美は惚れ惚れするくらい美しい。実はこのエノキを眺めるのは今回が初めてではなく巨樹巡りを始めてから何度も訪問しているのですが、コケが色味を強めて生き生きとする雨の日のエノキもそれは美しいのです。しかしこうして陽光を透かしながらさわさわと葉を揺する晴れの日のエノキも同等に美しい。正直なところ、いつ撮った写真を元に記事をまとめようかと悩んでしまったくらいでした。


京都市指定天然記念物「武信稲荷神社のエノキ」。解説版記載のとおり平重盛がかの宮島・厳島神社から苗木を移し替えたのが由来であるとされていますが、実はこのエノキ、もう一つの逸話の方で全国的?と言っていいくらいに名が知られているんですね。もしかするとご存知の方もいらっしゃるかもしれません。


そう、坂本龍馬が妻おりょうにあてて「龍」の字を刻んだという逸話。このエノキこそが龍の字を刻まれたとされるそれなんですね。


読みにくいと思うので拡大したものを。この神社には子供が小さい頃散歩ついでによく立ち寄ったものですが、とにかくこのエノキ目当てで参拝される方が多いのです。どこかに龍の字が確認できないだろうか、なんて樹皮を凝視しながらエノキの周りをぐるぐる回っている方をよく見かけました。かく言う私ももちろん探しましたが、現在視界に入る範囲にはそれらしきものは見当たらないようです。


一見まだまだ健康そうにも見えますが、そこはやはり傷みやすいエノキ。よく見ると幹には亀裂のようなものも見られました。


枝ぶりも葉の付きもよく本当に一見すると樹勢は旺盛。しかしながらそこかしこに巨大なキノコが生えているのが気になってしかたありません。推定樹齢850年ともいわれる老木ですから、そろそろ何らかの処置が必要なのではないかと。


よく見ると本当にキノコだらけで…幹の内部には随分と菌糸が広がってしまっているのではないでしょうかねえ。健康そうに見えてある日突然ポッキリと、なんてことにならなければよいのですが。ちょっと心配です。


麓にはチェーンソーアートの世界チャンピオン 城所ケイジ氏が折れたエノキの大枝で制作したアート作品の龍が飾られています。詳しくは武信稲荷の公式サイト「御神木から現れた龍」をご覧いただけたらと思いますが、城所サン曰く「ここには最初から龍がいた。俺はその姿を引き出しただけに過ぎない。(やや誇張表現あり)」だそうで。いや、これ本当に凄いですよ。この手のアレは表現者の自己顕示欲しか伝わってこない言ってしまえば胸糞悪い作品になることが多い印象ですが、こちらは御神木のエノキへのリスペクトが明確に感じられる素晴らしい作品です。一見の価値あり。


樹形の美しい、まさに名木と呼ぶにふさわしい一本。こういう巨樹が住宅街のド真ん中にそのままの形で残されているという点において、京都はもっと日本中に誇っても良いのではないか。全国ランカークラスの巨樹が存在しない京都市内ですが、それでも実は結構見どころがあるんですよねえ。

2020/10/15訪問
「武信稲荷神社のエノキ」
京都市指定天然記念物
樹齢 推定850年
樹高 23m
幹周 4m

京都市中京区三条大宮西二筋目下ル

コメント:4

20-10-15 (Thu) 21:17

エノキ、しぶい! 
どちらかと言えば、あれでもなくこれでもなく……という消去法で断定する樹種ですが、一里塚に植えられる法則があったり、意外と面白いエピソードが多いので気になってます。
このエノキはその中でも白眉ですね。ストレートに大きいと言えるし、立っている格好もいい。
解説を読んでも、どうやら確からしい出自があるし……何より、龍馬のエピソードがまたファン泣かせです。
縁結びの樹って日本中にありますが、だいたいが商用で、アッハイそうですね、と素通りするのに。
このエノキほど説得力があるものは見たことがありません。聖地中の聖地ですね。

いやしかし……キノコやばいですね。エノキ茸……ではなさそうですが。これは中までいってそうだ……。
「赤羽根大師の大エノキ」のあの様子も頭をよぎりますが、いつまでも健やかに伝承を残して欲しいです。
こういうのが残ってるのがまさに京都らしいと思うんですよね。

RYO-JI 20-10-15 (Thu) 21:37

このエノキは全くのノーマークでした。
そうですか、あの宮島の厳島神社からやってきた苗木がここまで大きく育ったと・・・。
信憑性はともかく、個人的にはそうであったと信じたいですね。
歴史上の偉人との逸話がいくつか存在するあたり流石は京都の神社です。
他の地域ではそうはいきませんよ。
特に龍の文字に関する話は歴史ファンにとって興奮する内容で、それ目当てに訪問する人も多そうです。
エノキの巨樹はあまり経験ありませんが、本当に筋肉隆々としたその姿に見惚れてしまいますね。
キノコ、そうキノコの存在は大いに懸念されます。
早急に処置をしてほしいものですね。

to-fu 20-10-16 (Fri) 10:44

> 狛さん
エノキはよほどの大物でもない限りどうしても消去法で後回しにしてしまいがちですよね。
私も遠征先にエノキがあったら…まあやはり一度目の訪問ならスルーしてしまうだろうなあ 笑
このエノキはエピソード込みで語るなら仰るようにエノキ界の白眉と呼べる存在だと思います。
巨樹マニア人口の万倍を誇る龍馬マニア(いや、これは本当に万倍いるだろうな)が嬉しそうに眺めている光景をよく見ました。

キノコは恐らく管理されている方々が無頓着といいますか、ヤバい奴だという認識が無いのではないかという気がします。
素晴らしい伝承の残るエノキだけに、一度専門の方に診てもらうべきだと思いますけどねえ。

to-fu 20-10-16 (Fri) 10:54

> RYO-JIさん
ただでさえエノキという地味な樹種で、さらにリスト上ではサイズも目立ちませんから…ああ、何だか酷い言いようですね 笑
平重盛公が植えたのなら樹齢は推定どおり850年程度。あの赤羽根大師の大エノキが800年程度と言われていますから…
なんて考えてしまうとアレですが、ロマンのある伝承ですよね。というか「大エノキ」は絶対に800年どころか1000年の大台を
越えていると思いますけどねえ。こっちが怪しいというよりあっちが控えめすぎるんです。

誰もがその幹に刻まれたといわれる龍の字を探したくなるエノキ。もっと目立ってもいい存在だと思います。
京都の縁結びの神様の多くが随分賑わっている印象があるので、巨樹愛好家としてももっとエノキを推してやってくれという
期待を持っています。ああ、でも変に人が集まるとエノキに「ナントカLOVE」とか刻む不届き者が現れかねませんね。それは嫌だ。

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