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長野県下伊那郡根羽村 月瀬の大杉


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

訪問したのは昨年2019年の8月。既に1年以上が経過してしまいました。本来であれば真っ先に記事にまとめてしまいたい巨樹ではあったのですが、訪れたのが真夏の夕暮れ時だったこともあって写真にイマイチ納得が行かなくてですね。記事にまとめるのは今年再訪してからにしようと心に決めていたわけです。が、そこに件の新型コロナ騒動ですよ。流石にこのままでは長野遠征なんていつ行けるか想像も出来なくなってしまっため、この機会に記事にまとめてしまうことにしました。この巨樹のことを書かずして他の長野県の巨樹訪問記へと歩みを進めるのもどうかと思いますので。ということで長野県ナンバーワンの巨杉「月瀬(つきぜ)の大杉」です。


長野県根羽(ねば)村、と聞いて一体どれだけの人がその立地をイメージできましょうか。下手すると長野県人でも怪しいのではないかと。根羽村は長野県の南端、岐阜県や愛知県との県境付近にある小さな集落です。巨樹抜きにしても運転しながら景色を眺めているだけでテンションが上ってしまうほどの美しさ。私も初めての場所でしたが、いやー写真を見てのとおりとにかく風光明媚なところですね。


国指定天然記念物「月瀬の大杉」。長野県最大にして、全国でも第6位(奈良県の「高井の千本杉」のようなイレギュラーな合体樹は除く)の大きさを誇るスギの巨樹です。当然私も以前からその名を知っており、いつか絶対に訪れなければならない一本だと思っていました。それにしてもこれはデカい。文句無しの大きさだ。ここまで大きいともう下手な言葉で飾り付ける気分には到底なれないわけで。うおおデカい…そう、ただその規格外の大きさにぶったまげたらいいのではないか。それが作法であるようにも感じてしまいます。


国天指定された昭和49年に文部省が調査したところによると樹齢は約1,800年。今まで見てきた他の杉と比較した私の主観だと確かに巨大な杉だけど1,800年はどうだろう…と思わなくもありませんが、1,000年以上の時を生きていることは間違いないでしょう。(とはいえ地域の伝承ではなく文部省調査による数字なので、それなりに根拠のあるものなのかもしれません。)

かつて江戸城本丸焼失後の復興用材として大杉売却の決議がなされたものの、月瀬地区全住民の反対によって伐採を免れたのだとか。一歩間違えたらこの大杉を眺めることが叶わなかったということか。当時決して裕福ではなかったと思われる月瀬集落の方々が当座のお金よりも地域の誇りを選んだという事実。ただただ感謝するより他ありません。ちなみに現在、集落の全戸交代で毎週トイレ清掃等の奉仕活動が行われているそうです。もちろん今現在の住民の方々にも感謝の気持を忘れてはいけませんね。


根本からぐわっと腕のような太枝を持ち上げる姿は岐阜県で見た「神の御杖杉」とよく似ている。同じ国天の神の御杖杉も素晴らしい巨杉でしたが、こちらの月瀬の大杉が放つ存在感はさらに一枚二枚上手であるように感じます。


古来から村に災いが降りかかるときには大枝がドサッと落ちて知らせてくれたのだとか。また、虫歯に病む者が祈願すると霊験著しいといわれています。何故に虫歯?と気になったのですが、残念ながら由来にあたりそうな記述を発見することは出来ませんでした。


老木であることは間違いない。それでもしっかりと生命感が伝わってくる枝ぶり。神の御杖杉と比べると枝が少ないようにも見えますが、これは単に枝が落下して怪我人を出すことを防ぐために細かく手入れされているだけかと思われます。


まだまだ健康そうだなと眺めていたのですが、それでも内部が一部空洞化しているようにも見える。2014年の大雪で枝が折損する被害が発生しましたが、それをきっかけに挿し木により後継樹を育てる事業が始まりました。現在大杉公園内には5本の後継樹が植栽されているそうです。


凄い。根が遊歩道を突破して小川目指して突き進んでいました。根の一本ですら一般的なスギの幹以上に太い。改めてとてつもないスケールの巨杉であることを思い知らされます。


うん、当然ながら幹周13mオーバーの幹は写真で表現できないくらいに太い。細部を見ても凄い迫力だ。しかしこれほどの巨樹相手となると、側に立って細部を凝視するよりも距離を取ってただただスケールの大きさに圧倒される方が正しい向き合い方なのではないかという気がします。


夏休み中だったのでボーイスカウト的な集まりなのでしょうか。これだけの…失礼な言い方になりますがアクセスの悪い立地にありながら、ポツポツと見物客がやって来るあたり、流石は日本でもトップクラスの杉の巨樹。大抵は1時間以上滞在していてもまず誰ともすれ違わないんですけどね。


汗だくになってしまったので一度近くの「いなぶ温泉」で入浴と食事を済ませてきました。ちょうど日の入り前というタイミングだったのでもちろん再訪。車の中に積んであるアウトドア用ベンチを下ろし、ぽけーっと日が落ちるのを眺めていました。


今思い返してもあれは実は夢だったのではないかというくらいに幻想的で現実味のない時間だったなあ。月瀬の大杉と対峙して何より印象に残っているのがこのトワイライト・タイムなんですね。もう途中からカメラなんて車に放り込んでただただ真っ暗になるまでぼーっとしてしまいましたもの。風呂上がりの体に標高1,000メートル地帯のひんやりした風が本当に心地良かった。なんという贅沢。もし願いが叶うなら、次回もまた大杉の麓でのんびり日の入りを眺めてみたいものです。

2019/8/6訪問
「月瀬の大杉」
国指定天然記念物
樹齢 推定1,800年
樹高 40m
幹周り 14m

長野県下伊那郡根羽村日影平

コメント:4

RYO-JI 20-10-23 (Fri) 21:13

さすがは日本のスギを代表する一本ですね。
私もいつか長野県に足を踏み入れる機会があれば、まずはこの月瀬の大杉に挨拶してからと思っています。
その特徴的な姿はもちろん、圧倒的なサイズや存在感に打ちのめされそうですね。
おっしゃるように近くで見るよりも遠くから眺めるのが正しい楽しみ方のように感じます。
樹齢1,800年も充分に納得できる数字であって、逆にこれが仮に数百年だとしたら他のスギの大半は信憑性を失うことになってしまう(笑)。

日中見てから再度トワイライトタイムに楽しむだなんて・・・それ凄くいいですねぇ。
叶うならば、お酒でも飲みながら(さすがに不謹慎:笑)。

数々の伐採の危機を乗り越えた逸話に胸が熱くなりました。
地元にとって巨樹とはお金には変えられない尊い存在だということを再実感しましたよ。
早く会いに行きたいものです。

to-fu 20-10-24 (Sat) 16:40

> RYO-JIさん
我々の方面からするとやはり長野の入口、山門のような存在ですよね。
ただ地名をそのまま冠しただけなんですけど「月瀬」という名前が綺麗で大杉によく似合っています。
1,800年というとどうしてもあの石徹白大杉が思い浮かんでしまうものですからホントかよと思いがちですが、しかしどちらかといえば
石徹白サンの1,800年の方が怪しいという。あれ2,000年は超えてると思うんですよねえ。

お酒は根羽村手前にある「ほうらいせん 吟醸工房」で購入済みだったので本当に飲みたかったですよ 笑
この後車中泊ポイントの道の駅まで移動する予定だったので我慢しましたが、本当ならこの近くでキャンプ泊でもできたら
最高だろうと思います。大杉はもちろん申し分なし、さらに地域の人々との関係性も良く我々のような愛好家には溜らない
巨樹でした。近隣には他に大物も多いので、このエリアだけでも十分満足できる遠征になるはずです!

20-10-25 (Sun) 20:00

いつ載るのかなと楽しみにしていました。
ネバーランドとかタチの悪い自虐ネタ言うよなあなんて、行ってみたら、ほんと外界から隔絶された感があって。ますます悪い自虐ネタのように思えました。笑
僕は長旅の最後に訪ねたので、特に思いれが深くなりました。色々見てきて、ほんとダメ押しのようにこのすごい巨樹が出てきた時、ああもうこの旅はここで終わらせておくべきだ……と腑に落ちてしまいました。
そこからはもうスパっと高速で帰りました。ほんと、最後にこの杉を見られて良かったと思いました。

今一度to-fuさんの写真で見ても、素晴らしい巨杉ですね。
過去もうひとふた周り小さかったにせよ、お上が欲しがるのもわかるし、住民の皆さんが覚悟を持って守ったのもわかる。
虫歯に効くというのも面白いなと思いましたが、本当はもっと何でも願掛けしていたのかもしれませんね。
このコミュニティと中心にある巨樹という図がまたとても良いです。理想の国というか。ネバーランドか笑

僕も土砂降りの中でかれこれ1時間以上ずっと眺めてしまいましたが、日暮れにこの巨樹を眺めるだなんて、素晴らしくオツですね。
あの辺りも遠く感じますが、また気合を入れて訪ねて行きたいですね。

to-fu 20-10-26 (Mon) 11:37

> 狛さん
早く書いてしまいたかったんですが変なこだわりがって…今となっては何でさっさと書かなかったんだと後悔しています 笑
あの立地は本当にネバーランドですよね。笑うべきなのか笑うのは堪えた方がいいのか判断に困りますが。

記事を書き上げた後に改めて狛さんの記事を拝読しましたが、本当に世界樹という表現がしっくり来ます。
ただ大きいだけの巨樹なら日本中にそこそこ存在するけれど月瀬の大杉はそれらとは一線を画している感がある。
あの雰囲気、オーラみたいなものは「杉の大杉」にせよ「石徹白大杉」にせよ、やはり人並み外れた時間を生きてきた本物だけが放つ
風格なのかもしれません。どこぞの国天みたいに伝承だけ着飾って樹齢2,000年とかそういう奴らには…いえ、それにしたって
ヨイショされた巨樹自身には何の罪も無いんですけどね。やめておきます 笑

あの居心地の良さは巨樹そのものの立派さだけでなく、少なからずあのコミュニティと巨樹との良好な関係性が影響していると思います。
私も本当なら今年もう一度再訪していたはずなんですけどねえ…とはいえ今年はまだ終わっちゃいない。今からでも行けるんじゃないか?
なんてちょっと企んでいたりもします。今回はもうあの大杉だけで一日を終えてもいいくらいの気分ですよ。

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