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香川県三豊市 志々島の大楠


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art その他色々

クスの大物の中でも間違いなくトップクラス、そして瀬戸内の離島という日常離れしたその立地。いつか必ずと心に決めている巨樹が何本かあります。しかし巨樹に限らず何にでも言えることですが、いつかなんて言ってるうちはいつまで経っても叶わないもの。本当に行きたいのなら言い訳する前にまず動け、ということで行ってまいりました。この「志々島の大楠」…理屈抜きに最高の巨樹です。色々と大変な一年でしたが、終わりよければ全てよし。おかげさまで最高の一年になりましたと締めくくりたくなるほどの巨樹。ほんの数パーセントでも魅力が伝われば幸いです。


多度津町で目覚め、朝一番に三豊市の津嶋神社へ。そして宮ノ下港へと移動して粟島汽船で一駅(駅ではないよな、一港?)、とうとう志々島へと降り立ちました。宮ノ下港から大楠までの道のりをまとめるだけでも軽く一つの記事になってしまいそうなものですが今回は敢えて割愛。あの興奮、感動はぜひとも前情報無しに味わって下さい。


さあ、そして到着。おおおおお…
ええ。これは決して表現や誇張の類ではありません。実際に私はファインダーを覗きながら「おおおおお…」と声に出していたはずです。これは予想以上だという感動。そして待てよ、まだ待て。正面に回ればあの有名な姿が拝めるのだ。感動するのはその瞬間まで待っておけよ?なんて頭の中で訳の分からない言葉がグルグル回っています。そう、まずは何より正面に回る必要がある。何度も本やWebで見てきたあの立ち姿を見なければならないッ!


感無量。何だこの大きさは。そしてこの暖かさ、力強い生命感。今度は感動のあまり言葉が出てきません。思えば今年一年色々なことがありました。本当に酷いことがたくさん起こった。しかしそれらは全てこの大楠に会うための試練だったのではないか。そう勘違いしてしまうくらいの感動。神の気配を感じる巨樹。私にとっては岐阜県の「石徹白大杉」についで二本目の巨樹となりました。ある種の巨樹には神が宿るのか、それとも巨樹が神へと昇華するのか。私には分かりかねますが。


香川県指定天然記念物「志々島の大楠」。根回り12m、幹周は14m。こちらには樹の高さ22.5mと書かれていますが環境省はじめ市のサイトなど他の資料では樹高は40mと書かれていることが多いです。しかし例えば東の枝張り25mと樹高を比較してみると、枝張りに対して倍近い樹高があるかというと、うーん。22.5mということはないと思いますけど、恐らく30mほどになるのではないでしょうか。


最近(ここ一年くらいの間です)観たNHKプレミアムの番組でちょうどこの巨樹が紹介されていました。地面に接触しながら横に大きく伸びる左手の大枝は実は既に大風でへし折れて倒れている状態。あまりにも巨大なのでどけることも出来ず、さてどうしたものかと考えていたところ、地面に接触した部分から根を張り始めてみるみるうちに生命の息吹を取り戻したのだとか。


裏側から見ると実に分かりやすい。樹皮だけで辛うじて主幹と繋がっていますが、本来なら助かるような状態ではありません。というかこの状態から大枝が復活したなんて話はちょっと他所では聞いたことがない。


これだけでも巨木クラスのクスに匹敵する大枝。この志々島の大楠の魅力はやはり左右に大きく伸ばした大枝だと思うので、いち愛好家としてもほっと一安心。この部分が欠けてしまうと美しい樹形が一気にアンバランスになってしまうところでした。重量バランス的に狂いが生じて他の大枝へもダメージを与えることになりそうです。


この部分から根を張っているのだとか。自然界の生命力恐るべし。


クスの周囲は斜面に沿って遊歩道になっています。全方位から思う存分クスを眺めることが出来る。本当にどの角度から見ても美しい樹形。


真後ろにはベンチが。こちらからの眺めも…もちろん最高でした。巨大なクス、そしてバックには瀬戸内海。そんなもの最高に決まっているではありませんか。ちなみに解説板の裏側から坂道が続いていて、ベンチの奥に見える展望台からもクスの樹冠を眺めることが出来ます。正直申し上げると展望台から見た樹冠はちょっと微妙(というか手前の藪でほとんど樹冠が確認できない)でしたが、広大な瀬戸内海を望む大パノラマが気持ちよかったです。島では食料の入手が困難なので、粟島汽船に乗る前にパンなど食料を仕入れてくるとベターかと。え?私ですか?パンも何も持ってきてなかったので、仕方なく非常食のカロリーメイトをかじりましたよ 笑


私がこの位置から撮影していたところ地元詫間町のおば…お姉さま方が、ここからの眺めが一番良い!と興奮されていました。このクスは本当にすごいでしょう?と自信満々でしたが、ええ。確かに私が今まで見てきたクスノキの中でもダントツに良い。最高の巨樹です。


これだけ巨大な老木にしてたくさんの実を付けていました。この実がお目当てなのか樹冠には色々な小鳥たちの姿が。


目の前が海ということもあって、たまにぶわっと大きな風が吹き上げてきます。巨大な樹冠がザワザワっと揺れ、まるで突然の夕立のような水滴が降りしきる。なんという気持ちよさ。志々島唯一の休憩所「くすくす」のオーナーの女性は、このクスの心地よさに惚れて神戸から移住してきたのだそう。いやー分かります。日頃人混みに揉まれてイライラしながら生きている自分の人生は一体何なんだろう。これが本当に自分の望んだ姿なのか?そう疑問に感じて私も生き方を変えましたから。


今回志々島にはたった2時間40分の滞在でしたが、このクスと過ごした時間、そしてこの景色を眺めながら感じたことを私は一生忘れないでしょう。いえ、一度行ってみて思ったのは日帰り…はちょっと厳しいですが、一泊するなら瀬戸内の離島は全然遠くないということ。来年もまた来よう。毎年一度は絶対に訪れたい場所。それが少しずつ増えていく。なんと幸せなことなんだろう。


数十年前はこの私の撮影位置、大楠の眼下にも多くの家屋が並んでいたそうです。かつて1,000人以上の人口を誇った志々島も現在は全島民合わせて19名。つい最近まで20名でしたが残念ながら亡くなられてしまったということ。家屋も志々島港の周辺に点在するのみとなってしまいました。1,000年以上この地で人間たちを見守ってきた大楠は一体何を思うのか。そしてこのような離島や現在の限界集落は数十年後一体どうなっているんだろう。色々考えさせられます。

ちなみに全島ネコは68匹?69匹だったかもしれませんが、人間よりずっと多い。しかしこれ以上子を産んでは可愛そうだということで全頭去勢済みのいわゆる「地域猫」で、今後増えることはないそうです。離島に住んでいて何がキツいかというとキャットフードが手に入らないことなのだそうですよ 笑 決して笑い事ではなくて、ネコは腹が減ると畑を荒らしたり人間の食い物を奪いに来たりするそうなので、そうならないよう定期的にキャットフードを与えてやるのが大変なんだとか。


初見の時点では、これほどのクスノキが国天指定されてないなんて目が腐ってるんじゃないか?などと思ったものですが、この地にいると「これでいいのだ。」となんとなく腑に落ちました。そう、この方はあくまでも三豊の誇り、志々島の大楠なのだと。クスノキ本人もなんとなくそのポジションがしっくり来ているのではないか。そんな風に感じられました。大体国天だろうが県天だろうが、その程度のことで巨樹の価値が変わるわけではないのです。

文句無しに今年ナンバーワンの巨樹。今まで見てきた中で一番好きかもしれません。立地も含めてとにかく良すぎる。巨樹に興味のない方も人生一度は訪れていただきたい場所です。私がこの場所でずっと考えていたことは「もし自分が巨樹に興味を持つ前にこの大楠と出会っていたら、一体何を思ったんだろう。」ということ。巨樹に興味のない、前知識のないまっさらな状態でこのクスに会える…ああ、もう想像するだけで羨ましくて仕方ありません。皆様もぜひ。

2021/10/18再訪 志々島の大楠伝説を書籍より抜粋しました。ご興味がありましたらぜひ。

2020/11/15訪問
「志々島の大楠」
香川県指定天然記念物
樹齢 1,000年以上
樹高 環境省40m(現地解説板22.5m)
幹周り 14.0m

香川県三豊市詫間町志々島172

コメント:4

20-12-01 (Tue) 18:36

画面の前で「来たあ!」と叫んでしまいました。
この巨大さ。もちろん写真もテキストも太刀打ちできないとわかり切っていますが、ここまで来るともはや逆にすがすがしい。
……とは言え、トップの写真はじめ、素晴らしいです! 多くの傑作が撮れたのではないでしょうか。
なんかこう、見ていて、巨樹のカリスマ性以上に「会いたい」と駆り立てられるものがありました。

大枝の折損について、僕としては、半分こうなるべくして……言って良いのであれば、大クスが分身を作るためにわざと切り離したのではないか? と思っていたりします。
確かに大きな傷には違いなく、存亡の賭けだったのかもしれないが、それをやってのけたのだと。
これからまた途方もない年月生きていくための思考がそこに隠されているのかもしれない。

そんな想像ができてしまうくらい、人間の一生とはレベルが違いすぎます。
巨樹の前を素通りしてた頃、こういう存在に出くわしたとしたら……確かに、どう感じたのか興味があります。案外、挑もうとしたのかも? 弾(フィルム)切れですね。笑
この禍中、西の国へはそうそう行けそうにない。そう考えればガッカリですが、この巨樹の存在は、いつか見に行く日への気持ちを高く持ち上げてくれます。
素晴らしい!

to-fu 20-12-02 (Wed) 12:29

> 狛さん
そう感じていただけたなら何よりです!いやもう本当にここまでスゴイと清々しいくらいの降参でした。
どこを切り取っても傑作になる…これほどの巨樹を相手にしていると刻一刻と移りゆく日光の差し具合だけでも変化が
楽しめるので、例え一日中撮影していたとしても苦にならないと思います。こういう巨樹に会えると本当に冥利に尽きますよ。

なるほど。世代交代を試みたというのは面白い見方ですね。最近の調査によるとシイの木はドングリを運んでくれるリスやネズミを増やしすぎず減らしすぎないよう、年ごとドングリの量をコントロールしているそうです。それを思うとクスが世代交代の術を試行錯誤していたとしても全くおかしな話ではありませんね。しっかしスケールの大きな話だなあ…

あの頃の我々がこのクラスの巨樹と出会っていたら…やはり立ち向かっているでしょうねえ。36枚撮りのコンパクトカメラで 笑
それはそれで写真に対する価値観が変わって、もしかするとそのまま新宿の街をバケペンなんかでスナップするようになってたかも。
日本にはまだまだ未知の感動がありますね。この国に生まれて本当によかった!そう思わずにいられない一本でした。

RYO-JI 20-12-02 (Wed) 21:46

言葉がありません。
写真を拝見しながらバカみたいに『スゲー!』を連呼し、心拍数が上がりました。
もう圧倒されまくりですよ。
こういう人智を超えた存在の巨樹に対しては、何をどう言ったって表現できないでしょうね。
対峙した時に感じた思いに勝る言葉はないでしょうから。
とは言え、それでもやっぱり何かしら言葉でも表現したくなりますよね。

あの石徹白と並ぶ存在・・・というだけでその衝撃の大きさが理解できました。
もうこれはアレですね、そう、実際に行って見るしかないですね(笑)。
島も含めて思う存分満喫したいです(コロナよ、早く終息しろ!)。

to-fu 20-12-03 (Thu) 14:27

> RYO-JIさん
実物を見てもやっぱりスゲー!しか出てきませんでしたよ 笑
昨年見た特天巨樹もそうでしたけど、とにかく想像を軽々上回ってくれますね。我々も決して少なくない数の巨樹を見てきた
つもりですが、それでもまだ驚かせてくれるのかと。本当、君たちには限界ってものがないの?と聞いてみたくなります。

石徹白のあの非現実的な立地もそうですが、こちらの大楠も異世界のような非現実感では負けていなかったと思います。
小豆島なんかもそうですけど、瀬戸内の島くらいなら行こうと思えば別に日帰りでも行けてしまうんですよね…
来年は少しは落ち着いてくれるのか。ぜひRYO-JIさんにも行っていただいて、感想をまた報告し合いたいものです!

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