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香川県善通寺市 五社明神の大楠


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

先日紹介した「善通寺境内の楠」のすぐ隣にそびえるクスの巨樹。言ってみればこちらも善通寺境内の楠なのですが、根本に五社明神の祠があることから便宜的に「五社明神の大楠」と呼ばれています。これら2棟の祠は善通寺を建立した折、弘法大師が善通寺領安寧のために鎮守神を勧請したもの。善通寺のサイト上でも”厳かな雰囲気をもつ善通寺の中でも印象的な景観のひとつ”として紹介されており、実際この大楠をバックにした五社明神のインパクトは御影堂や五重塔の存在感に引けを取りません。これほどの巨樹ですから境内に足を踏み入れた瞬間から気になっていたわけですが…さてさて。とにかく近付いてみることにしましょう。


ええと、なんと言えばいいんでしょう。もうとにかくデカいとしか言いようがないのですが。うん、べらぼうにデカい!「善通寺境内の楠」も立派な楠でしたがこちらはちょっと規格が違うと言いますか。巨樹には興味ないであろう参拝者の方々も通り過ぎる際には必ず「うわっ!デカっ!」などと口にして必ずスマホでパシャパシャと記念撮影されてから通り過ぎていました。


幹周は10.6m。善通寺境内の楠が12.6mでしたから数字上では完全に負けていることになります。が、あちらは主幹がピラミッドのような形で幹周を稼いでいるのに対してこちらはちょうど測定位置がキュッとくびれた形状になっているので、巨樹ランキングのレギュレーションを無視して比較するとこちらの方が圧倒的に大きいと言い切ってしまって問題ないと思います。いやこれ本当にデカい!近くにいらしたご婦人曰く「うわー、さっきのクスは凄いなあって感動したけど、ここまでデカいとちょっとグロテスクだわ。」というほど。グロテスクか…うーん、まあ分からなくもないけど気の毒すぎる。


凄まじい枝張り。樹勢の良さは相方と対照的で、まるで樹齢500年くらいのクスのように生き生きとして見えます。って、いやいやいや。何だか感覚がおかしくなってるぞ。500年といったら巨樹の樹齢としても相当なものなのに。まだ足利サンを筆頭に刀持ってワーワーやっていたような時代ですよ。


正面からはなかなか全景が収められないくらいの巨大さ。(カメラの設置位置には松並木があって、これ以上下がれないのです。)とてつもない大きさを誇るクスですが、正直に申し上げると見て楽しむ・撮って楽しむという観点ではやや不完全燃焼感の残る巨樹でした。見られる場所、撮影できる場所に大きな制約があるのです。


というのも、これだけ若々しく見える大クスですがほんの最近まで樹勢が著しく衰えていたのだとか。五社明神が鎮座する高台の周辺には現在も樹木保護のためのロープが張られており、巨樹に近付こう、巨樹を撮影しようと思うとなかなか難儀する状態。こう見えて相方のクスと同じく弘法大師サン生誕以前より生き続ける大変な老木ですから、致し方ない処置ではあります。


治療の甲斐あって現在は樹冠を見てのとおり回復傾向にあるということ。昨年訪れた際はこのおみくじ結び付けるなの札や立入禁止の札がもっと大量にくくり付けられており痛々しい印象を受けた記憶がありますが、それらも随分と数が減っていました。ひとまず峠は越えた、というところでしょうか。


祠と石垣によって根元を見るのも困難な状態。しかしちょっと待て。これ根回りものすごいことになってませんか?幹周だけで約10m…根回りは一体何メートルあるんだろう。


横から見た様子がこれ。残念ながら私の立ち位置の目の前にロープがあってこれ以上近付くことが出来ないのですが、とにかく写真の右端から左端まで全部根っこです。愛好家としてはやはりこれだけの根回りを直接見ることが出来ないというのはやや残念。それにしても樹勢が衰えた直接の原因なのではないかと思うほど、立ち位置があまりにも窮屈すぎます。


噂のロープ。あまりにも茂りすぎているが故に遠巻きに眺めるだけでは何か巨大な物体があるぞ、くらいにしか脳が認識できないのが実に惜しい。巨樹愛好家の方には”真夏のイチョウを見たときの印象に近い”と言えば伝わるかもしれません。もう少し迫力ある幹や大枝の姿が視認できるとそれこそ「加茂の大クス」や「志々島の大クス」にも負けないインパクトが感じられたように思います。ええ、凄いのは分かってるんです。しかし脳の処理がそれに追いつかないといいますか。そうなると、ごく僅かな差で感動までには至らない…あくまでも個人の感想です。


結局のところこの巨樹の魅力が一番伝わってくるのは、やはり五社明神の祠があった側からの眺めということになるのではないか。力士の背中のような巨大な幹を間近で眺め、このダイナミックな樹冠を傘の下から眺めることができる。まさに壮観!


洞穴が鳥の巣になっているのが確認できます。人間に愛され小動物にも愛される。人間と自然との理想的な共生の縮図を眺めているかのようで、こういう光景を見るのはやはり気持ちがいい。


背面から。例のごとくこれ以上近付くことはできません。このどっしり構えた巨躯を眺めて真っ先に大阪の国天「薫蓋樟」を思い出しました。大きさ的にも薫蓋樟に全く引けを取らない立ち姿。この五社明神の大楠と善通寺境内の楠。歴史的背景も加味して国天指定が妥当ではないかと思いますが、いかがでしょうか。これが国天に指定されないならあそこのアレなんかはどうして…いえ、やめておきましょう。


最後の最後に下世話な話をしてしまうと、拝観料も無しに駐車料金たった300円だけで空海伝説発祥の寺院と県内トップクラスのクスの巨樹2本が楽しめてしまう。こんな贅沢があっていいのだろうかと、ついお賽銭を奮発してしまったくらいです。空海もきっとヤンチャ坊主だった頃はこのクスに登って遊んだのだろうな…などなど妄想の捗る地。近くには美味しいうどん屋も多いので香川県を訪れるなら巨樹愛好家もそうでない方も是非。


-2022/3/3再訪
見た目以上に樹勢が弱っていたのか、とうとうクスに近付くことが出来なくなってしまいました。今では五社明神の祠に近付くことすら出来ません。圧倒的な迫力だっただけに残念。いつまでもお元気でいてください。

2020/11/16訪問
香川県指定天然記念物
「五社明神の大楠」
樹齢 千数百年
樹高 22m
幹周り 10.6m

香川県善通寺市善通寺町 3-3-1

コメント:4

RYO-JI 20-12-15 (Tue) 21:25

このクスを見て私もまず真っ先に薫蓋樟を思い浮かべました。
狭い囲いの中にグワーっと規格外の大きさで佇む姿は壮観ですね。
大きさ、重量感とも文句なく巨大なクス特有の圧倒的なまでのパワーを感じます。
薫蓋樟との違いは近付けるかどうかで、真横に立って触れることができる薫蓋樟の方がより身近に感じ、
一方こっちはもう少し厳かなイメージがします。
それなのに『グロテスク』とは可哀想ですね(笑)。
しかし巨樹慣れしていない一般の方は、案外そんなイメージを抱くことが多いのかもしれませんね。

”真夏のイチョウを見たときの印象に近い”・・・わかりますとも(笑)。
結局どうなってんだ?状態ですよねぇ、あれには参りますね。
それでもイチョウは落葉すれば真の姿があらわになりますが、クスはそうもいかないからちょっとモヤモヤが残りそうです。
いえ、それも贅沢な悩みであって、何か巨大な何かがあるという胸の高まりを感じられるだけで満足できるくらいの存在ですね。

to-fu 20-12-16 (Wed) 19:33

> RYO-JIさん
薫蓋樟っぽいですよね。このクスと対峙してみて改めてあれほどの巨樹に触れることができる有難さが実感できた気がします。
見て感じることもあれば触れてみて初めて伝わってくることもある。この巨樹について言えば樹勢の問題もあるので仕方ありませんが、
それでもやはりもう少しじっくり眺められたらな…と思うことが多々ありました。根元なんかものすごいと思うんですけどねえ。
ものすごいからこそ我々は「真夏のイチョウ」状態が余計に気になってしまうというジレンマ。
しかしこの善通寺、香川県恐るべし!です。RYO-JIさんもお近くを通ることがありましたら是非お立ち寄りください。

20-12-17 (Thu) 19:50

緑のボリュームが濃く、何とも豊かな気分にさせてくれるクスですね。そう、僕も一眼見て薫蓋樟を思い出しました。
損傷の少ない幹に広大な根張り。おそらくここまで大きくなることを想定せず周囲環境が作られてしまったのでしょうね。
想像を超えるほどにまで育つ……まさにクスの巨樹ですね。
砂地で地面が締まってきたのかもしれませんが、加えて窮屈さ、人工物の多さが樹勢の妨げになっていそうです。
神社や玉垣を移転したりはそうそうしないか……と考えると、このクスの限界を見た気分になってしまうのが少し残念です。
解放してやればもう1ランク大きくなれるのかも。この葉の濃さですから、まだ生長してくれそうですよね。

to-fu 20-12-18 (Fri) 9:42

> 狛さん
豊かな気持ちになれる。ええ、まさにそのとおりのクスでした。クスの巨樹らしいクスの巨樹とでも言うべきか。
玉垣をもう少し外側に移設して周辺を斜面に均してあげたらまだまだ成長してくれるように見えるのですが、この玉垣も
歴史的遺物としては相当なものでしょうから難しいのかもしれませんね。仰るように限界を感じてしまうのは少し寂しいです。
数十年後か、あるいはもっと先のことなのか。このクスの樹勢が更なる衰えを見え始めたとき、神社や玉垣を少し移設してでも
救ってやろうという懐広い世の中になっていると嬉しいですね。限界を突破した姿を後世に残していただきたいものです。

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