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徳島県鳴門市 大麻比古神社のクスノキ


FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 35-70mm F4.5-5.6 WR

徳島県の玄関口、鳴門市。淡路島ルートから四国に上陸してまもなくのところに鎮座するのが阿波国一宮である大麻比古(おおあさひこ)神社。四国巨樹旅の出発点とするにはこの上ない立地にして鳴門市最大のクスノキの巨樹を擁する、ということで何故今まで未訪問だったのか自分でも分かりませんが、アクセスが容易なだけに楽しみは後にとっておこうという気持ちがあったのかもしれません。今年はかつての情熱を取り戻すための一年にしたいという想いもあり、旅の安全祈願も兼ねて今回の出発点とすることに些かの迷いもありませんでした。


夜明け少し前に到着。駐車場に車を停めて鳥居をくぐると、早速もったいぶることもなくその巨体が目の前に飛び込んできました。久々の新規巨樹に胸が高鳴ります。


まあ、露出補正で見やすくはしているのですが実際はまだこのような薄暗さ。灯籠にぼんやりと照らされた様がまた美しい。個人的にはこれくらいの時間帯に「さむっ…」なんてぼやきながら神社を参拝するのが一番好きだったりします。


奥が本殿、左手が社務所という立地。残念ながら本殿が改修中だったためブルーシートが目立ちます。


御神木 楠。いや、それだけかよ!とついツッコミを入れたくなりますが、周囲にクスの解説版のようなものは見当たりませんでした。巨樹王国徳島基準で見ると幹周8.3mは目立った数値ではありませんが、他県基準だと充分に立派な数値です。これが私の地元京都府ならトップクラスのクスノキになっているはず。

情報があまりに寂しいので、以下鳴門市公式サイトより引用させていただきます。

”鳴門市最大のクスノキである。巨樹・老木の風格を備え後世に残すべき価値のある銘木である。

大麻比古神社の神木として大切にされてきた、鳴門市最大のクスノキの巨樹・老木である。大きく空洞化した樹幹が風雪に耐えて樹齢を重ねてきたことを物語り、なおかつ旺盛な生命力によって、豊かな樹冠を保っている。推定樹齢は約800年である。東方の枝は他のクスノキの枝に接しているため、伸張が少ないが、南北方向には26.3メートルにわたって枝を張り出し、広く境内を覆う。

樹幹の北面が大きく空洞化しているものの、枯損した枝もほとんどなく、樹勢は極めて旺盛で、巨樹・老木としての風格がある。主幹には注連縄が張られ、周囲には石柱で囲われて神社のシンボルとなっている。主幹の一部に鉄製の支柱を施し、落雷防止の避雷針なども設置されていて、保存状態は良好である。”


どことなく神聖な雰囲気が漂うクスノキ。巨大な力こぶのように右側へぐっとせり出した大枝が目を引きます。


内部は空洞化しているのか、小さな洞が。金網が張られて防護されているのが確認できます。小鳥が巣を作るのを防いでいるのかな?なんて考えていたのですが、どうやらお正月の時期に離れた場所からこの穴めがけて賽銭をぶん投げる、それが見事穴にホール・イン・ワンしたらご利益があるぞ!というクレイジーな風習があるそうで。正月以外の時期にこの穴めがけて賽銭をぶん投げられないようにする措置かと思われます。


健康的なクスノキに見えましたが本殿側へと回ってみると大きく空洞化しているのが確認できました。


とはいえ樹勢は旺盛。文句なしの美しい樹冠です。新緑の時期ということで淡い緑が清々しい。


最近までワイヤーで固定されていた跡が見られますが、樹勢が回復傾向にありワイヤーが不要になったという解釈で良いのでしょうか。


早朝5時頃にもかかわらず続々と参拝者が。近所の方の散歩コースとしては最高の神社ですね。裏手に山、すぐ隣には坂東谷川が流れていてとても空気がいい。


しかし裏手が山ということは…ええ、ワタクシ車を降りた瞬間から感じておりました。境内全域にふわっと香るケモノの残り香を。まあサルだけでなくシカやイノシシもやって来るのでしょう。早朝の参拝時は注意したいものです。


駐車場はここだけでなく、この手前にも大きなスペースがありました。流石は阿波国一宮。このような時間帯でなければ多くの人が訪れるのでしょう。巨樹の大物揃いの徳島県において必見!というサイズのクスではありませんが、大麻比古神社という立地も加味したらなかなかのものではないかと。徳島巨樹旅の起点としては申し分ないクスノキだと思います。

2022/4/20訪問
「大麻比古神社のクスノキ」
鳴門市指定天然記念物
樹齢 伝承1,000年以上(市の公式サイトによると推定800年)
樹高 22m
幹周り 8.3m

徳島県鳴門市大麻町板東広塚13

コメント:4

RYO-JI 22-04-26 (Tue) 22:13

開けた場所にあるクスは見ていてとても気分がいいですね!
とにかく気分が明るくなります。
初見では、大阪の杭全神社の巨楠を連想してしまいました。
周辺環境も何となく似ているような気もして。

裏側の空洞化は意外な姿で心配ではありますが、樹勢が良さそうなので少し安心できますね。
しかしつくづく樹木の強さに感心します。
ホール・イン・ワンしたらご利益がある説は他では聞かない風習ですね。
少なくとも昔からあるようには思えませんけど。
時代の流れ的にもそういう風習はいずれ無くなるでしょうし、そもそも必要ないと思えます。
このクスの姿を拝むだけでご利益がありそうな気がしますからね。

to-fu 22-04-28 (Thu) 8:45

> RYO-JIさん
開けた場所にドーン!と現れるクスには、これぞクスの巨樹だ!と納得させられるだけのパワーがありますよね。
平野区の杭全神社は以前「法楽寺のくす」を見た際に立ち寄る予定だったのですが、道中歩きすぎて力尽きてしまいました 笑
もう少し状況が落ち着いてくれたら、あの一帯は自転車で回ってみたいんですよねえ。楽しみです。

クスの穴にホールインワンはきっと最近できた風習でしょうね…
そもそも穴の中に入った硬貨をどうやって回収するんだ?とか考えると、たぶんまあ樹木の中に放置されているのでしょうし
単純にクスが可哀想なので止めていただきたいですね。人寄せのトピックにするにしても瓦をぶん投げる「かわらけ」みたいに
賽銭箱の上に輪っかでも作って、その輪の中を通ったら…とかいくらでも代わりがきくような気がします。

22-04-30 (Sat) 8:44

このアンバランスなまでの枝張りと明るい緑色。強い南国感を感じます。
きづけば自分もずいぶんと北の方に来てしまい……こういう特有の陽の気はいいなあとしみじみ感じてしまいます。
一枚目の印象で幹が細いのかな? と錯覚してしまいましたが、ヒューマンスケールを見るとびっくりしますね。
この肥大した大枝の重量感と、またアンバランスさがすごい。どうしてこれで立ってられるんだ。
神社境内の雰囲気もすごくよさそうです。
こういう空間を維持するためにも賽銭したい気持ちはあるけど……そう、樹木をいたわる気持ちも同時に持つ時代ですよね、今は。笑
環境保全のムーブメントは一層強まってますが、その観点で見ても、巨樹は偉大な存在ですよねえ。

to-fu 22-04-30 (Sat) 11:30

> 狛さん
京都でもクスの巨樹はほぼ見られないため、私としても遠方=随分南の方の印象が強いです。
実際にはお隣大阪まで出ればクスの巨樹がゴロゴロしているので身近な樹種ではあるはずなのですが。
東北でもいわきから仙台くらいまではそこまで関東と気候が違うイメージがないのですが、植物の分布を見ているとやっぱり北国なんだなあと実感しますね。

クスの巨樹を見ていると度々「何でこの幹だけでこれだけの大枝を支えられるんだよ…」と驚かされますね。壇の大クスなんかもそうでした。
遠くから御神木の穴に小銭を…なんて如何にも日本人が好みそうなゲーム性を感じますが、当のクスは痛いだけでしょうからねえ。
私も根本の賽銭箱には気持ちばかりの賽銭を入れましたけど、神様が存在するなら別に穴になんか入らなくたって気にしないでしょう 笑

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