滋賀県米原市 清滝のイブキ(ビャクシン)

FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 32-64mm F4 R LM WR

「池寺の大スギ」を離れてやって来たのがこちらのイブキ(ビャクシン)の巨樹。
ずっと前からその存在は知っていたものの、やはりその小ぶりなサイズがネックで訪問するまでに至りませんでした。
今回思い切って立ち寄ってみたわけですが、とにかく圧が凄い。

初見のがっかり感から近付いてみての驚きまでのギャップを考えると、この日訪問した巨樹の中で一番印象に残っている巨樹かもしれません。

米原市街から関ケ原方面へ。
美しい湧き水の中に咲き誇る水中花「梅花藻(ばいかも)」で有名な醒井(さめがい)を抜けた少し先に清滝の集落があります。
駐車スペースを探して集落の中をうろうろ走り回っていると見つけてしまいました。あれか!

正直に申し上げましょう。初見の感想は「ちっさ…」以上です。
極端に大きく育たないビャクシンですから元々大きさには期待していなかったとはいえ、それでも予想よりずっと小さい。
はっきり言うともうこのままスルーして次なる目的地へ向かおうか思い悩んでしまったほど。
それでもまあせっかくやって来たので、少し離れた広い道路の端に車を寄せて目的のビャクシンへと向かうことにします。

で、改めて根元に立ってみて驚きましたね。
たしかに小さい。しかし、圧が凄い。しつこいようですが本当に圧が凄いんです。
現地で何度も連呼してしまった言葉がこれでした。「しかし圧が凄いな…」

滋賀県指定天然記念物「清滝のイブキ(ビャクシン)」。
かつて北近江の大名だった京極氏が伊吹山からぶん投げた一株の苗木が育ったものこのビャクシンである、と伝えられているようです。
(すぐ近くに位置する徳源院の京極家墓所は国の史跡に指定されています。そちらには別途駐車場あり。私は立ち寄らなかったので駐車を控えました。)
ここから伊吹山まで数キロはあるため伝承の真偽は色々とアレですが、樹齢700年相当、京極氏お手植えと考えたら非現実的な話でもないように思えます。

しかしこれは迫力があるな。
超巨大なクスノキと対峙したときの驚きとは違う。まるで水墨画の名画を立体視しているかのような迫力。
ああ、こういうパターンもあるのかと感動してしまいました。

もっと大きなビャクシンなら今まで何本も見てきました。
しかし圧の凄さで言えばこの巨樹がナンバーワンではあるまいか。
幹や枝のうねり、そして筋張った樹皮が見せる陰影。
これはもう自然界が創り出したアートと言っていいと思う。

既に枯れ、白骨化した箇所も見られるのですが、そんな傷みすらもこのビャクシンの凄みを強調するのに一役買っているように感じられる。

うおお…圧が、凄い。
しつこい。分かっていますとも。しかし仕方ないのです。この場に立てばご理解いただけると思います。

まるで鳳凰が翼を広げたかのような迫力。すごい。ここまでインパクトのある巨樹だとは。
これだから巨樹めぐりはやめられないんだ、とニヤニヤしてしまうワタクシ。

「to-fuが何だかすごいビャクシンがあるようなことを書いていたな。」
そんな先入観を持たず、出来ることなら何かのついでにただ舐めくさって立ち寄ってもらえたら幸いです。
そして私と同じように初見のショボさに苦笑いして、さらに根元に立って大いに驚嘆していただきたい。

圧が凄すぎるビャクシン。決して巨大クスノキのような万人に感動を与える存在にはなり得ないでしょう。
しかし、わざわざこんなところまでやって来る奇特な愛好家に驚きという福音をもたらしてくれるはず。
この関ヶ原エリアには他にもスギなど数本の巨樹が散見しますが、個人的に一番オススメできるのがこちらのビャクシンです。

2023/6/14訪問
「清滝のイブキ(ビャクシン)」
滋賀県指定天然記念物
樹齢 推定700年
樹高 10m
幹回り 4.9m

滋賀県米原市清滝字塔ノ中337

6件のコメント

  1. 2枚目の写真を見る限りではどこにでもありそうな佇まいですが、
    樹冠の下に入ると一変、怪樹の本性を目の当たりにするかのようです!
    徳源院には何度も行っていますが、
    まさか目と鼻の先にこんな大物が控えていたとは思いもしませんでした。
    この付近の道は結構通ったりするので、
    ぜひ立ち寄って、圧を感じてみたいと思います。

  2. あぁ、これは完全に数値だけで判断してマーク外としてしまったビャクシンだと思います。
    もうこれまで何度も数値だけで判断してはイケナイと思い知らされたので、
    今一度チェックし直さないとダメですね。

    ビャクシンは独特の魅力がありますが、このように無数の枝がそれぞれの意思を持って成長している姿が桁違いに凄い!
    下から見上げる光景が気になって仕方ありません。
    初見ガッカリからの感動はより一層ドラマチックでインパクトを与えてくれますね。
    また巨樹としての幹周や樹高は控え目ですが、重量をもし計れるのなら相当な重さになるのではないでしょうか。

    誕生の伝承がこれまた壮大で楽しませてくれますね(笑)。

  3. > れもんさん
    ええ、本当にどこにでもありそうな佇まいで。それこそ一般家庭の庭木のようでした。
    そちらからですと関ケ原、醒井エリアはアクセスが良さそうですね。羨ましいです。
    私のところからはどうしても彦根を抜ける辺りの渋滞が酷いんですよねえ…

    このビャクシンのためにぜひ!とは言えませんが、徳源院に行かれる際は是非お立ち寄りください。
    徳源院の駐車場から徒歩ですぐのところにあります。

  4. > RYO-JIさん
    もちろん私も同じですとも 笑
    根尾の淡墨桜を見た際など、何度も通っていながらもずっとスルーしていましたから。

    名木カテゴリーに当てはまることが多いビャクシンですが、ここまで個性的だと流石に見ごたえがありました。
    懐に入り込んで初めて「おおお…」というのはなかなか新鮮な体験です。葉の付きが良くて根元に立たないと
    樹形がいまいち分かりにくい点も驚きを高める演出になっている気がしますね。遠目には本当に普通の庭木ですもの…

    お箸ぶっ刺し伝説は巨樹界あるあるですが、苗木ぶん投げ伝説は斬新だと思いました。

  5. ビャクシンは樹高が低いのが多く枝葉が一点密集し過ぎていて遠めだと微妙だけど寄ると複雑な造形や独特の樹皮
    案外太い幹周をしてたりと想が変わる事が多いんですよねえ
    苗木ぶん投げがまさかここまでなるとは面白い話です

    小松島市の方でも丁度これと同じ位の幹回りに樹高、複雑な造形をしたビャクシンを偶々見つけたのですが
    グーグルマップで後から確認した画像だったり遠目だとショボいな~と思うのですが寄るとビックリしたもんです
    後日再来した際は大枝含め結構大胆に剪定されしまっていて別の意味でもビックリしてしまいましたが・・・
    こういうのも巨木巡りの宿命ですねえ・・・・まあ神社内ほぼ全ての巨木が一掃されてしまったような場もあるので
    それに比べたらかわいい物ですけど

  6. > 123さん
    ビャクシンの巨木は間近で見て初めて魅力が分かるものが多い気がしますね。
    四国中央市の山奥で見た「藤原のイブキ」もそのパターンだったなと。
    知らずに目の前を通っても気付かずスルーしていた可能性大です。

    小松島市のビャクシン、見てみたかったですねえ…
    この手の巨木は観光資源としてはあまり旨味のない樹種だからか、何かあるとトーテムポール状態にばっさり
    剪定されてしまうのが悲しいですね。形を整えるにしてももう少しやり方があるんじゃないか。無念です。
    徳島はシンボルとして分かりやすいクスの巨樹がそこら中で見られるので、自治体の目はビャクシンのように
    小ぶりな樹種にまでなかなか向きにくいのかもしれませんね。巨木の少ない京都の民からすると贅沢な悩みではありますが。

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