兵庫県豊岡市 安川神社のムクノキ

FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 32-64mm F4 R LM WR

豊岡市中心部のホテルで目覚め、早々に身支度を済ませたら市井の人々が動き始める前に市街の外れにある安川神社へ。
こちらにムクノキの巨樹があると知り、今回ぜひとも落葉樹であるムクの葉が茂っている夏の間に訪れておきたかったのです。

なお兵庫県立コウノトリの郷公園の近くです。兵庫県北部の但馬地区は日本最後のコウノトリの繁殖地。
現在も試験放鳥が続けられており、但馬地区の田園地帯ではコウノトリを観察できることも珍しくないそう。
残念ながら兵庫県でコウノトリを見たことはありませんが、数年前に福井県の越前の巨樹をめぐっていた際、たまたま見かけたことがあります。
遠目に見るかぎりではただのサギじゃないか…という感じでしたが、とにかくまあデカかった。大きな鳥だな、という小学生並みの感想 笑

話が脱線しましたが安川神社。祭神は少彦名神(すくなひこなのかみ)。
スクナヒコナさんは医療や五穀豊穣、温泉に酒造の神様だとされています。まさに豊岡にピッタリの神様。

さて、社殿の右手にもう明らかにそれと分かる巨木がそびえていました。
冒頭の写真のとおり、とにかく樹高がものすごい。そしてこの樹勢の良さよ。兵庫県内のムクノキとしてはナンバーワンの樹高を誇ります。
ムクの巨樹はとにかくボロボロに朽ちているものが多いため、この枝張りと葉の付きの良さだけでも「来た甲斐があったな…」と頷いてしまいました。

幹周は6.25m。ムクノキとしてはなかなかのサイズ。

空洞化、腐朽の予感を感じさせない健康的な立ち姿。
がっしりした板根が水場を求めて側の小川へと足を延ばしています。

これこれ。これが見たかったんだ。
この健康的かつ力強い幹、そして風に吹かれて頭上で舞い踊る緑のカーテン。
もっと大きなムクノキを何本も見てきましたがサイズと健康状態のバランスで考えると、眺めていて気持ちいいムクの巨樹としては確実に上位に来ます。

根元からてっぺんまで非の打ち所がない。
写真右側には何か野鳥の巣のようなものが確認できます。

コウノトリが絶滅寸前まで至ったのは田畑の農薬汚染と一休みするための高木が切り払われたからだとされていますが、今でもこのムクのような巨木が立ち並んでいればコウノトリも、それこそシラサギやアオサギのように身近な鳥になっていたのかもしれません。それはそれでフン害など別の問題も色々噴出しそうですが…

ちょうど朝日が昇ったところで撮影条件としては「悪い」としか言いようがなかったのですが、あの心地よさを思い返すと全て忘れられます。

この時期は連日40℃近くまで上がる最悪の酷暑でしたが兵庫県北部の豊岡なら涼しいのではないか。豊岡に泊まって体の火照りを冷まそう。
そんな風に考えていた私は残酷な事実を告げられます。豊岡は盆地だから気候も京都とそこまで大差ないよ?と。
ええ、事実朝晩も京都並みに暑かった。一体何のためにわざわざ豊岡に宿まで取ったんだ…

素晴らしい。
本当に素晴らしいとしか表現しようのない立派な立ち姿でした。
訪問するならぜひとも新緑の時期から夏頃までに訪れていただきたい。

少し小高い山の中腹に位置しており、遠く豊岡市街を一望できます。
「今日も暑くなりそうだ…」とゲンナリしていた記憶しかありませんけど、写真で見る分には気持ちのいい景色ですね。

今さらですが現地には細い路地しかなく、駐車スペースも存在しません。
私は麓にあった集会所の駐車スペースをお借りして神社まで徒歩でやって来ました。

既にお気づきの方も多いかと思います。残念ながら神社裏手に砂防ダムを設置する工事中でした。
眼下に集落が広がっているため必要な工事だと理解出来ますが、水の流れが変わってムクノキの健康状態に影響が出てしまわないことを願います。
ここまで大きく健康状態も良好なムクノキは全国的に見ても希少な存在だと思いますので。

そろそろ行こうか。そう思って歩き始めても、なんとなく名残惜しくて何度も後ろを振り返ってしまう。
本当に良いムクノキでした。樹種としてはどちらかと言えば地味な部類かもしれないムクノキですが、おすすめ度高いです。
全国的に有名な蕎麦どころ出石や豊岡城跡を観光された際はぜひお立ち寄りください。

2023/7/4訪問
「安川神社のムクノキ」
豊岡市指定天然記念物
樹齢 推定300年
樹高 34m
幹回り 6.25m

兵庫県豊岡市百合地1314-2

4件のコメント

  1. 樹高が30m超えですか!
    ムクはそんなに高く成長するイメージが無かったので驚きです。
    主幹のどっしりとした佇まいがとても頼もしく、こういう元気な巨樹を見ると本当に嬉しくなります。

    砂防ダムを作るくらいなので、災害が起こりやすい場所なのかもしれませんね。
    人命や住居を守るために必要であれば作るべきですが、それでいてムクに悪影響が出なければいいですね。

  2. > RYO-JIさん
    ちょっとした巨杉のサイズ感ですよね。
    本殿の側から見上げた姿はまさに見事!でした。

    地中の水が小さな川になって流れていたくらいなので土砂崩れのリスクがある斜面なのだと思います。
    しかしその小川が巨大なムクの命を育んでいたに違いなく…地中の豊富な水分が損なわれてしまうと今後が少し心配ですね。

  3. 不朽もウロもなさそう、きれいで壮大な巨樹ぶりで、まるでケヤキのようですらありますね。
    茨城県の「静の大ムク」が自分の中での代表的ムク巨樹ですが、葉がやや病気っぽくて少なかった気もします。いかにも老樹という風格でもあるんですが、傷も多くて乾燥していた感じ。
    このムクはそういうのもなさそうで、水分たっぷりな緑を感じます。ムクやエノキってでっかい毛虫がいたりもするんですけど……だからこそ鳥も寄ってくるはず。実も食べられるし、この樹冠なら快適で大喜びでしょうね。

    東北では見られない樹種なので、よく似ているエノキとともに、関東以南をさまよえる機会には意識して探すことにしてます。
    ただ、「赤羽大師のエノキ」もそうですが、やっぱり両者とも健全な個体を見つけづらく……この樹のようなのは「ちょっと待っててくれ、すぐ行く!」になりますね。笑

    新しい記事にある「巨木探訪」さん、地域性ゆえか、未チェックでした。
    何でもかんでも動画にしてしまい、挙句倍速で見るような時代ですが、こうしてテキストで編んだ探訪記をじっくり読むのも大変オツなものですね。
    内容も、巨樹探訪あるあるや、その場でどう考えたか、などが多くて面白く、つい読み進めてしまいます。笑

  4. > 狛さん
    樹皮の感じや葉っぱの小ささもケヤキと似ていますから、たしかに元気なケヤキだなあと勘違いしてしまいそうです。
    ムクの大物はどうしても健康状態が気になってしまうものが多いですよね。
    関西圏の大物も全く同じで、おおデカい!と興奮するより先に、朽ちた幹や切り払われた枝を見て心配な気持ちになるものばかりです。

    エノキ、ムクは優先して見ておいて損のない樹種ですよね。
    赤羽根大師のエノキなんて、本当にあのタイミングで見ていなかったら出会えないまま倒壊していた可能性が高い…

    巨木探訪さんは岡山エリアの巨樹情報を探っていてたまたま発見しました。
    感動した巨樹とそうでない巨樹で明らかにテキストの熱量が違っていて、その場所での心情を考察していると面白いです 笑

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