- 2024-02-19 (Mon) 0:52
- FUJIFILM GF 32-64mm F4 R LM WR | ネズミサシ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 香川県
FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 32-64mm F4 R LM WR
強烈な西日が差し始めてそろそろ夕飯の買い出しに向かおうかという時間帯に立ち寄ったのがこちら「二宮のネズ」。
県道218号線沿い、讃岐国二宮とされる大水上(おおみなかみ)神社の御神木です。
この数年で目の前を何度も通っておきながら最近まで存在を知らなかった巨樹で、今回是非とも見てみたかったのがこちらのネズミサシ。
既に冒頭の写真で出オチしている感もありますが一体どのような巨樹だったのか。それでは書き進めてまいりましょう。
大水上神社自体大きな神社なのでもちろん駐車場も完備しています。
そのすぐ脇に立っているため迷うことはまず有り得ないでしょう。
もちろん私も到着して即発見。
これは!!
………思った以上に小さい。
ええ、正直な感想です。大きく育つ樹種ではないだろうと予想はしていたものの、それでも私が想像していたよりずっと小さい。
率直に申し上げると文字通りの「巨樹」としてのインパクトを求めて訪問されると拍子抜けしてしまうのではないでしょうか。
しかし私は知っている。巨樹の楽しみは、ただ偉大な迫力に圧倒されることだけではないと。
そもそもネズとは何ぞや。
ビャクシンなどと同じヒノキ科の常緑針葉樹ネズミサシをネズと呼びます。
この地域ではモロダと呼ばれることが多いのだとか。
環境省の巨樹巨木DBによると樹高20m。どう贔屓目に見てもこちらの解説板にある12mが正しいように思います。
ひょっとするとこの数十年の間に幹の折損など被害があったのかもしれません。
なお初見でいきなり小さい!などと言ってしまいましたが、これでもネズミサシの巨木としては日本第2位の大きさを誇ります。
日本一のネズミサシは恐らく広島県福山市の「金江の大ムロノキ」が該当するのではないかと。
二宮のネズが幹周4.4m、金江の大ムロノキが4.5mなので数字上はほとんど横並びということになります。
(金江の~は根上がりな上に幹も根元から分かれているので、単純な数字だけではサイズ感を推し量るのが難しそうな気がします。)
葉っぱが尖っていて、これはたしかにチクチクして痛い。
ネズミの進入路にネズミサシの葉を置いて防いだというのも納得です。
こんなものばら撒かれたら人間だって侵入できない。
枝だっていかにもヒノキ科といった硬質かつ鋭利なもので、これまたチクチクと痛そう。
こんなもので刺されたら人間だって(以下略)
まあ「デカい!」と叫びたくなるような巨樹ではありませんよね。嘘は書けません。
樹皮が剥がれた個所が広がっており痛々しさも見られますが、手で触れてみると実に比重が高そうなみっちり感が伝わってきます。
台風が来ようと大地震が来ようとビクともしないのではないか。そんな力強さが感じられました。
真下から眺めてみるとこれがなかなかの迫力。
樹皮の質感といい枝ぶりといいビャクシンに近いものを感じます。うねりの少ないビャクシン。そんな印象。
ちょっと西日がキツすぎて撮影が困難だったのが悔やまれますが、超広角レンズでモノクロ撮影すると格好いい写真が撮れそうな気がしますね。
主幹には根元から数メートルにかけて大きな亀裂が。
ひょっとしたら長宗我部氏に焼き討ちされた傷跡なのかもしれない…と歴史に想いを馳せる。
樹齢は分かっていないようですが、長宗我部氏による焼き討ちの唯一の生き残りだという伝承が事実なら少なくとも500年は超えていることになりそうです。
(流石に焼き討ち時点で樹齢数年、数十年はないだろう…と想像して。)
日本第2位のネズミサシながら天然記念物指定は特に無し。香川県の自然記念物に指定されています。
※古くから人々に親しまれる環境であったり学術的価値の高いものを香川県が独自に選定しており、天然記念物とはまた別基準です。
現状の変更や保存に影響を及ぼす行為をおこなう場合は知事への届出が必要…ということなので、扱いとしては天然記念物や重要文化財に近い模様。
巨樹のインパクトだけに重きを置くとそこまで評価が高いとは言い難いのも事実。
しかし大水上神社の境内がこれまた雰囲気良くてですね…弥生時代を起源とする磐座など、歴史的遺物の宝庫です。
神社を参拝して社叢を散策し、ネズミサシを眺めて歴史に想いを馳せる。
トータルな体験として包括的に考えたら非常に満足度の高い体験でした。
「それ、GFX?」と声をかけていただき、駐車場で新年の準備中だというのにわざわざ社務所まで戻って御朱印を書いて下さった宮司さんに感謝。
なんと神社の宮司兼FPS(富士フイルムプロフェッショナルサービス)会員のプロカメラマンさんだったようで 笑
(恐らくこちらのカッチョイイ写真は全て宮司さんが撮影されたものと思われる。ちなみに大水上神社の御朱印もカッチョイイ。)
今回撮影条件がいまいちで納得のいく写真が撮影できなかったこともあり、改めてカメラ片手にのんびり散策してみたいところ。
あ、宮司さんの車のボンネットに鎮座しておられた御神ネコ様もキュートでございました。
由緒ある讃岐国二宮にして見どころたくさんの神社。ネズミサシを見て終わりでなく、参拝もお忘れなく。
2023/12/27訪問
「二宮のネズ」
香川県自然記念物指定
樹齢 不明
樹高 12m
樹高 4.4m
香川県三豊市高瀬町羽方2677-2
コメント:4
- RYO-JI 24-02-19 (Mon) 21:38
-
ネズの巨樹はまだ見たことが無いので新鮮です。
確かに巨樹というには背も低めだしインパクトには欠けるでしょうね。
それでも幹のみっちり感は伝わってくるし、枝振りも悪くないのでしみじみ良さを実感できる巨樹なのでしょう。
歴史に影響を受けたつつも生き残ったネズという箔があるのもポイントかと。
神社も訪問する際の楽しみとなっているので、そういう意味でもここは立ち寄りたいところです。
それにしてもホームページの写真のクオリティが高過ぎです(笑)。 - 狛 24-02-19 (Mon) 21:50
-
まだ見ぬ樹種があるもんです。と、そんなこと言い出したら巨樹になる樹種だけでもまだまだいくつも残ってますね。
青森で見たアサダもそうでしたが、さほど大きくならない樹種の日本最大級。これを通好みと呼ばず何と呼ぼうか。
とか言って、「ネズを刺す樹」なんですね。笑
前知識がないと遠目にはビャクシンと見分けられる自信がありませんが、ネズを刺すその鋭さは独特だし、間近で見られれば自分ごときでも別物だと思えたはずです。多分。
……いやいや、かえってスギの変種か? とか悩んだかも。解説がありがたいです。樹種についての学びを土産にして帰る感じですね。
そういえば、宮城にも「むろの木」ってのがあるのを思い出しました。これはビャクシンみたいで、実際にも混同を来してるのかもしれませんね。本当のネズミサシはより少ないのかも。
探訪エピソードが色々ついてて楽しい神社ですね。
最近は歴史を読み込むのもさほど苦ではなくなってきて、見どころと感じられるようになってきました。
そういう歳になってしまったか……。 - to-fu 24-02-20 (Tue) 13:13
-
> RYO-JIさん
私なんかネズミサシ自体この巨樹の訪問前に「ネズって何だ?」と調べて初めて知りましたよ 笑
敢えて多くを調べずに行ったこともあって、初見のしょんぼり感が強まってしまった気もします。
いえ、なんとなく勝手に太くはないけどそこそこ背の高いヒノキのようなタイプをイメージしてしまったので
まさかビャクシンタイプとは思わず。そっちかー!って一人で笑ってしまいましたもの。
それでも視点を変えてみるとやはり見どころがあるんですよね。大物クラスとは切り口が違うだけで。
宮司さんが「最近は専門外なのにドローン撮影もやらされるんだよ…」と愚痴ってましたが、社叢の空撮写真がむっちゃカッコよくて笑えます。 - to-fu 24-02-20 (Tue) 13:24
-
> 狛さん
仰るとおりで、結構色々見てきたつもりですがまだまだあるもんだなと。
でっかいクスやイチョウならまあ各地で見られるわけで、この手のレア樹種こそ優先的に押さえておきたいものです。
これ葉っぱの形状の違い以外はほとんどビャクシンと考えてもいいのではないでしょうか。
シマムロとかハイネズとか色々変種があるそうで、どれもビャクシンの亜種的な扱いだとすると我々が今まで見てきた
ビャクシンの中にも実はネズだった、というものもあったのかもしれません。今後は葉に注目ですね。
(シマムロ、別名オキナワハイネズは房総半島の海岸にも見られるらしいので、狛さんは既にどこかで見ているのかも…)
巨樹はどうしても神社の御神木的なものと繋がることが多いのもあって、歴史に造詣が深いとより楽しめるのは間違いありませんね。
わりとまじめな話、ああもっとマジメに日本史の授業受けとくんだったぜ…と後悔することが多々あります 笑
トラックバック:0
- このエントリーのトラックバックURL
- https://withphotograph.com/wp-trackback.php?p=32838
- Listed below are links to weblogs that reference
- 香川県三豊市 二宮のネズ from with photograph