- 2018-10-28 (Sun) 23:01
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | スギ | 京都府(京都市以外) | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別)
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
以前訪れた「胎金寺山口の天狗杉」から登山道を進むこと約15分。登山道から少し逸れた先の斜面にそびえ立つのがこの「胎金寺山奥の天狗杉」です。登山「口」の天狗杉(とはいえこちらも15~20分しっかり山道を歩く)に対して、こちらはその「奥」の天狗杉というわけですね。Web上では「口」のスギの訪問ログは散見するものの、何故かこの「奥」のスギのデータは私の知る限りほぼゼロです。当然巨樹・巨木林データベースにも未登録の巨樹。今回は巨樹の先輩方のサイトにはデータが無かったため登山家の方のログを参考に巨樹探訪することになりました。
まあそこまで分かりづらい場所に立っているわけでもありません。口の天狗杉手前にもこの登山道の案内板が設置してあるのですが、そこから登っていくとこの2枚目の案内板が現れます。これを道なりに進むと当然山頂へ、奥の天狗杉に行くには左手の細い沢に沿って道なき道を少しだけ登る必要があります。
その先に待ち構えるのがこの大杉。沢を登りながら少しずつ姿が見えてくるのですが、流石にテンションが上りますよ。口の天狗杉よりも明らかに太い。自分の目測、印象では幹周だいたい8mほどではないでしょうか。口の天狗杉の幹周として世に出回るデータ、7.6mはひょっとするとこちらの奥の天狗杉のものなのかもしれません。(ただ口の天狗杉の樹高40mというのは明らかにあちらのものだと思われます。こちらの方が背が低く、せいぜい樹高30m強というところではないかと。)また再訪する機会があればメジャー持参で2本の天狗杉の幹周を実測してみるつもりです。
写真では分かりにくいかもしれませんが、かなりの急勾配。いやホント、常に幹に手を触れて体を預け、両足に力を入れて踏ん張っていないと即座に滑落します。雨の日は特に危険ですのでご注意下さい。今回写真右下の苔生した丸太の近くに三脚を立ててWi-Fi接続でスマホからシャッターを押していますが、三脚の位置からスギの根本まで移動するのに軽く30秒~1分くらいはかかりました。タイマーダッシュ不可だと思われます。
2本のスギが癒着しているようにも見えますが右側と左側で明らかに太さが違うし、年代を分けてわざわざ2本のスギを癒着するくらいに近付けて植える必要性が考えられません。とするとやはり枝分かれした単幹のスギなのではないかと。このスギに関してはとにかく由来からサイズの実測値まで一切の資料がなく、残念なことに素性が全く分からないのです。
この右側に突き出した大枝が天狗杉たる由縁のようです。枝の根元に天狗が立ってこちらを見下ろしている、そんな光景が容易に想像できます。口の天狗杉もなかなか天狗杉的(造語)でしたが、天狗杉らしさで言えばこちらが上かもしれません。
真下から見上げたところ。口の天狗杉とは随分印象が違います。良くも悪くもこちらの方がより標準的なスギの巨樹であるという印象を受けました。
頭頂部に近付くにつれて枝葉の量が突然増えます。この辺りも天狗杉ぽいと言えば天狗杉ぽい。
数本の大枝が根本から折れているのが確認できます。いつかはあの天狗が立っていそうな大枝も同様に折れてしまうのか。あの大枝が欠損してしまったら天狗杉感が一気に損なわれてしまいそうです。
こちらは口の天狗杉。
奥の天狗杉と口の天狗杉を比較して、どちらが立派なスギかと問われたら即答で奥の天狗杉だと答えます。しかし、どちらが魅力的なスギかと問われると、これは難しい。大きい巨樹イコール魅力的な巨樹というわけではありませんから。口の天狗杉はサイズこそ目立ったものではないかもしれませんが、攻撃的なフォルムや野生で生きるタフさで見るものを圧倒させるんですよね。個人的な好みで言うと巨樹だけを比較したら口の天狗杉の方が好きかもしれません。
奥の天狗杉の魅力はやはり登山道奥で少しずつその姿を覗かせるドキドキ感(言うまでもなくその期待を裏切らないだけの迫力もある)、そして立地の良さだと思います。登るのが大変なのに立地が良いだと?と思われるかもしれませんが、集中して自然と対話するには極力ヒトから離れた環境に身を置くことが望ましいのです。まあ対話というのは心の対話ですが、極端な話ここで大声出してスギに話しかけていたとしても誰も聞いちゃいませんからね 笑 非常に良い巨樹だったのでマイナーな存在のままにしておくのが勿体ないと感じる半面、ここはこのままひっそりと置いといてもらいたいな、という気持ちも半分ですね。
「胎金寺山奥の天狗杉」
樹齢 不明
樹高 目測30m前後
幹周り 目測約8m(胎金寺山口の天狗杉より太い)
- Newer: ポタリング 南湖一周
- Older: Diary
コメント:4
- 狛 18-10-31 (Wed) 15:34
-
今一度、口の天狗杉の方も見直してきました。
口の方もやはり若い杉巨樹と比べると天狗成分の含有は結構ありそう……しかし、こちらの奥の天狗杉を見てしまうと、こちらがまさに本当の天狗杉だと思ってしまいますね。
野生的な気迫と緊張感に満ちていて、周囲の植林されたモブ杉が圧倒されてスペースを空けているようにしか見えません。
天然の杉なのだろうと思いますが、こんなものを見つけてしまったとしたら、それはもう、天狗サンのものなのだとか、そういう想像をする方がむしろ自然に思います。
どうしてこの樹だけが巨大化したかという説明が一発でつきますからね。
こんな立派な杉がなぜ切り出されなかったのも、そういう初見のインパクトが功を奏したのかもしれませんね。
しかし、どちらの杉を見てみても、関東地方ではなかなかお目にかかれない種の暗さと湿度のようなものを感じます。
京都(そして奈良)の山はおっかないなあ……とちょっと思うのでした。 - to-fu 18-10-31 (Wed) 21:03
-
> 狛さん
この横に突き出した大枝なんて天狗感満載ですよね。僕が天狗でもたぶんこっちに住みます 笑
我々が車を横付けして足を踏み入れるような山林はほぼ全てが人工林ですが、こうして林業が発達していなかった時代の山林というのはどんなものだったんでしょうね。この天狗杉のミニチュア版みたいながたくさん立ってたのかなあ…その中でも特に目立って大きい杉だったに違いない、なんて僕もこの巨樹たちの人生(樹生?)を色々想像してしまいました。
そうですね。関東と関西のスギは僕も結構違いを感じます。関東のものは実直そうな立ち姿をした凛々しいスギが多いですよね。
あ、京都に住む僕から見ても奈良の山は怖いです 笑 - RYO-JI 18-10-31 (Wed) 23:15
-
これだけの杉がデータベースに掲載されていないですと・・・。
それはけしからんという思いと同時に、今だ知られていない巨樹がたくさんありそうでワクワクします(笑)。
それはそうと天狗杉の名に恥じぬ姿だと見入ってしまいました。
一人で対峙するには人間というのはちっぽけな存在と思えるくらいに。
急斜面にある巨樹はあちこちで見かけますが、成長するにあたって環境的に悪くないんですかねぇ。
タイマーダッシュは危険なレベルですね、これは。
奈良に住む私から見て、京都の山の方が怖そうに感じますよ(笑)。 - to-fu 18-11-01 (Thu) 17:14
-
> RYO-JIさん
あのデータベース、本当にダメですよねえ。京都府内のほとんどのスギの巨樹が名称「スギ」としか登録されていなくて何が何だか分かりませんし。○○神社の杉、とかですらないんですよ。スギ、だけです。もうアホかと。
急斜面の巨樹は逞しいですよね。地中は根で凄いことになってそうです。
この斜面にしても恐らく地中はこの天狗杉が完全に掌握していて、万が一倒れようものなら一帯が土砂崩れで埋もれてしまうような気がします。
やはり隣の山は怖く見えるものなのでしょうか 笑
山奥の巨樹を初訪問するとき、車線が減って薄暗くなって、路肩には落石がゴロゴロと転がっている…路面が徐々に酷くなってくると、生きて帰れるだろうかってちょっとドキドキしますよね。心臓に悪いけどクセになります。巨樹巡りを初めて酷道マニアの方々の気持ちが少し分かるようになりました。
トラックバック:0
- このエントリーのトラックバックURL
- https://withphotograph.com/wp-trackback.php?p=6997
- Listed below are links to weblogs that reference
- 京都府南丹市 胎金寺山奥の天狗杉 from with photograph