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千葉県匝瑳市 安久山の大シイの木


SONY α7II / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

このシイは早く記事に仕上げたいと思いながらも、思い入れがありすぎてなかなか手が付けられなかった巨樹なんです。早く書いてしまいたい、でも書き終えたくない。そんな感情。大袈裟ではなく、この巨樹と出会ったことでスダジイという樹種に対する僕の見識は大きく変わることになりました。巨樹そのものも素晴らしさもさることながら土地の所有者である平山さんの素敵なお人柄、そして東京のスナップ野郎だった時代から構ってくれている狛さんに案内してもらっただなんて、これが記憶に残らないわけがないという、自分にとって強烈な思い出になっている巨樹でもあります。

さて、この匝瑳市(そうさし)の「安久山の大シイ」ですが、先にも記載したとおり匝瑳市安久山の平山さんという方の個人宅の敷地内にそびえ立っています。すぐ側に無料の駐車場を設置して下さっていて、維持管理協力金として200円を支払うことで敷地内のスダジイを存分に楽しむことが出来ます。


住宅の裏地に案内していただき早速スダジイの巨樹と相まみえるわけですが、え?スダジイってこんなに凄かった?と初見でド肝を抜かれること間違いなしです。我々も当然「うわあ…これはすげえ…。」なんて唸ってしまい、平山さんも「そうだろう、すごいだろう。」なんて言いやしませんが、そんな眼差しでニコニコしています。さて、我々いつもここからが長いのですが、平山さんは流石手慣れた様子。まあゆっくり見て行って下さい、後で家の中で冷たいお茶でも飲んでいって下さいね。なんてスッと引き下がってくれるわけです。マニアの心情をよく分かってらっしゃる!嬉しくなってしまいますね。さて、ここは遠慮なく巨樹を堪能させていただこう。


正直なところ、以前はシイの巨樹の魅力がイマイチよく分からなかったのです。樹高が高いわけじゃないし何千年も生きてるわけでもなく、葉っぱだって何やらくすんだ色味でどうも地味なイメージ。巨樹巡りをするにあたっても優先的にシイを回った記憶が無く、どちらかと言えば他の目的地のついでに寄ろうかな、くらいの感じでした。もうね、過去の自分に馬鹿かと言いたいですね。お前の目は節穴だと。凄いシイは本当に凄いんですよ。


大抵の樹種には「決め」の角度があって、ここからの構図がベストだな、みたいなポイントがあるんですよ。一番見応えのある、見栄えのするポイント。図録なんかでドカッと表紙に使われるような角度ですね。しかし複雑な造形のシイにはそれが無い。いや、あるのかもしれませんが、それを探るのが至難の業なんです。どの角度から見ても違った見応えがあって、少し動くだけで「うわ、ここからも凄い…いや、ここからも凄いぞ。」なんて、どこから見ても魅力があって見飽きないんです。ホント。


この根回りなんかも本当に凄い迫力ですよね。どこか南国っぽさをかんじるというか、ガジュマルっぽい。この「安久山の大シイ」はとにかく造形が複雑なんですよ。まるで巨樹ではなく物凄く細かな彫刻が施された建造物でも眺めているような気分になってきます。


どんぐりから芽が出たものだと思われますが、根本にはたくさんの子孫が芽吹いていました。今の姿にしてもグネグネと複雑に絡みついているのは数十年前に芽吹いた子孫だったりするのかもしれません。


よく見るとカシか何かが着生していますが、そんなもの気にも留めていないかのような健康さ。シイは取り込んでしまう勢いで成長していますが敵も敵でなかなか逞しそうに見えるため、このまま一体化し融合樹として共生して行きそうにも思えます。


いや本当にどれだけとっても飽きない。一体何周したんだろうってくらい二人でぐるぐる回っていました。お互い「そろそろ行こうか。」とはなかなか言い出さないんですよね。声をかけられたら切り上げようかなとは思うものの、でも撮り続けるなら俺だっていくらでも行けるぜ、と。(いえ、何時間も居座ったら迷惑だし平山さんのお話も伺いたいので、適度に切り上げましたけどね。でもそんな気分でした。)


いやいや、随分オーバーに語ってるけど所詮シイだし小さいんでしょ?と思われました?そこは流石、日本第4位の大きさを誇るスダジイですよ。巨樹としての迫力も申し分無し。本当に素晴らしい巨樹です。(最近になって三宅島で超ド級のスダジイが何本も発見されているため、現在はランキング10入りするかしないか、くらいになっているかもしれません。ただそんなこと抜きにこのスダジイは本当に立派なもので、ランクが落ちたからといって価値は全く損なわれていません。)


樹勢も旺盛。平山さんのことを書き始めるとそれだけでもう記事が1つ2つ簡単に書けてしまうくらい長くなってしまうので、今回の記事では省略させていただきますが、このとんでもない姿は何十年も前からあの方が丹精込めて、そして愛情込めて手入れして下さっている成果でしょう。「パワースポットだとか変に崇める奴がいるが、神様なんかじゃないんだ。人間と同じ、対等な一つの生き物なんだよ。」そう仰っていたのが印象的です。巨樹は仙人じゃあるまいし霞を食って生きているわけではない。人間や犬、猫なんかと同じで毎日きちんと接してあげないと健康に生き続けることなんて出来ない。そういう意味では我々と対等な存在なのかもしれません。毎日巨樹としっかり向き合っている平山さんだからこその哲学です。


裏手の使われていない田園地帯をビオトープの遊歩道として整備するお話、そしてこの由緒ある古民家をホテルにするという計画…それらのプラン全て、自ら最前線に立って指揮を執っていらっしゃる。凄いエネルギーですよ。話してるときの顔つきなんか少年みたいでしたから。いや、感心してるだけじゃダメだ。負けないように頑張らないとなあ。


県下最大のスダジイ。でも、この巨樹に関しては数字なんかどうでもいいように思うのです。とにかく理屈抜きに素晴らしいシイだから。京都に住むものとしては簡単に通うことが出来ませんが、絶対にまた再訪しなければ!と心に決めている巨樹の1本です。できればその際は平山さんの古民家ホテルに泊まって、部屋からのんびり眺めてみたいものです。

2018/8/11訪問
「安久山の大シイの木」
匝瑳市指定天然記念物
樹齢 推定200~300年
樹高 約20m
幹周り 約10m

コメント:4

18-12-06 (Thu) 20:23

このシイの巨大さは強く濃く脳裏に焼き付いていますが、こうして自分自身との対比を見せられると、改めて度肝を抜かれますね。すごい!
ムッシュ平山に裏手に案内して頂いて、初めて視界に(一部が)入った時の衝撃が忘れられません。
なんか喋ってたと思うんですが、「そうなんですよ、それがですね……ええええっ!?」みたいな。笑
ほとんどコントでしょうね、はたから見たら。でもしょうがないでしょうよ!

to-fuさんも僕と同じく随分ぐるぐる回りながらカメラを構えられてましたし、たくさん撮られたと思うのですが、チョイスが的確で、全体を捉え難いこのシイの特徴的なところをかいつまんでくれていると思います。
おかげで把握しづらいこの形状を、少し読み解けたようにも……うーん(ごめんなさい、やっぱりこの樹は難物)。
おそらくコレが主幹の名残なのか? というのを見ているように思うのですが、ここにそれが残っていたら、それこそ大変な姿になっていたでしょうね。
いや、むしろこういう風にドバッとほどけたようにはならなかったのか?
僕の中でも、この樹を見た辺りから、シイの樹の独特な魅力が特にくっきり見えてくるようになった気がします。
迫力もありますが、撮るのが楽しいんですよね。まるで動物です。

で。そう、少年みたいなまっすぐな情熱を感じ、すごく印象に残る方でしたね、平山さん。
ちょっと圧倒されながらも、こうでなくちゃなあと僕も思いました。
何かを形にする人って、こうなんだよなあと。この方あるがゆえにこの樹ありと確信しました。
三宅島の巨大シイ捜索隊長と出会う前にこのシイを見ることができて良かったとも思います。
隊長と平山さんの対談が見てみたい……それこそ巨樹業界の一大トピックスになると思うんですけどね。笑
またぜひお会いしてお話ししたい方です。また夏がいいですねえ。

RYO-JI 18-12-07 (Fri) 0:08

改めて狛さんの探訪記も読みましたが、お二方ともかなり興奮されていますね(笑)。
いや、でもだからこそ臨場感が伝わってきますよ。
自分もほぼスタジイ素人であり、これまであまり良い印象を持ったことが無かったのですが、
流石にこれだけのものを前にすると考えが大きく変わりそうです。
もちろんそれにはこの平山さんの存在も大きいと思うのですが、それも含めての素晴らしい巨樹ですね。
ここが巨樹ホテルになって宿泊できるだなんてワクワクします。
オープンしたらゆっくり泊まってずっと眺めていたいですよ。

to-fu 18-12-07 (Fri) 21:47

> 狛さん
こうして改めて対比を見ると、ボスキャラに挑もうとする勇ましい戦士のようで何だかカッコいいですよね 笑
あれは本当に驚きました。きっと今もう一度見てもデカさに驚くと思います。

このシイは…うーん、やっぱりまだまだ読み解けた気がしませんね。
今度こそはもう少し気持ちを落ち着けて、もっとクールに対峙してみたい。
でもああ、やっぱりいざ実物を目にしてしまうと興奮して夢中で写真撮ってしまうんだろうな。
本当にこの「撮るのが楽しい」巨樹というのは、我々バカでかいカメラを持って訪問する人間にとって最高の存在です。

凄いですよねえ、平山さん。
僕のような凡人なら、こうしたら面白いだろうなあと考えても、でもお金がかかるし…でも大変だし…と、でもでもだっての理由を探し続けて実行に移せないものですが、平山さんは何というか「とりあえずやってみよう」ですもんね。しかも凄く楽しそうに。有能な方だというのは雰囲気を見ているだけで伝わってきますが、それ以上に成功する人ってやっぱりこういう事なんだよなあ、と思わせるエネルギーに溢れていました。

来年の夏はタイミングが合えば一泊してみたいですね。
狛さんは家の近くに泊まっていただくことになるので何だか申し訳ないですが…

to-fu 18-12-07 (Fri) 21:51

> RYO-JIさん
いやあ、つい熱がこもってしまいますね。
アンフェアなくらい感情移入してしまっているかもしれません 笑
しかしそういう記憶抜きにしても本当に素晴らしい巨樹だと思います。シイ観(何だそれ)変わりますよ!

実は「巨樹ホテルに泊まって巨樹談義しようぜツアー」には当然勝手にRYO-JIの参加も前提で話を進めてます 笑
千葉県の地酒でも飲みながら、だらだらと巨樹でも眺めましょう!

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