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兵庫県篠山市 上立杭の大アベマキ (おみの木) ※2023/9/19倒壊


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

徳島県巨樹巡りの途中ではありますが、どうしてもクスノキばかり連発してしまいますので今回は別の巨樹を。昨年の秋に訪問した巨樹「上立杭(かみたちくい)の大アベマキ」です。なかなか掲載するタイミングがなく、この巨樹について書くならクスノキばかり続いていた今しかあるまい!ということでのアベマキさん。


昨年秋…ええ。もう半年以上も前に訪問した巨樹ですよ。実のところ、この巨樹について書くのはもう一度訪問して新鮮な感想を得てからにしようかとも悩みました。しかし巨樹を含めた周辺の景色が本当に綺麗な季節だったんですよね。せっかく記事にするならこの季節以外有り得ないでしょ、と思った次第。


上立杭は知る人ぞ知る焼き物の里。丹波焼、立杭焼、または丹波立杭焼などと呼ばれ主に兵庫県内で販売されています。マップを見ると写真中央やや上に「おみの木」というものが確認できますね。こちらが今回の目的のアベマキ。周辺は細い路地が入り組んでいて駐車場はありませんので、決められた駐車スペースに車を停めて徒歩で向かいます。


事前にもののサイトを拝見して来たものの、大まかな所在地しか確認できず。まあマンションやビルのような大きな建物も無いし近くに行けば分かるだろうということでのんびり散策します。小さな窯がそれぞれ小売も兼ねていて、散歩しているだけでも十分楽しめました。私も自宅用に湯呑と猪口、ぐい呑を購入。


おっと、もう間違いありません。アレでしょう。やはり遠くからでもよく目立つ。


ああ、これは清々しい巨樹だ。すごく居心地が良い。根本に小さな稲荷神社の祠が祀られていますが、鳥居の朱色がまた映えるではありませんか。


おみの木の「おみ」って何なんだろう?大昔の豪族に「おみ」だとか「むらじ」等と呼ばれる位があったように記憶していますが、流石に樹齢数百年のこの巨樹と関連するとは考えられない。この地方独特の方言?と気になっていたのですが、「扇」を指すようです。確かに扇子を開いた様に見えなくもない。ちなみにこの巨樹、アベマキとしては兵庫県一だなんて謙遜して書かれていますが、現在存在が確認されているアベマキとしては国内最大のものなんだそうです。


幹周は5.4m。アベマキという樹種自体がそもそもあまり大きくなるものではありません。先輩方のサイトで見た姿は濃い緑一色の立ち姿で全体的にこんもりしたシルエットで、如何にも若々しい健康優良児的なスタイルでしたが、ちょうど訪れたのが紅葉の時期だったということもあってアベマキの真の姿が顕になっていました。根本の濃い緑はそばに植えられたツバキや着生したヤマザクラ、アラカシ等によって飾り付けられたもので、アベマキ本体の葉はあくまでも上半分の黄色っぽくなった部分だけだったようです。


サイズで圧倒するタイプの巨樹ではありませんが幹には古木特有の風格があり、アベマキという樹種があまり身近なところで見られない私としては十分に見応えのあるものでした。本来アベマキはクヌギの幹のような「コルク状の肌」が特徴なのだそうですが、これだけの古木となると幹の内部もギュッと詰まっていて、本来の質感とは異なる硬質そうな印象を受けました。


アベマキの木は岐阜県に多く見られるそうです。かつてはコルク材に使用するため栽培されていたようですが、乾燥させることが難しいということで近年木材としてはほとんど使われなくなっています。このアベマキも恐らくはこの地で栽培されていたもののうち比較的大きかった1本が伐採を免れて生き残ったものではないでしょうか。後に根本に稲荷神社が祀られ、御神木とされたと推察できます。


アベマキの樹冠。というか、この部分以外はきっとアベマキの葉ではありませんよね。随分と弱々しく見えてしまいますがアベマキは常緑樹ではありません。先輩方のサイトと見比べるに、ちょうど落葉の時期ということで葉が落ちてしまっただけでしょう。枝の欠損こそ見られるものの樹勢はまずまずであると考えられます。(ツタウルシやイタビカズラ等も寄生しているようですが、もしアベマキの樹勢が衰えているのであればそれらはとっくに駆除対象になっているはずです。)


裏側から眺める。写真には写っていませんが、右手には登り窯があって自由に見学できます。(焼き物サイトではないので説明は省略しますが、登り窯に関する案内板も立っているので焼き物好きなら楽しめると思います。)この上立杭という集落自体が非常に心地良い空間なんですが、この地に馴染むアベマキの巨樹もまた同等に素晴らしい巨樹でした。篠山市の中心街からは少し離れているので京都方面から来るとどうしてもアクセスに難がありますが、これからも年に一度くらいはのんびり散策してみたいものです。

– 追記 –
2023/9/19未明、大きな音を立てて倒壊してしまいました。
幸い周囲の民家や隣接する歴史的価値の高い登り窯には被害が出なかったとのこと。
高台から立杭の集落を見守ってきた大アベマキらしい最期だったように思えます。
立杭のシンボルとも言える偉大なる巨樹に合掌。長い間お疲れさまでした。

2018/11/23訪問
「上立杭の大アベマキ」
兵庫県指定天然記念物
樹齢 推定500年
樹高 28m
幹周り 5.4m

兵庫県篠山市今田町上立杭赤坂口1-1

コメント:4

RYO-JI 19-06-18 (Tue) 23:20

サイズ・迫力で圧倒してくる巨樹ばかりだと感覚がおかしくなりますが、こういう箸休め的といえば失礼ですが、
居心地がいい巨樹も大好きなんですよねぇ。
親しみやすくて毎日でも目にしたいというような。
それでも幹の感じからは風格が漂っているように見えますよ。
アベマキはまだ未経験なので比較対象できなくてアレですけど、国内最大ですか!
ワレがワレがの世界の中で、兵庫県は随分謙遜してますねぇ。
なんか勿体ないような気がします。

to-fu 19-06-19 (Wed) 23:37

> RYO-JIさん
木材としてもあまりメジャーではない樹種だからなのか、アベマキの巨樹自体が少ないですよね。
数値だけ見るとちょっと物足りなく感じてしまいますが、この巨樹は結構おすすめです。
近くの陶芸美術館も見応えがありましたし兵庫県の隠れた観光名所だと思います。
何となくですが、RYO-JIさんにも気に入っていただけそうな気がしますね。

自称日本一がそこら中に散見する中で、敢えて謙遜する姿勢はどうなんでしょうね。
いやホント、日本一の大杉!!なんて実際に今まで何本見てきたことか 笑
アベマキでは観光の目玉にならんしな…という判断なのかもしれませんが、日本一のアベマキなんて
書いてあったら、それなりに皆さん足を止めてくれると思いますけど。勿体無いですよね。

19-06-21 (Fri) 10:09

アベマキという樹も関東平野ではなかなかお目にかかれない樹種ですね。ましてや巨樹ともなろうものなら……。
to-fuさんのテキストで勉強させてもらいました。そうか、コルクがとれるんですね。
利用価値のある樹はすぐ切られてしまうし、人を圧倒するところがないとなかなかご神木にも昇進できないのだろうとも考えます。
この樹は、そのちょうどすれすれのところで価値を認めてもらえたのかな……よかったなあと思います。
黄葉、落葉するところも四季を感じさせるところがあるし、焼き物の里のシンボルツリーとしてはちょうどいいおさまりを感じました。
この、立ち姿からしてもう居心地が良いですね。親しみが湧きました。

「日本一のアベマキ」という事実を知ってもらうのをきっかけに、アベマキというのがどういう樹なのかを多くの人に知ってもらえたらいいですね。
改めて、日本は世界でも類をみないほどの多様な樹の文化を持っているという、奥深い世界を覗く気分が味わえると思うのです。
この篠山市の解説看板を見ると、前回ご一緒してもらった時のことを思い出して、たどり着いた感にちょっとほっとします……笑。

to-fu 19-06-21 (Fri) 15:30

> 狛さん
やはり関東でも珍しいんですね。こちらでもアベマキは巨樹に限らずほとんど目にすることがありません。
(というよりも、身近に無さすぎてアベマキの木が生えていても僕は気が付かないと思います 笑)
コルク材…何となく割り箸なんかと一緒で、海外製に押されてしまって製造しても儲からなそうなイメージです。
悩んだ挙げ句伐採しなかった1本がこれだけの巨樹に成長してくれたら、地元の方も誇らしいでしょうねえ。

都市部にいると意識しにくいですが日本って本当に森の国ですよね。国土のほとんどが山じゃないかってくらい。
さらには沖縄から北海道まで、気候が亜熱帯から冷帯にかけて広がっていて、様々な植物が楽しめるという。
いやいや、こうして考えると木に魅力を感じたのも必然のように思えてくるから不思議です。
この巨樹に限らず、案内板はもっと内容にこだわってもいいんじゃないかと思いますね。
我々がちょっと調べただけでも色々なストーリーが出てきますし、ただ立派です!というだけでは勿体無い気がします。

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