- 2019-06-30 (Sun) 11:32
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | センダン | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 徳島県
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
今回の四国巨樹巡り、初日の単独行動の行程では一番楽しみだった巨樹です。予定を立てるときだってまずはメインにこの巨樹を置いて、そこに肉付けするような形でルートを完成させたくらい。だって巨大なクスやイチョウなら地元の近辺でも見られないことはありませんが、センダンの巨樹なんて身近なところではまず見ることができませんから。昨年末に「琴平町の大センダン」という国天の巨樹を訪問したら実に素晴らしい巨樹だったので、国内に現存する国天のセンダン2本の片割れであるこちらもさぞ素晴らしいものだろう、と。期待は膨らむばかりなのであります。
正直に言ってしまいましょう。車で近付くにつれ萎み始めるその期待。
ファーストインプレッションは「え…もしかしてアレなの?いやいやいや…」でした。
「琴平町の大センダン」は季節柄その葉こそ落としていましたが、巨樹として見ても非常に立派なものでした。私のセンダン巨樹経験がその1本限りなものですから、どうしても琴平町の大センダンとの比較になってしまいます。まずとにかく巨樹としてはあまりに小さい。巨樹として期待して来るのではなく、あくまで名木であると考えて来ていたらここまでの落胆は無かったように思います。
唯一の救い…と言ってしまうと語弊がありますが、ちょうど5月半ばはセンダンが花を付ける時期だったようで、辺り一面にふわっと心地いい香りが漂っていました。この香りが強烈に脳裏に焼き付いていて、きっとあの香りを嗅ぐことがあったら毎回徳島を思い出すだろうという気がします。センダンという樹種自体が近畿圏では珍しいのですが、徳島県内では河川敷などでこの花をよく見かけました。温暖な四国では特に珍しくもない、そこらに自然と自生している樹種の一つなのかもしれません。
岩石のような樹皮からはまさに古木といった風格が感じられ、もちろん巨樹としての見応えがないわけではありません。
しかし、とにかくその傷みが気になって仕方ありません。既にほとんどの大枝は欠損し、辛うじて2本の枝を残すばかり。
その残った2本の大枝でさえ支柱がなければ今にでも折れて倒壊してしまいそうな有様。私にはこの金属の輪っかが拘束具のようにしか見えず、痛々しくてどうも直視できません。
少なくとも私が先人のログで見た約10年前にはもう1本の大枝が残っており、巨樹としても申し分ない風格を感じる立ち姿でした。「あぶないので、この下であそばないでください」この立て札はその大枝が欠損したタイミングで置かれたものでしょうか。あと100年…いえ、せめてあと10年早く訪れることが出来ていたら。私が受ける印象は180度違ったものになっていたかもしれません。
ちょうど周辺が工事中で、センダンの巨樹を眺められる憩いの広場的なものにしようと整備されているところでした。
新しく設置された案内板。今は亡き、空に向かって立ち上がる第三の大枝が確認できます。古くから剣山へ向かう修験者たちの道標とされていたのだとか。この剣山にしろ白山にしろ、自動車どころかアスファルト敷きの道路もないような時代にあの凄まじく険しい道のりを人間が歩ききっていただなんて貧弱な現代人からは想像すらできません。ちなみにセンダンの木にはかつて獄門で斬首処刑された罪人の晒し首をくくりつけるのに使われていた歴史があるとして、「獄門の木」などと呼んで忌み木扱いする人もいるそうです。これこそまさにいつもの「木に罪はない」という奴で、そこに生えていたら勝手に生首を吊るされた挙げ句忌み嫌われるだなんて救いのない話です。
樹齢とされる400年どころではなさそうな風格は感じられるんですけど、ねえ…ベンチに腰掛けてゆっくり眺める、なんてのは私にはちょっと出来ないかもしれません。人間に生かされている感が強すぎて見てられないんですよ。
根本の石碑。盆栽のような外見であること、剣山への道標であったことなどが書かれています。どう見ても近年作られたもののようにしか見えませんが、例のごとく明治時代初期にでも作られたかのようなカタカナ混じりの読みにくい文章になっています。こういうのって雰囲気を出したいんでしょうけど、本来の目的は何なの?読みやすい文章でより多くの人に魅力を伝えることなんじゃないの?と訝しく思います。はっきり言ってインスタバエ、とか言ってる頭空っぽな中高生と同レベルの知能です。それおかしくね?と突っ込める人材はいないのでしょうか。
巨樹というより古木・名木のカテゴリーですよね。「琴平町の大センダン」と双璧を成すセンダンの巨樹、という思い込みがなければもう少し前向きに見れたかもしれません。いやいや本当に巨樹に罪はない。悪いのは私の思い込みですから。しかしながらこうも思うんです。そろそろ楽にしてあげてもいいんじゃないの?と。巨樹が何を考えて生きているのかは定かではありませんが、こうして全身を拘束具のようなもので抑えられて生き続けるのは本当に幸せなことなんだろうか。何となく、この巨樹は生きたいと願ってるんだろうなと感じるものに対してはこんな風に思わないんですが、このセンダンに対しては正直痛々しさしか感じませんでした。それこそ完全な主観、思い込みですけどね。とにかく幸せな一生を送ってくれることを願っています。
2019/5/20訪問
「野神の大センダン」
国指定天然記念物
樹齢 推定400年以上
樹高 8.9m
幹周り 9.2m
徳島県阿波市阿波町野神3番地1
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コメント:4
- 狛 19-06-30 (Sun) 21:29
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うーん、確かにここまで来ると、もはや人間がいないと生きていけない家畜のようなもので……しかも明らかに寿命を超えて老いているという印象で。
すごく手が入っている感が痛々しいのと、それでも一生懸命いい匂いの花を咲かせているのと……ちょうどすさまじい時期に訪ねてしまったなあと強く印象に残っています。
「こんな姿はできれば見たくはなかった」とも思いますが、この樹のような姿を見ることで、やはり巨樹も終わりある生命であるということを実感でき、その長大すぎる一生になおさらの敬意を覚えます。
それでも、新たに公園を整備するところなどを見ると、人間側ではまだまだこの樹を活かす気でいるのかと、ちょっと無慈悲に感じてしまうのですよね。
この花は、何を思って咲かせている花なのか……それを考えると、この樹こそ、二世樹を育てるべき樹だったかもしれません。 - to-fu 19-06-30 (Sun) 23:56
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> 狛さん
人間を医療でどこまで生かすべきか…という問題と同じで、きっと決まった答えなんて無いんでしょうね。
個人的には回復の余地があるならば治療してほしいけれど、それが単なる延命措置でしかないならちょっと…という考えです。
もちろんどんなケースにおいてもそうだとは一概には言い切れませんが。
僕も全く同感でとっくに本来の寿命を超えている印象を受けました。
本当に立派な古木だし、巨樹を愛する者として地域の誇りとも言える木を失いたくないという気持ちも分かる。
でも巨樹だって一つの生命であるわけで、人間の都合だけでひたすら延命させるという行為は残酷なのではないか…そう感じずにいられませんでした。
そうは言っても一人の巨樹ファンとして、ただただこの巨樹が生きているうちに対峙することが出来て本当に良かったと思います。もう以前のような樹勢を取り戻すことはないでしょうが、残りの樹生が幸多いものになるといいですね。 - RYO-JI 19-07-02 (Tue) 22:03
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石碑に関してはまったく同感であります。
その当時に造られたものならまだしも、この時代には読みにくいものを誰のために造ってんだ!って。
しかもこういう石碑って設置するのに結構なお金がかかるみたいですよ。
まったく誰が得してるんだろうと勘ぐってしまいます。
このセンダン、確かにもう寿命は全うしているかもしれませんね。
それでも長生きさせようとする人間の気持ちは巨樹好きとしては理解できます。
ただそこにこのセンダンへの想いなどなく、もしもただ人間の欲だけのために生かされているのなら悲しいことですね。
そんな人間の関わり方はどうであれ、ズタボロになりながらも花の咲く時期にこうして立派に花を咲かせ、
その香りを発している姿は胸を打つものがありますね。 - to-fu 19-07-03 (Wed) 13:44
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> RYO-JIさん
あの手の石碑は利権絡みのお金を回すためのもので、結局のところ誰の方も向いてないんでしょうねえ。
あれだけの大きさの石というだけでも無加工でウン十万円でしょうし…
どこの世界にもある話ですが、身近な巨樹に関わることなだけに悲しいですね。
そうなんですよね。長生きしてもらいたいという気持ちは本当によく分かるんです。
これも難しい話ですよね。地元の方が家族みたいなものだとしたら、我々は完全な第三者。
例え第三者には残酷に見えたとしても、身内の方はどんな形であれ命の灯火を消してしまいたくないのかもしれない。
しかし仰るようにこんな姿だからこそ強く胸を打ちます。また通る機会があれば今の姿をもっとよく見ておこう。
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