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愛媛県今治市 乎知命御手植の楠 (大山祇神社の楠群)


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
PENTAX K-1 / PENTAX smc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limited

今回家族でしまなみ海道エリアを訪れるにあたって、どうしてもここだけはと無理言って立ち寄らせてもらった大三島の大山祇(おおやまづみ)神社。まあ実際のところしまなみを観光するほとんどの方が参拝しているのでは?というくらいに有名な神社なので、そこまで強く頼み込んだわけでもないのですが。相変わらず夜明け前の早朝3時出発。途中サービスエリアで軽い朝食など食べたりしつつ、ちょうど駐車場が解放される8時ジャストに到着しました。


鳥居をくぐり広い境内に足を踏み入れた瞬間、真正面に飛び込んでくるこの姿。これには流石に巨樹目当てでない方であっても一瞬足を止めてしまうのではないでしょうか。元気をもらえるとか生命感みなぎるとか、そういう類のポジティブな姿では決してない。興奮して駆け寄りたくなる類の巨樹ではないのです。視界に捉えたその瞬間、クスの放つ神聖さにあてられたのか、まずはゆっくり深呼吸して心を落ち着けてから対峙したくなる。そんなタイプの巨樹。


生きているうちに出来るだけ多くの巨樹をこの目で見てみたい。もちろんそう思います。しかしながら数多の巨樹群の中でも特にこの巨樹だけは絶対に見ておかなければならない、これを見るまで死ぬわけにはいかない。そんな別格の巨樹たちが存在します。私の中ではこのクスノキもその「別格」たちの中の一本だったんですね。そんなクスにとうとう出会えてしまった。ええ、感無量です。


「乎知命(おちのみこと)御手植の楠」。乎大山積大神の子孫とされる乎知命(小千命)が祖神を祀るために建てたのがこの大山祇神社だと伝えられています。その際に乎知命がお手植えしたクスノキとして崇められているのだとか。伝承によると樹齢は2,600年。かつて御島と呼ばれた現在の大三島に神社が創建されたのは、かの神武天皇東征の頃であった…というのが樹齢の根拠だと思われます。

神武天皇の存在自体…いえ、流石に2,600年という数字は眉に唾を付けなければなりませんが、たった数百年という年月(たった、という表現もおかしいですが)でこの霊樹とでも呼ぶべき姿が形成されるとは思えず、常識外の時間を生きていることだけは間違いなさそうです。少なくとも過去に何本も見てきた伝承1,000年クラスのクスノキとは存在感が違う。ひょっとすると伝承に近い1,500~2,000年くらいは生きているのかもしれませんね。


流石にこれほどまでのクスノキですから主幹は損傷が激しく、老木の宿命のように大きく空洞化が進んでいました。しかしその朽ちた幹を苗床にして懸命に生きようと多くの枝を伸ばす様が確認できます。少なくとも倒壊が心配なくらいに衰弱しているようには見えません。それなりの樹勢は保っているものと思われます。


さて初回訪問が2020/3/25。雲ひとつない日本晴れで巨樹を眺めるには絶好のシチュエーションだったのですが、強烈な朝日が射していて撮影するにはちょっと厳しすぎる。ということで二日後の3/27、早々に再訪したのでした。残念ながら生憎の大雨で、これはこれでどうなんだという結果になってしまいましたが。幸い巨樹を眺める、巨樹から感じ取ることについては前回充分に堪能させてもらいましたので、今回は撮影に集中して機材が壊れる前に撤収することにします。


うん。極端な陰影が付かず実に撮影しやすい。外に出るのが億劫な雨ですが、巨樹撮影においては結構好きなシチュエーションだったりします。樹皮がしっとり湿って、巨樹の持つ生命感や色っぽさがより強調される気がするんですよね。ええ、つまり写真の腕の無さをカバーしてくれる、と。有難いことです。


老木としての貫禄十分な幹。恐らくこの主幹、頭頂部の辺りまで完全に空洞化が進んでしまっているのではないか。


このような姿になりながらも生きている。それどころか支柱も何も無しに多くの枝を支えて自立しているのだから凄いことです。


全方位に張り巡らされる枝葉。遠目に見ると充分生き生きして見えます。美しく、それでいてどことなく詫び寂び的な風流さまで感じられる。デカい!とか大迫力!とか、そういうインパクトとはまた違うわけです。亀の甲より年の劫。長く生きているからこそ放てる何かがあるのかもしれません。


ただただ、美しい。周囲を何周ぐるぐる歩き回ったことか。それこそ二日分合わせたらそれだけで結構な運動量になってしまいそうな気がします。本当に撮影していて飽きないんですよ。さっき撮った角度からでも平気でもう一枚撮りたくなってしまう。惹きつけられる、と言いますか。


正面からの姿なんてもう何度撮ったことか。初日なんて家族には次のポイントで遊んでおいてもらって、一人で随分と長い時間撮影に没頭してしまいましたからね…もちろん待たせて悪いな、という罪悪感はあるんです。でも離れられなくて。今度は絶対一人で来よう。近くに宿でも取って、それこそもう存分に撮ってみたい。


神々しい。下調べの時点からこのクスノキは凄そうだと思っていましたが、ここまで軽々と私の期待値を上回ってしまうとは。


拝殿側から眺める。こちらからの姿もまた美しい。
カメラをタオルでふきふきしながらの撮影でしたが、あまりに大雨に打たれ過ぎてAFが利いたり利かなかったりするようになってきました 笑 残念ですが今回はこれまで。うん、この短期間に二度も会うことが出来たし悔いはありません。


滅多に来れないんだから満足するまで撮ればいいよ、ですって。家族の協力あっての今回の巨樹探訪。本当に感謝の気持ちしかありません。

大山祇神社境内で名実ともに最も素晴らしい巨樹はこちらの「乎知命御手植の楠」で間違いないはずですが、実は境内には他にも多数のクスノキの巨樹群が存在するのです。そのため国の天然記念物には「大山祇神社の楠群」として社叢全体が登録されています。(実際目にして「乎知命御手植の楠とその仲間たち」くらいの印象しか残りませんでしたが。)残念ながらサイズ的に目立つものは私には樹木としての生命を終えているようにしか見えない代物でした。それらがもし存命なら境内はさぞ壮観だったことでしょう。

せっかくですから次回それらの一部を紹介してみたいと思います。随分と長くなってしまったので今回はここまで。

→ 「大山祇神社の楠群 2」を執筆しました。

2020/3/25、3/27訪問
「乎知命御手植の楠」
国指定天然記念物・新日本名木100選
※どちらも「大山祇神社の楠群」としての登録。
樹齢 伝承2,600年
樹高 15m
幹周り 11.0m

愛媛県今治市大三島町宮浦3327 大山祇神社

コメント:6

yuriy 20-03-29 (Sun) 9:08

存分に堪能させていただきました。
ありがとうございます!
本当に、この巨樹は別格です。異質というか別次元というか。。。
ジブリに出てきそうな、化身的な木。
もちろん生物なんですけど、そうじゃなくて、動かない、語らないだけで、本当に生きもの。意思を持って生きてるようにしか見えません。

私も再訪したらこの場を動けないんだろうなと思います。
撮影を除いても、余裕で1時間以上ぐるぐるしていられます(笑)。

もっと見ていればよかった。
もっと写真撮ればよかったと、常々思っていたので、
素晴らしい写真の数々をupしていただいて本当に感謝しております。

拝殿からの写真、スマホの待ち受けにしました♪

to-fu 20-03-29 (Sun) 17:43

> yuriyさん
ああ、本当にジブリの世界からそのまま空間転移してきたような姿でした。
特別大きいとか迫力があるとかそういう次元の話じゃない。オーラ?存在感?が違いますね。まさかここまでとは。
サイズで巨樹の価値を測る行為はどこか競技じみたところがありますが、このクスはそういう価値観を軽く超越しています。
私も再訪するときはこの後の予定なんか入れず、とにかく気が済むまでじっくり対話したいと思っています。
それこそ参拝後も奥の院周辺の集落をのんびり散歩しながら余韻に浸りたい。

待ち受けにしていただけるなんて、これ以上ないくらい嬉しいです!
yuriyさんも次回はぜひぜひミラーレス機で撮影を楽しんで下さい!

RYO-JI 20-03-30 (Mon) 21:40

しまなみ海道を走破したい理由のひとつ、というか主目的とも言えるのがこのクスノキです。
実際に目にするまでは、あえてあまり下調べしないでおこうと思っていましたが、やっぱりスゴイですねぇ。
別格の一本だと言い切ってしまうもの大いに納得できますよ。
いわゆる御神木には何かを感じることが多いですが、これはそれを超える、存在そのものが神に見えます。
そして樹齢が古いクスノキならではの大きな空洞はあれど、生命力はまだまだ健在で活き活きとしてそう。
他のクスノキが意外にもあまり良い印象ではなかったようなのがちょっと気になります。
私はこれを含め、三本のクスノキに注力していたのですが・・・。
このクスノキが飛び抜けて凄すぎたのか、それとも他がもはや無残な状態のか。
と、ここまで書いてみて、神社の雰囲気を含め、この肌で感じないと気軽に言葉にできない(してはいけない)ような気がしてきました。
これはやはり一日でも早く会いに行きたいです!

to-fu 20-03-30 (Mon) 23:10

> RYO-JIさん
今治からでも尾道からでも…自転車を漕いで心地良い疲れを感じながらの対面だなんて、想像するだけで昇天してしまいそうです 笑
私も同じ理由で今までほとんど下調べしてなかったんですよ。絶対行くだろうし、わざわざ詳細を知っておかなくてもいいだろうと。

これを含めたアレとアレ…となると、ちょうど私が別途記事にしようと思っている二本かもしれません。
しまなみを走って感じたのは、とにかく車でサーッと走り抜けるのは勿体なさすぎですね。
日頃楽しく自転車に乗る私に対して狂人でも見るような眼差しのヨメですら、自転車で来てみたかったと言っていました。
あの那智熊野大社の大門坂をショートカットしてバスで登ってしまったくらいのやってしまった感があります。
初めての訪問なのに自宅からどこでもドアで「石徹白大杉」に行ってしまった感覚ですよ…モッタイナイ。
RYO-JIさんは是非とも最高の感動を味わってきて下さい!

20-04-01 (Wed) 22:26

不甲斐ない日々が続いており、めっきり大人しくなってしまった僕です。反応が遅くなってしまって申し訳ないです……。
九州系、いや、四国しまなみ系と言うべきか、関東や東北には絶対ないなと感じさせるのびやかさと神々しさですね。
地中海的なところもあるというか。同じ神々しさでも、東北で感じるそれとは表情が違う。どちらにも神様を感じるけど、違う神様なのかね、とそう思います。
途方もない年月生き続けた結果できあがったこの全体の躍動感と有無を言わせぬ塊感に、ああいいなあ、僕も撮らせてもらいたいなあと憧れを感じます。これは、前に立ったら相当なもんですよね。
デカいから、見ないようにしても視界に入るんだけど、真正面に立った瞬間、数秒動けなくなるやつです。
いっぱい撮って少し理解できた気になれたら、近くに宿をとって、毎朝ぷらぷら会いに行ってみたいようにも思いますね。
ご家族のご理解もほんとありがたい。笑 心温まります。きっと撮っているto-fuさんがさぞかし活き活きとしていたのだろうと思います。

僕の場合、しまなみは、今治から広島まで船で渡ったんです。あれはかなり良い旅路でした……。
当時巨樹を見ることを知っていたら、当然もっともっと時間を使ったはずですが、あれはあれで上書きしないで取っておく旅の記憶です。
また長旅をしたい。早く自由に動き回れるように、画面越しにこの神様の樹にお祈りしたい気分です。

to-fu 20-04-02 (Thu) 9:25

> 狛さん
いえいえ。この一週間ほどがあまりに急展開すぎて生活が一変してしまいましたね。
まあ五輪開催に向けて色々隠蔽してたツケが噴出しているだけで、実際のところとっくに最終防衛ラインは超えていたのでしょうけど。
たしかに東北の寺社、巨樹から感じる神々しさと瀬戸内のものは質が違うかもしれません。近畿圏の空気とも異なりますね。
このクスからは気候的にも縄文杉であるとか、そちらの南国寄りな気配を感じます。(まあ縄文杉を見たことないんですけど 笑)
仰るように「良い写真を撮る」なんていうことよりも、ただただもっとこの巨樹の側で時間を過ごしたいと思ってしまうような
タイプのクスでした。朝起きてこのクスの前で1時間ほどぽけーっとしてから一日が始まる。そんな光景がしっくり来ます。

船旅の時間の流れ方は独特のものがありますよね。
もう10年ほど前になりますが、自分が会社を辞めて生きていこうと決断したのも瀬戸内の離島でのことでした。
船を乗り継ぎながら観光するとどうしてもぽっかりと大きな時間が空いたりしてしまって、退屈なんだけど次第に
それを楽しめるように体が順応してくると言いますか。時間を有効に!忙しない現代に生きているとそればかり意識して
しまいますが、もうそんなのどうでもよくねえか?と思えるようになってくる。あれは本当に素敵な時間の過ごし方だと思います。

こういうことが起こると何気なく過ごしていたあの日常がなんて素晴らしいものだったんだろうと痛感します。
これを日々意識しながら生きていけたら素敵なことですが、収束後はそんなありがたみを意識することなど
少しずつ忘れてしまうのかもしれません。いや、この苦難の日々のことを忘れないようにしないとなあ。
この事態が収束したら例のサミットの件も話し合わないといけませんね!

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