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富山県魚津市 洞杉群 2 「広場の洞杉」


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
SONY α7III / TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD

観察路を散策、「最大の洞杉」を堪能して先ほどの広場へと戻ってきました。綺麗なテーブルとベンチが整備してあったので、荷物を置いてひとまず一服。ふう。一応パンを持って来ているので腰を据えてパン休憩でも取りたいところではあります。が、やっぱり怖いんですよねえ。その場に留まっているともちろんクマ鈴もチリンチリン鳴らないわけで、食べ物のニオイに釣られて奴がやって来るのではないか。そんなことを想像するとどうにも落ち着きません。

それにしてもデカいな…幹周では最大洞杉に及ばないとはいえ、樹形がとても美しい。いえ、この荒々しい魔物に対して美しいという表現は適切ではないかもしれませんが、とにかく造形が整っているということは間違いない。場所が開けていることも影響しているのかもしれませんが、あの観察路で見た洞杉群のような鬼気迫る威圧感は感じられません。これはこれで良いな、じっくり対峙できる。最後の洞杉としてこれ以上の存在は無い…ような気が致します。(広場→観察路を経て最大洞杉という流れもそれはそれで悪くなさそうではある。)


しつこいようですが、これが杉だなんて。遠目に見るとそれなりに樹形が整っていたけれど、近くで見るそれは当然ウラスギの化け物なわけで。夜道を歩いていて突然こんな巨杉が目の前に現れたら…いやー、私なんか叫び声を上げて逃げ出してしまうかもしれません。


それでいて全身に苔や着生植物をまとって仁王立ちする姿からはどこか優しさを感じるし、神々しくもある。こうした温かさが感じられたのは季節もあってのことなのかもしれません。着生植物が枯れている冬の時期に対峙していたら、きっともっとタフで寂しげな姿に見えたことでしょう。いやいや雨の日のしっとりした姿だって見てみたい。そう考え始めると、また違ったシチュエーションで何度でも会いたくなってしまうから困ります。


当たり前ですが、デカい。
巨樹にも色々あって、そのサイズ感よりもむしろ名木としての味わいを堪能するタイプの巨樹だって多くあります。ビャクシンやイヌマキ、イチイにカヤなどなど。もちろんそれらの巨樹だって素晴らしい。何百年も生きた巨樹の存在感というものは、単純なサイズだけで測れるほど底の浅いものではありません。私も大好きです。ええ、そんなことは重々承知してますとも。しかしこの圧倒的迫力を前にすると「おお…やっぱりこれでこそ巨樹だぜ…」なんて思ってしまうのも事実で。破壊力のあるストレートをスパーンと顔面に食らったような衝撃。なんだかんだ言って、シンプルにデカいというのはそれだけで感動に値するんですよねえ。


一年の半分は雪に覆われているような豪雪地帯に最適化した進化を遂げた洞杉。この地に生を受けて何百年も生き続ける。そんな重みを想像しながら眺めていると、そろそろ涙腺の緩くなってきたワタクシとしては涙が出そうになってしまいます。


裏側から眺める。正面側からは分かりませんでしたが、恐らくは積雪の重みに耐えかねて幹の一部が裂けてしまっているように見えます。避けようが折れようが、そこからまた根を張って逞しく生きる。こういった様を眺めているとウラスギって実はクラゲのような群体なのではないかとすら思えてきます。


降り積もった落ち葉や砂ぼこりが蓄積して腐葉土となり、それを苗床に多くの植物が洞杉に着生して育っていく。人里の巨樹であれば切除するなどの処置を施してほしいと感じてしまいがちな光景ですが、この山奥の巨人たちはこれでいいのだと思います。大自然を生き抜き、そして大自然の中で朽ちていく。この方貝川上流域において彼ら洞杉は別に特別な存在でも何でもない、ただの自然の一部なのですから。


実のところ保護柵があってあまり近寄ることが出来ないのと、撮影できる角度も結構限られているので写真で紹介するのがなかなか難しい巨樹だったり…途中からカメラはテーブルに置きっぱなしにして巨樹の周りをうろうろと歩き回ってばかりいました。滅多に来られる場所ではないからこそ、少しでも記憶に焼き付けておきたかったのです。


巨樹の元を去ろうとしたときのあの名残惜しさよ。訪れることが困難な山奥の巨樹特有の感情が後ろ髪を引きます。もうちょっとだけ居ようか。もう少し撮っておいた方がいいんじゃない?(とっくに似たような写真を何枚も撮ってる)なんて。それもまた醍醐味の一つ。

かなりの時間をかけてじっくりと向き合ってきたつもりですが今になって思うと全然撮り足りなかったし、もう一度観察路を歩いておけばよかったという後悔もある。気軽に行ける距離ではありませんが、逆にそこまで躊躇するほど大した距離でもないぞ?と感じた部分もあったり。一年の約半分(11月~5月)は林道が全面通行止になるため年内にもう一度となると行けるかどうか分かりませんが、来年にはまた再訪したいものです。渓流釣りのお兄さんによると落石による通行止も少なくないようなので、訪れる際は事前に魚津市に道路事情を確認された方がベターかもしれません。(私も一応前日に電話で確認しました。)

2020/6/22訪問
「洞杉群」
※代表して「広場の洞杉」の数値を記載
魚津市指定天然記念物
樹齢 約800年
樹高 25m
幹周り 11m

富山県魚津市三ケ杉ノ尾 (洞杉群駐車場)

コメント:8

RYO-JI 20-06-30 (Tue) 21:30

いやぁ、スゴイですね。
言葉が出てきません。
自然というのはたかが人間ごときの想像をはるかに超えた現象を起こしますよね。
想定を超えた・・・などと天災の度に聞きますが、それは巨樹にしても同じだと感じます。
こんなサイズの、こんな形状の、こんな・・・これまでに幾度となく驚かされましたがこの洞杉群もそのひとつ。
以前に狛さんが訪問された時も大きな衝撃を受けましたが、今回も初めて見たかのような興奮に包まれました。
お二人が訪れた時の状況がまったく違うのでそのギャップに、『本当に同じ場所なのか?』と不思議な気分に。
狛さんの時のを見て、自分には無理だなぁと思いましたが(狛さんよく行きましたよねぇ)、to-fuさんの回を見ると行けそうだなぁと。
しかしそこに行った者にしかわからない「熊サンの気配」は写真では伝わりづらいと思うので、呑気で無防備な訪問はできませんね。
いやぁ、でも強烈なインパクトがありますし、やっぱり引き寄せられるようにいずれ訪問するでしょうね、我慢できずに(笑)。

yuriy 20-07-01 (Wed) 0:02

お写真を見れば見るほど、
どこか海外の景色のように思えて仕方ありませんでした。
こんな場所にいたら、たぶん感動で泣いてしまいますよ。。
熊は怖いし、私じゃ到底たどり着けそうに無いですが、
いつかこの目で見てみたいものです。

ところで、いつぞやはカメラ指南をありがとうございました。
お陰さまで、長く連れ添っていけそうです(笑)

to-fu 20-07-01 (Wed) 14:36

> RYO-JIさん
いやホント仰るとおり。百聞は一見に如かず、言葉で表現することに意味があるのかと思ってしまいます。
ただでさえ私たちの生活圏とは縁の無い豪雪地帯ということで、このような地で何百年も生きるということがどれほどのことなのか…
それを想像するだけでも言葉を失い、ただただ圧倒されてしまいます。洞杉…想像以上の存在感でした。

自分も狛さんのログを読んで、自分はこんなところに行けるのか?(なんだこの人、こんなにヤバイ人だったのか…)なんて不安に思っていましたが、
冬の時期でなければ到達難易度そのものはとてもイージーなところでした。やはり問題はクマですよね…
きっとRYO-JIさんも遠からぬ将来訪問されるのではないかと思いますし、それこそ例のサミットで三人ワーワー言いながら
巡ってみたいものです。

to-fu 20-07-01 (Wed) 14:50

> yuriyさん
yuriyさんがお住まいの辺りもこちらと同じく雪には縁が無さそうですね。本当に外国のように見えますよね。
世界地図で眺めるとちっぽけな国ですが、いざ回ってみると広い広い。文化も風土も様々で、日本って本当に面白い国だと思います。
女性の一人旅にオススメできるような場所ではありませんが、ぜひとも人生の中で一度は訪問していただきたいですよ。
あの太古の自然環境がそのまま保存されているかのような雰囲気は、yuriyさんにも絶対に満足してもらえるのではないかと思います。
(地元のボランティアガイドさんと巡るツアーなんかもあるようです。)

コメント欄を閉じられているのでなかなか感想が残せずにいますが、更新を楽しませてもらっています 笑
α7IIIの写真、めちゃくちゃキレイではありませんか!重いけどあのキレイさに慣れてしまうとコンパクトなカメラでは
満足できなくなってしまうんですよねえ。ええ、本当にイヤになるくらい重いんですけど。
法隆寺は久しぶりに行きたいんですよねえ。今ならそこまで混雑もしていないはずなので、今月の目的地は法隆寺で決まりかもしれません。

20-07-02 (Thu) 8:59

スギにはもともとものすごいポテンシャルがあるが、育つ地理条件にたまたま恵まれたものだけがそれを発揮できる。
ここを訪ねると、崖とともに崩れ去っている個体や、あまりの物理的圧力に引き裂かれて倒れる個体なども同時に目に入り、これらの巨樹たちがいくつもの好条件のもとで生き延びてきたのだということも同時に実感します。
人間に伐採されなかったのも本当に幸運。この時代に前に立てることを心から喜びたいです。

そういう思考もたくさんできる特別な場所ですが、それを置いといて、ここへ行ったら巨樹のもたらす強烈な衝撃にストレートに打たれたい!
この冒険感と、日本の自然環境の本当の豊かさを実感できる巨樹と風景の数々。本当にこの森は素晴らしい。
数キロ手前で車の侵入を阻止し冬季封鎖しているのも英断、安直にオートキャンプ場なんぞに改造して金儲けに走らないところ、魚津市はその価値をわかっているんだなと感心します。
また行きたいです。コロナがなければすぐ出かけるところです。笑

to-fu 20-07-02 (Thu) 15:19

> 狛さん
あの埋没林博物館で考えてしまったのが、あの洞杉たちもいつかは朽ちて人間から忘れ去られた存在になるんだろうなということでした。
で、未来の冒険野郎があの山中から洞杉だったモノの残骸を発見して、現代の埋没林のように博物館で展示されるのかな…なんて。
本当に今あのように存在することが奇跡、そしてこの時代に我々が生まれ落ちたこともまた奇跡。
壮大なスケールの話のようですが、あの場に身を置くとどんどん妄想が膨らんでしまいますね。(そして錯乱する 笑)

仰ることに全く同感で、あの場に行ったらもうストレートにガツンと衝撃を受けて「ぎゃふん!」と言って帰って来ればそれでいいと思います。ぎゃふん。
あれだけの大自然ですから屋久杉のような一大観光名所にも仕立て上げられそうなものですが、まさに英断ですよね。
そこは魚津が誇る他の観光資源、蜃気楼やホタルイカのおかげなのかもしれません。これからは感謝の気持ちを込めてホタルイカを食べないと 笑

また徐々にコロナさんが活性化してきて、さてさてどうなることか…ですね。
どうやら日本もスウェーデン戦法でゴリ押しすることに決めたようなので、この環境の中で普通に生活する覚悟を決める必要があるのかもしれません。
フルマラソンを短距離ランナーばりの勢いで独走する東京サンは論外として、このままでは京都含む他県も以前の状況に逆戻りするのは避けられないように思います。

yuriy 20-07-02 (Thu) 18:20

ガイドさん同行ツアーなんてのがあるんですね!
ふふふ・・。またひとつ目標が増えました。
女一人旅しかも車ナシってのは、巨樹巡りには相当なハンデなので、
そういったガイドさんの存在は大変ありがたいです。
同じ趣味の父(80歳)と行けるといいんですけど、
さすがに年齢的に難しくなってきたので連れ回す訳にもいかず。
(ちなみに頑丈で体力には自信があった父、昨夏に山で遭難し、
15メートル高さからの滑落を十数回繰り返しつつも
すり傷を負っただけで、2日後に自力で帰還しましたが、
さすがにもう登山禁止令を出しました・・)

法隆寺、行かれますか!
私も近々龍田大社と併せて再訪し、
中門リベンジしようと思っていたところです(笑)
たしかに、行くなら今って感じですね。
ブログ、見て頂いて恐縮です。
コメント欄は旧ブログで管理しきれなくなってしまったため、
現在はメールだけ残しました (*u_u*)
お恥ずかしながら、カメラはまだオートでガシガシ撮ってるだけで、
正直まったく使いこなせてませんが、
緑樹の再現度には特に感動しました。
おっしゃる通り、こんなの見てしまったらもう元には戻れない・・(笑)
差し当たっては、ピントの合わせ具合と、
室内での扱い方で右往左往しております・・。

to-fu 20-07-02 (Thu) 23:00

> yuriyさん
洞杉ツアーはこんな感じのようです。↓
https://www.uozu-kanko.jp/greentourism/plan07.html
地元の方の説明を聞きながら洞杉を眺めるというのもなかなか贅沢な体験ではないかと思います。
いやホント、私が魚津在住だったらガイドを買って出たいくらいなんですが…それくらいyuriyさんにも味わっていただきたい。
しかしとんでもないお父様ですねえ…頑丈どころの騒ぎではありませんよ。サイボーグ並みです。(人様の親に何て失礼な)
それはもう登山禁止令でしょうね。命あっての楽しみなので、とにかくご無事だったようで何よりです。

ここ数年の有名どころの寺社は外国人で溢れていたので避けがちでしたが、せっかくの機会なので色々と回っておこうと思っています。
人の少ない法隆寺をのんびり歩きまわるなんてことは、今後二度と出来ないかもしれませんよね。

コメント欄の管理は結構大変ですよね。特に女性は何かと大変だろうとお察しします。
カメラもレンズも所詮は道具なので、オートでも何でも自分の狙いどおりの写真が撮れたらそれで良いのだ!と思いますよ。
せっかく遠方に行くのだから後悔の無いよう綺麗に残したい…ああ、そうして結局また腱鞘炎覚悟で持ち出してしまうんですよねえ 笑

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