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富山県魚津市 洞杉群 1 -洞杉群口~最大洞杉群口まで-


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
SONY α7III / TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD

とうとう「洞杉群」までやってきました。当たり前のようにドウスギ!ドウスギ!と連呼してきましたが、そもそもの話として洞杉群というのは一体何なのか、というところから始めなくてはなりません。もちろんのこと「洞杉(どうすぎ)」が群生するエリア=洞杉群でございます。

ええ、そうなると当然「洞杉」とは何ぞや?という話になるわけで。洞杉とはこの魚津市の片貝川源流域に群生する、主に日本海側で多く見られるウラスギ。芦生杉(アシウスギ)の一種である立山杉(タテヤマスギ)の巨木を指します。樹齢は古いもので一千年、若いものでも数百年は経っているとされる巨木群。洞杉の多くが巨大な岩石を根本で抱え込むように生長しており、その岩を抱え込む根本の様が空洞、「ほら」のようであることから「洞杉(どうすぎ)」と呼ばれるようになりました。とまあ言葉で説明されてもシックリ来ないと思いますので、この話の続きは洞杉の写真と絡めて進めることに致しましょう。

さてこちら洞杉観察路の入口。二つの入口にはそれぞれクマ避けの鈴が設置されています。それだけクマの気配が濃いことの証明でもあり背筋が寒くなる思いですが、ここまで来て引き下がるわけにもいきません。ガンガンガンガンガンガン!!と念の為10回ほど大音量の鐘を響かせ、恐る恐る観察路へと進みます。


えーと、進みかけたところ申し訳ありませんが、自分のためのログとして今回の経路を残させて下さい。まず既に登山道から発見した「広場の洞杉」。これが一見しただけでも洞杉群の中でも相当な大物、トップランカーであることは疑いの余地もない。真っ先に食いつきたいところではあるのですが大物は後に回したい性分なので、見て見ぬ振りをして観察路へと向かいました。観察路にも二つの入口がありますが、手前側の「最大の洞杉」側から入るのはいささか無粋ではないかという感もあり、案内板でいうところの3、4番の洞杉からじっくり巡りつつ「最大の洞杉」を眺め、最後にじっくりと「広場の洞杉」と向き合うプランと致しました。


突入して早々に洞杉がお出迎え。先述のとおり根本に巨大な岩を抱きかかえるように生長しています。我らが京都市が誇る「伏条台杉群生地」とも似ていますが、姿こそ似ていてもその成り立ちは全く異なるのです。ええ、説明が長くなってしまうので徐々に進めてまいりましょう。


足元は悪くありません。観察路には終始ウッドデッキが敷かれているのでその上を歩くことになります。石川県で見た国内最大のトチノキ、「太田の大トチノキ」を思い出しました。(こちらの方が遥かにクマサーン・リスクに対する緊張感が上ですが。)要はこのウッドデッキ、観光客が歩きやすいよう整備することが目的というよりも、この原生林が如き自然の生態系を壊さないよう極力地上は歩いてくれるな、ということです。この美しい大自然に触れてみたい…訪れた誰もが思うことでしょうが、そこは我慢。我慢ですぞ。(他人様の話なのであまり大声では言いたくありませんが、先人たちの「太田の大トチノキ」のログを拝見するとロープの先に侵入して巨樹と並ぶ写真ばかりが掲載されており、とても残念な気持ちになります。)


洞杉に番号が振られていましたね。3番、4番…あとは覚える気にもならない呼称(失礼)もあったっけ。正直なところ、観察路に足を踏み入れるまでは順番どおり探さないと、見逃さないようにしないと…などなど色々考えるのですが、いざこの空間に立ち入ってしまうと最早どれが何であるか、なんていうことはどうでもよくなってしまいます。本当に感動するとはそういうことではないでしょうか。ニンゲンが付けた呼称や番号なんか彼ら(彼女ら?)にとって何の意味も持ちませんから。


とにかく凄まじい。杉。そう、文字にしてしまえばただの杉なんです。「異形の」「巨大な」エトセトラ。どれだけの言葉を並べようとも、あの場で感じたことを表現することは出来ないのではないか。良くも悪くも雰囲気に飲まれてしまうわけです。脳が考えることを放棄する、それ以上の感動がありましょうか。


この趣味を始めてからというもの、それなりに多くの杉の巨樹を見てきました。単体での大物も色々見てきたし、それこそ京都の「伏条台杉群生地」にだって何度も足を運んでいる。どれほど多くの巨樹を見てきても、改めてこの洞杉たちを眺めていると「巨樹」というその存在の大きさに言葉を失ってしまうわけです。巨樹の世界ではどれがナンバーワンだ、これを見たら他は見なくても構わない、そういう明確な優劣が存在しないからこそ面白いし、飽きないのだと思います。まあ人間と同じですよね。ウチのじーちゃんも凄いしアナタのじーちゃんも凄い。長く生きるということはそういうことです。


ザ・洞杉!という形状のものが出てきたので説明の続きを。伏条台杉とは成り立ちが違う、という話でしたか。林業の効率化を考えて人為的に生み出されたモノの成れ果て、山奥で歴史から置き去りにされた姿が京都の「伏条台杉群生地」ですが、こちらは自然に発生したものです。

度々発生する雪崩や土砂崩れ、そして増水する片貝川からこの地に流れ着いた巨大な岩石に生じたコケや降り積もる腐葉土を苗床に根を張ったタテヤマスギの新芽。もちろん岩の上にうっすら積もる土だけでは十分な養分が得られるはずもありませんから、豊富な養分を含んだ土壌を求めて徐々に徐々に地上へと根を伸ばしていきます。そうして長い年月をかけて岩を包み込むように生長した姿がこれであると。

陳腐な言葉で締めてしまい申し訳ありませんが、これはもう大自然の神秘としか言いようがありません。そんなことあるの?と。人間に歴史があるのと同様に、自然界で生きる彼らにも歴史があるのだということを思い知らされます。


苔むした岩が本当に美しい。まさにこのようなコケの上に芽を出した小さな苗が、数百年の時間をかけてあのような姿にまで生長する。この空間全域360度どこを見回してもロマンの塊ですよ。そのあまりのスケールの大きさに言葉を失います。


場所柄もあってそこまで多くの観光客が訪れるわけでもないのでしょう。6月でこの有様ですから、真夏頃にはさらにシダが多い茂っているだろうと考えられます。クモの巣を払う枝は必須装備、クマ以外にもマムシやヤマカガシなど足元に潜んでいるかもしれませんので、十分にご注意下さい。


さあ、明らかに他の個体とは規模の違う巨体が見えて来ました。こちらが「最大の洞杉」に違いありません。(便宜上案内板の呼称を用いますが、ホント何とかならなかったの、これ。)


主幹だけで幹周15.6m。伏条台杉群生地の「平安杉」と同じく数値だけ見ると全国でもトップクラスのサイズですが単純な大きさだけで言えば、平安杉のように主幹が樹高数メートルの辺りで細い幹に分散しているので数字ほどの迫力を感じないと思います。しかしこの大杉の本領がそんなところに無いことは明らか。この姿を見れば一目瞭然というものでしょう。


一年の半分近くは積雪している豪雪地帯で数百年の時を過ごしているわけですから、当然雪の重みによって全身が大きく歪みひしゃげている。押しつぶされた幹はギュッと押さえつけられたバネのように波打ち、幹の折れ曲がった箇所はコブのように変形しているのも確認できる。まるで傷痍軍人のような壮絶な姿。


例に漏れずこちらの洞杉も巨大な岩を抱えるように生長しています。想像できますか?この魔物のような巨大な洞杉も、約一千年ほど前はこの岩石の上にちょこんと立った小さな苗木であったということを。いやー。私には全く想像できませんよ。


一応これらの根本は全て繋がっておりまして。厳密に言えば単体の巨樹ではあるので、これらを全てぐるっと囲うと幹周30m級だ!日本一の杉の木だ!と見る勢力も存在するようなのですが、まあ別にそういう格付けみたいなのは要らないんじゃないですかね。別に呼称とかランキングとか、どうでもいいじゃないですか。たまにお邪魔させてもらって、見て感じて言葉を失う。この方達はそれでいいと思うのです。


(持ってきてよかった超広角。24-70mmでは入りきりませんでした。)
さあ。残すところは「広場の洞杉」。
ですが、あまりにも長くなりすぎてしまったので次回に続きます。

→ 「広場の洞杉」についてまとめました。

コメント:2

20-06-28 (Sun) 15:08

いやはや、なんとも複雑な心境。
僕がほとんど撮れなかった最大洞杉をばっちり捉えられていることにもですが、やはり現地の有様が自分が歩いた場所と同じとも思えないことにショックを受けます……笑
蛇石から先、除雪されていず、道の通りに進めていませんでした。だいぶ蛇行した上、このマップで言うと、1、2を観察できる観察路は途中までしか入れていない。
木道はおろか柵のポールも完全に埋まっていてツライチ、うまく説明できませんが、三次元空間的に雪が詰まっていたというか。それでいて猛烈に雪解けしていて何度か深く踏み抜き、とても怖かったです。
to-fuさんの写真をみると勿体ないことしたなー……とやっぱり悔いが出てきますが、今見て、ああこりゃあ無理だったわ……とも思います。

いやあでも、洞杉の荒々しさとしぶとさ、巨岩と苔の景色、素晴らしいですね。
最大洞杉の主幹の太さ、猛然と岩を加え込み、押さえつけて生きている動的な威容。ああ、雪がないうちにもう一度行って間近で眺めたいものです。あの場の空気をもう一度感じたいというか。
我々が日常眺めている杉がここまで生きる力に長けた生命であるということも、改めて驚異的です。
杉がこんなふうに化けてしまう自然環境ですから、自分ごときがおいそれとたどり着けなくてもそれこそ不思議はないかとも思います。

to-fu 20-06-29 (Mon) 13:31

> 狛さん
駐車場までのルートが開通するのが6月からのようなので、雪の多い年であったらこの時期でも洞杉周辺に残雪が見られたのかもしれません。
先日登った福井の夜叉ヶ池も5月いっぱいまで登山道閉鎖でしたから、北陸の山々には春なんてものがなくて5月まで冬であると
考えるべきなんでしょうね。一年の半分が冬だなんて、これはもう下手な外国以上に文化が違いすぎます。すごいところだ。

改めて狛さんの写真を見て、こんな厳しい環境で育ったらそりゃあこんな摩訶不思議な形に育つよなと腑に落ちた感があります。
エンピツのようにピシッと伸びる身近な杉も杉だし、このバケモノみたいなのも杉。「杉」という存在の奥深さに感嘆させられますね…
たった車で数時間のところにこんな世界がある。まさに狛さんがキャッチコピーにされているとおり「狭くて広い日本」だと実感しました。
日常は日常で悪くありませんが、やっぱりたまには非日常にどっぷり浸かりたい。頭の中がおかしくなりそうですが、あの洞杉を
見たときの感情はクセになりそうです。そして現実に帰還したと強く実感できる、あの「埋没林博物館」の存在もイイ 笑

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