Home > SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | ナラ・ブナ | 兵庫県 | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) > 兵庫県宍粟市 千町のミズナラ

兵庫県宍粟市 千町のミズナラ


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

こちらも昨年の夏に訪問した巨樹なので今さらではありますが。ミズナラというと寒冷地に適している印象がありどうも身近な存在ではない、それに巨樹的に見ると大きさも別段目立たないし…ということで何となく後回しにしてきた樹種でした。しかしながらある程度多くの巨樹に触れてくると体感するのです。リスト上では全く目立たないものの中にも実は面白いヤツがごろごろ転がっているのだということを。このミズナラという樹種もその類なのではないか。そんな期待と不安を胸に抱き、兵庫県宍粟市の高原地帯を目指したのでした。


砥峰(とのみね)高原にほど近い山間部。訪問したのは7月ということで地元京都は祇園祭真っ只中のジメジメムシムシとした地獄の釜のような気候でしたが、高原地帯ということもあって実に爽快なところでした。なんという空気の美味さ!こういった非日常感を味わうことも巨樹巡りの醍醐味でしょう。


全く車どおりのない山道を快適に運転していると道路脇に明らかにそれと分かる巨樹が。むむ、これは思ったよりもずっとデカい。枝ぶりがよく樹高もあるからでしょうか。空を覆う新緑のようにフレッシュな薄緑が実に心地良い。幹周はギリギリ巨樹クラスと言える4.5mなので実際のところ大きさを楽しむより枝ぶりや個性を楽しむべき樹種、いわば名木カテゴリーに属するものだとばかり想像していたのですが、良い意味で期待を裏切られました。


ミズナラはブナ科コナラ属の落葉高木。ブナ科といえばオーク材。木材として重宝されるからか巨樹クラスにまで成長しているものは非常に少ない。こちら兵庫県内最大のミズナラですが、そもそもミズナラの巨樹自体が北海道や東北などの寒冷地帯に集中しており近畿圏では貴重な存在です。(他の近畿圏の巨樹といったら京都府のガイド同行必須エリア「京都大学演習林」内にあるミズナラの巨樹しか思い浮かびません。自分の撮影スタイル的に…つまり巨樹一本に対する滞在時間がめちゃくちゃ長いので…ガイド必須というのがネックで未訪問ですが、幹周5mオーバーらしいので近畿圏最大のミズナラはこちらになるのかも。)


ミズナラの葉。ブナ科の樹木は似たものが多くて正直判別がつきません。


同じブナ科ということでアベマキの巨樹と近い印象を受ける。アベマキも数値上は目立たないけど良い巨樹なんですよねえ。この巨樹の麓に立った瞬間真っ先に「口大屋の大アベマキ」を思い出しました。


やや黄緑色っぽい大量の葉が、まるで降り注ぐ緑のシャワーのようで実に気持ちいい。心の澱を洗い流してくれるシャワー。ここで昼寝でもしたら最高でしょうねえ。ハンモックでも展開してドサッと転がってしまいたい。


なんとなくアベマキもミズナラも「クヌギと似たようなの」的なイメージがありますが、樹皮はまさにそのクヌギとよく似ています。岩壁のようにゴツゴツしていて迫力がある。


材としてはとても頑丈なミズナラも樹木として見たらどうなんでしょう。表皮はちょっと触っただけでポロポロ剥がれてしまいそうだし、どうもコルク質っぽくて簡単に折れてしまいそうにも思える。あまり過度に人間の手で保護されたミズナラを見たことがないので、こう見えて結構頑丈なのでしょうか。まあ何百年間も豪雪の重みに耐えて生きているわけですから人間がチマチマ策を講じたところであまり意味がないのかもしれません。ある程度まで成長するとバッサリと行かれてしまったこのミズナラ、種としての寿命がどの程度のものなのかは想像するより他なく、実はまだまだ若い…流石にそれはないか。少なくとも、とうの昔に衰退期に入っているほどの老いは感じられません。


日当たりの悪い道路の反対側は苔生していて格好いい。いかにも山奥の巨人といった風格があります。


陽の光を受ける姿が神々しい。盆地の街中に住む者からすると、この光景を眺めているだけで「ああ、ずいぶん遠くまでやって来たものだな…」と感慨深いものがあります。なんたって地元に帰れば祇園祭ですよ。ジメジメムシムシです。自宅からたった100km強の距離にこれだけの別世界が広がっているのだから、そう考えるとそれはそれで凄いことだなと思いますが。


あまりメジャーな巨樹ではないと思うんですけど個人的にすごく気に入ってましてね。ここは絶対に再訪せねばと思いながらも、結構アクセスの悪い場所にあるので難儀しているのです。この巨樹でミズナラの魅力に気付いてしまったものだから、翌月は長野県にあるミズナラの大物を目指すことに…ということで、長野県のミズナラを紹介するにあたって何としてもこの巨樹を先に記事にしておきたかったのです。ええ、前フリというやつです。こちらのミズナラも本当におすすめなので、もし近くを通ることがあれば是非お立ち寄りください。

2019/7/17訪問
「千町のミズナラ」
宍粟市指定天然記念物・兵庫県指定郷土記念物
樹齢 300年以上
樹高 30m
幹周り 4.5m

兵庫県宍粟市一宮町千町

コメント:4

RYO-JI 20-10-28 (Wed) 21:13

ミズナラ、近畿圏ではあまり耳にしないですね。
幹周でピックアップするとどうしても漏れがちなサイズ(4~6m)ですが、特に珍しい樹種はより丁寧なリサーチが必要と思わせてくれました。
神々しくも瑞々しいその姿はずっと眺めていたくなるタイプで、思わずその場で再訪を誓ってしまう魅力がありそうです。
苔生した樹皮がより一層味わい深い存在に感じさせてくれますね。
晴天時は文句なく美しいと感じますが、一方で降雨時はどんな風に見えるのか?と興味が湧いてきました。

で、これが前フリで来月は長野遠征ですか!
素晴らしい、私もソロソロ県外へと出掛けようと思います。

to-fu 20-10-29 (Thu) 14:04

> RYO-JIさん
我々の生活圏内では全く縁のない樹種ですよね。ミズナラと聞いても異国の話のようにすら思えます。
経験上ミズナラやエノキは同じくらいのサイズ感の樹種であるカヤやビャクシンよりも枝葉がわさわさ茂っているからか、実際の
数値より大きく感じるものが多いような気がします。期待以上の姿を見せてくれるというのは、Webや書物では味わえない感動ですね。

あ、ややこしい書き方をしてしまってすみません!この翌月(2019年8月)に既に長野でご対面してるんですよ 笑
「月瀬の大杉」の次はそちらのミズナラについて書きたいんですが、こっちを先に紹介しないまま進めるのは何か違うなと。
しかし…実は私も来月は長野や和歌山など、今年最後の遠征としてちょっと遠方まで足を伸ばしてみようかと思ってます。
もう一度月瀬の大杉に会いに行くか、いやいやもう一度熊野に行って2020年を締めるのも悪くない…なんて目的地を吟味しているところです。

20-10-29 (Thu) 20:37

ミズナラで思い出すのは北海道の風景と、やはりあの巨樹でしょうか。
半壊してしまったようなあの樹、今はどうしているかな……と、いかにも遠くという感じがします。

ミズナラでこの大きさの巨樹は全国でも貴重だと思います。広葉樹の中でも用途が多いので真っ先に消費されてしまったクチでしょう。
ナラ科皆殺しエイリアンみたいなのもいるし、なんともミズナラにとっては生きづらい時代なのかもしれません。
スギ、クス、ケヤキ、イチョウ……などは巨大になるに従ってその樹種はおろか樹木であることも超越してしまったような感じを受けますが、この手の広葉樹はあくまで樹木の暖かさと親しみが湧いて、実に良いですね。
身近にあって欲しい、毎日でも見ていられる巨樹というのは、こういう樹だと思います。

to-fu 20-10-30 (Fri) 14:54

> 狛さん
ミズナラの巨樹を一言で表すなら「美しい」。サイズの多少の多寡に関係なく、とにかくその一言に尽きると思います。
あの半壊した巨樹然り、狛さんの「双葉のミズナラ」の記事も改めて拝読しましたが、やっぱり文句無しに美しいなと。
それにしても秋のミズナラもいいですねえ…行きたくなってしまったではありませんか。見るんじゃなかった 笑

毎日でも見ていられる巨樹というのは言い得て妙ですね。ええ、すごくしっくり来る。
例えば家の目の前に杉の大杉なんかあったら…いや、まあそれはそれで嬉しいに決まってますけど、そういうのはちょっと
違うのかなと。あの手のボスキャラとの対面はやっぱり非日常的な感動体験であってほしい。ミズナラはそれこそ近所の公園にでも
あったらパンとコーヒーを買って通ってしまいそうです。いいなあミズナラ。とにかく身近なところに生えてないんですよねえ。

コメントフォーム
Remember personal info

トラックバック:0

このエントリーのトラックバックURL
https://withphotograph.com/wp-trackback.php?p=17310
Listed below are links to weblogs that reference
兵庫県宍粟市 千町のミズナラ from with photograph

Home > SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | ナラ・ブナ | 兵庫県 | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) > 兵庫県宍粟市 千町のミズナラ

CATEGORIES

Return to page top