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香川県仲多度郡まんのう町 杉王神社のスギ


SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

「天川神社の三本杉」を離れ、国道438号線を徳島県方面へと進む。道の駅ことなみエピアみかどを過ぎた先のトンネル手前から脇道に逸れて県道154号線へ。その先に待つのは香川県最大のスギの巨樹「杉王神社のスギ」。お世辞にもスギの巨樹大国とは言えない香川県ですが、この地域最大を誇る一本杉はどのようなものなのか。期待が高まります。


写真中央、空高くズドンと突き抜けるスギが見えてきました。写真では伝わらないのが残念ですが僅かに見える根元が他の有象無象のスギたちと違うのがこの距離からでもはっきりと分かる。ここを目指したのは正解だったと確信し、自然とニンマリ笑みが浮かびます。


神社に隣接する集会場に駐車させていただき、まずは杉王神社を参拝。拝殿脇の大杉が気になって仕方ありませんが、鳥居の目の前にそびえるモミの木もなかなか立派なものです。まだ巨樹クラスとまではいかないまでも神様の通り道ど真ん中に仁王立ちしながらも伐採されず済んでいることから、こちらも大切に保護された樹木なのでしょう。鳥居の目の前に立つモミというのはなかなか斬新なので、このまま成長を続けたらどうなるのか楽しみです。


さあ肝心の大杉。シンプルに太く、そして高い。その文句なしの大きさに嬉しくなってしまいます。小細工なしに(別に巨樹が好き好んで小細工するわけでもありませんが)そびえ立つ姿は壮観。その神々しいまでに堂々とした立ち姿に私、言葉を失ってしまいました。


この手のストレートなスギは写真で大きさを伝えにくいのが難なのですが。ええ、私も事前情報ではこれほどまでの存在とは思っておりませんでした。この杉と対峙した瞬間に「よし、今回の旅はここでおしまいにしよう。」と達成感を得てしまったたほどです。本当はこの後もう一度徳島県の加茂の大クスに立ち寄ろう、その他未訪問の巨樹に立ち寄ろうと色々計画していたのですが、全てがどうでもよくなってしまいました。もう充分だ、帰ろうと。

今回の旅も加茂の大クスから鉾杉、志々島の大楠と、本当にたくさんの大物たちと出会ってきました。それぞれが私の脳の処理が追いつかなくなるほど個性豊かな、国の宝と言っても過言ではない素晴らしい巨樹です。そんな個性のカタマリたちと出会ってきた旅だからこそ最後はこの個性もくそもない愚直なまでにストレートな巨樹で締めるのが相応しいのではないか。ここまで心残り無くキッパリと旅の終わりを決意できたのは初めてのことかもしれません。


迫力のあるどっしりした根元。幹周9.3mはかなりのものですが、それでもこれ以上大きなスギなら何本も実際に見てきました。しかしそれらのスギと比較しても何ら劣るところがない。香川県ナンバーワンだとかそんなこと抜きに、遠方からわざわざ見に行くだけの価値がある一本だと感じました。


根元の空洞にはかつて子供が25人入ることも出来たという。いやいや無理でしょ!と突っ込みたくなりますが、現在の姿は根元を盛り土して嵩上げしたものだというではありませんか。


ああ、なるほど。確かに嵩上げされているのは間違いなさそうです。恐らく現在の杉王神社が創建される際に盛り土して広場として整備されたのではないでしょうか。本音を申し上げると25人というのは眉に唾ですが、確かに洞穴に子供が入って遊ぶくらいのスペースはあったように見受けられます。現在の幹周9.3mというのも立派な数値ですが、もし盛り土していなかったら11m前後には達していたかもしれません。


根元から見上げた姿がまたド迫力で…しかしこういうのは写真では全く迫力が伝わらないんですよね。無念です。


では北陸のウラスギのように迫力、大きさという名の暴力で圧倒してくるタイプの巨樹なのかというとそんなこともなく、どちらかと言えば神々しいとか美しいとかその手の形容が先に来るタイプ。杉王、神様として祀り上げたくなる気持ちもよく分かります。


樹高約50m。この手の巨樹はてっぺんが生気を失ったように枯れていることが多いですが上から下まで健康そのものといった様子。空洞化した根元を抜きにしたら樹勢は上々です。


たまたま通りかかった方もわざわざ車を停めてスマホでパシャっと撮影してしまうくらいよく目立つ。いや、でもこの手の巨樹の大きさはホント伝わりませんよね。ウジウジと何度も申し訳ありませんが、あの巨大さを知っているだけに上手く伝えることが出来ないのが本当に歯痒いわけです。遠方の人間が偶然通りかかるような立地ではありませんが、もし近くを通られることがあったら是非とも思い出していただきたいものです。このスギを見たらきっと巨樹に興味のない方でも興奮してしまうのではないかなあ。


個性派揃いの四国の巨樹界において貴重とも言える「ただシンプルに巨大なスギの木」。たまたま私が立ち寄ったタイミングがそうだったから思うのかもしれませんが、愛好家が立ち寄るなら旅の終盤がおすすめです。巨樹の個性が強ければ強いほど脳の処理能力もゴリゴリと削られていきますからね。フランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールの難解な映画を鑑賞した後に観るハリウッド超大作のような安心感が…いやちょっと違うか。とにかく、ただただ素直に巨樹を眺めて感動すれば細かいことはいいじゃないか、みたいな安心感がある。非日常から日常にスイッチを切り替えるには最上の一本ではないかと思います。

2020/11/17訪問
「杉王神社のスギ」
香川県指定天然記念物
樹齢 800年以上
樹高 約50m
幹周り 約9.3m

香川県仲多度郡まんのう町川東2748-6

コメント:4

21-01-22 (Fri) 8:45

先の四国遠征では、おふたりに合流する前の晩、その「エピアみかど」で風呂に入りました。笑
予定していた美馬の風呂施設が休みで、泣く泣く香川県まで風呂に入りに行ったんですねえ。夜の438号は素晴らしく真っ暗闇だったのを思い出しました。
遠くないところにこの香川一の大杉があることは知っていましたが、そういうわけで行かず。行くわけに行かずというか。
しかし、もし行ったとしたら、これはこれで凄くストレートな個性として認識したかもしれませんね。巡った他の大杉が個性豊かすぎて、かぶらなかったと思います。

そんなこんなな身の上なので、なるほど、あれはこういう大杉だったのかと興味深く見ました。
形があまりにも小細工なさすぎで、確かにこれは写真で大きさが伝わらないですね。
根元が埋められてなお香川一位の大杉。かつてはどれほどだったか、古い写真でもあればぜひ見てみたいものです。
案外本当に子どもがわんさか入って遊んでいたりして。

今回の旅、どちらかというと冒険旅行というより心象や情緒豊かな旅という感じに見えました。
他者や土地との交わりを制限される時代。せめて感染拡大に目途が付いた後でしょうが、求めるものを微妙に変えつつ、また楽しめると良いなと思いますね。

RYO-JI 21-01-22 (Fri) 18:35

個性派が多い四国の巨樹事情ですが、それに比べれば随分と大人しい姿のスギですね。
もちろんそれが駄目というのではなく、シンプルだからこそ印象は薄くなりがちな中にあって神々しく感じるとは。
だだごとではない・・・と想像します。
勝手な意見ですが、神社の御神木にはこういった潔い一本杉が一番似合うし有難味があるような気がします。

空洞に25人のくだりはどうなんでしょうね。
盛土されて隠れている部分が実は相当な太さだったと信じましょう(笑)。
川奥の主という表現がこれまたいいですね!

to-fu 21-01-23 (Sat) 12:57

> 狛さん
あのとき言っていた風呂ってここのことだったんですか!めちゃくちゃ遠い 笑
いえ、しかし車中泊する者として風呂の重要性については本当に共感できます。
風呂に入って歯磨きしたら体がオモリを外したかのように軽くなりますからねえ。

この手の大杉はやはり実際見てナンボですよね。自分でも帰宅後写真を見返していて「あれ?何で俺はこの杉にあそこまで
感動したんだろう…」なんて唸ってしまいましたから。でもきっと再会したらまた同じように感動するんだろうと思います。

仰るように今回の旅は今のこの状況(現在は昨年の11月なんて比較にならないくらい悪化していましたが…)ということもあり、
冒険心を満たすよりむしろ非日常な風景に出会えること自体を噛みしめるような旅だったように思います。どこそこでガソリンを
入れただの、ああここ狛さんとRYO-JIさんと通った道だ!だの、そんな細かい気付きばかりが記憶に残っています。
大物をめぐる旅だなんて贅沢は言いません。ただただ車で未開の地を駆け抜けるだけでもいい。早くそんな日が戻ってくるといいですね。

to-fu 21-01-23 (Sat) 13:07

> RYO-JIさん
遠征するとどうしても個性的な巨樹ばかりに目が行ってしまいますが、最後の最後でこの大杉を目指したのは我ながら
ベストチョイスだったかもしれません。お正月に散々贅沢三昧した後のマクド的な…(マクドは例えが悪すぎる 笑)
私もご神木というとこういう単幹でズシッと真っ直ぐ空高く伸びる大杉が一番好きですね。
鳥居をくぐってこういう御神木の姿が確認できると、それだけで背筋がシュッと伸びて厳かな気持ちになります。

この盛り土は何とか掘り起こしてみたいですよね 笑
それこそ現代の技術でレーザー測定とか出来ないものかと。この手の伝承は尾びれに背びれまでつくことが多いかもしれませんが、
そういうのも含めて地域で愛される巨樹というのが伝わってくるので悪くありません。実に素晴らしい大杉でした。

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