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奈良県天理市 婆羅門杉(下之坊の大スギ)


FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 32-64mm F4 R LM WR
SONY α7III / TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD

まだ徳島県の巨樹を二本ほど掲載できていないのですが、気分転換に先日訪問した奈良県の巨樹を。
実は過去に数回訪問したことがあるものの記事にまとめておりませんでした。まだまだ訪問済み、未掲載の巨樹が何十本もあるのです…
「又兵衛桜」を訪問した帰り道に側を通ったもので、この機会に写真を撮り直して記事にまとめようと立ち寄ったのでした。


天理市といっても皆様が想像する天理教の巨大建造物がある辺りではなく天理の東の果て、名阪国道 福住ICすぐ近くの山中に位置します。
県道186号線から姿が確認できますが、集落の南側が余裕のある舗装路であるのに対して奈良市方面の北側は見通しの悪い離合困難な山道が続きます。
ダンプカーなどの大型車も走る狭路なので通行する際はくれぐれもご注意ください。(私は運悪くダンプとかち合ったことがあります)


とても立派な門杉。
門杉ということでこの構図で紹介されることの多い巨樹ですが、このスギの個性をアピールするなら私は別の角度からの眺めをおすすめしたい。


巨樹としての魅力はこちらからの方が伝わりやすいのではないかなと。
どことなく北陸のウラスギを思わせる荒々しい表情の見応えあるスギの大木。
左手の北株が幹周7.4m、右手の南株が5.3m。共に樹齢は700~800年とされています。
一本一本の数値はさほどではありませんが、これだけマッシヴな形状のスギの木が山門のように構える様は相当なもの。
根元に立つと「おおお…」と言葉が漏れました。


「下之坊の大スギ」。通称「婆羅門杉」と呼ばれています。
個人的には単にお寺の名前を冠した名称よりもやはり婆羅門杉呼びを推したい。

下之坊、正式名称普光院永照寺は聖武天皇の勅願で建立されました。
永照寺の御本尊、十一面観音像が聖武天皇と婆羅門僧の合作であることから「婆羅門杉」と呼ばれるようになったのではないかと想像します。
(話を盛って婆羅門僧お手植えと行きたいところですが、そうなると年代的に樹齢が1,300年と恐ろしいことになってしまう。)
ちなみにインドのカースト制度で有名なバラモン。日本における婆羅門は地位の高い人間を指します。婆羅門僧=いわゆる高僧と考えてよいのではないかと。

そして記載のとおり実はこの巨樹、最近まで天然記念物無指定でした。
令和2年に満を持して?奈良県の天然記念物に指定されたんですね。
無指定とは思えないほど個性的で立派なスギだったので、ようやく価値が認められたのかと感慨深いものがあります。


市街地から離れているので巨樹愛好家か寺社巡りでもしていないかぎり立ち寄ることのない立地ですが、是非とも皆様にも見ていただきたい巨樹。
この苔むした野性的な表情には寄り道するだけの価値がある。(ただし狭路が苦手な方は本当に県道北側の山道にご注意を…)


どうしても手のひらを広げたような形状をした個性的な北株に目が行きがちですが、小さめの南株も枝ぶりが良い。
こちらもなかなかのものです。


ちょっと面白いなと思ったのが、二本が重なるような角度から眺めると幹周10mオーバーの巨大な一本杉のようにも見えること。
北株が主に左側に枝を広げ、南株が右側に広げているため非常に見栄えが良いです。
このような景観になることを想定して成長させたのか?と勘ぐってしまうくらい。


山間部だけあって雨が降りやすいのか苔が目立つ。
そしてその苔が歴連の戦士のような風格を感じさせて恰好いいのです。


樹勢は旺盛。根は境内全域にまで広がっているのだとか。今後まだまだ成長が期待できます。
初回訪問時からいずれ奈良県を代表する門杉に…と感じていましたが、県指定天然記念物のお墨付きもいただいてその日はそう遠くないのかもしれません。


「見栄え良し歴史ありの大スギにしてはいまいち目立たない存在。隠れた名木。必見です。」
数年前に記事を書くならこう締めていたことでしょう。しかし天然記念物指定で少し状況は変わるかもしれない。
これを機にもう少し観光資源としてスポットライトが当たるとよいのですが。
そして北側の山道の整備を…(私はこの道、わりとよく通るのです。)

2023/3/27訪問
「婆羅門杉(下之坊の大スギ)」
奈良県指定天然記念物
樹齢 推定700~800年
樹高 北株37.2m、南株36.2m
幹回り 北株7.4m、南株5.3m

奈良県天理市福住町265番地

コメント:6

123 23-04-14 (Fri) 23:43

良いですねえ
門杉は木の発育環境としてはあまり良くないでしょうが見てる側としてはやはりワクワクさせらせます
お互いの造形が全く違う辺りも良いですね
門杉って同じような風貌をしている事が多いですのでこれはなかなか貴重な存在です

知名度や立地の関係で凄い存在なのに無名な巨樹ってまだまだ多いと思うので
木の保護は十分されるが悪戯をする輩は来ない程度の賑わい、スポットが当たればと思いますね

to-fu 23-04-15 (Sat) 14:00

> 123さん
毎日毎日多くの参拝者に根を踏みつけられ、石段を持ち上げてまで根を広げる門杉。
下手な山奥に育つ杉よりも余程過酷な環境なのかもしれません。
それでも難なく成長を続けるのですから樹木の生命力はすさまじいです。

そうですね。これほどの名木が小さな集落にひっそりと立っている風景は我々愛好家にとって尊いものですが、
お寺巡りの方が気に留めて立ち寄ってくれるくらいの存在にはなってもらいたいものです。
この良さを知らないなんて勿体ない!とアピールしたい反面、あまり注目されると今度は負の面も目立つようになる。難しいですね。

RYO-JI 23-04-15 (Sat) 21:20

県に天然記念物指定されたんですね!
全然知りませんでしたよ。
そりゃこれだけのスギ、これまで無指定だったのが不思議なくらいでしたから嬉しいです。
久しく行っておりませんが、こうやって改めて見るとやはり見応えありますよね。
幹周以上に存在感があるのはこの形状や、門杉ということもあるんでしょう。
そして個人的には樹高も印象に残っています。
正面からだと見上げるかたちになるので余計そう感じてしまうんですけどね。

それにしてもto-fuさん、あの北側の山道を通ってるんですねぇ。
私は自転車では何度も何度も通ってますが、車は結構ハードですね(笑)。
いつでもどこかしら路面が濡れているので雨は多いのかもしれません。

to-fu 23-04-16 (Sun) 21:12

> RYO-JIさん
そうなんです!あの婆羅門杉が県天指定に!
去年だか一昨年だか通った際に寄ってみたら解説板が新しくなっていて、よく読んだら最近指定されたばかりでビックリ。
私も何でこのスギが無指定なんだろう?と感じていたので、正当に評価してもらえたようで嬉しいです。
県道沿いから遠目に見ても樹形が美しいのでいつもあの辺りで減速するのですが、結局休憩がてら毎回のように寄ってしまいます 笑

ええ、宇陀方面に向かう際は岩井川ダムの坂を登って、あの県道をよく抜けて行くんです。
実際慣れてしまうとそれなりに離合ポイントがあるのも分かりますが、北端も南端もわりと大きな道路になっている
あたりが罠ですよね。路面もあまり良くないので、自転車でもパンクの不安が付きまといそうです。

23-04-16 (Sun) 23:04

RYO-JIさんの写真で見て、インパクトある名前とともに記憶していたスギです。
この、一本幹からの抑えきれない本性の発現という感じ、ルール上の幹周が全くアテにならないおっかなさがありますねえ。
奈良の山奥の雨量で化け物化してしまうところ、門杉の役割が辛うじて抑え込んでる感じに見えます。

天然記念物が新たに指定されるのをリアルタイム目撃できるなんて、めでたくもかなり珍しいケースですね。
昭和初期までの基準は相当ユルユルな気がするんですが……環境は急速に変化しているし、今こそ再チェックして正当に認定を進めてほしいものです。
(そして今一度ちゃんとリスト化してほしい)

to-fu 23-04-17 (Mon) 11:11

> 狛さん
たしかRYO-JIさんは婆羅門杉をモノクロフィルムで撮られていたような…
一度聞いたら忘れない名前ですよね、バラモンスギ。名前がいかつすぎる。

この樹にかぎらず化け物系のスギの良さってスペック上の幹周から想像する姿を簡単に飛び越えてくれるところだと思います。
下手すると測定位置あたりがくびれていて、そこが幹では一番細い箇所だったりもしますし。

仰るように大昔の天然記念物指定は雑ですよね。だからこそ、がっかりスポットが生まれてしまうわけで。
こちらは幹周も樹高も目測とか口伝の類ではなく正確に測定されていそうで、この現代の精度で全国の巨樹を再チェックしたら
良くも悪くも面白いことになりそうです。こういうのをまとめ上げてデータベース化してほしいですねえ。(環境省さんよぉ…)

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