- 2019-01-19 (Sat) 22:16
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | シイ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 福井県
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
小浜市の名刹、神宮寺。以前からここにスダジイの巨樹が立っているということは知っており、実際にすぐ近くまで来たこともあるものの当時はシイだし次回でいいか…とスルーしてしまったのでした。しかし、しかしです。シイの巨樹の面白さに魅せられてしまった私は居ても立っても居られず、以前なら考えられませんが1本のスダジイのために片道2時間車を走らせて小浜まで赴いたのです。そうそう、懐かしい。そういえばここがα7RIIIの初陣なのでした。興奮のあまり車に三脚を忘れて、リュックを即席の三脚代わりにしてセルフショットを撮ったんだった。ということで個人的には結構思い入れのある巨樹でもあります。
さて。話は変わりますが、奈良県東大寺の修二会(しゅにえ)、「お水取り」をご存知でしょうか?近畿圏ではわりと名の知れた行事で、簡単に言ってしまえば遠く若狭の地から送られてきたお水を汲み取ってツボに入れるという…言葉にしてしまうとなんのこっちゃなイベントですが(春先の深夜に行われるこの行事は非常に神秘的なもので、それはもう多くの観光客が訪れます。)、この若狭の水というのが実はこの神宮寺から送られているものなんですね。
この神宮寺には「お水取り」ならぬ「お水送り」という神事がありまして、要は東大寺で「取る」ためのお水を若狭から奈良へ「送る」行事というわけです。写真の湧き水が神様のお水として崇められているもの。(実際この辺りの湧き水は名水百選にも選ばれているほどで非常に美味しいんですよ。)実は私、偉そうに語っておきながらこのお水送りという神事は存じ上げなかったのですが、調べてみると実に興味深いイベントなので、今年は見物に行ってみようと目論んでおります。
そんな神宮寺の本殿奥、この写真の左奥にスダジイの巨樹は立っていました。
これは…まず初見で感じたのは、どうしてこの巨樹を今までスルーしていたんだろうという後悔。今までWebで見たよりも…いえ、こんな画像では伝わりきらないと思います、あの感覚は。威圧的でもなく、恐れを感じるでもない。陰の気よりはむしろ神々しさに近いものを感じる巨樹でした。
とにかく目を惹くのはその根回りです。
スダジイ特有のウネウネと触手が蠢くような根に、びっしりと張り付いた苔が美しい。
少し寄ってみました。小さな案内板が立てかけられています。
市の指定天然記念物。とても立派なシイだと思うのですが、特に伝承の類は無いようです。由緒あるお寺さんなので、巨樹を伝説で飾り付けなくても特に困らないということなのかもしれません。巨樹好きとしてはちょっと残念と言いますか、神聖な若狭の聖水で育ったシイということで伝承を装飾してしまってもいいんじゃないか…そんな風にも思ってしまいます。
しつこいくらい根にクローズアップ。
本当に美しいんですよ。血管のような根のうねりも素晴らしい。よく見ると数本の真っ赤なキノコが生えていて、この真紅と緑との対比がまた美しかったです。見るからにヤバそうなキノコでしたが絵的には映えますね、これは。
螺旋状に突き上がる幹。どことなくカヤの巨樹を思わせます。これまた節々が綺麗に苔生していて、神聖な雰囲気を放っていました。
樹勢は旺盛。特に目立った欠損も見られず、火災や落雷の跡もない。
今後も一層成長を続けることでしょう。
しかしシイは本当に変幻自在ですよね。どの樹種にも言えることではありますが、シイは特に一本一本姿が違う。
周囲が開けているからなのか、実に姿勢の良いスダジイでした。
写真を撮ったら早く立ち去りたくなる類の「霊樹」とでも呼ぶべきタイプとは違って、側にいるのがとても心地良い巨樹。自分の他に参拝客がいなかったこともあって2時間近く境内をウロウロしてしまいました。スルーするなんて勿体ない。良い巨樹です。本当に。
2018/10/1訪問
「神宮寺のスダジイ」
小浜市指定天然記念物
樹齢 約500年
樹高 18m
幹周り 6.4m
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コメント:4
- 狛 19-01-22 (Tue) 19:42
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これはまた随分と立ち姿が凛々しい、高い幹を持つシイですね! こんなのもあるのか!
枝の先端まで入れた全高ということだったら、数値以上にもっと背が高いんじゃないかと思いますね。
全身苔むしつつ、ねじりながら高く伸びていく。そこから、すごく高い位置で、グワッと枝が放射され、これがまたスダジイならではのウネウネしいのた打ちようで。笑
周囲が開けていて、自由にしていいぞと言われたら、スダジイはこのようになるんでしょうかね。
……いや、例えそうだとしたって、1本1本違う形に育ってしまうだろう予感がするのがスダジイですね。
決して規則正しい並木なんかにはなってくれそうにない。
うーん、写真を見る限りでも、ディテールは豊富にあるし、大きさも感じるし、すごく満足させてくれそうです。
スダジイの暴れんばかりの個性を知ってしまった今、やはり僕も2時間走って見に行って見たくなる樹だと感じました。 - to-fu 19-01-23 (Wed) 17:11
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> 狛さん
凛々しい。ああ、その言葉はシックリ来ますね!
シイってずんぐりむっくりしたものが多いですが、確かにシュッとして凛々しいシイでした。
だけれども特有のウネウネ感はやっぱりシイだなっていう。
シイの巨樹って特に育成環境の違いがはっきりその身に現れる樹種ですよね。樹形を見てそこから巨樹の人生(樹生)を想像するのが巨樹巡りの醍醐味の一つですが、シイはそういった想像が膨らみやすい、人生が表情に現れやすい樹種だと思います。
しかしスダジイの並木ですか。それはそれで興味深いと言いますか、実際存在するなら見てみたいものですね。
どこかのおかしな自治体が話のタネにでもやってくれませんかねえ 笑 - RYO-JI 19-01-27 (Sun) 22:44
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修二会は春を告げる行事なのでもちろん県民の自分は見に行ったことあります。
しかし、このお水送りは知りませんでした。
いや、いいお話を聞けました、ありがとうございます。
そしてシイ、あの昨年の敦賀サミット時とは打って変わって、その印象が大きく変わって開眼されていますねぇ。
そのマイナスイメージを払拭するくらいのモノを何本も目の当たりにされていると思うと羨ましいの一言です。
苔々しい根元部分にも関わらず、そばにいたくなるシイって想像するだけでワクワクします。 - to-fu 19-01-29 (Tue) 21:29
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> RYO-JIさん
さすがRYO-JIさん!
僕は小さい頃に連れて行ってもらったきりなので、眠くてぼやーっとしか覚えてないんですよね。
お水送りは僕も知らなかったんですが、調べてみたら興味が湧いたので今年は覗いて来ようと思っています。
シイは良いですよ!はまります!
惜しむらくは良さそうなシイって大体が海の側に生えてるんですよね。
我々内陸の民からするとちょっとアクセスが悪いんですよねえ…
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