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三重県松阪市 青田の大カシ


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

昨日はこの「青田の大カシ」を含めた数本の巨樹を訪問してきたのですが、実のところこの巨樹に会いたいがために予定を組んだようなものでした。訪問した順序で言えば昨日3本目の巨樹ではあるものの、現地で感じたことが色褪せないうちにナマの感情を記事に書き上げてしてしまいたい。ということで、順番を無視してこの巨樹について書いてしまおうと思います。


前知識として仕入れてきた情報によると物静かな山奥の集落にある廃屋の裏手にアカガシの巨樹が立っているらしい。主を失ってからそう時間が経っていないであろう廃屋はシカの頭蓋骨が置いてあったりと、ちょっと不気味な雰囲気。来る途中にクマ出没注意の看板が立っていたことを思い出し、ああこれは野生動物の寝床にぴったりだろうな…なんて薄ら寒いことを考えてしまい、静かに、そして足早にここを通り過ぎることにします。


廃屋の裏手、急斜面の中腹辺りに明らかにそれと分かる巨樹が立っていました。スギの人工林の中で特異な存在、そのカシは妖樹とでも呼ぶべき不気味な存在感を放っています。ええ…あれに近付くのか。何だか嫌な感じがするな。


間近で見るとカシの存在感に圧倒されてしまいました。まるで嘆き苦しんでいるかのような樹皮。今にも洞から呻き声が聞こえてくるようです。これはたまらん…さっさと撮って撤退だな。なんて既に逃げ腰モード。だって仕方ないじゃないですか。本当に怖いんだもの。


しかし物凄い質感ですよね。これはカシにしか出せない迫力です。
どことなくシイのようでもあるんですが、シイよりもずっと硬質そうに見えます。流れ出したマグマが冷え固まったかのような質感。そして至近距離で見るこの洞が本当に恐ろしいんですよ。日頃の行いがあまりよろしくないからなのか、洞の一つ一つから小声でブツブツと呪詛でも聞こえてきそうな迫力。ひええ、すんません!すぐに帰って真面目に仕事します!なんて、つい懺悔してしまいそうになります。


裏側に回ってみました。こちらは幾分ホラー要素が薄まったように感じます。ゴツゴツした筋肉の筋のような樹皮を朝日が照らした陰影が美しい。そして青空に葉の緑が映えます。少し離れたところからじっと眺めているうちに自然と気持ちも落ち着きはじめ、このカシに対して先程までとは違った印象を持つようになりました。


この巨樹は実は一人ぼっちで寂しいのではないか。そう感じるのです。
主を失った廃屋に、旧くからの友を失ったカシの巨樹。かつての住人は恐らくここに何十年も住み続けていたのでしょう。あるいはこのカシがまだまだ子供のような大きさだった頃から代々続く、この植林地と共に生きる杣人の家系だったのかもしれません。主は毎朝眺めることになるカシを家族のように扱い、カシもまんざらでもないといった様子で家主を受け入れる。どのような理由でこの家屋が打ち捨てられてしまったのかは想像するより他ありませんが、話し相手を失ったカシが酷く寂しそうに見えてなりませんでした。


晴天かつ早朝という爽やかなシチュエーションがそう感じさせたのかもしれません。一部分樹皮が湿っている箇所を見つけましたが、これがもし雨の日だったら樹皮全体がこのような黒みと湿度を帯び、それは巨樹の持つダークなイメージを一層強調させることになるに違いなく、私は怯えたままこの場をそそくさと立ち去っていたのだと思います。


一度寂しそうだ、なんて感じてしまうと人間都合が良いもので、ちっとも怖くなくなってしまいました。そうか、お前は話し相手が欲しかったんだなあ。などとブツブツと巨樹に対して話しかけてみます。カシが寂しがっているだなんて自分の思い込みに過ぎず、全くの勘違いなのかもしれませんけれども。


正面の廃屋側から眺めると空洞化も目立って元気が無さそうに見えるのですが、枝振りが良く生き生きとした緑の葉も覆い茂り、樹勢はまだまだ良好なように感じられます。


実に立派な立ち姿。カシの巨樹というと大きさもそこそこで…という印象が先行するかもしれませんが、非常に見応えのある巨樹です。どのような印象を受けるかは天候や時間帯、見る人の精神状態などで大きく左右されそうな気がしますが…まあ少なくとも元気をもらえる!パワースポットだ!的なポジティブな巨樹ではないと思います。いえ、それは決して貶めているわけではなく。巨樹の魅力にも色々ありますから。


帰り際、振り返って最後のあいさつを。また来るよ、お元気で。そう呟いて次の目的地へと向かいます。廃屋も巨樹も、この短時間のうちに随分距離が縮まったように感じられました。まあ本当に単なる勘違いなのかもしれませんが。ただ、さっさと撮影を済ませてかえるつもりが結局ここに1時間強。思いの外に居心地が良く、随分と長居してしまいました。


見るものを圧倒する風格。
ええ。一見の価値アリ!な巨樹だと思います。


何だか実家から帰る瞬間のような寂しさを感じました 笑
うん、また来よう。次回はやっぱり雨の日、もしくは雨上がりの樹皮を見てみたい。今回とは違って瞬時に逃げ出したくなるような迫力なのかもしれませんが。色々な表情を見せてくれるのも巨樹の魅力、ということで。それはそれで楽しみです。

「青田の大カシ」
松阪市指定天然記念物
樹齢 不明
樹高 20m
幹周り 7.37m

コメント:4

19-03-17 (Sun) 11:48

大カシはその外見の第一印象によって近寄りがたいと思ってしまいがちですが、そこを踏み込んで、このような感想を持ち帰ることができるto-fuさんはスゴイ。
猟奇事件でも起きていそうな廃屋を抜けて、その上、この巨樹のビジュアル……。
しかも、7メートルを超えるだなんて、カシにあらざる巨大さですね。
カシが大きくなると、幹の密度や比重によるものなのか、他の樹種とはかなり違った印象を発するようになると感じます。
葉の茂りが青々として、これで健全なんだなあと興味深く思いますが、巨樹の大きく黒いウロというのは、なんとも恐ろしいもんですよね。
僕も前にケヤキの真っ暗なウロを覗き込もうとした時、何とも言えない悪寒に襲われて、背筋がゾクゾクしました。

老齢で無理になったのか、きっと住まわれていた時は、住人の方も自慢に思って巨樹を見守っていたのでしょうね。
そうでないと、こんなところにお宅を構えていられない……そこには巨樹守の生活があったんだろうなと察します。
その思念のかけらを拾おうとしてみると、何かしらカシは張り合いなく、寂しがっているかもしれません。

全国的に筆頭格とするべきカシの巨樹だろうと思います。
まあ、カシの巨樹自体、パワーもらうだなんだというような多くの方々におすすめできるものではないな、玄人好み(専用?)だなと……そこら辺は心に置いておいたほうが巨樹全体の印象にとってもいいんだろうな、と、それは変わらず思うのですけどね。

to-fu 19-03-17 (Sun) 20:21

> 狛さん
今回は天候と時間帯に救われた部分が大きいかなと思いますね。
ああ、季節もあるのかなあ。じとっとした梅雨の薄暗い夕暮れ時だったら…考えるだけでも怖くなっちゃいます。
帰ってから改めてRYO-JIさんのログを見返したら全くの別人(別樹?)でしたからね。
せっかくなので今回対峙したカシと雨上がりの大カシ、ジキルとハイド的な二面性を味わってみたいものです。

ただ、そうなんですよ。恐らく数十年…も経ってないだろうな、というくらい前までは、この場所でカシを見上げながら人間が生活していたはずなんですよね。平山さんではないですが当たり前に巨樹がある暮らし。巨樹も当然その方に対して親近感を感じていたと思うんです。木だって恐らくは何らかの意志を持って生きているに違いなく、隣人を失うというのはやはり寂しいんじゃないかと想像してしまいますね。絶対にまた会いに行ってきます。勝手に写真を撮って帰っていくオッサンなんて鬱陶しいだけかもしれませんけど 笑

アカガシも最大級のものは10mオーバーなんてのがいるみたいですが、やはりそこまで巨大なものは半死半生に見えます。カシの巨樹として見応えがある、良い巨樹だなと感じるのは5~7mくらいが目安になるように思いますね。本当にパワーをもらえるような巨樹ではないんですが、カシにはカシにしかない魅力がありますよね。あまり一人では訪問したくないものも多そうなので、サミットの際は積極的にルートに加えてみるのも良いかもしれません。

RYO-JI 19-03-17 (Sun) 22:09

早速の投稿ありがとうございます!
いや~、to-fuさん、よくあそこに一時間もいてましたね。
いまデータを確認したら、私なんて20分もいませんでしたよ。
あまりの怖さにとっとと撤収してました、ほんとお恥ずかしい・・・。
もちろん天候などによって見え方も違うとは思いますが、to-fuさんは最初の怖さを乗り越え、
対話することによってカシの本質を感じて帰ってこられたんだなぁと思いました。
それは凄いことですし、ちょっと羨ましくも感じましたね。
あれから2年以上経ち、私も経験を重ねて少しは見る目も養ってきたので、
再訪すればまた見え方が違って新しい発見があるのかなぁなんて想像します。
ただ、あの時の恐怖はまだしっかり覚えてて、足が向かないんですよ正直な話(汗)。

to-fu 19-03-18 (Mon) 10:12

> RYO-JIさん
RYO-JIさんが訪問されたときのあの漆黒のカシは…あれは恐ろしいですよ。
僕も初見であの姿を見てしまったらとても近付けなかったかもしれません。
しかもあそこ、万が一何か起きてもしばらく誰も気付きませんよねえ…

今度はぜひともカラッと晴れた日に再訪してみて下さい。
僕は逆にあのヤバそうなカシと会ってみたいと思います。
ただこれからの時期はクマさんも出てきますし、あのエリアは野生動物的な意味でもちょっと怖いですね。
梅雨の時期にはヤマビルも出て。あああ、僕はそっちの恐怖の方が苦手かもしれません 笑

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