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岐阜県揖斐郡揖斐川町 伊野一本スギ (2018/9/4 台風による強風で倒壊)


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

あの国指定特別天然記念物「石徹白のスギ」をはじめスギのレジェンドひしめく岐阜県。
岐阜県内の未訪問の巨樹の中でも特に気になっていたのがこの巨樹です。岐阜県指定天然記念物「伊野一本スギ」。その威風堂々たる立ち姿をこの目で是非見てみたいと思いながらも、県内の他の巨樹と絡めて回ろうと考えるとエリア的にちょっと浮いちゃうんですよね、このスギは。ところが幸運なことに、この伊野一本スギが生えているのは淡墨桜へ至るルート上だったわけです。これはもう行くしかないでしょう。満を持して向かった先は…どうも様子がおかしいぞ。


先にタイトルを見てしまった方は出落ちになってしまって申し訳ありません。
そう。なんと倒壊しているではありませんか!

これにはもう言葉を失いましたよ。え?え?って。


田園地帯にそびえ立つ森のような、そして優しい巨人のようなスギ。
そんなイメージを膨らませながらやってきたわけですが、まさかこのような結末を迎えようとは。


裏手にあるデイサービスセンターには細かく切断されたスギの大枝が無残に横たわっていました。(余談ですが、先輩方のログでは営業していたこのデイサービスセンターも廃業してしまった模様です。)あああ、マジかよ。ウソだろ…そんな独り言をつぶやきながら周囲を散策します。いえ、呆然としてしまって、散策するくらいしか出来なかったように思います。目の前の光景を受け入れてスギと対話する、三脚を構える、そういうことにはしばらく意識が向きませんでした。


この光景…言葉を失いませんか?
是非とも「伊野一本スギ」で検索をかけ、倒壊してしまう前の雄姿を見ていただきたいと思います。
本当に立派なスギなんですよ…


これはただでは帰れん!ということで農作業されている方にお話を伺ったところ、先日紹介した「淡墨桜」同様(同様と言うと語弊がありますが。淡墨桜は枝が折損しただけです。)に昨年9月の台風21号で倒れてしまったのだそうです。数百年、あるいは千年以上生きてきた生命を無情にも一瞬で奪い去っていった巨大台風。自然災害の恐ろしさを改めて痛感すると共に、明日会おう、来年会おうなんて曖昧なことばかり考えている自分の浅はかさにうんざりしてしまいます。この巨樹に限った話でもないし、もっと言えば巨樹に限った話ではありませんけどね。オッサンになってから日々感じていることではありますが、やりたいことは即やっておけ!後のことはやってから考えればよろし!の精神が大事。巨樹どころか自分だっていつ死ぬか分かったものじゃないんだから。”明日やろうは馬鹿野郎”、ですわ。


本当に立派な幹です。既に倒壊して半年以上経過しているので随分と水を吸ってしまったように見えましたが、木材として何とか有効に使うことは出来ないんでしょうかね。倒れてしまったものはどうしようもありませんが、このまま朽ちさせてしまうのは勿体なさすぎるように思えます。


スギの倒壊でフェンスがなぎ倒されていたので、そちらからスギの根本に回ることが出来ました。倒壊していたことは残念極まりないですが、こうしてまだ生きているうちに会うことが出来て本当に良かった。そう、まだ生きてますからね、このスギは。このまま頑張って生き続けてほしい。そう願います。


もっと早く出会いたかった。けれど、今会えて本当に良かった。
福井県小浜市の「小浜神社の九本ダモ」に会ったときにも感じたことですが、倒壊しようが枯れようが、生命感とは関係なくオーラを放ち続ける巨樹っているんです。この伊野一本スギもあの九本ダモと同じ、また会いに来たいと強く感じさせる巨樹でした。


お隣の喫茶 一本杉さんも頑張ってください。


桜の時期に有名な桜の巨樹を見に行こう!だなんて、僕は元々そういう人間ではないんです。
ひょっとするとこのスギに呼ばれてたんじゃないか…なんて、ちょっと都合が良すぎますかね。

本当はこの巨樹の前に立ち寄った巨樹があるので、順序からいえばそちらを先に紹介すべきところですが、倒壊しているという情報を少しでも多くこのWebの海に放つべきだろうと考え、こちらの記事をまとめました。確かに倒壊してしまいましたが、行って後悔するとかそんなことは全くありません。むしろ今だからこそ行くべきだ、と僕はそう思います。

「伊野一本スギ」 2018/9/4 台風21号の強風により倒壊
岐阜県指定天然記念物
樹齢 伝承1,000年以上
樹高 35m(倒壊後は目測20m前後)
幹周り 8.8m

コメント:10

RYO-JI 19-04-08 (Mon) 22:21

ここまで酷く倒壊しているのに、まだ生き続けているって・・・。
改めて樹の生命力に驚かされます。
このスギに限らず周囲に何もない環境では、台風や落雷の影響が一番怖いですね。
それでも1000年もの間無事だったのに、何故いまこんな大きな被害にあってしまうのか?
ほんと残念でなりませんが、まだ見られることに感謝もしないといけませんね。
いや、でもやっぱあの21号め、いったい何本の貴重な巨樹に被害を与えたのか!
けしからんですね。
倒壊前の姿は見事としか言えない堂々たる一本杉で、もちろんいつかは絶対行くリストに入れてました。
見る影もない姿に驚愕しましたが、倒壊後の姿もこの目に焼き付けたいと思います。

19-04-09 (Tue) 0:01

壮絶なありさまですね。まるで震災の現場を見たかのようです。
とても一本の木が倒れただけのようには見えず、この光景だけでも訴えてくるものがすごくあります。
そう……いつ見たって同じだろ? なんて、そんなことは絶対にあり得ないんですよね。
樹だって、毎日同じように生きているわけじゃないんだろうなと思ってしまいます。
いつか必ず終わりが来る、それが明日かもしれない。
1000年生きる樹の最後の姿を見てしまう不幸、それを実際体験してしまうことがある……。
ほんとに、これが自分の生に照らし合わせるべき教訓でなくて何だろうと思います。

この杉を調べてみましたが、別種の着生樹が大きくなっていたとあるので、幹が傷んでいたのかもしれませんね。
しかし、to-fuさんの写真で、この着生者もヘシ折れてるのが見えるので、やはり台風が凶暴過ぎたのだなと。
杉が倒れた際に電柱を巻き込んで倒したとも書いてありました。恐ろしい嵐だったのですね……。
それにしても……いやー、to-fuさん、呼ばれたんじゃないですか?
この樹もそうだし、薄墨桜にしたって、そうかもしれません。

to-fu 19-04-10 (Wed) 16:56

> RYO-JIさん
支幹はしっかり生きてるんですよね。
倒れてしまった枝にしてもまだ青々としている箇所も残っていたので、とても半年以上前に倒れたようには見えませんでした。
それにしても、あの昨年の台風は本当にとてつもなかったですよね。まさに地獄の蓋が開いたかのような。
人生であんな光景を見たのは初めてのことです。数百年に一度クラスの災害だったのではないでしょうか。
数百年生き続けている巨樹がこうも簡単になぎ倒されてしまうのを見ていると、地球も一つの生命であって、大地はきっと怒ってるんだろうな、と考えざるを得ませんね…

倒れてはしまいましたが、色々と感じる、考えさせられる巨樹でした。
訪問して損はないと思いますよ。

to-fu 19-04-10 (Wed) 17:08

> 狛さん
身近な人に不幸があった際にも強く感じることですが、当たり前に毎日が続くと思ってはいけませんね。
あの巨樹大丈夫かなあ…と思う巨樹、そちらで言えばあの「府馬の大クス」のような巨樹であれば災害の後は優先的に
回ってみたりもするのですが、まさかこの一本スギのような巨樹が台風で倒壊してしまうなんて考えもしませんでした。
巨樹の生、そして我々人間の生。生きるということについて色々と考えさせられましたね。

仰るように着生植物がクサビのようになって幹を痛めていた面はありそうですね。
あと、このスギの場合は全方位にわさーっと、それこそ森のように枝葉を広げていたので表面積が大きく、
強風の影響を受けやすい形状をしていたのも不幸の一因だったように感じます。
停電で大変だったそうですが、裏手のデイサービスや民家に倒れ込んだりして人的被害が出なかったことだけが幸いです。

これって呼ばれてたんじゃね?と思うときってありますよね。狛さんも最近ブログに書かれていましたが。
昨年末に「石徹白のスギ」を訪問した際の例の地元の方の話もそうですが、本当に呼ばれていたとしか思えないようなことがままあります。勘違いの可能性大ですが(笑)、もし呼んでくれていたのだとすると本当に有難いことですよね。

MK 21-12-01 (Wed) 16:29

大変遅くにすみません。
こちらの記事を何度も見させて頂いていましたが、コメントすることができませんでした。
以前来ていますので、健在だった頃の一本杉の雄姿が目に焼き付いています。
こんな姿になってしまって・・・(T_T)
実は過去にこの辺りを治めていた家系の者です。
横にある新宮神社は以前は我が家の姓が付いていて〇〇社(やしろ)と言っていました。
元々は兵庫県(播磨?赤穂?)の出身だと思うのですが、1000年前に後醍醐天皇に付き従いこの地にやってきました。
明治か大正の頃(夫の祖父か曽祖父)まではこの岐礼に居たようです。
1000年もの間見守っていてくれた一本杉、夫が生きていましたら泣いたでしょうね。
写真を見せて頂きまして、ありがとうございます。

to-fu 21-12-02 (Thu) 9:16

> MKさま
はじめまして。伊野一本スギ、そして地域にご縁のある方からコメントをいただけるとは光栄です。
新宮神社は手入れの行き届いた美しい神社でした。今でも地元の方に大切に想われているのが伝わってきましたよ。
初見の私ですら本当にショックな光景だったので、以前の姿をよく知る方からすると唖然としてしまうでしょうね…
写真を見る限りでは倒壊するなんて想像もできない立派な立ち姿でしたから、改めて自然災害の凄まじさを痛感させられます。
神社の社を巻き添えに壊すこともなくたった一人で倒壊した様は、まさに地域の守り神でした。

かつての一本スギを知る方に現状をお伝えできただけで、この記事を書いた甲斐がありました。
何となく「早く自分のことを報せてくれ!」と言われたような、長く生きた樹木にはそんな不思議なパワーがあるように感じます。

yoji.koyama 23-06-09 (Fri) 19:38

この巨木がまさか倒木するとは思いもしませんでした。
倒れる年に訪問して最後の元気な姿を収めることができました。
モミジ・ネム・杉の合体木は凛々しくそして優しい名木と呼べる巨木。
春には梅が咲きなんとも穏やかな空気といい香りが漂うそんな場所が無くなったのは惜しすぎます。
またお時間ある時にでも写真見てやってください。

to-fu 23-06-09 (Fri) 23:01

> 小山さん
私も先日お会いした後、改めて小山さんの伊野一本スギの記事を拝読していました。
実に堂々とした地域の誇りというべき立ち姿で、まさかこのようなことになろうとは。想像すらできません。

小山さんも私もこのスギに呼ばれていたのかもしれませんね。
いえ、それなら私ももう少し早く呼んでもらいたかったというのが正直なところですが 笑
それでも倒壊後まだ間もない時期にこの大杉と出会えたことには何か意味があったのではないかと感じずにいられません。

yoji.koyama 23-06-10 (Sat) 9:00

すでに拝見していただいていましたか、ありがとうございます。
倒木直前に伺った巨木が多くたまたまとは思えない同じように呼ばれたと感じています。
大湫神明神社の大杉は倒れた直後に伺い、なぜもっと早くこれなかったのか?と悔しい思いをしました。
ただ大湫神明神社の大杉の倒れてからの記事には多くの反響がありました。
伝えていくというのには意味があったのだと思います。
巨木訪問、そしてHP投稿、すべてのスピードを加速させたいものです。

to-fu 23-06-10 (Sat) 18:13

> 小山さん
本当にこの数年だけでも倒壊、枝の折損をどれだけ見てきたことか。
数百年、あるいは千年以上生きた命もいざ散る際は本当に一瞬ですね…
今会えるなら会っておくべき、いつか会おうなんて考え方ではダメだ。そう思い知らされました。

大湫神明神社の大杉はまさか私が生きているうちに倒壊するなんて思いもしませんでしたよ。
人的被害を出さずに倒れてくれたのが、まるで大杉の最期の意地だったように感じました。
元気だった頃の姿、倒壊してしまった後の姿。樹木も人間も同じで、写真に残すことには大きな意味があると思います。

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