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徳島県板野郡上板町 鳥屋の大クス


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

「岡の宮の大クス」を堪能し、次なる目的地である「鳥屋の大クス」へ。余談ですがこの辺りのエリアには巨樹が密集していて、車を10~20分走らせる毎に幹周10mクラスのものがゴロゴロしています。まさに巨樹好きには堪らない巨樹王国、徳島。山間部だけでなく平野部だって退屈させません。さて、ナビに従って絶対もっとまともなルートがあるんだろうな…とボヤきたくなるような農道を邁進していると、それらしいクスノキが見えてきました。


おおお…これまた徳島に上陸してから見てきた、どのクスノキとも違うタイプの巨樹だ。強いて言うなら「矢上の大クス」とタイプ的には近いかもしれませんが、あちらで感じたような痛々しさは一切感じられません。幹は腐朽し大きく空洞化してしまっていますが、そこからは不思議と悲壮感が感じられず、どこか朗らかで生き生きとした印象を受けました。障害を負ってしまったけれどそんなことお構いなしに、前向きにスポーツを楽しんでいる人のような。そんな逞しさが感じられます。


徳島県指定天然記念物「鳥屋の大クス」。先日「矢上の大クス」を紹介した際にも少し書きましたが、明治初期までは矢上の大クスと共に距離測定の目安として利用されていたそうです。誰々のお手植えだとか地面に杖を挿したらクスノキが…などといった由来は特に存在しませんが、かつてはこの一帯が椿神社の境内で、その社叢木として残る唯一のクスノキだということ。これだけ立派なクスですから切り倒してしまうなんて忍びない、と難を逃れたのでしょう。


実はここを訪れた際が雨風共に最も強まっていたタイミングでして…まあそれが分からないように私も頑張って撮影したわけですが、葉っぱの横殴り具合から何となく察してやって下さい。周囲をチェーンで囲まれていますが一部開放して洞に入ることができるようになっており、向かいで酪農を営まれている方に一言断った上で、しばらく雨宿りさせていただきました。うん、大人3人くらいなら雨宿り出来るんじゃないですかねえ。洞に入ってみると内部が全面焦げて炭化しているのが分かります。こちらも詳しい原因は分かりませんでしたが、よくある話としては洞に住み着いた獣を追い出そうと火を近付けたら燃え移ってしまっただとか、子供の火遊びだとか、その辺を聞きますね。


洞の中に入ってみて毎回感じることなんですけど、全身を巨樹に包まれると何とも表現し難い不思議な感覚になります。飲み込まれてしまったような怖さも感じるし、抱きかかえられているかのような暖かさも感じる。いえ、本当に上手く表現できないんですが、あれはなかなか悪くない感覚だと思うのです。


背面に回ってみました。椿神社の名残に小さなお堂があるのと、背面から見ると実は結構健康的、あまりダメージがあるようには見えません。根本のペットボトルは周囲のお花に水をまくためのものでしょうか。いやいや、こうして遠くからやって来た一見客が巨樹の魅力だけを享受しては偉そうにWeb上でアレコレ論じているわけですが、こうして人里の巨樹を堪能できるのはご近所の方の尽力あってのものだということを忘れてはいけませんね。これだけの巨樹ですから落ち葉の掃除だって大変だろうし、自分にとって何の得にもならないのにわざわざ周囲に花を植えて飾り付けたりもしてくれている。感謝の気持ちだけは忘れないようにしたいものです。


いやホント、こちら側は健康そのもの。
背面の麓から見上げた様はそこらの健康なクスノキと何ら変わりがありません。


健康な姿もいいけれど、やはり魅力を感じる、惹きつけられるのはこちらの空洞化した表情のクスノキなのかなと。推定700年という時を生きてきたわけですから、そりゃあ何事もなく平穏に…とはいかなかったはず。苦労や喜び、様々な想いが刻み込まれたこの表情は文句無しに決まってますわ。


悪天候のためあまり細部までじっくりと観察することができませんでしたが、幹のいたるところに野鳥が住み着いていそうな空洞が見られました。きっと青空の下で眺めたなら、もっと優しく温かい表情で迎えてくれるんだろうな…なんて想像が膨らみます。


周囲には酪農や農業の資材が所狭しと置かれていて、本当に私のような観光客の来訪は邪魔だと思うんですよ。道だってギリギリ車1台通れるようなものですから。それでもクスを無碍に扱うことなく、大切に守り続けて下さっている。人々の生活に密着するクスノキというのがどこか大阪的な感じもして、何だか親近感の湧くタイプの巨樹でした。これからも人と巨樹が仲良く暮らしていってほしい。自然とそう願ってしまうようなクスノキです。

2019/5/20訪問
「鳥屋の大クス」
徳島県指定天然記念物
樹齢 推定700年以上
樹高 約25m
幹周り 11.6m

コメント:4

19-06-11 (Tue) 21:40

プライベートがアレで、コメントが遅くなり、申し訳ありません!
「鳥屋の大クス」、to-fuさんの話で聞いて、最終日に自分も寄ってみようかと思った樹ですが、これ、サイトや書籍の写真からは魅力が感じ取りにくいクスですね。
いや、徳島に魅力的な樹が多すぎるのがいけないんですが、自分は後回しにしてしまいました。
で、to-fuさんのアップを楽しみにしていたわけですが、幹の空洞の中で雨宿りをした……なんて、いい思い出をくれる樹ですね。
幹ばかりをクローズアップすると痛々しい見た目に見えますが、こうして全身像を見ると、こういう樹なんだなと把握することができます。
中の部分が死んでいるのが樹木の常であって、その部分を捨てて周りだけで行きて行く……というところに長寿のリアルを感じます。第二段階というか。
自分も、九州で大クスの洞に入ったりしまして、書かれている感じはよくわかります。
すごいなあ、と感動するんですが、ある時いきなり怖くなりだしたりするんですよね、食われそうで笑。
この後何度も書くと思いますが、徳島、いいですね。もう一度行きたいです。

RYO-JI 19-06-12 (Wed) 18:06

おっと、見逃していました(汗)。
人間の生活環境の中にとけこんでいるクスノキですね、これ。
そうそう大阪にあるタイプの親しみやすいやつ。
それでもこの大きな洞は物凄く特徴的ですね。
クスノキにしてみればもちろんこんなものが無い方がいいに決まっていますが、
見る側の勝手な意見としては、魅力的に映ってしまうんですよねぇ。
まぁそれもそれ以外はいたって健康そうで悲壮感がないから言えることですが。
車ですぐのところにこのクラスの巨樹がゴロゴロしている徳島はほんと驚きです。
効率良く回れるので日帰りできるなぁと考えてしまうのが怖いです(笑)。

to-fu 19-06-13 (Thu) 13:05

> 狛さん
例のクスノキ以降更新がなかったので、お仕事が忙しいのだろうと思っていました。
こうして楽しめるのもコツコツと日銭を稼いでこそのことですから、頑張るときは頑張らないと!ですね。

徳島は健康的で見栄えの良いクスが多いので、この巨樹は優先度で言うとちょっと後回しになってしまいますね。
私は美馬への進行ルート上だったことと、すぐ側に国天のイチョウの巨樹があったことが訪問の決め手になりました。
実際に行ってみたらむしろ主役に考えていたイチョウよりずっと良い巨樹でしたよ。次回は狛さんもぜひ。

洞の中は本当に、自分の精神状態次第で「陰」にも「陽」にもなり得そうです。
人が入れるほど大きな洞がある巨樹は触れられるほど近付けないものが多いので、アクセスが容易な
街中にありながら洞の中まで観察できるこのクスノキは、そういう意味でも貴重な存在かもしれません。

to-fu 19-06-13 (Thu) 13:18

> RYO-JIさん
すみません…アホみたいにポコポコ更新していたもので。
徳島は本当にアクセスしやすい巨樹が揃ってますよねえ。地図を見ながらルートを計画していても
ほとんど等間隔で巨樹が見つかるので計画しているだけでもついニヤニヤしてしまいます。

このクスノキは大阪南部にいてそうな、我々からするととても受け入れやすい巨樹でした。
敬意を払われながらも、でもどうぞ触っていって下さい!というのはまさに大阪的なノリを感じます。

健康でいてほしいと願いながらも退廃的なものにはどうしても抗いがたい魅力を感じますね。
巨樹を意識して見ていない頃は建造物のような無機物と同じようなものとして見ていたような気がしますが、
こうしてじっくり向き合うようになると改めて我々と同じ一つの生命体なんだと実感するようになりました。
一度きりの人生をまっとうする様には、やはり人の心を引きつける力があるんでしょうね。

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