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徳島県三好郡東みよし町 加茂の大クス


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

季節ものであるイチョウの訪問記を優先して書かねば、などと考えていたらすっかり四国巨樹めぐりの更新が滞ってしまいました。いえ、正直に言いましょう。自分ごときにあのとてつもないスケール、魅力のうち僅か1%でも伝えることが出来るのだろうか…そんな不安もあり、この巨樹について書くことが怖かったのです。天然記念物の最上位、国の特別天然記念物に指定されたクスノキ「加茂の大クス」。我々の今回の二大目的地の一つでもあります。


この巨樹の凄さはもう言葉でどうこう言っても仕方ないと思うんです。いえ、凄まじく大きいですよ?見てのとおり超巨大。麓に停まっている車がまるでトミカか何かのようですからね。そんなことは私だって様々な書籍やWebサイトで多くの写真を見てきたので、充分に分かっているつもりでした。でもこれはデカすぎる。馬鹿デカい。実物の迫力といったら今まで見てきた写真から想定するモノを遥かに上回るものでした。言葉が出てこない。


まず対峙した瞬間に誰もが観念することになるのではあるまいか。ああ、ダメだこれ、撮れないわ、と。
とはいえ当然撮るには撮るわけですが、流石にこれだけの存在感となると全景をバーンと撮って以上!としかやりようがありません。いつものようにここの幹がどうした、温かい巨樹だから云々…そんなこともうどうでもいいですよねえ 笑


とにかく解説でも読んで一度頭をクールダウンすることにしましょう。枝張り東西46mということですがこれでも昭和の時代に落雷や強風で大枝を失っており、最盛期には南北70mもの樹冠を誇っていたそうです。なお幹周13mとの記載がありますがこれは1988年時点の13.8mというもの。2007年に改めて測定したところ16.72mと、20年の間に3mもの成長を遂げていたことが判明しています。樹冠も現在は70mとまでは行かないまでも、随分と回復しているのではないでしょうか。かつては樹勢が衰えつつあったということですが現在はクスの大物に見られがちな空洞化も見られず、回復傾向どころか健康にしか見えない姿で佇んでいます。


根本にはお狐様が。かつてここは若宮神社だったそうなので、若宮稲荷神社の名残かもしれません。しかし傷みも見られずスッと直立するこの美しい幹よ。これは私感ですが、現時点で軽く幹周18mは超えているのでは?と感じられました。流石に国の特天が相手ともなるとあの「桑平堂の大スギ」のように我々が勝手に測定してしまうわけにもいきませんが、是非とも専門の方に再測定をお願いしたいところです。


すっと伸びた単幹の主幹から綺麗に全方位に枝分かれしています。大きさもさることながら、ここまで美しい樹形を誇るクスノキは全国でもそう見られるものではないはずです。木陰に差し込む日差し、クスの葉がかさかさと風にそよぐ音、そしてふわっと香るクスノキの花の匂い。居心地の良い巨樹というといくらか他にも思い浮かびますが、この大クスの心地良さはその中でも最上級と言えるでしょう。


そう、常緑広葉樹ということで葉の茂った姿を通年楽しめるクスですが、ちょうど訪問時期が5月中旬ということで花を咲かせていたのでした。周囲が開けた公園になっていることもあり本当に静かで、どこか非現実的な雰囲気すら感じられる空間。あの心地良さは生涯忘れることが無いだろうと思いますね。(もちろん自分が生きている間にまだまだ再訪するつもりですけど。)


我々三人が三人、カメラを持っているしとりあえず撮っとくか、みたいに半ば心ここにあらず的な感覚でシャッターを切っていたのではないでしょうか。これだけの存在感ですからファインダー越しに向き合うのが勿体なく思えてしまうんです。写真撮ってる場合か?この光景を、空気を、脳にそして全身に焼き付けろ!みたいな。それでもシャッターを押し続けるのはまあ我々の悲しいサガです。


クスのこんな間近を地元の方の車が走り抜けていきます。国の特天ですからもっと厳重に、断固として人や車を近寄らせまいと隔離されている姿を想像していたので少し意外でした。極端に神聖視するのではなく、あくまで地元の守り神的な身近なものとして存在しているのでしょう。この道を抜けて毎日通学する学生とか実に羨ましいなあ。テストの点が悪かったり彼女にフラれたりしたら、きっとここのベンチに腰掛けて涙流してから家に帰ったりするんでしょう。青春ですねえ(全て妄想)。


支柱に支えられてはいますが本当に健康的な姿です。支柱も本当に最低限という感じで痛々しさは感じられません。


支柱を飲み込みつつある枝。


何かお祭りの準備でもされてるのかな?と声をかけてみたのですが、お祭りではなく月に一度の清掃の日なのだそうで。広場で地元の小さなお祭りとか盆踊りくらいは普通にやってますよ、とのこと。ここで盆踊りかあ…めちゃくちゃ雰囲気良いでしょうねえ。


この日の晩に「特天にハズレ無し」なんて会話をしたものですが、本当に遠方からこのクスに会うためだけにやってきたとしても後悔のない巨樹です。巨樹に興味がない方でも流石にこれは感動してしまうはず。写真ではあのサイズ感が絶対に上手く伝わらないんだろうなあ…だって訪問前の自分もそうだったから。無念だ。


徳島県…印象に残っている巨樹は他にもたくさんありますが、それでも出来ることならこの巨樹の側だけで一日過ごすような、そんな贅沢な時間の過ごし方をしてみたいものです。それこそ写真にしたって単焦点を何本も持っていってレンズを交換しながら、一日かけてひたすら大クスと向き合ってみたいですね。それでもどうにもなる気がしませんが 笑 まさに国宝級のクスノキ!!

※2020/11/15 再訪しました。

2019/5/21訪問
国指定特別天然記念物・新日本名木100選
「加茂の大クス」
樹齢 約1,000年
樹高 26m
幹周り 16.72m

徳島県三好郡東みよし町加茂1482番地

コメント:4

19-12-13 (Fri) 9:07

ほんと、この樹が自国に存在することを日本人として誇りに思います。何度見ても素晴らしいですね。
このスペクタクル。カメラの性能も進歩したし、10年前よりはるかに多くのディテールが捉えられるようになった……とは言え、この樹のこの存在感の凄さは、余すところの方がはるかに大きい。収まりませんね。
例えばここで生まれてこの樹しか知らずに育ったとしたら、外社会へ出て他の木々を目の当たりにしたとき、どう感じるんだろう。それもちょっと怖い想像。
写真に費やしたにせよ、写真を撮らずに心を傾けようとも、どちらにせよもう一度行ってみたくなったに違いありません。

群盲象を評すとか言いますが、本当にこうだったか? そんなもんだったか? と、絶えず自分自身疑ってしまうとともに、このただただ圧倒される快感は何度でも味わいたいものです。
この時期は思い返してみても最高に気持ちよかったですしね。次は僕も、もっと長い時間をこの樹と過ごしたいと思います。
まさに巨樹の中の巨樹。すごいなあ。

to-fu 19-12-13 (Fri) 20:10

> 狛さん
全くもって同感です!このクスは国の誇りと言ってしまっても過言ではありませんよ。素晴らしい巨樹です。
カメラの性能には日頃随分と助けられていますが、大クスの存在感とあの場のそよ風や香りを含めた全体の空気を写真で伝えられるように
なるには、あと100年は技術の進歩が必要かもしれません。それにプラスして撮り手のスキルにも100年分の精進が必要でしょうねえ…
何にしても撮り甲斐のある相手です。石徹白の大杉なんかにも言えますが、一生かけて向き合うだけの価値がありますね。

本当に帰ってきてから何度も写真を見返していますが、後になってみるとこんなもんじゃないだの、あの機材も持っていくべきだっただのと後悔ばかりが募ります。ああ、最大の後悔はあれだ。あの地でこそコーヒーを淹れるべきでしたね。次回はまず何よりもあそこでコーヒーを飲みましょう 笑

RYO-JI 19-12-13 (Fri) 21:46

石徹白と並び、年に一度は見に行きたくなる巨樹ですね、これは。
それぞれまったくタイプの違う特天ですが、どっちも心を離さないというかなんにしてもスゴイ(笑)。
自分が持つ語彙力や写真では魅力を表現できないのがもどかしいと思える存在です。
いや、そもそもそれこそがおこがましい考えなのかもしれませんね。
とにかくずっと見ていたいし、ずっとそこに留まりたいという思いが強かったなぁと。
実際に目にしてそのサイズに驚きましたが、半年経った今見てもきっとまた驚くでしょうね。

日本の宝というのは本当に大袈裟じゃなく、もっとわかりやすくアピールした方がいいと思いますよね。
天然記念物という名称は誰もが聞いたことがあると思いますが、特別天然記念物という名称を知っている人は少ないのかと。
恥ずかしながら自分も巨樹に興味を持つまでは全然知りませんでした。
世界遺産・・・とかみたいにもっとわかりやすく『スゲー』と思えるような呼称を作ってもいいのかなぁと思います。

to-fu 19-12-14 (Sat) 19:27

> RYO-JIさん
年に一度、通いたいですねー。贅沢を言えば同じルートを回りたいし新規の巨樹だって回ってみたい。
でもこの記事を書いていて、むしろ加茂の大クスと杉の大杉だけに各1日割いてのんびり過ごすというのも素晴らしい体験に
なるのではないかなと思いました。たまにしか行けないのでどうしても駆け足になりますが、そこを敢えてスローに過ごしてみるという。

仰るように特別天然記念物というのはどうもしっくり来ませんね。凄いんだろうけどイマイチ分からん、みたいな。
特天といったら京都のオオサンショウウオも特天なんですが、普通に京都水族館に行けば会えるという 笑
同じ特天でもうーん…と思うものもあったりしますし、そろそろ見直してもいいんじゃないかと思いますね。
まあオオサンショウウオも凄い生物ですけど、それでも加茂の大クスや石徹白の大杉と同列に扱われるとちょっとなあ…と思っちゃいますよ。

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