Home > LEICA Q | SIGMA 85mm F1.4 DG DN Art | クスノキ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 徳島県 > 【再訪】徳島県三好郡東みよし町 加茂の大クス

【再訪】徳島県三好郡東みよし町 加茂の大クス


LEICA Q
SIGMA fp / SIGMA 85mm F1.4 DG DN Art

今回最大の目的地は香川県の「志々島の大楠」。とはいえせっかく四国に上陸するのなら、立ち寄っておきたい巨樹がいくつもある。昨年初めて訪問したこの国宝クラスの天然記念物、国の特別天然記念物に指定される「加茂の大クス」はその筆頭と言えます。最短ルートではなくなるけれど少しだけルートを弄れば立ち寄ることが出来る。それなら寄らないわけにはいかないでしょう。

記憶の中の立ち姿と寸分違わぬその巨躯が視界に入った瞬間、興奮を抑えきれずカメラを抱えて駆け寄ってしまいました。なお、あまりに強烈な日差しが降り注いでいたため逆光で潰れたシャドウを無理やり持ち上げたりと色味がおかしくなっていますが、それもまたライヴ感…ということでご理解下さい。


そうだよ。この姿だ。記事にまとめておきながら早々に匙を投げてしまいますが、このスケール感、周囲に高い建造物がない故の開放感だけは絶対に現地に立たないことには分からないと思います。実際私もそうでしたから。


今回密かに企んでいたのが、この大クス相手に中望遠単焦点レンズ、つまりはこの85mmレンズ一本だけで立ち向かってみようと。周囲が開けていて充分な距離を置くことが出来るこの場所ならそれも可能ではないかと思っていたのです。ええ、撮影開始早々にこれは無理だと悟りました。たしかに距離はとれる。が、デカい。コレはあまりにもデカすぎる。


少し離れた中華料理店の駐車場から何とか全景だけは収めることができました。周辺の家屋と比較するとその凄まじいまでの大きさが理解できるのではないでしょうか。よく巨樹を撮影する際に隣に立ち、サイズ比較用のタバコの箱が如くヒューマンスケールとなったりしていますが、この巨樹に対してはそんなもの無力でありましょう。想像してみて下さい。この麓に人間なんて立っていても余計に訳が分からなくなるのが関の山。ヒューマンスケールどころかハウススケールで何とか、といった具合です。


順光気味に撮ると色味も何とか…なのですが、やはり駐車場側(影になっている側)からの姿が最も美しいように感じます。紅葉シーズン真っ盛りの行楽日和。実際ここまでの道のりもそれなりに渋滞していて、見物客が大勢来ていたら嫌だなあなんて考えていたのですが完全に杞憂に終わりました。え?何でみんなスルーなん?と逆に不思議でなりません。撮影しているとご近所の方がぽけーっとクスを眺めに来られましたが、これが何とも贅沢な光景に映りましたね。目の前にこれだけの巨樹がある暮らしというのは一体どんなものなんだろう。羨ましくて仕方がありません。


こちらのおばあさんもクスを一周しながら何度も何度も頭を下げて拝み、少し樹冠を見上げ一息ついて休憩されていました。きっと毎日の散歩コースなのでしょう。こういう光景を見ていると本当に気持ちがいい。大阪の「薫蓋樟」を眺めていても全く同じ光景が見られましたが、こういう神様と呼ぶにはあまりにも身近な感じがするのはクスノキならではなのかもしれません。


国の特別天然記念物のすぐ隣を車で抜けることが出来る。冷静に考えるとちょっととんでもないことです。本当にいいのかよ、と。しかしこれがいい。過度に崇められることがない、だからといって決して無下に扱われているわけではない。これが地域の方と大クスとの距離感なのだと。今では流石に怒られてしまいそうですが、きっと数十年前までは普通に近所の子供達が木登りして遊んでいたのでしょう。落ちた枝を振り回してチャンバラごっこしたり。そんな光景が容易に浮かんできます。今このクスを拝みに来る方たちはきっとそうやってクスに育ててもらったんだろうなあ。


おばあさんを真似て麓から樹冠を眺めてみる。差し込む日差し、風で葉が擦れる音が実に心地良い。ああ、離れたくない。なんて気持ちのいい空間なんだろう。写真なんかどうでもよくない?そんな気持ちになるのも前回と同様。


ここまで巨大で老齢なクスとは思えない葉付きの良さ。樹形も本当に美しく、どこをとっても特天に相応しい巨樹です。


それにしてもこの幹周を測定してみたい…絶対18m強はあると思うんですけどねえ。


奥に見える看板が先ほど85mmで全景を撮影した中華料理店。今回特に急ぐ必要もないので少し離れて眺めたり、辺りを散歩してみたりと、写真を撮ることよりもその場の空気を味わうことを重視しました。再訪だからこその贅沢。初見だと興奮してしまってなかなかこうは行きません。


前回訪問時はクスの花が咲いていた記憶がありますが、今回は実をつけていました。そういえばこれだけ巨大なクスなのに、本当にほのかにしか樟脳の香りが漂ってこない。落ち葉が全く見られないからでしょうか。(落ち葉に埋め尽くされているほど樟脳の香りも強いような気がする。)当たり前のように眺めていましたが、よくよく考えてみると信じられないくらいに清掃が徹底しています。いくら常緑樹のクスとはいえ、これほどの大きさなら落ち葉もかなりの量になるはずです。


ここに来る前家族へのお土産を買うために立ち寄った淡路島のPAで買った弁当を食す。今回絶対にこれがやりたかったんです。これぞ至高の贅沢。新型コロナ蔓延中ということで巨樹遠征に出ても感染リスクの高いを外食を避ける日々が続いていますが、それならそれで楽しみを作ればいい。日帰りの遠征では道の駅や無人販売で買った地産の肉、野菜をスキレットで焼いて食べたりしています。味付けは塩コショウのみ。これがまたシンプルに美味いんだ。というか大自然の中で巨樹を眺めながらの食事は、例えコンビニパンやカップラーメンであってもそこらの飲食店なんぞに負ける気がしません。

しかしここに一発目に来てしまったのは失敗でした。何時間でもいられる。これでは巨樹めぐりが成立しません 笑 ここだけで一日確保するだけの価値がある。あるいは旅の終着駅として立ち寄り、旅の総括も兼ねて日が落ちるまでぼーっと眺めるというのも悪くなさそうです。


前回とんでもない遠方、まるで異世界にでも来たように感じたものですが、徳島平野部なら3時間強?実は京都からそう遠くもないわけで。この数日新型コロナの感染者数がうなぎのぼりでまたしばらく行くことができそうもありませんが、外食と公共交通機関さえ避ければ他人と接触せずに楽しめるのがこの趣味なので、また来年も機会を見て立ち寄ろうと思っています。他人と接触しない新しい旅のスタイルに慣れることが出来たのは今年一番の収穫かもしれません。

さあ。肉眼レフで大クスの勇姿をしっかりと脳裏に焼き付け、次なる目的地へ。日本三大秘境の一つ「祖谷」の奥地、いわゆる奥祖谷を目指しましょう。

※樹高などの詳細は前回訪問時のログ(2019/5/21訪問)をご参照下さい。

コメント:6

RYO-JI 20-11-24 (Tue) 21:18

この姿、昨年見た感動がまた甦ってきました。
日帰り圏内で年内に大物を見ておきたいと色々考えていましたが、これを見てしまうと有力候補にあがってきますよ。
もうカメラなんか置いて、肉眼レフ(笑)でずっと眺めているだけで良い時間を過ごせるのはわかっていますからね。
そうそう、お弁当とレジャーシートを持って行き、食後は軽く昼寝して帰ってくる・・・そんな贅沢な遠征もアリですね。

20-11-25 (Wed) 9:22

文字で読めばそりゃ知っている巨樹ですが、写真を見始めてしまうと、はー、なんだこりゃすげえな……しか言えなくなりますね。
何度見ても、あるいは、間にいくつ別の巨樹を挟もうとも、新鮮に驚ける。圧倒的大きさ。その威力は計り知れないですね。
樹木という生命のポテンシャルをここまで発揮できた幸運もすごい。そこにも無意識にあやかりたいとか願いたいとか思ってしまいます。
ほんと、ここにまず寄るというのは失敗でしたね。笑 いや、避けて通るのも難しそうですけどね。
広葉樹、特にクスのおおらかさに、ここに「住みたい」に近い感情を抱いてしまう、あれがまた心地いいんですよねえ。

望遠系の圧縮効果は客観視の面でとても意味がありますね。
撮られた写真を見ていると、被写体の方から語りかけてくるのを静かに待つかのような、あるいは待てるような気がしてきます。
広角でしか撮れない条件も多々あるし、撮りたいこともありますが、広角はやっぱりコッチから行ってますもんね。格闘技の世界というか。笑

to-fu 20-11-25 (Wed) 20:49

> RYO-JIさん
そうなんです。我々のところからだと日帰りでも行けなくはない。むしろ徳島なら日帰りでもそれなりに回れてしまうという。
橋がアレなので高速代がアレですが(笑)、それを抜きにしたら最高の時間が過ごせると思います!
もちろん写真も撮ってしまうんですけど、写真すら二の次になってしまうような時間の過ごし方ってすごく贅沢ですよね。

to-fu 20-11-25 (Wed) 20:58

> 狛さん
この巨樹は本当に圧倒的でしたね。本やWebで何度も見てきたはずなのに、実物を見たらおいおい何だこれは…って。
日頃よく「巨樹は大きさが全てではない」なんて口にしてますけど、これほどまで圧倒的な物量で攻められるともう何も
言えなくなってしまいます。イヤ…ホントゴメンナサイ、スゴイデス。と。結局巨樹の巨樹たる最大の要素がサイズですからねえ。

日頃どうしてもその撮影スペースの狭さから広角系に依存してしまいがちですが、巨樹を際立たせるという視点で考えたら
望遠系にも出番はあると思うんです。実際に使えるかと言われるとかなり環境を選ぶので、現実的ではないかもしれませんが。
一度撮った巨樹なんかは機材を変えて二度三度と色々アプローチしてみると面白そうです。まあ欲張って結局ズームを持ち出して
しまうんですけど 笑

131 20-12-23 (Wed) 14:00

2020年に地上1,3mの幹回りを測ってきましたが14,8mでしたね
見た目より数値が伸びなかったのは丁度計測位置付近がくびれてるせいだと思います
2007年計測の16,7mとの約2mの誤差は地元の方の愛の分だと思っております
成長速度自体は老木の割にはなかなか良いのでこのまま落雷や台風の被害を受けなければ
いつの日か地元の方々の期待通り、もしくはそれ以上のサイズへとなっていくでしょう

話は変わりますが徳島県那賀郡那賀町和食字町156の蛭子神社にまだ行った事が無いのでしたら
加茂の大クス程のサイズの木はありませんが5m以上のクスノキや杉が所狭しと乱立していてなかなか見応えがあります
徳島県としては珍しく良いサイズの杉が多い場で巨木の規模として徳島県の一神社としては
ここが自分の知る限りでは最大の場ですね
次点が徳島県阿南市新野町宮ノ北の轟神社でこちらも最大7m超のクスノキを筆頭に5m超のクスノキがかなりあります

蛭子神社は全体的に樹高が高めで野性味が感じられるのに対して轟神社は整理されている感じが強いですが
どちらも行って損はしない所なのでお勧めです

to-fu 20-12-24 (Thu) 11:32

> 131さま
こんにちは。あの加茂の大クスを実測されたとは…なんと羨ましい!
しかしあれほどまでの迫力を持つクスが14.8mとは驚きです。18mくらいあるだろうとばかり思っていました。
測定位置が少しズレるだけで数値が大きく変わってきそうなので、2007年の数値は地元の方が故意に少しだけずらして
測定したものなのかもしれませんね。地元の方が誇りに思われている証拠。むしろ好ましいくらいに感じてしまいます。

貴重な情報感謝致します。まだ徳島市以南には訪問できていないので、地元の方の情報は本当に有難いです。
蛭子神社の社叢は写真で見ているだけでも背筋がゾワゾワしてきますね。巨樹はもちろんのこと、神社自体もとても
雰囲気が良さそうなので是非とも次回の目的地に加えてみます。轟神社のクスは形状が面白そうだと思い、自作の目的地マップに
チェックしておりました。阿南市には他にも気になる巨樹がいくつか見えますので、こちらも立ち寄らせていただきます。

来年こそは事態が終息し、大手を振って堂々と徳島県を訪問できる日が来ることを願っております。
寒くなってまいりましたので131様もどうかご自愛ください。良いお年をお迎え下さい。

コメントフォーム
Remember personal info

トラックバック:0

このエントリーのトラックバックURL
https://withphotograph.com/wp-trackback.php?p=17807
Listed below are links to weblogs that reference
【再訪】徳島県三好郡東みよし町 加茂の大クス from with photograph

Home > LEICA Q | SIGMA 85mm F1.4 DG DN Art | クスノキ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 徳島県 > 【再訪】徳島県三好郡東みよし町 加茂の大クス

CATEGORIES

Return to page top